十五章
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手当てを終えた私は、痛む身体を気遣いながら、真弘とケテルさんを探すため、外に出た
そろそろ見回りから戻ってくる頃だと思うけど、どこにいるのだろう
神社の境内にも、人の気配はない
「そういえば、ここにも薬師衆が押し寄せたんだっけ……」
鳥居を起点として宇賀屋家を囲むように、感知系の結界を張っておくほうがいいかもしれない
呪符を作り出して唱えると、結界の呪符は四方へと飛び去っていく
キン──と鋭い感覚が拡がって、結界が無事に作動した
「……痛っ」
腹部をそっと押さえて、座るところを探そうと歩く
真弘とケテルさんは、まだ戻ってきていないのかな──
「おいおい、どこ行く気だよ?」
後ろからそう呆れるような、心配する声が聞こえた
振り返ると、そこには真弘が立っていて、見回りから戻ってきたのだと分かった
「あ、お帰りなさい……」
「一人で外に出んな
あぶねーだろ」
あんなことが起きたというのに、いつも通りの真弘がいて、少し安心した
それでもここだって安全なわけじゃないから、ひとりで出歩くのは良いことじゃなかったな
「ごめんなさい、次からは気を付けるわ
それより暑かったでしょ?
家の中に入ろう」
真弘は私を気遣うような目をして、それから怪我をしたところに視線を向けた
「……傷、平気か?」
「うん
そんなに酷い傷じゃなかったわ
もう平気よ」
真弘には心配をかけたくない
祐一までもが倒れたのだから、なおのこと
そう思いながら微笑んで見せると、真弘はじっと私を見て、それから大きなため息をついた
「お前なぁ、俺じゃなかったら騙されてたぞ、その嘘」
「え……なんで嘘だって分かったの?」
「どんだけ付き合いが長いと思ってるんだ
気を遣うなよ……頼むから……」
「……うん」
拝殿の前にある階段に座って、深く息を吐き出す
真弘も私の隣に座って、膝の上で肘をついた
「で、どうした?
なんか困ったことでもあったのか?」
「ううん、そういうわけじゃないの
ただ、真弘の顔が見たくて」
「そうか」
真弘はそう言って、遠くを見つめるように前を向いた
私もぼんやりと鳥居のある辺りを見つめる
「……大事になっちまったな」
「……そうね」
「安心しろ
あいつらが簡単にやられるわけねえよ」
「そうよね……私もそう思うわ」
拓磨と約束したもの
珠紀ちゃんは私達が守るから、絶対に死ぬな、と
だからきっと……みんな生きているって、私も信じている
「皆なら……絶対に大丈夫よ」
言い聞かせるように呟いて、それきり、少しだけ沈黙があった
沈まない太陽はずっと真上にあって、蝉たちの合唱も鳴り止まないまま
思わず俯いてしまうと、今までは気にも留めていなかった擦り傷も、綺麗に消毒されていることに気が付いた
「……傷、悪かった」
不意に真弘が呟いた
私はゆっくりと首を振る
「……真弘が謝っちゃ駄目よ」
「手も足も出なかった
仲間も守れなかった
何もできなかった
挙句の果てに、お前を傷つけるなんて……」
「そんな……」
「お前が傷つくところなんて、見たくなかったのに──」
「……真弘」
それ以上は後悔の言葉を言わせたくなくて、キスで真弘の口を塞いだ
戦いで切ってしまったのか、真弘の唇は鉄の味がする
「な!?
優佳──おい、なんだよ急に」
「真弘がわけの分からない事しか言わないからよ
私達は一緒に戦ってるの
守るとか守られるとかは関係なくて……
誰かが危なくなったら、助けに行くのは当たり前でしょう?
