二章
夢小説設定
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ぱち、と目が覚めた
雨戸を閉めていない窓から、陽の光が室内に注がれている
布団から起き上がって、ぐっと伸びをしてから、何気なく隣を見て……
「ムグッ……!!」
叫びそうになるのを堪えて、口を手で塞ぐ
隣には、寝相悪く爆睡する真弘がいた
男子小学生かってツッコミが頭の中に浮かんだけど、口にしてはいけない
「そうだった……」
昨日から一緒に住んでるんだった、忘れてた
いまいち実感も湧かないからかな
起こさないように気を付けて、寝室をそっと出ていく
(起きるわけないか……)
すごく気持ちよさそうに寝てるし
そもそも真弘が早起きなんか、出来るわけないし
「まったく……」
胸の奥がほんわかと温かくなりつつ、私は玄関を出た
そのまま庭に出て、もう一度、今度は大きく背伸びをする
朝の空気を肺に吸い込んで、ゆっくりと吐き出して
「略法、伏敵──」
呪符が三枚、私の目の前に出現する
それらは私の力を受けて、パッと光り輝いた
「急々如律令!」
呪符の光がまっすぐに的へ向かっていく
大きな爆発音がして、的は三つとも、真ん中に焦げ跡を残していた
「うん、今日もいい感じ」
そう呟いた瞬間、寝室側の雨戸が部屋の中から開いた
えっ、と驚くのと同時に、寝癖がついた頭の真弘が顔を見せる
「あ、真弘──」
「大丈夫か!?」
真弘の切羽詰まった声に首を傾げる
そのまま寝室から真弘が降りようとするから、咄嗟にサンダルを窓際へ渡した
「え?」
「今、外でとんでもねえ音が……」
真弘の視線が、焦げて煙をゆらりと上げている的に向かっていく
そうしてまた視線が私に戻ってきた
ちょっと不機嫌そうな色をして
「これか」
「何が?」
「爆発音の原因」
「ああ、うん
もしかして、起こしちゃった?」
「誰だって起きるだろ、あんな音!!
なんかやべーことでも起きてんのかと思ったんだぞ」
脱力して座り込む真弘に小さく笑って、首を振る
もうそんなことなんか起きないって、真弘も知っているくせに
きっと真弘も、心のどこかでは信じられていないのかもしれない
もう死ななくていい、何かのために命を捧げなくていいんだって
「ごめんごめん
次からは真弘を起こした後に朝の鍛錬やるね」
「いやまあ、別にいいんだけどよ……
それで俺の睡眠が減るってのは、話が違うっつーか──」
「あ、じゃあ、この爆発音が真弘の目覚ましってことで……」
「いいわけねーだろ!!」
む、いいと思ったんだけどな
真弘なんて、朝に弱くて起きられないんだから
「……はぁ
とりあえず朝メシにしようぜ
お前のせいで完全に目が覚めちまったしよ」
「はいはい」
真弘に促されて、家の中に入る
玄関から戻って台所に向かうと、真弘が部屋着のまま台所に入ってきた
「そういや、今、何時なんだ?」
「六時よ、それがどうかしたの?」
「いや、随分と早起きなんだなと思ってよ」
「そう?
普通だと思うけど……
あ、真弘、そこにあるお味噌とって」
「おう」
朝は定番のご飯とお味噌汁、それから焼き魚とお漬物が二つ
一汁三菜が私の基本だ
朝食を作っていると、不意に後ろから「なぁ」と声がした
「なに?」
「このぶら下がってる紙、何が書いてあるんだ?」
真弘が言ったのは、上にあるキャビネットの取っ手からぶら下がっているメモのこと
ビニール紐で吊るされた洗濯バサミがメモを挟んでいる──という、オシャレでも何でもない吊り下げ方だ
「これ?
