閑話2
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ニールとの戦いで負った傷も癒えて、私たちはいつものように宇賀屋家に集合した
先日みんなで受けた模試の結果が返ってきたから、復習も兼ねて勉強会というわけだ
持ち寄った封筒は、もちろんみんな未開封
緊張の面持ちを抱えながら、私たちはそれぞれの封筒を開けた
模試の合格判定は……
「B判定だ!」
珠紀ちゃんの弾んだ声が響く
ぶっちゃけて言えば、珠紀ちゃんに関しては心配なんてしていない
真面目だから、ちゃんと受験勉強も頑張れる子だもん
むしろ不安なのは……
「ッスー……真弘先輩、どうでした?」
「そ、そういうお前はどうだったんだよ、拓磨」
「赤頭が合格ラインにいるわけねぇだろ」
「ほほう?
そういうてめぇはさぞいい結果だったんだろうなぁ灰色頭?」
「おい、人の結果を勝手に見んじゃねぇ!」
バカ三人組は全員、どんぐりの背比べ状態だ
……不安だな
こんなので来年の春、同じ大学に行けるのかな
「優佳先輩はどうでした?
僕は珠紀先輩のことも優佳先輩のことも、あまり心配していないんですけど」
「あ、うん、一応A判定だったよ」
バカ三人組の小競り合いが止まった
ポカン……と口を開けた三人が食い入るように私を凝視してくる光景、流石にホラー感がある
「A判定なんて……存在したのか……」
「俺たちには見えない、幻だと思ってたぜ……」
「存在するでしょ、普通に
むしろ三人が崖っぷちすぎるだけよ」
私の隣で大蛇さんと慎司が大きく頷いている
この三人は特に講師役の二人を困らせてるから、言いたい事の三つや四つ、それ以上にあるだろう
私も心配で仕方がない
「でも教えれば教えるほど不思議ですよ
どうして優佳先輩まで不合格だったんでしょう?
まさか先輩に限って、答案用紙に名前を書き忘れるなんてこと、あるはずないですし……」
「……」
そっと目を逸らす
無言で行われたその仕草ひとつで、慎司の表情が凍りついた
まさか……と珠紀ちゃんも絶句している
「……そうとしか考えられないなってだけなんだけど……
手応えはあったはずなのに、落ちたってことは……そういうことなのかなって……」
「そ、そんな……」
「でも優佳先輩、試験当日は体調が悪かったって聞きましたよ
そのせいもあったんじゃないですか?」
「原因はひとつと限らないということで……」
もちろん大嘘だ
合格を辞退したという裏話は、私と真弘が墓場まで持っていくと決めた
真弘に関しては本人のキャラもあって、違和感なく受け入れられたけど……
……成績優秀者で表彰までされた私が不合格だったというのは、流石にみんな怪しいと思っているようだった
なので行き着いた結論は、答案用紙への無記名というわけだ
我ながら苦しい
「櫻葉さんの結果はともかく、みなさん、まずは模試の復習が先ですよ
他人と比べたところで、自分の成績は上がりませんからね」
「俺たちを見て言うな!!」
「べべべ、別に、比べてなんかないっすよ!」
「人の結果を勝手に見ておいてよく言うぜ、赤頭!」
「その後テメーだって覗こうとしただろうが、灰色頭!!」
収集がつかないな、これ
私と珠紀ちゃんは顔を見合わせて肩を竦め、先に二人で復習に取り掛かることにした
私が正解した問題は珠紀ちゃんに教えられるし、私も間違えた問題は慎司や大蛇さんが教えてくれる
バカ三人組もしばらくは喧しかったけど、途中から真面目に机に向かい始めた
そうして相変わらずちょっと非効率な、でも和気あいあいとして勉強会は夕方まで続いて
夕飯時の少し手前で、勉強会は解散になった
ツクツクボウシとヒグラシが夏の終わりを知らせる村は、もうすぐそこに秋が来ていることを感じさせる
日が落ちるのも早くなったし、何より朝夕は扇風機ひとつで事足りる
そう思って空を見上げれば、また少し空が遠くなったような気がした
珠紀ちゃんが来てから、丸一年が経とうとしてるんだ
早かったような、そうでもないような
今でも不思議な気持ちだ
まさか鏡を巡る戦いを生きて終えられるなんて思わなかった──
「おーい、優佳ー!
小腹空いたしよ、焼きそばパン買って帰ろうぜー!!」
「これから晩メシだってのに、なんでメシみたいなもん買って帰るんすか
怒られますよ、優佳先輩に」
「まあまあ、拓磨先輩
真弘先輩にとって焼きそばパンはおやつみたいなものなんですよ、きっと」
「ま、三百円以内なのは確かだしな」
「おやつの値段を守れて偉いですねー」
「だーれが遠足に行く小学生だ!!」
……しんみりした気分がどっか行っちゃった
でもまあ……そうよね
私と真弘は生きてるんだから、もうそれでいいんだと思う
だってこの結果は、他の誰でもない、私たちの手で掴んだものだから
「真弘、焼きそばパンを買って帰るなら、晩ご飯はいらないのね?」
「は!?
なんでだよ、いるに決まってるだろ!!」
「え……焼きそばパンを食べて、晩ご飯まで食べるの……?
