五章
夢小説設定
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お昼休みとなれば、私達は各々お弁当を抱えて集まる習性がある
クラスにいても居心地悪いとか、むしろクラスのみんなに居心地の悪さを与えてしまうとか、とにかくそんな理由だ
そんなわけで、今日も今日とて、私たちはいつものように屋上にいた
「いっただきまーす」
お手製のお弁当を広げ、入れていたおにぎりをひとつ手に取ってかじりつく
「うん、塩加減ばっちり!」
さすが私だ、やっぱりおにぎりは自分で作るに限る
おにぎりは塩にぎりだけじゃなくて、焼き鮭、おかかとバラエティに富んでいる
もちろんおかずも忘れてはいない
今日は卵焼きが失敗しちゃったから、明日はリベンジだ
「ねえ、ところで、拓磨
珠紀ちゃんはどうしたの?」
「あいつなら、用事があるとか言ってましたよ
先に行くぞって声はかけたんすけどね」
「ちょっと遅いね
私、これ食べ終わったらちょっと探してくる」
「律儀だな、お前はよ」
「三人が珠紀ちゃんに対して不誠実な態度を取るからでしょうが
玉依姫に信頼してもらおうって気はないの?」
「むしろお前はなぜそこまでして珠紀の信頼を得ようとするんだ?」
祐一の逆質問に首を傾げる
そんな事を聞かれるとは思わなかった
「え……普通、これから長い付き合いになる人とは、信頼関係を構築しようって思うものじゃない?」
「なるんすかね、長い付き合いってやつに」
「どうだろうなー
そもそもがここに来たのも、親が海外転勤になったからだろ?
親が日本に帰ってきたら、あいつも村を出ていくに決まってる」
「……それは、そうかもしれないけど」
だからってこんな風に距離を置くのは、何かが違う気がする
せっかくこんな、何も無い田舎に来てくれたのに、ここでの思い出が嫌なことばっかりなのは、季封村の住人として悲しくなる
モヤモヤとしながらもお弁当をあらかた食べ終えたとき、ガチャリと屋上のドアが開いた
「うーん、今日もいい天気ー」
声に気付いた真弘が、つまらなさそうに珠紀ちゃんを見やる
けれど珠紀ちゃんはそんな真弘に突っかかるわけでもなく、後ろを振り返った
「ほら、慎司君!」
飛び出した人の名前に、私の手が止まる
……え、シンジクン?
「でも、あの……」
珠紀ちゃんの後ろから、小柄な男子生徒が顔を出す
トン、と珠紀ちゃんがその人物の背中を押すと、その人は周りを見渡して、小さく頷いた
「あの、お久しぶりです
覚えてないかもしれないけど……」
「……お、お前、まさか慎司か?」
真弘が目を丸くしてそう尋ねた
私も信じられない思いだ
「はい、帰ってきました」
「え……し、慎司なの!?」
クロスワードと格闘していた拓磨と、ぼんやりと景色を眺めていた祐一も顔を上げる
そうして私と真弘よろしく、目を丸くした
「お前、いつ!」
「……久しぶりだ」
「お、おおおおおおお!!
え!
何だよいつだよ!!」
「帰ってきたなら、教えてくれても良かっただろ!」
「そうだよ!
この薄情者ー!」
拓磨が慎司に駆け寄ってヘッドロックをかける
真弘も背中をバシバシ叩いて喜んでいて
私も慎司の肩を肘でつついた
「ちょっ、や、やめてくださいよ!」
そう言う慎司も笑っている
いつの間にか大きくなって、身長も私より高くなってる
「元気そうだな」
祐一も、微笑んで慎司を見ていた
慎司は微笑んだまま、もう一度、同じ言葉を繰り返した
「……はい
帰ってきました、僕は」
その言葉がどんな意味を持っているのか、きっと私達しか理解してやれなかったけど
犬戒慎司は、守護六家の一つである犬戒家の出で、玉依姫の守護者の一人だ
つまり早い話が私達の仲間
能力を開花させるために、長いこと犬戒家で修行に励んでいたけれど、ようやくその修行を終えたということなのだろう
「……それで、そこでボーっとしてるやつが、玉依姫になるらしい」
水を向けられて、珠紀ちゃんは慌てて姿勢を正した
「んん!
改めて自己紹介します
初めまして、私、春日珠紀って言います
不束者ですが、どうぞよろしく」
「これからは僕も、及ばずながら力になりたいと思います」
珠紀ちゃんの目がうるっとした
周りがデリカシーなんて言葉を知らないような奴らしかいないからね……
「こいつは放っとくと勝手に危険なとこに飛び込んでいくから、気を付けたほうがいいぞ」
「基本的にバカだからな」
「確かに目を離すと、必ず事態を悪くしている」
「妙な印象を植え付けないでください!」
「そうよ!
しかもバカとか、真弘にだけは言われたくないんだけど」
「お前!
