五章
夢小説設定
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私達が居間に戻ってみると、机を囲んでみんな揃っていた
ただし漂う気配は険悪そのものだ
「やあやあ、待っていたよー」
「あ、お茶頂いてまーす」
周囲の険悪な視線にもめげず、完全にくつろいでいる、典薬寮の二人
芦屋正隆と、多家良清乃
芦屋さんは言うまでもないけど、多家良さんは初めて見る顔だ
「……芦屋さんは知ってますけど、多家良さんはお会いしたことないですよね?」
「あ、そっか、清乃ちゃんはあの後すぐ、転校しちゃったから……」
「転校っていうテイなんだけどね〜
私こう見えて、二十歳も超えた大卒の社会人なのよ」
去年、珠紀ちゃんや拓磨と同じクラスだったという、多家良さん
その正体は典薬寮の人間で、潜入調査のために高校生になって、紅陵学院の生徒をやっていたのだとか
「おい……珠紀
こいつを信じろって、マジで言ってんのか?」
「同意見だ
こいつは自分の利益になることなら、どんな汚いことも平気でする男だぞ」
珍しく真弘と遼の意見が合った
特に真弘は、芦屋さんに言いたいことが一つや二つ、それ以上はあるだろう
遼は去年の事件の裏で、芦屋さんのことを秘密裏に探っていたのだそう
だから芦屋さんのやり方には詳しくて、それ故に信用には値しないと踏んだらしい
「手厳しいね、どうも」
芦屋さんは気にする様子もなく、そう言ってお茶を飲んだ
「真弘先輩の懸念も、遼の言うことも尤もだと思う
……でも今、私たちにどうしても必要なのは情報だから」
珠紀ちゃんが、自分を納得させるようにゆっくりとそう言う
……確かにその通りだ
私達には情報が何もない
「村の人を助けるためなら、なんだってしなければいけないと思うの
話を聞いた後、どう行動するかは私たちが決めます
それでもいいですか?
芦屋さん」
「大変結構」
珠紀ちゃんの言葉に、芦屋さんは満足そうに頷いた
「では早速聞かせてください
昨日言ってた情報というのは?」
「焦らない焦らない
いいねえ、みんなに注目されてる感じって
ちょっともったいぶっちゃおうかなぁ」
「あんまり得策じゃないと思いますよ、それ」
「さっさと話せ」
「わ、分かった、分かったよ
怖いなあ」
遼に睨まれて、芦屋は改めて周囲を見渡し、ゆっくりと話し出した
おどけたような雰囲気が少し薄れ、真剣味が現れる
私達もひとまずは、この人の話を聞くことにした
「季封村の状況については、皆すでに、ある程度把握しているだろう
僕が集めた情報は、なぜ、こんなことになってるのか、という部分だ」
「だから、もったいぶってんじゃねえよ」
真弘がじれったそうにそう言う
そんな真弘を一瞥して、芦屋さんは一つ間を置いた後、ひとつの単語を発した
「鏡さ」
……鏡、って何?
どんな凶悪なものかと思っていただけに、『鏡』というありふれた言葉が出てきて、戸惑いを隠せない
「この村に密かに祀られ、封じられてきた鏡
それがこの現象を引き起こしている」
「……鏡、ですか?」
そんなものが祀られていたなんて初耳だった
私達の祖先が代々祀り、封じてきたものは、鬼斬丸だけじゃなかったということ?
「何だよ、その鏡っていうのは」
私達の心の声を代弁するかのように、拓磨が尋ねる
「まあまあ、順を追って話すから
僕らの方でも、断片的な情報しか得られてないんだけどね
村を徘徊する化け物は、『うつろ』と呼ばれていたようだよ」
「……呼ばれてた?
それ、どういうことですか?」
珠紀ちゃんが怪訝そうに問い返した
呼ばれていた、と過去形を使うということは、過去にも同じような現象が起きたことを意味する
「典薬寮にあった古い文献から、過去、季封村で同じようなことがあったらしいという情報を見つけてね
結構前から調査はしていたんだ
今回もいつもの調子で調査していたら、僕らもこの怪現象にとっ捕まった」
「ちょ……ちょっと待ってください!
