十九章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──愚者を滅ぼすべき力は、既にここにある……
我が主の宿願は、これによって達成される
しかしそれが正しいことなのだろうか
人の醜さをより集めて作られた我が主の苦しみが、人を滅ぼすことで救われるのであろうか
醜いものを全て滅ぼした先に、我が主が手に入れるもの
……見届けよう
私にはその義務がある
主が欲するものを手に入れ、主が望む道へ導こう
それが私の贖罪
何が起きても
最後まで我が主の傍に──
* * *
聖堂とも呼べる空間
そこに続く扉は開かれていた
高い天井だ
ステンドグラスから漏れる不思議な光が、床に向かって伸びている
ここは地下なのに、どこから光が入っているのだろう
そして、部屋の中央にいるのは……
「ニール……」
「……来るだろうと思っていた
ロゴスがアーティファクト獲得のために、この洋館を手に入れた際、地下聖堂は作られた
この場所には、ロゴスの理想が刻まれている
真実を知り、神に近づき、人々の楽園を築き上げる
それがロゴスという組織の元々の理想」
「それがどうした……?」
真弘がニールを見据えたままそう言う
「しかしそれはいつしか、自らが神となり、真理の頂を上り詰めるという欲望にすり替わってしまった
理想は捨てられ、ただ神の禁断の実をもぎ取ることにのみ夢中になった
どんなに崇高な理想と高度な精神を持とうと、力を手にすることで堕落する
根源的なところで、人はみな愚者だ」
「てめえのくだらねえ理屈を聞きに来たわけじゃねえ
鏡を出せ!
ニール!」
真弘が叫び、その距離を縮める
その手がニールに届くかという時
一瞬早く、ニールの拳が真弘を捕らえる
「う……ぐ……」
真弘がその場に倒れた
「真弘!」
「真弘っ!!」
「真弘先輩!」
慌てて真弘の傍まで駆け寄る
祐一が私たちを守るように立ちはだかった
「真弘、真弘!」
「真弘先輩!
大丈夫ですか!?」
「ち……すまねえ」
「ニール……鏡を返せ
今ならまだ、お互いに引き返せるはずだ」
私たちを背にしたまま問い掛ける祐一の隣に立って、私もニールを見上げる
「お願い、ニール
鏡を返して──」
「一つ、いいことを教えよう」
私の言葉を遮り、ニールは言った
「私の名はマルクト
ニールではない」
「え……」
「私はニールの使い魔
従者でしかない」
「どういうことだ……」
「五瀬の情報を手に入れるため、私が我が主の名を騙ったまでのこと
我が主はすでに、人の到達できる高みを遥かに凌駕した存在
虚無の名を持つ、人に作られし魂
それがニール」
「あなたがニールではないとしたら……
まさか……」
考えられるのは、ひとつだけ
──靴音がする
その人物は、ゆっくりと部屋の中央に向かって歩いてくる
内在するその力は、私たちとは格が違い過ぎた
まさに、神域へと踏み込んでいる力
その目が、その雰囲気が
脳内の警鐘を鳴らす
普通じゃない
敵にしてはいけない
戦ってはいけない
一目見て分かる
それは特別な存在
冷たい蝋人形のような瞳が、私たちに向けられた
それだけで、魂まで凍ってしまいそうになる
「ケテル……さん?」
「我が名はニール
この世界に虚無をもたらす存在」
ケテルが、ニール……
驚愕の中にも、どこかで合点がいく自分がいた
そうでなければ、薬師衆によって閉じ込められた時も、神社の境内で見せた力も、説明がつかないから
「……お前がニールか
なるほど、むしろ納得したぜ」
「……ああ」
「そうね」
三人で、その絶大な力を見つめる
笑えるくらい、私たちは彼の足元にすら及んでいない
「忠告する
滅ぼすべきは、お前たちではなく人間
我が言葉に耳を傾け、我が言葉に従え
それもできぬと言うなら、黙ってここを去るがいい
それもできぬと言うなら──
お前たちに待つのは、破滅と死だ」
ケテルが強いことも、私たちじゃ戦いにすらならないことも十分わかっている
けれど、ここで退いてしまえば……
きっと人間は滅びる
「答えは、もう決まってる……」
私たちに選択なんてする余地はない
最初から答えはひとつだけ
「……あなたを、倒します」
「絶対に諦めない……
もう何ひとつ諦めないって、決めたもの
この戦いに勝って、全てに終止符を打つわ」
「不可能だ」
「やってみなきゃわからないわよ!」
「そうだ、優佳
この鴉取真弘様が一緒に戦ってやるんだ」
「貴様では勝てぬ」
「ざけんな……
この俺が負けるわけねえだろう!!」
「では、終わりにしよう」
「よい……
……私がやる」
マルクトを下がらせ、ケテルが前に出る
「絶望を見せてやろう」
ケテルの右手がゆっくりと持ち上がる
私たちのいた場所に爆発が起きた
「真弘先輩!