どーいう意味だコラ!」
「まあ、確かに真弘先輩にバカっては言われたくないっすよね」
「……同感」
「何だとぉぉ!?」
いつも通り手のひらを返されて、真弘が憤慨する
たしかに真弘は、基本的に単純だし、ガキ大将がそのまま高校生になったみたいな性格だ
……でも、このバカさ加減は、仮面なんだよね
どんな思いで真弘がそう振る舞っているかを考えると、胸が苦しくなる
本当の真弘は、もっと大人で……格好いいのに
クラスにいても居心地悪いとか、むしろクラスのみんなに居心地の悪さを与えてしまうとか、とにかくそんな理由だ
そんなわけで、今日も今日とて、私たちはいつものように屋上にいた
「いっただきまーす」
お手製のお弁当を広げ、入れていたおにぎりをひとつ手に取ってかじりつく
「うん、塩加減ばっちり!」
さすが私だ、やっぱりおにぎりは自分で作るに限る
おにぎりは塩にぎりだけじゃなくて、焼き鮭、おかかとバラエティに富んでいる
もちろんおかずも忘れてはいない
今日は卵焼きが失敗しちゃったから、明日はリベンジだ
「ねえ、ところで、拓磨
珠紀ちゃんはどうしたの?」
「あいつなら、用事があるとか言ってましたよ
先に行くぞって声はかけたんすけどね」
「ちょっと遅いね
私、これ食べ終わったらちょっと探してくる」
「律儀だな、お前はよ」
「三人が珠紀ちゃんに対して不誠実な態度を取るからでしょうが
玉依姫に信頼してもらおうって気はないの?」
「むしろお前はなぜそこまでして珠紀の信頼を得ようとするんだ?」
祐一の逆質問に首を傾げる
そんな事を聞かれるとは思わなかった
「え……普通、これから長い付き合いになる人とは、信頼関係を構築しようって思うものじゃない?」
「なるんすかね、長い付き合いってやつに」
「どうだろうなー
そもそもがここに来たのも、親が海外転勤になったからだろ?
親が日本に帰ってきたら、あいつも村を出ていくに決まってる」
「……それは、そうかもしれないけど」
だからってこんな風に距離を置くのは、何かが違う気がする
せっかくこんな、何も無い田舎に来てくれたのに、ここでの思い出が嫌なことばっかりなのは、季封村の住人として悲しくなる
モヤモヤとしながらもお弁当をあらかた食べ終えたとき、ガチャリと屋上のドアが開いた
「うーん、今日もいい天気ー」
声に気付いた真弘が、つまらなさそうに珠紀ちゃんを見やる
けれど珠紀ちゃんはそんな真弘に突っかかるわけでもなく、後ろを振り返った
「ほら、慎司君!」
飛び出した人の名前に、私の手が止まる
……え、シンジクン?
「でも、あの……」
珠紀ちゃんの後ろから、小柄な男子生徒が顔を出す
トン、と珠紀ちゃんがその人物の背中を押すと、その人は周りを見渡して、小さく頷いた
「あの、お久しぶりです
覚えてないかもしれないけど……」
「……お、お前、まさか慎司か?」
真弘が目を丸くしてそう尋ねた
私も信じられない思いだ
「はい、帰ってきました」
「え……し、慎司なの!?」
クロスワードと格闘していた拓磨と、ぼんやりと景色を眺めていた祐一も顔を上げる
そうして私と真弘よろしく、目を丸くした
「お前、いつ!」
「……久しぶりだ」
「お、おおおおおおお!!
え!
何だよいつだよ!!」
「帰ってきたなら、教えてくれても良かっただろ!」
「そうだよ!
この薄情者ー!」
拓磨が慎司に駆け寄ってヘッドロックをかける
真弘も背中をバシバシ叩いて喜んでいて
私も慎司の肩を肘でつついた
「ちょっ、や、やめてくださいよ!」
そう言う慎司も笑っている
いつの間にか大きくなって、身長も私より高くなってる
「元気そうだな」
祐一も、微笑んで慎司を見ていた
慎司は微笑んだまま、もう一度、同じ言葉を繰り返した
「……はい
帰ってきました、僕は」
その言葉がどんな意味を持っているのか、きっと私達しか理解してやれなかったけど
犬戒慎司は、守護六家の一つである犬戒家の出で、玉依姫の守護者の一人だ
つまり早い話が私達の仲間
能力を開花させるために、長いこと犬戒家で修行に励んでいたけれど、ようやくその修行を終えたということなのだろう
「……それで、そこでボーっとしてるやつが、玉依姫になるらしい」
水を向けられて、珠紀ちゃんは慌てて姿勢を正した
「んん!
改めて自己紹介します
初めまして、私、春日珠紀って言います
不束者ですが、どうぞよろしく」
「これからは僕も、及ばずながら力になりたいと思います」
珠紀ちゃんの目がうるっとした
周りがデリカシーなんて言葉を知らないような奴らしかいないからね……
「こいつは放っとくと勝手に危険なとこに飛び込んでいくから、気を付けたほうがいいぞ」
「基本的にバカだからな」
「確かに目を離すと、必ず事態を悪くしている」
「妙な印象を植え付けないでください!」
「そうよ!
しかもバカとか、真弘にだけは言われたくないんだけど」
「お前!
どーいう意味だコラ!」
「まあ、確かに真弘先輩にバカっては言われたくないっすよね」
「……同感」
「何だとぉぉ!?」
いつも通り手のひらを返されて、真弘が憤慨する
たしかに真弘は、基本的に単純だし、ガキ大将がそのまま高校生になったみたいな性格だ
……でも、このバカさ加減は、仮面なんだよね
どんな思いで真弘がそう振る舞っているかを考えると、胸が苦しくなる
本当の真弘は、もっと大人で……格好いいのに
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