じゃあ典薬寮では、この事件が起きると、事前に知っていたっていうことですか?」
「一度起きたことだ、二度目もあるかもね、程度の認識だよ
大騒ぎするほどの証拠もなかった
それに──」
珠紀ちゃんの言葉に対して冷静に返し、芦屋は一呼吸、間を置く
「お互い不干渉でいようって、典薬寮と縁を切ったのは君の祖母、宇賀谷静紀さんだよ?」
それを言われると、何も返せない
ババ様は去年、玉依姫を珠紀ちゃんが継承した後、季封村を離れて隠居した
ババ様ほどの力があれば、この事態を未然に防げていたかは分からないけれど──少なくとも今回、ババ様の助力は得られないのは確かだ
「ま、とにかく、鏡ってのが、今回の事件のキーワードだ」
「季封村……鏡……」
芦屋の言葉に、珠紀ちゃんが、大蛇さんと美鶴を見る
この中で、村に関すること……とりわけ玉依の歴史に詳しいのは、この二人だ
「……聞いたことは、ありませんね」
「私も初耳です」
次いで、珠紀ちゃんの視線は、私と真弘に向けられた
私と真弘は、先祖の契約が関係して、玉依の歴史を全て知っている
「……蔵にある書物にも、ババ様から聞いた事にも、そんな話は出てこなかったよ
そうだよね、真弘」
「ああ、そうだな
鏡なんてのも、うつろって呼ばれてたのも、初めて聞いたしよ」
「ほんとに?
玉依の者なら知ってると思ったんだけど」
意外そうな口ぶりがそう言って、私達はある種の不信感を抱いた
芦屋さんにではなく、ババ様に
ババ様が鏡のことを知らないはずはない
それでも私達に鏡のことまで伝えなかったのは──何か別の理由があっての事なのか
「えーと……話を戻しますけど、つまりこの現象は、その鏡が原因で、鏡をどうにかすると止まるんですか?」
「おそらくはね」
慎司の確認に、芦屋さんが頷く
「じゃあ、まず鏡を探さないと……」
「うーん
そう簡単みたいに事は運ばないみたいで」
「どういうことだ?」
多家良さんの答えは、ある程度、予想していたものだった
祐一の問いには、多家良さんではなく、芦屋さんが口を開いた
ただし漂う気配は険悪そのものだ
「やあやあ、待っていたよー」
「あ、お茶頂いてまーす」
周囲の険悪な視線にもめげず、完全にくつろいでいる、典薬寮の二人
芦屋正隆と、多家良清乃
芦屋さんは言うまでもないけど、多家良さんは初めて見る顔だ
「……芦屋さんは知ってますけど、多家良さんはお会いしたことないですよね?」
「あ、そっか、清乃ちゃんはあの後すぐ、転校しちゃったから……」
「転校っていうテイなんだけどね〜
私こう見えて、二十歳も超えた大卒の社会人なのよ」
去年、珠紀ちゃんや拓磨と同じクラスだったという、多家良さん
その正体は典薬寮の人間で、潜入調査のために高校生になって、紅陵学院の生徒をやっていたのだとか
「おい……珠紀
こいつを信じろって、マジで言ってんのか?」
「同意見だ
こいつは自分の利益になることなら、どんな汚いことも平気でする男だぞ」
珍しく真弘と遼の意見が合った
特に真弘は、芦屋さんに言いたいことが一つや二つ、それ以上はあるだろう
遼は去年の事件の裏で、芦屋さんのことを秘密裏に探っていたのだそう
だから芦屋さんのやり方には詳しくて、それ故に信用には値しないと踏んだらしい
「手厳しいね、どうも」
芦屋さんは気にする様子もなく、そう言ってお茶を飲んだ
「真弘先輩の懸念も、遼の言うことも尤もだと思う
……でも今、私たちにどうしても必要なのは情報だから」
珠紀ちゃんが、自分を納得させるようにゆっくりとそう言う
……確かにその通りだ
私達には情報が何もない
「村の人を助けるためなら、なんだってしなければいけないと思うの
話を聞いた後、どう行動するかは私たちが決めます
それでもいいですか?
