四十章
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目覚ましの音が鳴って、目を覚ます
ぐっと背伸びをしてカーテンを開け、それから壁掛けのカレンダーを見た
去年のままになっていたそれを、新しいものに取り替える
そうして表紙を破って、一月のカレンダーを眺め
「……誕生日おめでとう、私」
ひとりで迎えた、十八度目の誕生日
今までは誕生日を迎えても、嬉しさなんてなかった
来年の誕生日を迎えられるかどうかも分からない生活を続けてきたから
……でも、今年からは違う
もう自分の人生の終わりに怯えなくていい
自分の誕生日が来るたびに、悲観的にならなくていい
「……さて、おせちを食べてから初詣に行こうかな」
玄関から外に出て、部屋の雨戸を開けていく
それから朝日を眩しく見上げたとき、垣根の向こうに人影が見えた
「優佳ー、起きてるかー」
聞こえてきた声は、真弘だ
……毎年しっかり寝正月を決め込んでいた真弘が、早起きしてる
「お、起きてるけど……
あけましておめでとう」
玄関へと回ると、真弘は私を見て微笑んだ
朝から心臓が元気に飛び跳ねるから、やめてほしい
「誕生日おめでとう」
「――」
真弘はいつもそう
私がほしい言葉を、ちゃんとくれる
「……どうした?」
「ううん、なんでもない
ありがとう」
ばかみたいに嬉しくなって、真弘に抱き着く
驚きつつも、真弘は私をちゃんと受け止めてくれた
「あけましておめでとう
新年早々、俺の顔が見られて嬉しいだろ?」
「自分で言うの?
嬉しいけど」
まあ、自分で言っちゃうところが真弘らしいわけだけど
……来る前に電話してって言ったのに、忘れていることには目をつぶってやろう
「まだ朝だけど、もう朝ごはん食べたの?」
「いや、何も」
「え!?
おばさん、おせち料理の準備してると思うけど……」
「うっせーな
一番最初にお前の誕生日を祝うのは俺だって決めてたんだよ」
真弘がそう言ってそっぽを向く
顔が赤いのを指摘したい気持ちを抑えて、ありがとうと呟いた
「あ、じゃあせっかくだし、一緒に食べようよ
おせち料理、私も作ったんだ」
「ほお、俺の分まで用意するとは、気が利くじゃねえか」
上機嫌な真弘が家の中へ入っていく
そんな真弘にやれやれと首を振って、私も家の中へと戻った
* * *
おせちを食べ終えて、私達は初詣のために玉依毘売神社へと向かっていた
なにせ村にある唯一の神社だから、早く行かないと長蛇の列に並ぶ羽目になる
今日ばかりは珠紀ちゃんも美鶴も大忙しだろうな
「あ、まだそんなに人は多くないみたい」
「まあ、まだ朝だもんな」
今の時間は八時半、初詣には早い時間だったみたいだ
でも参拝客がいないわけじゃなくて、社務所には美鶴がいるし、拝殿では慎司がお祓いをしている
代替わりしたばかりの玉依姫ということだけあって、珠紀ちゃんも村の人達からの挨拶が後を絶たないみたいだ
「うわぁ、毎年の事ながら大変そう……」
「どうせ呼ばれるぞ、お前」
「まあ、そうだろうね……」
もうこのまま神社の手伝いを申し出たほうが早い気がする
真弘と一緒に列に並んで、ようやく順番が回ってきた
お賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手
(今年も健康に過ごせますように)
最後に一礼して横に移動して、おみくじの筒を持った
「真弘もやる?」
「んー、まあ新年だしな」
ガシャガシャと筒を振って、おみくじの棒が出てくる
出てきたのは中吉だ
「ん、まずまずかな」
棒を戻して筒を真弘へと渡す
真弘も筒を振って、出てきたのは吉だった
「良くもなく悪くもなく、だな
まあこれくらいが丁度いいだろ」
「大吉じゃなかったって悔しがるかと思った」
「おみくじくらいでそこまでなるかよ」
筒を元の場所に戻して、社務所へと向かう
古い御札と大麻とお守りは、真弘がお焚き上げに放り込んでくれた
「美鶴、あけましておめでとう!」
「櫻葉さん!
あけましておめでとうございます
それと、お誕生日おめでとうございます!
