十七章
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……微かに寝息が聞こえてくる
傷の手当てをして、食事をして横になって、いくらも経っていないのに
みんな、すごく疲れていたんだと思う
どうにもならないくらい疲れていて、戦う敵は強大すぎて……
それでもみんな、逃げずにここにいる
その事実に感謝して、私も眠りに就いた……
──夢を見た
昔の夢
人を殺していく夢
今でも鮮明に覚えている
忘れることなんかできない
だから、今でも血の臭いが嫌いなままだ
思い出してしまう
身を鋭く刺されるような苦しみが沸き上がる
あのまま、殺していたのが、自分だったらよかったのに
何度もそう思った
私が殺したのは、すでに役目を降りた守護者たち
先代の玉依姫を守った守護者たち
真弘と、祐一と、大蛇さんと、言蔵兄妹の祖父たちの代の──
みんな死んでいく
私が殺していく
殺して、殺して……
私一人になる
そんな夢だった……──
「……ん……」
誰かに抱き寄せられるのを感じて、私は薄く目を開けた
優しい瞳で、私を包むように抱きしめてくれている
──真弘……
頭が撫でられていくうちに、私はまた眠りの世界に誘われる
「真……弘……」
そっと真弘の胸に縋りつく
今度は、いい夢が見られそうだった……
……櫻葉の儀式のあと、私は村を離れた
表向きは病気の治療だったけど、その実それは心が壊れてしまった私を休ませるためだ
人里離れた場所に、五歳の子供を一人きりにして、ババ様はどこかへ去っていった
そうして途方に暮れた矢先──彼らは現れたのだ
平安の時代からその系譜を守り続けてきた、陰陽師一族
──安倍晴明の末裔たちが
彼らは私を優秀な陰陽師として育てるため、ババ様が許可を与えてわたしの傍につかせた者たちだった
それはもう色んな精神障害を併発していた私に、彼らは根気強く付き合ってくれた
いつかきっと私が必要とされる日が来る
大切な人を守りたいと思う日が来る
その時、守る力がないと嘆くことがないように──
彼らは安倍家が語り継いできた術の全てを私に教えた
戦う術も、家事の全ても、一人で生きていくために必要なことはすべて教えてくれた
元から素養はあったんだろう
陰陽術を会得するのに費やした時間は、わずか二年だった
そうして私は弱冠七歳で『安倍晴明』の肩書きを受け継ぎ──
それを待っていたかのように、ババ様が私を季封村へ連れ戻した
二年の間に、私の両親の供養は終わっていて、家の中には神徒壇が新しく備え付けられていた
(ああ、お父さんとお母さん、本当に死んじゃったんだ……)
ひょっとしたら生きているんじゃないか、なんて淡い期待は、見事に打ち砕かれた
私が殺したのだから、生きているはずもなかったのだけれど
……そう、みんな私が殺した
私の両親も、真弘や祐一たち守護者の祖父たちも
あの儀式に関わったババ様以外の人すべてを、私が殺した
(きっと私は死ぬべきだった
死にたくないなんて、生きていたいなんて、本当は過ぎた願いだったのかもしれない)
だから今、私たちはこんなに大変な目に遭っているのかもしれない
罪を犯した私が、罪を償おうともしなかったことを、原初の神や代々の櫻葉家の守護者たちが怒ったのかもしれない
それでも、今度こそ罪を償って死ねと言われても、きっと私はそれを選べない
それほどに、私の中で真弘との約束は重いものだ
真弘が生きたいと言った
私と一緒に生きていたいのだと
だったら私はその約束を守りたい
「眠れそうか?」
私を抱き締めたまま真弘が小さく尋ねてきた
うん、と頷いて、深く息を吐く
「真弘の腕の中なら、眠れそう」
きっと独りだったら眠れなかった
この腕の中だけは、安心していられる
真弘が嫌なことから守ってくれるから
何があっても、守ってくれるって信じられる
だから……だから真弘
私だけが生き残ったって駄目なのよ
真弘も一緒に生きてくれなきゃ、約束を守れない
私たち、一緒に生きていたいから、鬼斬丸を生きて封印したんだもの
真弘が生きてくれるだけでいいなら、私がとっくに犠牲になっていた
でもそうじゃない──私たちのどちらかではなくて、どちらともが生きている結末を掴みたかったから、あんなに抗ったんだ
それすらも罪だなんて言わせない
真弘が生きたいと願ったことは、罪じゃない
ここにある罪は一つだけ