これは私のお母さんが書いた、お味噌汁の作り方よ
他にも色々あるんだけど、このレシピを見る回数の方が多いから、ずっとここに下げたままだったの
今となっては見ることもないから、外してもいいんだけど──」
それでもなんだか、この紙を置いておきたくて、ずっとこのままにしていた
もう顔も声も、思い出も忘れてしまった母だけど、このレシピ越しに私を見てくれているようで
「……そうか」
そうとだけ言って、真弘はメモを見上げた
小学生の私でも理解できるように、ひらがなが多めに使われたレシピは、母が私のために残してくれていたものだ
……きっと分かっていたんだろう、あの儀式を終える頃には、自分が死んでいることに
だから一人残されることになる私のために、母も父も、できる限りのものを残してくれた
そのおかげで今、私はこうして生きていられる
もちろん真弘のおばさんにも感謝しているし、私と真弘が生きて鬼斬丸を封印したからでもある
とにかく私達は、生きていていいんだ
……生きていていいはずなんだ
雨戸を閉めていない窓から、陽の光が室内に注がれている
布団から起き上がって、ぐっと伸びをしてから、何気なく隣を見て……
「ムグッ……!!」
叫びそうになるのを堪えて、口を手で塞ぐ
隣には、寝相悪く爆睡する真弘がいた
男子小学生かってツッコミが頭の中に浮かんだけど、口にしてはいけない
「そうだった……」
昨日から一緒に住んでるんだった、忘れてた
いまいち実感も湧かないからかな
起こさないように気を付けて、寝室をそっと出ていく
(起きるわけないか……)
すごく気持ちよさそうに寝てるし
そもそも真弘が早起きなんか、出来るわけないし
「まったく……」
胸の奥がほんわかと温かくなりつつ、私は玄関を出た
そのまま庭に出て、もう一度、今度は大きく背伸びをする
朝の空気を肺に吸い込んで、ゆっくりと吐き出して
「略法、伏敵──」
呪符が三枚、私の目の前に出現する
それらは私の力を受けて、パッと光り輝いた
「急々如律令!」
呪符の光がまっすぐに的へ向かっていく
大きな爆発音がして、的は三つとも、真ん中に焦げ跡を残していた
「うん、今日もいい感じ」
そう呟いた瞬間、寝室側の雨戸が部屋の中から開いた
えっ、と驚くのと同時に、寝癖がついた頭の真弘が顔を見せる
「あ、真弘──」
「大丈夫か!?」
真弘の切羽詰まった声に首を傾げる
そのまま寝室から真弘が降りようとするから、咄嗟にサンダルを窓際へ渡した
「え?」
「今、外でとんでもねえ音が……」
真弘の視線が、焦げて煙をゆらりと上げている的に向かっていく
そうしてまた視線が私に戻ってきた
ちょっと不機嫌そうな色をして
「これか」
「何が?」
「爆発音の原因」
「ああ、うん
もしかして、起こしちゃった?」
「誰だって起きるだろ、あんな音!!
なんかやべーことでも起きてんのかと思ったんだぞ」
脱力して座り込む真弘に小さく笑って、首を振る
もうそんなことなんか起きないって、真弘も知っているくせに
きっと真弘も、心のどこかでは信じられていないのかもしれない
もう死ななくていい、何かのために命を捧げなくていいんだって
「ごめんごめん
次からは真弘を起こした後に朝の鍛錬やるね」
「いやまあ、別にいいんだけどよ……
それで俺の睡眠が減るってのは、話が違うっつーか──」
「あ、じゃあ、この爆発音が真弘の目覚ましってことで……」
「いいわけねーだろ!!」
む、いいと思ったんだけどな
真弘なんて、朝に弱くて起きられないんだから
「……はぁ
とりあえず朝メシにしようぜ
お前のせいで完全に目が覚めちまったしよ」
「はいはい」
真弘に促されて、家の中に入る
玄関から戻って台所に向かうと、真弘が部屋着のまま台所に入ってきた
「そういや、今、何時なんだ?」
「六時よ、それがどうかしたの?」
「いや、随分と早起きなんだなと思ってよ」
「そう?
普通だと思うけど……
あ、真弘、そこにあるお味噌とって」
「おう」
朝は定番のご飯とお味噌汁、それから焼き魚とお漬物が二つ
一汁三菜が私の基本だ
朝食を作っていると、不意に後ろから「なぁ」と声がした
「なに?」
「このぶら下がってる紙、何が書いてあるんだ?」
真弘が言ったのは、上にあるキャビネットの取っ手からぶら下がっているメモのこと
ビニール紐で吊るされた洗濯バサミがメモを挟んでいる──という、オシャレでも何でもない吊り下げ方だ
「これ?
これは私のお母さんが書いた、お味噌汁の作り方よ
他にも色々あるんだけど、このレシピを見る回数の方が多いから、ずっとここに下げたままだったの
今となっては見ることもないから、外してもいいんだけど──」
それでもなんだか、この紙を置いておきたくて、ずっとこのままにしていた
もう顔も声も、思い出も忘れてしまった母だけど、このレシピ越しに私を見てくれているようで
「……そうか」
そうとだけ言って、真弘はメモを見上げた
小学生の私でも理解できるように、ひらがなが多めに使われたレシピは、母が私のために残してくれていたものだ
……きっと分かっていたんだろう、あの儀式を終える頃には、自分が死んでいることに
だから一人残されることになる私のために、母も父も、できる限りのものを残してくれた
そのおかげで今、私はこうして生きていられる
もちろん真弘のおばさんにも感謝しているし、私と真弘が生きて鬼斬丸を封印したからでもある
とにかく私達は、生きていていいんだ
……生きていていいはずなんだ
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