十三章
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周囲の森の中を、私たち守護者七人は無言で歩いた
五瀬が裏切ったこと、私達に生存の権利がないこと、私達以外の全てが敵になったこと……
きっとみんな、心の中ではそれを受け入れられないんだ
「……なんだか、大変なことになっちゃったね」
守護者の皆と歩きながら、私はそう呟いた
数人の視線が私へと向けられる
……こうして見ると、みんな傷が多い
治してあげたいと思っても、今の私では治癒の力も使えない
「俺達は敵だと、初めて言われたな」
「今までの俺たちは、むしろ生きなきゃいけなかったっすからね」
祐一の静かな一言に、拓磨も疲れたような口ぶりで合わせる
「鬼斬丸が封印されりゃ、手のひらを返して俺たちを殺す、か?
ふざけんじゃねえよ」
私の隣を歩く真弘は、吐き捨てるようにそう言って、苛立たしげにため息をついた
「でも……
確かに、僕たちは普通の人から見れば、異形の存在なのかもしれません」
「……そうですね」
慎司の暗い声音に大蛇さんが賛同して、会話は途切れ、また沈黙が残る
私達は人の敵、私の存在は罪、国は私達を排除しようとしている
……こんなことになるなんて思いもしなかった
「櫻葉さん、平気ですか?」
「え……」
「あんときの五瀬の言葉、一番堪えたの、お前じゃねえかと思ってよ」
大蛇さんと真弘が、小声でそう声をかけてくれた、
この二人は、十数年前、私が起こしたあの悲劇を知っている
私がその事と向き合い続けていることも
「……つらいのは、珠紀ちゃんのほうだから
一年前、何も知らないまま戦うことになって、それでもずっと私たちを支えてくれたのに
五瀬からあんなふうに言われて、一番つらかったのは、きっと珠紀ちゃんだから」
五瀬が私の名前を挙げたのには、理由があるはず
五瀬本人との関係までは分からなくても、私の存在が罪だというそれを、すべて否定することはできない
「私の存在が罪だって言われても仕方ないよ
……でも、珠紀ちゃんは何も悪くないでしょう」
「ああ
あいつは何も悪くねえ」
遼がそう言ってくれる
珠紀ちゃんはむしろ、感謝されるべきだ
あんなに苦しい日々を生き抜いて、私達の玉依姫でいてくれるんだから
「さて、ではそろそろ戻りましょうか
異常も見当たらないようですし、下手に動いて薬師衆に見つかるわけにはいきませんから」
大蛇さんがそう言って、私たちは来た道を戻った
……これからどうすればいいんだろう
この事件が終わる頃、私はどうなっているんだろう
みんなで水車小屋まで戻ると、外には珠紀ちゃんがいた
「おう、お前か……
見て回ってきたぜ
とりあえず異常なしだ」
「そうですか、よかった」
珠紀ちゃんがそう言って力なく微笑む
きっと疲れているんだろう
「よくはねえよ」
「確かに……よくはない」
「……そうですね……」
珠紀ちゃんはまたしゅんと俯いてしまって、その場には重苦しい沈黙が下りた
「あの……
私たちって……人にとっては敵なんですかね」
「……まあ、鬼斬丸の事件を知っていれば、危険視する者もいるだろうな
人にとって、俺たちは化け物でしかないのかもしれない」
祐一のそれは、ある意味では的を得ているだろう
人ならざる力を持った異質な存在を、恐ろしいと思うのは当然のこと
「でも、だからって……
カミの滅亡なんて、極端すぎるよ……
玉依姫はカミと人を繋ぐ存在じゃないの?」
そう呟く珠紀ちゃんの肩を、大蛇さんが叩いた
「そうですね
そして我々守護者は、その玉依姫を守るために存在している」
「つまり、それは人のためでもある
……そうですよね?」
慎司の言葉に私達はしっかりと頷く
人とカミを繋ぐ新たな玉依姫、それが珠紀ちゃんだ
双方がこれから先も共存していくために、珠紀ちゃんは頑張ってきたんだから
「……そうだよね
……私たちは……害悪なんかじゃないよね」
珠紀ちゃんが安堵の息を漏らす
同時に、珠紀ちゃんの身体がふらついた
「あ、おい!