美鶴がぱっと笑顔になって私を迎えてくれた
よう、なんて言って私の隣に真弘もやってくる
「櫻葉さんは健康のお守りと御札、ですよね
鴉取さんはどうされますか?」
「俺はそういうのに縋るタイプじゃねぇからな
遠慮しとくぜ」
そう言って真弘は甘酒を貰いに行ってしまった
なんて言うか、真弘らしいというか
「……あれ、優佳先輩?」
背後から聞こえてきたのは珠紀ちゃんの声だ
村の人達からようやく解放されたらしい
「あけましておめでとうございます!」
「あけましておめでとう、珠紀ちゃん
忙しそうだね、大丈夫?」
「あはは……
久しぶりの代替わりだから、村の人達が挨拶したいって言ってくれて……」
そう言いながら、珠紀ちゃんの目が誰かを探すように彷徨った
そうして、参拝客列に目を向け、「あっ」と声を上げた
お参りしているのは、大蛇さん
その後ろに祐一と拓磨もいる
「守護者のみんな、朝が早いなぁ」
「出遅れると、長蛇の列に並ばなきゃいけなくなるからね」
「……もしかして真弘先輩、寝てるんじゃ」
「真弘なら私と一緒だよ
今は甘酒をもらいに行ってるけど」
「そうなんですか!?
……真弘先輩、早起きできたんだ!?」
「おい珠紀?
そりゃどういう意味だ?」
珠紀ちゃんの後ろから、甘酒を片手に真弘がやってきた
どういう意味も何も、日頃の行いだと私は思う
「や、やだなあ、深い意味はありませんよ
あけましておめでとうございます、真弘先輩」
「おう、あけましておめでとう
……深い意味はねえってこたぁ、つまりお前は俺が早起きも出来ねえ奴だと思ってたってことだな?」
「こういう時だけ鋭いのは何なんですか……」
珠紀ちゃんが笑顔を引き攣らせる
やれやれと肩を竦めて、美鶴からお守りと御札を受け取った
初穂料を納めて振り向くと、ちょうど大蛇さんと、祐一と拓磨がこちらへとやってきていて
「おや皆さん、お揃いで」
「卓さん!
祐一先輩に拓磨も!
あけましておめでとうございます」
「ああ、あけましておめでとう
優佳、誕生日おめでとう」
「そういや今日、誕生日だったっすね
おめでとうございます」
「おめでとうございます、櫻葉さん」
三人からもお祝いされて、気恥ずかしくなりつつお礼を言う
その横で、なぜか珠紀ちゃんがショックを受けたような顔をしていた
ぐっと背伸びをしてカーテンを開け、それから壁掛けのカレンダーを見た
去年のままになっていたそれを、新しいものに取り替える
そうして表紙を破って、一月のカレンダーを眺め
「……誕生日おめでとう、私」
ひとりで迎えた、十八度目の誕生日
今までは誕生日を迎えても、嬉しさなんてなかった
来年の誕生日を迎えられるかどうかも分からない生活を続けてきたから
……でも、今年からは違う
もう自分の人生の終わりに怯えなくていい
自分の誕生日が来るたびに、悲観的にならなくていい
「……さて、おせちを食べてから初詣に行こうかな」
玄関から外に出て、部屋の雨戸を開けていく
それから朝日を眩しく見上げたとき、垣根の向こうに人影が見えた
「優佳ー、起きてるかー」
聞こえてきた声は、真弘だ
……毎年しっかり寝正月を決め込んでいた真弘が、早起きしてる
「お、起きてるけど……
あけましておめでとう」
玄関へと回ると、真弘は私を見て微笑んだ
朝から心臓が元気に飛び跳ねるから、やめてほしい
「誕生日おめでとう」
「――」
真弘はいつもそう
私がほしい言葉を、ちゃんとくれる
「……どうした?」
「ううん、なんでもない
ありがとう」
ばかみたいに嬉しくなって、真弘に抱き着く
驚きつつも、真弘は私をちゃんと受け止めてくれた
「あけましておめでとう
新年早々、俺の顔が見られて嬉しいだろ?」
「自分で言うの?
嬉しいけど」
まあ、自分で言っちゃうところが真弘らしいわけだけど
……来る前に電話してって言ったのに、忘れていることには目をつぶってやろう
「まだ朝だけど、もう朝ごはん食べたの?」
「いや、何も」
「え!?