一緒に戦ってる仲間なんだから
私の大切な、恋人だから……
私だって……真弘が傷つくところなんて、見たくないのよ」
そう囁いて、真弘の身体を抱き締める
私は絶対に離れたりしないと伝えたかっただけ
一人で全部背負いこむなと、そう言いたかっただけ
……なんて、私が言えたことではないのかもしれないけど
それでも私は真弘を守れて良かったと思う
……真弘が死んでしまったら、いよいよ私が生きている意味も無くなってしまうから
「お前……」
「真弘が何もできなかったなんて、それこそ嘘よ
今、真弘は私のそばにいてくれてる
そしてこれからも一緒に戦って、一緒に生きていくの
私の戦う理由なんて、それで十分よ」
真弘は、ゆっくりと身体を離した
揺らいでいた翡翠の瞳は、確かな力強さを取り戻している
「……分かった、分かったよ
お前の言うとおりだ、悪かった
……でもな、こんなヘマは二度と踏まない
今度は俺がお前を守る
いいな」
「守るべきは珠紀ちゃんだと思うけど?」
「そりゃ大前提だろう
そうじゃなくて、俺はな──」
「必死にならなくても分かってるよ、ちょっと冗談を言ってみただけ
私が危なくなったら、その時はお願いね
でも……今回のことは、いい薬になったんじゃない?」
「な、なんでだよ」
「真弘の戦い方はいつだって、自分の命を犠牲にしてでもって、そういう感じなの
守られる人の気持ちが分かった?」
ぐっと言葉に詰まって、真弘がまたため息をつく
言い返せないということは、図星だったということだ
そんなところまで似なくてもいいのに、私達
「……分かったよ
お前だって人の事、言えねーくせに
珠紀は気付いてたぞ──お前がどっかで死のうとしてること」
「……少なくとも今は、死ぬつもりなんてないよ
殺されてやるつもりなんかない
五瀬にもニールにも、うつろにも……ね」
「今はって何だよ、今はって
俺達はこの先もずっと生きていくために、死ぬ思いして鬼斬丸を封じたんだぞ」
「……私も真弘と一緒よ
心のどこかで、命を捨てる場所を探してるの
……そんな必要はないのに」
それでも今、私は少しだけ後悔している
……私が贄になることを悩んでしまったから、こんなことになってしまったんじゃないかって
こんなことが起きるなら、さっさと贄になってしまえばよかったって
「珠紀ちゃんは真弘のことだって気付いてるよ
玉依姫に心配かけて、真弘だって私のこと言えないんだから」
「あーもう、分かったから、さっさと休め
傷、痛むんだろ?」
「……実は、結構痛いのよね」
「だったら寝てろ
寝るのも仕事だ!」
「わ……分かってるよ」
真弘の手を掴んで立ち上がる
それから背中を支えられながら、宇賀屋家の玄関へ向かった
「まったく、世話の焼ける恋人だ!」
「お互い様でしょ」
面倒そうな口ぶりながらも、私を支える手は優しい
真弘はどんな時だっていつもの真弘で
そのことが、私はとても嬉しかった
そろそろ見回りから戻ってくる頃だと思うけど、どこにいるのだろう
神社の境内にも、人の気配はない
「そういえば、ここにも薬師衆が押し寄せたんだっけ……」
鳥居を起点として宇賀屋家を囲むように、感知系の結界を張っておくほうがいいかもしれない
呪符を作り出して唱えると、結界の呪符は四方へと飛び去っていく
キン──と鋭い感覚が拡がって、結界が無事に作動した
「……痛っ」
腹部をそっと押さえて、座るところを探そうと歩く
真弘とケテルさんは、まだ戻ってきていないのかな──
「おいおい、どこ行く気だよ?」
後ろからそう呆れるような、心配する声が聞こえた
振り返ると、そこには真弘が立っていて、見回りから戻ってきたのだと分かった
「あ、お帰りなさい……」
「一人で外に出んな
あぶねーだろ」
あんなことが起きたというのに、いつも通りの真弘がいて、少し安心した
それでもここだって安全なわけじゃないから、ひとりで出歩くのは良いことじゃなかったな
「ごめんなさい、次からは気を付けるわ
それより暑かったでしょ?
家の中に入ろう」
真弘は私を気遣うような目をして、それから怪我をしたところに視線を向けた
「……傷、平気か?」
「うん
そんなに酷い傷じゃなかったわ
もう平気よ」
真弘には心配をかけたくない
祐一までもが倒れたのだから、なおのこと
そう思いながら微笑んで見せると、真弘はじっと私を見て、それから大きなため息をついた
「お前なぁ、俺じゃなかったら騙されてたぞ、その嘘」
「え……なんで嘘だって分かったの?」
「どんだけ付き合いが長いと思ってるんだ
気を遣うなよ……頼むから……」
「……うん」
拝殿の前にある階段に座って、深く息を吐き出す
真弘も私の隣に座って、膝の上で肘をついた
「で、どうした?