平気か?」
「……何とか……
なんか疲れてるみたい……」
「そう言えば今って、何時くらいなんでしょうか」
「世界が明るいままだから、時間が分からなくなるのよね
って言っても、私も腕時計は持ってないし……
誰か、時間が分かる人いる?」
「午前一時」
私の呼び掛けに応じるかのように、ケテルさんがそう教えてくれた
そりゃあ、ふらふらになるはずだ……
「そんな時間なんだ……」と呟いて、珠紀ちゃんが私達を見渡す
「ねえみんな
少し休もう
次の戦いに備えないと……」
「……そうですね
今日はたくさんのことが起こりすぎました」
「よし、寝るぞ寝るぞ!」
威勢のいい真弘の声で、みんなが小屋に入っていく
珠紀ちゃんはなんだかフラフラで、ゆっくりとみんなの後を追っていた
不意に、珠紀ちゃんの身体が地面へと倒れていく
それを支えたのは、珠紀ちゃんの恋人の拓磨で
「……ありがとう」
珠紀ちゃんは、もう聞いていないみたいだった
お疲れ様と声を掛けて、珠紀ちゃんを労う
「……優佳先輩
あとでちょっと……話したいことがあるんすけど」
「……?」
拓磨が足早に小屋へと入って、珠紀ちゃんを寝かせた
私は水車小屋の入口で拓磨を待っていて、拓磨はすぐに戻ってくると、水車小屋のドアを閉めて私に向き直った
「頼みがあるんです」
「どうしたの、そんなに改まって……」
「もし、俺達が離れ離れにならなきゃいけなくなったときは……珠紀を頼みます」
「……え」
思わず聞き返してしまった
拓磨の言った意味が分からないんじゃない
珠紀ちゃんは拓磨の恋人だ
恋人なら──拓磨なら、珠紀ちゃんのことは自分が守るって思っていそうなのに
「そりゃ、俺だって珠紀のことは守りたいっすよ
けど先輩も分かってる通り、今の俺は力が使えない
その点、優佳先輩は呪符の力が残ってるんすよね」
「子供だまし程度よ
実戦レベルじゃないわ」
「それでも、無いよりマシっすよ
今はあいつが生き残る確率が高いほうに賭けたい
俺はどうしたって、難しいこと考えるのは苦手だし、そもそも分断されてるってことは、相当やばい事態になってるってことだ
頼まれてくれないっすか」
……正直、今の私の力で、どこまで珠紀ちゃんを守れるか分からない
それでも私だって守護者の一人だ
「……拓磨の恋人なら、拓磨がしっかり守りなさい──って言いたいけど、そんなことは拓磨だって思ってるわよね
分かった、もしその時がきたら、私が珠紀ちゃんを絶対に守ってみせる
ただし一つ約束して
……絶対に死んじゃ駄目だからね」
拓磨が無言で頷く
その表情はいつにも増して真剣で
いつになく、切羽詰まっているように見えた
五瀬が裏切ったこと、私達に生存の権利がないこと、私達以外の全てが敵になったこと……
きっとみんな、心の中ではそれを受け入れられないんだ
「……なんだか、大変なことになっちゃったね」
守護者の皆と歩きながら、私はそう呟いた
数人の視線が私へと向けられる
……こうして見ると、みんな傷が多い
治してあげたいと思っても、今の私では治癒の力も使えない
「俺達は敵だと、初めて言われたな」
「今までの俺たちは、むしろ生きなきゃいけなかったっすからね」
祐一の静かな一言に、拓磨も疲れたような口ぶりで合わせる
「鬼斬丸が封印されりゃ、手のひらを返して俺たちを殺す、か?
ふざけんじゃねえよ」
私の隣を歩く真弘は、吐き捨てるようにそう言って、苛立たしげにため息をついた
「でも……
確かに、僕たちは普通の人から見れば、異形の存在なのかもしれません」
「……そうですね」
慎司の暗い声音に大蛇さんが賛同して、会話は途切れ、また沈黙が残る
私達は人の敵、私の存在は罪、国は私達を排除しようとしている
……こんなことになるなんて思いもしなかった
「櫻葉さん、平気ですか?」
「え……」
「あんときの五瀬の言葉、一番堪えたの、お前じゃねえかと思ってよ」
大蛇さんと真弘が、小声でそう声をかけてくれた、
この二人は、十数年前、私が起こしたあの悲劇を知っている
私がその事と向き合い続けていることも
「……つらいのは、珠紀ちゃんのほうだから
一年前、何も知らないまま戦うことになって、それでもずっと私たちを支えてくれたのに
五瀬からあんなふうに言われて、一番つらかったのは、きっと珠紀ちゃんだから」
五瀬が私の名前を挙げたのには、理由があるはず
五瀬本人との関係までは分からなくても、私の存在が罪だというそれを、すべて否定することはできない
「私の存在が罪だって言われても仕方ないよ
……でも、珠紀ちゃんは何も悪くないでしょう」
「ああ
あいつは何も悪くねえ」
遼がそう言ってくれる
