二十二章
夢小説設定
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鏡を揃え、契約者となった者を殺すしか、現状の解決策はない──
想像していなかった結末を前に、水車小屋は重苦しい沈黙が続いた
そんな空気の中で、珠紀ちゃんが口を開く
「私の方からも、報告があります」
私たちの視線が珠紀ちゃんへと向けられ、大蛇さんが小さく目を見開いた
「報告……?
何かあったのですか?」
ニールのこと、マルクトのこと
そして、村の人たちのこと
珠紀ちゃんは今までに起きたことを全部話した
「多分明日……ケテルさん達が、私たちの前に現れます」
「それは……どういう意味ですか?」
「俺たちを仲間に引き入れたいんだと
服従か死か、だな」
「……で、どちらを選ぶつもりなんだ」
「それは当然……」
珠紀ちゃんや真弘と目が合う
そうして私たちは同時に言った
「「第三の選択肢、ニールをぶっ飛ばす」」
「……です!」
「……に決まってるでしょ!」
「気のせいか……鴉取が三人いるように思えるな」
「余計なお世話よ、遼」
「余計な世話ってなんだよ!?」
至近距離で飛んできた真弘の怒鳴り声
思わず耳を手で塞いでしまった
怒鳴るにしても、もう少し距離を考えてほしいものだ
「私たち典薬寮からは、いい情報
五瀬さんと薬師衆は、もう再起不能の状態だよ」
「え……そ、そうなの……」
「ニールとの戦いで消耗したところを、捕まっているふりをしていた守護者の皆で一斉に蜂起したからね」
「……い、五瀬さんは?」
「五瀬は薬師衆との精神的な繋がりを切ったうえで、こちらで保護している
いずれ陰の世界の瘴気に当てられて、眠りにつく
この件に終止符が打たれるまでは起きんよ」
「そうだったんですか……」
どうりで姿を見ないと思った
そういうことがあったんだ……
「ってことは、明日が最後の決戦か
とにかく、ニールの野郎に鏡を二枚揃えさせるわけにもいかねえしな」
「はい……」
守護者の力は解放され、私たちは本来の力を取り戻した
それでも……ニールに勝てるのだろうか
自問してみても、答えは出ない
いや、本心で言えば分かってる
きっと、勝ち目なんて……
「勝てる」
「え……」
「大丈夫だ、心配するな
俺がついててやるんだぞ」
「真弘……」
「な?」
「……うん」
「真弘先輩もいいこと言いますね」
「こういう時は頼りになるんですよね、真弘先輩」
「馬鹿野郎、俺はいつだって頼りになるだろうが!」
それはどうだ……?
みんなの顔が微妙な反応に変わっていく
もちろん私の中では真弘はいつだって頼もしい存在だけど、みんなの中ではそうじゃないということは、往々にしてあるもので
「なんだよその反応は!」と真弘がまた文句を言って、少しだけ場の空気が軽くなった
「そうと決まれば、明日に備えて、今日は休むとしましょうか」
大蛇さんの言葉に、皆が頷く
それからしばらく、私たちは思い思いに話をした
再会の喜びや、他愛のないふざけ合い
それから数時間経って──
みんなが眠ってしまった中で、私は不安に耐えられなくなった
明日の戦いと、それがもたらすもの
もし誰かが……なんて、考えただけで、震えが止まらなくなる
(眠れなくなっちゃったな……)
起こさないように足音を消して、起き上がる
そうしてそっと、水車小屋を抜け出した
あまり離れるのもよくない気がして、すぐ近くの田んぼの畦道へと向かうことにした
(真弘、怒ってたな……
それも当然よね、一緒に生きていくって、結婚の約束までした私が、まだ死ぬことをやめていなかったんだもの)
だけどそれだけ、私のしたことは重くて……
そしてこれから先も許されることはないもの
真弘と約束した気持ちは嘘じゃない
できることならこれから先も、ずっとずっと、真弘と一緒に生きていきたい
……だけどもし、そうするために他の誰かに犠牲を強いる必要があるのなら
そうしてまで生きていたいと、私は思わない
私たちは鬼斬丸を生きて封印した
それは今回のような大事件が起きるなんて、知らなかったから
鏡なんてものも、その契約者となったカミのことも、知らなかったから
……もし知っていたら、私はどうしただろう
(学校からの帰り道、アリアとフィーアに声を掛けられたことがきっかけだった
私は本当に珠紀ちゃんの守護者なのか……
アリアは私にそう尋ねた)
そうして私の中に、力を封じている『蓋』があることに気が付いた
もし、鬼斬丸を解放してしまったことで、鏡の契約者が目覚めることになると、知っていたら
間違いなく私は、あの日の放課後、迷わずに覚醒しただろう
そうして真弘たちも知らないところで、鬼斬丸のために贄となる道を選んでいた
だって私には、それしか生きる道なんてなかったから
……だけど、この一年、ありもしなかったはずの『未来』を描いて、そのために努力して勉強して
十八年かかってようやく手にした、当たり前の幸せを味わって……
それでも私は、世界の終わりなんてものから逃げられなかった
今が命の捨て時だ、それは分かってる
……でも、一年前より、その覚悟は薄らいでしまって
私が犠牲になる、なんて格好つけたけれど、本当はすごく怖い
「……死にたくないな……」
私の小さな本音は、誰もいない畦道に消えた
想像していなかった結末を前に、水車小屋は重苦しい沈黙が続いた
そんな空気の中で、珠紀ちゃんが口を開く
「私の方からも、報告があります」
私たちの視線が珠紀ちゃんへと向けられ、大蛇さんが小さく目を見開いた
「報告……?