私が贄にならなかった──それだけ
傷の手当てをして、食事をして横になって、いくらも経っていないのに
みんな、すごく疲れていたんだと思う
どうにもならないくらい疲れていて、戦う敵は強大すぎて……
それでもみんな、逃げずにここにいる
その事実に感謝して、私も眠りに就いた……
──夢を見た
昔の夢
人を殺していく夢
今でも鮮明に覚えている
忘れることなんかできない
だから、今でも血の臭いが嫌いなままだ
思い出してしまう
身を鋭く刺されるような苦しみが沸き上がる
あのまま、殺していたのが、自分だったらよかったのに
何度もそう思った
私が殺したのは、すでに役目を降りた守護者たち
先代の玉依姫を守った守護者たち
真弘と、祐一と、大蛇さんと、言蔵兄妹の祖父たちの代の──
みんな死んでいく
私が殺していく
殺して、殺して……
私一人になる
そんな夢だった……──
「……ん……」
誰かに抱き寄せられるのを感じて、私は薄く目を開けた
優しい瞳で、私を包むように抱きしめてくれている
──真弘……
頭が撫でられていくうちに、私はまた眠りの世界に誘われる
「真……弘……」
そっと真弘の胸に縋りつく
今度は、いい夢が見られそうだった……
……櫻葉の儀式のあと、私は村を離れた
表向きは病気の治療だったけど、その実それは心が壊れてしまった私を休ませるためだ
人里離れた場所に、五歳の子供を一人きりにして、ババ様はどこかへ去っていった
そうして途方に暮れた矢先──彼らは現れたのだ
平安の時代からその系譜を守り続けてきた、陰陽師一族
──安倍晴明の末裔たちが
彼らは私を優秀な陰陽師として育てるため、ババ様が許可を与えてわたしの傍につかせた者たちだった
それはもう色んな精神障害を併発していた私に、彼らは根気強く付き合ってくれた
いつかきっと私が必要とされる日が来る
大切な人を守りたいと思う日が来る
その時、守る力がないと嘆くことがないように──
彼らは安倍家が語り継いできた術の全てを私に教えた
戦う術も、家事の全ても、一人で生きていくために必要なことはすべて教えてくれた
元から素養はあったんだろう
陰陽術を会得するのに費やした時間は、わずか二年だった
そうして私は弱冠七歳で『安倍晴明』の肩書きを受け継ぎ──
それを待っていたかのように、ババ様が私を季封村へ連れ戻した
二年の間に、私の両親の供養は終わっていて、家の中には神徒壇が新しく備え付けられていた
(ああ、お父さんとお母さん、本当に死んじゃったんだ……)
ひょっとしたら生きているんじゃないか、なんて淡い期待は、見事に打ち砕かれた
私が殺したのだから、生きているはずもなかったのだけれど
……そう、みんな私が殺した
私の両親も、真弘や祐一たち守護者の祖父たちも
あの儀式に関わったババ様以外の人すべてを、私が殺した
(きっと私は死ぬべきだった
死にたくないなんて、生きていたいなんて、本当は過ぎた願いだったのかもしれない)
だから今、私たちはこんなに大変な目に遭っているのかもしれない
罪を犯した私が、罪を償おうともしなかったことを、原初の神や代々の櫻葉家の守護者たちが怒ったのかもしれない
それでも、今度こそ罪を償って死ねと言われても、きっと私はそれを選べない
それほどに、私の中で真弘との約束は重いものだ
真弘が生きたいと言った
私と一緒に生きていたいのだと
だったら私はその約束を守りたい
「眠れそうか?」
私を抱き締めたまま真弘が小さく尋ねてきた
うん、と頷いて、深く息を吐く
「真弘の腕の中なら、眠れそう」
きっと独りだったら眠れなかった
この腕の中だけは、安心していられる
真弘が嫌なことから守ってくれるから
何があっても、守ってくれるって信じられる
だから……だから真弘
私だけが生き残ったって駄目なのよ
真弘も一緒に生きてくれなきゃ、約束を守れない
私たち、一緒に生きていたいから、鬼斬丸を生きて封印したんだもの
真弘が生きてくれるだけでいいなら、私がとっくに犠牲になっていた
でもそうじゃない──私たちのどちらかではなくて、どちらともが生きている結末を掴みたかったから、あんなに抗ったんだ
それすらも罪だなんて言わせない
真弘が生きたいと願ったことは、罪じゃない
ここにある罪は一つだけ
私が贄にならなかった──それだけ
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