そんな、もう育ち盛りは過ぎてるんだから……」
「ガキ扱いすんなー!!」
田んぼが広がるあぜ道に、真弘の怒鳴り声が響く
みんなで笑って、何の気兼ねもなく「また明日」と別れる
当たり前のようなそれ
それが当たり前にあることの有難みを、私だけがそっと噛み締めていた
先日みんなで受けた模試の結果が返ってきたから、復習も兼ねて勉強会というわけだ
持ち寄った封筒は、もちろんみんな未開封
緊張の面持ちを抱えながら、私たちはそれぞれの封筒を開けた
模試の合格判定は……
「B判定だ!」
珠紀ちゃんの弾んだ声が響く
ぶっちゃけて言えば、珠紀ちゃんに関しては心配なんてしていない
真面目だから、ちゃんと受験勉強も頑張れる子だもん
むしろ不安なのは……
「ッスー……真弘先輩、どうでした?」
「そ、そういうお前はどうだったんだよ、拓磨」
「赤頭が合格ラインにいるわけねぇだろ」
「ほほう?
そういうてめぇはさぞいい結果だったんだろうなぁ灰色頭?」
「おい、人の結果を勝手に見んじゃねぇ!」
バカ三人組は全員、どんぐりの背比べ状態だ
……不安だな
こんなので来年の春、同じ大学に行けるのかな
「優佳先輩はどうでした?
僕は珠紀先輩のことも優佳先輩のことも、あまり心配していないんですけど」
「あ、うん、一応A判定だったよ」
バカ三人組の小競り合いが止まった
ポカン……と口を開けた三人が食い入るように私を凝視してくる光景、流石にホラー感がある
「A判定なんて……存在したのか……」
「俺たちには見えない、幻だと思ってたぜ……」
「存在するでしょ、普通に
むしろ三人が崖っぷちすぎるだけよ」
私の隣で大蛇さんと慎司が大きく頷いている
この三人は特に講師役の二人を困らせてるから、言いたい事の三つや四つ、それ以上にあるだろう
私も心配で仕方がない
「でも教えれば教えるほど不思議ですよ
どうして優佳先輩まで不合格だったんでしょう?
まさか先輩に限って、答案用紙に名前を書き忘れるなんてこと、あるはずないですし……」
「……」
そっと目を逸らす
無言で行われたその仕草ひとつで、慎司の表情が凍りついた
まさか……と珠紀ちゃんも絶句している
「……そうとしか考えられないなってだけなんだけど……
手応えはあったはずなのに、落ちたってことは……そういうことなのかなって……」
「そ、そんな……」
「でも優佳先輩、試験当日は体調が悪かったって聞きましたよ
そのせいもあったんじゃないですか?」
「原因はひとつと限らないということで……」
もちろん大嘘だ
合格を辞退したという裏話は、私と真弘が墓場まで持っていくと決めた
真弘に関しては本人のキャラもあって、違和感なく受け入れられたけど……
……成績優秀者で表彰までされた私が不合格だったというのは、流石にみんな怪しいと思っているようだった
なので行き着いた結論は、答案用紙への無記名というわけだ
我ながら苦しい
「櫻葉さんの結果はともかく、みなさん、まずは模試の復習が先ですよ
他人と比べたところで、自分の成績は上がりませんからね」
「俺たちを見て言うな!!」
「べべべ、別に、比べてなんかないっすよ!」
「人の結果を勝手に見ておいてよく言うぜ、赤頭!」
「その後テメーだって覗こうとしただろうが、灰色頭!!」
収集がつかないな、これ
私と珠紀ちゃんは顔を見合わせて肩を竦め、先に二人で復習に取り掛かることにした
私が正解した問題は珠紀ちゃんに教えられるし、私も間違えた問題は慎司や大蛇さんが教えてくれる
バカ三人組もしばらくは喧しかったけど、途中から真面目に机に向かい始めた
そうして相変わらずちょっと非効率な、でも和気あいあいとして勉強会は夕方まで続いて
夕飯時の少し手前で、勉強会は解散になった
ツクツクボウシとヒグラシが夏の終わりを知らせる村は、もうすぐそこに秋が来ていることを感じさせる
日が落ちるのも早くなったし、何より朝夕は扇風機ひとつで事足りる
そう思って空を見上げれば、また少し空が遠くなったような気がした
珠紀ちゃんが来てから、丸一年が経とうとしてるんだ
早かったような、そうでもないような
今でも不思議な気持ちだ
まさか鏡を巡る戦いを生きて終えられるなんて思わなかった──
「おーい、優佳ー!
小腹空いたしよ、焼きそばパン買って帰ろうぜー!!」
「これから晩メシだってのに、なんでメシみたいなもん買って帰るんすか
怒られますよ、優佳先輩に」
「まあまあ、拓磨先輩
真弘先輩にとって焼きそばパンはおやつみたいなものなんですよ、きっと」
「ま、三百円以内なのは確かだしな」
「おやつの値段を守れて偉いですねー」
「だーれが遠足に行く小学生だ!!」
……しんみりした気分がどっか行っちゃった
でもまあ……そうよね
私と真弘は生きてるんだから、もうそれでいいんだと思う
だってこの結果は、他の誰でもない、私たちの手で掴んだものだから
「真弘、焼きそばパンを買って帰るなら、晩ご飯はいらないのね?」
「は!?
なんでだよ、いるに決まってるだろ!!」
「え……焼きそばパンを食べて、晩ご飯まで食べるの……?
そんな、もう育ち盛りは過ぎてるんだから……」
「ガキ扱いすんなー!!」
田んぼが広がるあぜ道に、真弘の怒鳴り声が響く
みんなで笑って、何の気兼ねもなく「また明日」と別れる
当たり前のようなそれ
それが当たり前にあることの有難みを、私だけがそっと噛み締めていた
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