なんか困ったことでもあったのか?」
「ううん、そういうわけじゃないの
ただ、真弘の顔が見たくて」
「そうか」
真弘はそう言って、遠くを見つめるように前を向いた
私もぼんやりと鳥居のある辺りを見つめる
「……大事になっちまったな」
「……そうね」
「安心しろ
あいつらが簡単にやられるわけねえよ」
「そうよね……私もそう思うわ」
拓磨と約束したもの
珠紀ちゃんは私達が守るから、絶対に死ぬな、と
だからきっと……みんな生きているって、私も信じている
「皆なら……絶対に大丈夫よ」
言い聞かせるように呟いて、それきり、少しだけ沈黙があった
沈まない太陽はずっと真上にあって、蝉たちの合唱も鳴り止まないまま
思わず俯いてしまうと、今までは気にも留めていなかった擦り傷も、綺麗に消毒されていることに気が付いた
「……傷、悪かった」
不意に真弘が呟いた
私はゆっくりと首を振る
「……真弘が謝っちゃ駄目よ」
「手も足も出なかった
仲間も守れなかった
何もできなかった
挙句の果てに、お前を傷つけるなんて……」
「そんな……」
「お前が傷つくところなんて、見たくなかったのに──」
「……真弘」
それ以上は後悔の言葉を言わせたくなくて、キスで真弘の口を塞いだ
戦いで切ってしまったのか、真弘の唇は鉄の味がする
「な!?
優佳──おい、なんだよ急に」
「真弘がわけの分からない事しか言わないからよ
私達は一緒に戦ってるの
守るとか守られるとかは関係なくて……
誰かが危なくなったら、助けに行くのは当たり前でしょう?
一緒に戦ってる仲間なんだから
私の大切な、恋人だから……
私だって……真弘が傷つくところなんて、見たくないのよ」
そう囁いて、真弘の身体を抱き締める
私は絶対に離れたりしないと伝えたかっただけ
一人で全部背負いこむなと、そう言いたかっただけ
……なんて、私が言えたことではないのかもしれないけど
それでも私は真弘を守れて良かったと思う
……真弘が死んでしまったら、いよいよ私が生きている意味も無くなってしまうから
「お前……」
「真弘が何もできなかったなんて、それこそ嘘よ
今、真弘は私のそばにいてくれてる
そしてこれからも一緒に戦って、一緒に生きていくの
私の戦う理由なんて、それで十分よ」
真弘は、ゆっくりと身体を離した
揺らいでいた翡翠の瞳は、確かな力強さを取り戻している
「……分かった、分かったよ
お前の言うとおりだ、悪かった
……でもな、こんなヘマは二度と踏まない
今度は俺がお前を守る
いいな」
「守るべきは珠紀ちゃんだと思うけど?」
「そりゃ大前提だろう
そうじゃなくて、俺はな──」
「必死にならなくても分かってるよ、ちょっと冗談を言ってみただけ
私が危なくなったら、その時はお願いね
でも……今回のことは、いい薬になったんじゃない?」
「な、なんでだよ」
「真弘の戦い方はいつだって、自分の命を犠牲にしてでもって、そういう感じなの
守られる人の気持ちが分かった?」
ぐっと言葉に詰まって、真弘がまたため息をつく
言い返せないということは、図星だったということだ
そんなところまで似なくてもいいのに、私達
「……分かったよ
お前だって人の事、言えねーくせに
珠紀は気付いてたぞ──お前がどっかで死のうとしてること」
「……少なくとも今は、死ぬつもりなんてないよ
殺されてやるつもりなんかない
五瀬にもニールにも、うつろにも……ね」
「今はって何だよ、今はって
俺達はこの先もずっと生きていくために、死ぬ思いして鬼斬丸を封じたんだぞ」
「……私も真弘と一緒よ
心のどこかで、命を捨てる場所を探してるの
……そんな必要はないのに」
それでも今、私は少しだけ後悔している
……私が贄になることを悩んでしまったから、こんなことになってしまったんじゃないかって
こんなことが起きるなら、さっさと贄になってしまえばよかったって
「珠紀ちゃんは真弘のことだって気付いてるよ
玉依姫に心配かけて、真弘だって私のこと言えないんだから」
「あーもう、分かったから、さっさと休め
傷、痛むんだろ?」
「……実は、結構痛いのよね」
「だったら寝てろ
寝るのも仕事だ!」
「わ……分かってるよ」
真弘の手を掴んで立ち上がる
それから背中を支えられながら、宇賀屋家の玄関へ向かった
「まったく、世話の焼ける恋人だ!」
「お互い様でしょ」
面倒そうな口ぶりながらも、私を支える手は優しい
真弘はどんな時だっていつもの真弘で
そのことが、私はとても嬉しかった
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