珠紀ちゃんはむしろ、感謝されるべきだ
あんなに苦しい日々を生き抜いて、私達の玉依姫でいてくれるんだから
「さて、ではそろそろ戻りましょうか
異常も見当たらないようですし、下手に動いて薬師衆に見つかるわけにはいきませんから」
大蛇さんがそう言って、私たちは来た道を戻った
……これからどうすればいいんだろう
この事件が終わる頃、私はどうなっているんだろう
みんなで水車小屋まで戻ると、外には珠紀ちゃんがいた
「おう、お前か……
見て回ってきたぜ
とりあえず異常なしだ」
「そうですか、よかった」
珠紀ちゃんがそう言って力なく微笑む
きっと疲れているんだろう
「よくはねえよ」
「確かに……よくはない」
「……そうですね……」
珠紀ちゃんはまたしゅんと俯いてしまって、その場には重苦しい沈黙が下りた
「あの……
私たちって……人にとっては敵なんですかね」
「……まあ、鬼斬丸の事件を知っていれば、危険視する者もいるだろうな
人にとって、俺たちは化け物でしかないのかもしれない」
祐一のそれは、ある意味では的を得ているだろう
人ならざる力を持った異質な存在を、恐ろしいと思うのは当然のこと
「でも、だからって……
カミの滅亡なんて、極端すぎるよ……
玉依姫はカミと人を繋ぐ存在じゃないの?」
そう呟く珠紀ちゃんの肩を、大蛇さんが叩いた
「そうですね
そして我々守護者は、その玉依姫を守るために存在している」
「つまり、それは人のためでもある
……そうですよね?」
慎司の言葉に私達はしっかりと頷く
人とカミを繋ぐ新たな玉依姫、それが珠紀ちゃんだ
双方がこれから先も共存していくために、珠紀ちゃんは頑張ってきたんだから
「……そうだよね
……私たちは……害悪なんかじゃないよね」
珠紀ちゃんが安堵の息を漏らす
同時に、珠紀ちゃんの身体がふらついた
「あ、おい!
平気か?」
「……何とか……
なんか疲れてるみたい……」
「そう言えば今って、何時くらいなんでしょうか」
「世界が明るいままだから、時間が分からなくなるのよね
って言っても、私も腕時計は持ってないし……
誰か、時間が分かる人いる?」
「午前一時」
私の呼び掛けに応じるかのように、ケテルさんがそう教えてくれた
そりゃあ、ふらふらになるはずだ……
「そんな時間なんだ……」と呟いて、珠紀ちゃんが私達を見渡す
「ねえみんな
少し休もう
次の戦いに備えないと……」
「……そうですね
今日はたくさんのことが起こりすぎました」
「よし、寝るぞ寝るぞ!」
威勢のいい真弘の声で、みんなが小屋に入っていく
珠紀ちゃんはなんだかフラフラで、ゆっくりとみんなの後を追っていた
不意に、珠紀ちゃんの身体が地面へと倒れていく
それを支えたのは、珠紀ちゃんの恋人の拓磨で
「……ありがとう」
珠紀ちゃんは、もう聞いていないみたいだった
お疲れ様と声を掛けて、珠紀ちゃんを労う
「……優佳先輩
あとでちょっと……話したいことがあるんすけど」
「……?」
拓磨が足早に小屋へと入って、珠紀ちゃんを寝かせた
私は水車小屋の入口で拓磨を待っていて、拓磨はすぐに戻ってくると、水車小屋のドアを閉めて私に向き直った
「頼みがあるんです」
「どうしたの、そんなに改まって……」
「もし、俺達が離れ離れにならなきゃいけなくなったときは……珠紀を頼みます」
「……え」
思わず聞き返してしまった
拓磨の言った意味が分からないんじゃない
珠紀ちゃんは拓磨の恋人だ
恋人なら──拓磨なら、珠紀ちゃんのことは自分が守るって思っていそうなのに
「そりゃ、俺だって珠紀のことは守りたいっすよ
けど先輩も分かってる通り、今の俺は力が使えない
その点、優佳先輩は呪符の力が残ってるんすよね」
「子供だまし程度よ
実戦レベルじゃないわ」
「それでも、無いよりマシっすよ
今はあいつが生き残る確率が高いほうに賭けたい
俺はどうしたって、難しいこと考えるのは苦手だし、そもそも分断されてるってことは、相当やばい事態になってるってことだ
頼まれてくれないっすか」
……正直、今の私の力で、どこまで珠紀ちゃんを守れるか分からない
それでも私だって守護者の一人だ
「……拓磨の恋人なら、拓磨がしっかり守りなさい──って言いたいけど、そんなことは拓磨だって思ってるわよね
分かった、もしその時がきたら、私が珠紀ちゃんを絶対に守ってみせる
ただし一つ約束して
……絶対に死んじゃ駄目だからね」
拓磨が無言で頷く
その表情はいつにも増して真剣で
いつになく、切羽詰まっているように見えた
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