祐一先輩、優佳先輩!!」
けれど──
すでにその場に私たちはいない
ケテルの両脇から二人が走る
「……避けられる速度ではなかったはずだが」
「攻撃される前から動けば別だ
戦いの経験から磨かれた勘だ」
「勘だと?」
「甘く見るなってことだよ!」
両側から蹴りと拳が嵐のように繰り出される
しかし、それらのすべてがケテルに届かない
まるで透明な壁に守られたかのように、ケテルは動かなかった
我が主の宿願は、これによって達成される
しかしそれが正しいことなのだろうか
人の醜さをより集めて作られた我が主の苦しみが、人を滅ぼすことで救われるのであろうか
醜いものを全て滅ぼした先に、我が主が手に入れるもの
……見届けよう
私にはその義務がある
主が欲するものを手に入れ、主が望む道へ導こう
それが私の贖罪
何が起きても
最後まで我が主の傍に──
* * *
聖堂とも呼べる空間
そこに続く扉は開かれていた
高い天井だ
ステンドグラスから漏れる不思議な光が、床に向かって伸びている
ここは地下なのに、どこから光が入っているのだろう
そして、部屋の中央にいるのは……
「ニール……」
「……来るだろうと思っていた
ロゴスがアーティファクト獲得のために、この洋館を手に入れた際、地下聖堂は作られた
この場所には、ロゴスの理想が刻まれている
真実を知り、神に近づき、人々の楽園を築き上げる
それがロゴスという組織の元々の理想」
「それがどうした……?」
真弘がニールを見据えたままそう言う
「しかしそれはいつしか、自らが神となり、真理の頂を上り詰めるという欲望にすり替わってしまった
理想は捨てられ、ただ神の禁断の実をもぎ取ることにのみ夢中になった
どんなに崇高な理想と高度な精神を持とうと、力を手にすることで堕落する
根源的なところで、人はみな愚者だ」
「てめえのくだらねえ理屈を聞きに来たわけじゃねえ
鏡を出せ!
ニール!」
真弘が叫び、その距離を縮める
その手がニールに届くかという時
一瞬早く、ニールの拳が真弘を捕らえる
「う……ぐ……」
真弘がその場に倒れた
「真弘!」
「真弘っ!!」
「真弘先輩!」
慌てて真弘の傍まで駆け寄る
祐一が私たちを守るように立ちはだかった
「真弘、真弘!」
「真弘先輩!
大丈夫ですか!?」
「ち……すまねえ」
「ニール……鏡を返せ
今ならまだ、お互いに引き返せるはずだ」
私たちを背にしたまま問い掛ける祐一の隣に立って、私もニールを見上げる
「お願い、ニール
鏡を返して──」
「一つ、いいことを教えよう」
私の言葉を遮り、ニールは言った
「私の名はマルクト
ニールではない」
「え……」
「私はニールの使い魔
従者でしかない」
「どういうことだ……」
「五瀬の情報を手に入れるため、私が我が主の名を騙ったまでのこと
我が主はすでに、人の到達できる高みを遥かに凌駕した存在
虚無の名を持つ、人に作られし魂
それがニール」
「あなたがニールではないとしたら……
まさか……」
考えられるのは、ひとつだけ
──靴音がする
その人物は、ゆっくりと部屋の中央に向かって歩いてくる
内在するその力は、私たちとは格が違い過ぎた
まさに、神域へと踏み込んでいる力
その目が、その雰囲気が
脳内の警鐘を鳴らす
普通じゃない
敵にしてはいけない
戦ってはいけない
一目見て分かる
それは特別な存在
冷たい蝋人形のような瞳が、私たちに向けられた
それだけで、魂まで凍ってしまいそうになる
「ケテル……さん?」
「我が名はニール
この世界に虚無をもたらす存在」
ケテルが、ニール……
驚愕の中にも、どこかで合点がいく自分がいた
そうでなければ、薬師衆によって閉じ込められた時も、神社の境内で見せた力も、説明がつかないから
「……お前がニールか
なるほど、むしろ納得したぜ」
「……ああ」
「そうね」
三人で、その絶大な力を見つめる
笑えるくらい、私たちは彼の足元にすら及んでいない
「忠告する
滅ぼすべきは、お前たちではなく人間
我が言葉に耳を傾け、我が言葉に従え
それもできぬと言うなら、黙ってここを去るがいい
それもできぬと言うなら──
お前たちに待つのは、破滅と死だ」
ケテルが強いことも、私たちじゃ戦いにすらならないことも十分わかっている
けれど、ここで退いてしまえば……
きっと人間は滅びる
「答えは、もう決まってる……」
私たちに選択なんてする余地はない
最初から答えはひとつだけ
「……あなたを、倒します」
「絶対に諦めない……
もう何ひとつ諦めないって、決めたもの
この戦いに勝って、全てに終止符を打つわ」
「不可能だ」
「やってみなきゃわからないわよ!」
「そうだ、優佳
この鴉取真弘様が一緒に戦ってやるんだ」
「貴様では勝てぬ」
「ざけんな……
この俺が負けるわけねえだろう!!」
「では、終わりにしよう」
「よい……
……私がやる」
マルクトを下がらせ、ケテルが前に出る
「絶望を見せてやろう」
ケテルの右手がゆっくりと持ち上がる
私たちのいた場所に爆発が起きた
「真弘先輩!
祐一先輩、優佳先輩!!」
けれど──
すでにその場に私たちはいない
ケテルの両脇から二人が走る
「……避けられる速度ではなかったはずだが」
「攻撃される前から動けば別だ
戦いの経験から磨かれた勘だ」
「勘だと?」
「甘く見るなってことだよ!」
両側から蹴りと拳が嵐のように繰り出される
しかし、それらのすべてがケテルに届かない
まるで透明な壁に守られたかのように、ケテルは動かなかった
1/4ページ