何かあったのですか?」
ニールのこと、マルクトのこと
そして、村の人たちのこと
珠紀ちゃんは今までに起きたことを全部話した
「多分明日……ケテルさん達が、私たちの前に現れます」
「それは……どういう意味ですか?」
「俺たちを仲間に引き入れたいんだと
服従か死か、だな」
「……で、どちらを選ぶつもりなんだ」
「それは当然……」
珠紀ちゃんや真弘と目が合う
そうして私たちは同時に言った
「「第三の選択肢、ニールをぶっ飛ばす」」
「……です!」
「……に決まってるでしょ!」
「気のせいか……鴉取が三人いるように思えるな」
「余計なお世話よ、遼」
「余計な世話ってなんだよ!?」
至近距離で飛んできた真弘の怒鳴り声
思わず耳を手で塞いでしまった
怒鳴るにしても、もう少し距離を考えてほしいものだ
「私たち典薬寮からは、いい情報
五瀬さんと薬師衆は、もう再起不能の状態だよ」
「え……そ、そうなの……」
「ニールとの戦いで消耗したところを、捕まっているふりをしていた守護者の皆で一斉に蜂起したからね」
「……い、五瀬さんは?」
「五瀬は薬師衆との精神的な繋がりを切ったうえで、こちらで保護している
いずれ陰の世界の瘴気に当てられて、眠りにつく
この件に終止符が打たれるまでは起きんよ」
「そうだったんですか……」
どうりで姿を見ないと思った
そういうことがあったんだ……
「ってことは、明日が最後の決戦か
とにかく、ニールの野郎に鏡を二枚揃えさせるわけにもいかねえしな」
「はい……」
守護者の力は解放され、私たちは本来の力を取り戻した
それでも……ニールに勝てるのだろうか
自問してみても、答えは出ない
いや、本心で言えば分かってる
きっと、勝ち目なんて……
「勝てる」
「え……」
「大丈夫だ、心配するな
俺がついててやるんだぞ」
「真弘……」
「な?」
「……うん」
「真弘先輩もいいこと言いますね」
「こういう時は頼りになるんですよね、真弘先輩」
「馬鹿野郎、俺はいつだって頼りになるだろうが!」
それはどうだ……?
みんなの顔が微妙な反応に変わっていく
もちろん私の中では真弘はいつだって頼もしい存在だけど、みんなの中ではそうじゃないということは、往々にしてあるもので
「なんだよその反応は!」と真弘がまた文句を言って、少しだけ場の空気が軽くなった
「そうと決まれば、明日に備えて、今日は休むとしましょうか」
大蛇さんの言葉に、皆が頷く
それからしばらく、私たちは思い思いに話をした
再会の喜びや、他愛のないふざけ合い
それから数時間経って──
みんなが眠ってしまった中で、私は不安に耐えられなくなった
明日の戦いと、それがもたらすもの
もし誰かが……なんて、考えただけで、震えが止まらなくなる
(眠れなくなっちゃったな……)
起こさないように足音を消して、起き上がる
そうしてそっと、水車小屋を抜け出した
あまり離れるのもよくない気がして、すぐ近くの田んぼの畦道へと向かうことにした
(真弘、怒ってたな……
それも当然よね、一緒に生きていくって、結婚の約束までした私が、まだ死ぬことをやめていなかったんだもの)
だけどそれだけ、私のしたことは重くて……
そしてこれから先も許されることはないもの
真弘と約束した気持ちは嘘じゃない
できることならこれから先も、ずっとずっと、真弘と一緒に生きていきたい
……だけどもし、そうするために他の誰かに犠牲を強いる必要があるのなら
そうしてまで生きていたいと、私は思わない
私たちは鬼斬丸を生きて封印した
それは今回のような大事件が起きるなんて、知らなかったから
鏡なんてものも、その契約者となったカミのことも、知らなかったから
……もし知っていたら、私はどうしただろう
(学校からの帰り道、アリアとフィーアに声を掛けられたことがきっかけだった
私は本当に珠紀ちゃんの守護者なのか……
アリアは私にそう尋ねた)
そうして私の中に、力を封じている『蓋』があることに気が付いた
もし、鬼斬丸を解放してしまったことで、鏡の契約者が目覚めることになると、知っていたら
間違いなく私は、あの日の放課後、迷わずに覚醒しただろう
そうして真弘たちも知らないところで、鬼斬丸のために贄となる道を選んでいた
だって私には、それしか生きる道なんてなかったから
……だけど、この一年、ありもしなかったはずの『未来』を描いて、そのために努力して勉強して
十八年かかってようやく手にした、当たり前の幸せを味わって……
それでも私は、世界の終わりなんてものから逃げられなかった
今が命の捨て時だ、それは分かってる
……でも、一年前より、その覚悟は薄らいでしまって
私が犠牲になる、なんて格好つけたけれど、本当はすごく怖い
「……死にたくないな……」
私の小さな本音は、誰もいない畦道に消えた
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