芦屋さん」
「大変結構」
珠紀ちゃんの言葉に、芦屋さんは満足そうに頷いた
「では早速聞かせてください
昨日言ってた情報というのは?」
「焦らない焦らない
いいねえ、みんなに注目されてる感じって
ちょっともったいぶっちゃおうかなぁ」
「あんまり得策じゃないと思いますよ、それ」
「さっさと話せ」
「わ、分かった、分かったよ
怖いなあ」
遼に睨まれて、芦屋は改めて周囲を見渡し、ゆっくりと話し出した
おどけたような雰囲気が少し薄れ、真剣味が現れる
私達もひとまずは、この人の話を聞くことにした
「季封村の状況については、皆すでに、ある程度把握しているだろう
僕が集めた情報は、なぜ、こんなことになってるのか、という部分だ」
「だから、もったいぶってんじゃねえよ」
真弘がじれったそうにそう言う
そんな真弘を一瞥して、芦屋さんは一つ間を置いた後、ひとつの単語を発した
「鏡さ」
……鏡、って何?
どんな凶悪なものかと思っていただけに、『鏡』というありふれた言葉が出てきて、戸惑いを隠せない
「この村に密かに祀られ、封じられてきた鏡
それがこの現象を引き起こしている」
「……鏡、ですか?」
そんなものが祀られていたなんて初耳だった
私達の祖先が代々祀り、封じてきたものは、鬼斬丸だけじゃなかったということ?
「何だよ、その鏡っていうのは」
私達の心の声を代弁するかのように、拓磨が尋ねる
「まあまあ、順を追って話すから
僕らの方でも、断片的な情報しか得られてないんだけどね
村を徘徊する化け物は、『うつろ』と呼ばれていたようだよ」
「……呼ばれてた?
それ、どういうことですか?」
珠紀ちゃんが怪訝そうに問い返した
呼ばれていた、と過去形を使うということは、過去にも同じような現象が起きたことを意味する
「典薬寮にあった古い文献から、過去、季封村で同じようなことがあったらしいという情報を見つけてね
結構前から調査はしていたんだ
今回もいつもの調子で調査していたら、僕らもこの怪現象にとっ捕まった」
「ちょ……ちょっと待ってください!
じゃあ典薬寮では、この事件が起きると、事前に知っていたっていうことですか?」
「一度起きたことだ、二度目もあるかもね、程度の認識だよ
大騒ぎするほどの証拠もなかった
それに──」
珠紀ちゃんの言葉に対して冷静に返し、芦屋は一呼吸、間を置く
「お互い不干渉でいようって、典薬寮と縁を切ったのは君の祖母、宇賀谷静紀さんだよ?」
それを言われると、何も返せない
ババ様は去年、玉依姫を珠紀ちゃんが継承した後、季封村を離れて隠居した
ババ様ほどの力があれば、この事態を未然に防げていたかは分からないけれど──少なくとも今回、ババ様の助力は得られないのは確かだ
「ま、とにかく、鏡ってのが、今回の事件のキーワードだ」
「季封村……鏡……」
芦屋の言葉に、珠紀ちゃんが、大蛇さんと美鶴を見る
この中で、村に関すること……とりわけ玉依の歴史に詳しいのは、この二人だ
「……聞いたことは、ありませんね」
「私も初耳です」
次いで、珠紀ちゃんの視線は、私と真弘に向けられた
私と真弘は、先祖の契約が関係して、玉依の歴史を全て知っている
「……蔵にある書物にも、ババ様から聞いた事にも、そんな話は出てこなかったよ
そうだよね、真弘」
「ああ、そうだな
鏡なんてのも、うつろって呼ばれてたのも、初めて聞いたしよ」
「ほんとに?
玉依の者なら知ってると思ったんだけど」
意外そうな口ぶりがそう言って、私達はある種の不信感を抱いた
芦屋さんにではなく、ババ様に
ババ様が鏡のことを知らないはずはない
それでも私達に鏡のことまで伝えなかったのは──何か別の理由があっての事なのか
「えーと……話を戻しますけど、つまりこの現象は、その鏡が原因で、鏡をどうにかすると止まるんですか?」
「おそらくはね」
慎司の確認に、芦屋さんが頷く
「じゃあ、まず鏡を探さないと……」
「うーん
そう簡単みたいに事は運ばないみたいで」
「どういうことだ?」
多家良さんの答えは、ある程度、予想していたものだった
祐一の問いには、多家良さんではなく、芦屋さんが口を開いた
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