おばさん、おせち料理の準備してると思うけど……」
「うっせーな
一番最初にお前の誕生日を祝うのは俺だって決めてたんだよ」
真弘がそう言ってそっぽを向く
顔が赤いのを指摘したい気持ちを抑えて、ありがとうと呟いた
「あ、じゃあせっかくだし、一緒に食べようよ
おせち料理、私も作ったんだ」
「ほお、俺の分まで用意するとは、気が利くじゃねえか」
上機嫌な真弘が家の中へ入っていく
そんな真弘にやれやれと首を振って、私も家の中へと戻った
* * *
おせちを食べ終えて、私達は初詣のために玉依毘売神社へと向かっていた
なにせ村にある唯一の神社だから、早く行かないと長蛇の列に並ぶ羽目になる
今日ばかりは珠紀ちゃんも美鶴も大忙しだろうな
「あ、まだそんなに人は多くないみたい」
「まあ、まだ朝だもんな」
今の時間は八時半、初詣には早い時間だったみたいだ
でも参拝客がいないわけじゃなくて、社務所には美鶴がいるし、拝殿では慎司がお祓いをしている
代替わりしたばかりの玉依姫ということだけあって、珠紀ちゃんも村の人達からの挨拶が後を絶たないみたいだ
「うわぁ、毎年の事ながら大変そう……」
「どうせ呼ばれるぞ、お前」
「まあ、そうだろうね……」
もうこのまま神社の手伝いを申し出たほうが早い気がする
真弘と一緒に列に並んで、ようやく順番が回ってきた
お賽銭を入れて鈴を鳴らし、二礼二拍手
(今年も健康に過ごせますように)
最後に一礼して横に移動して、おみくじの筒を持った
「真弘もやる?」
「んー、まあ新年だしな」
ガシャガシャと筒を振って、おみくじの棒が出てくる
出てきたのは中吉だ
「ん、まずまずかな」
棒を戻して筒を真弘へと渡す
真弘も筒を振って、出てきたのは吉だった
「良くもなく悪くもなく、だな
まあこれくらいが丁度いいだろ」
「大吉じゃなかったって悔しがるかと思った」
「おみくじくらいでそこまでなるかよ」
筒を元の場所に戻して、社務所へと向かう
古い御札と大麻とお守りは、真弘がお焚き上げに放り込んでくれた
「美鶴、あけましておめでとう!」
「櫻葉さん!
あけましておめでとうございます
それと、お誕生日おめでとうございます!
美鶴がぱっと笑顔になって私を迎えてくれた
よう、なんて言って私の隣に真弘もやってくる
「櫻葉さんは健康のお守りと御札、ですよね
鴉取さんはどうされますか?」
「俺はそういうのに縋るタイプじゃねぇからな
遠慮しとくぜ」
そう言って真弘は甘酒を貰いに行ってしまった
なんて言うか、真弘らしいというか
「……あれ、優佳先輩?」
背後から聞こえてきたのは珠紀ちゃんの声だ
村の人達からようやく解放されたらしい
「あけましておめでとうございます!」
「あけましておめでとう、珠紀ちゃん
忙しそうだね、大丈夫?」
「あはは……
久しぶりの代替わりだから、村の人達が挨拶したいって言ってくれて……」
そう言いながら、珠紀ちゃんの目が誰かを探すように彷徨った
そうして、参拝客列に目を向け、「あっ」と声を上げた
お参りしているのは、大蛇さん
その後ろに祐一と拓磨もいる
「守護者のみんな、朝が早いなぁ」
「出遅れると、長蛇の列に並ばなきゃいけなくなるからね」
「……もしかして真弘先輩、寝てるんじゃ」
「真弘なら私と一緒だよ
今は甘酒をもらいに行ってるけど」
「そうなんですか!?
……真弘先輩、早起きできたんだ!?」
「おい珠紀?
そりゃどういう意味だ?」
珠紀ちゃんの後ろから、甘酒を片手に真弘がやってきた
どういう意味も何も、日頃の行いだと私は思う
「や、やだなあ、深い意味はありませんよ
あけましておめでとうございます、真弘先輩」
「おう、あけましておめでとう
……深い意味はねえってこたぁ、つまりお前は俺が早起きも出来ねえ奴だと思ってたってことだな?」
「こういう時だけ鋭いのは何なんですか……」
珠紀ちゃんが笑顔を引き攣らせる
やれやれと肩を竦めて、美鶴からお守りと御札を受け取った
初穂料を納めて振り向くと、ちょうど大蛇さんと、祐一と拓磨がこちらへとやってきていて
「おや皆さん、お揃いで」
「卓さん!
祐一先輩に拓磨も!
あけましておめでとうございます」
「ああ、あけましておめでとう
優佳、誕生日おめでとう」
「そういや今日、誕生日だったっすね
おめでとうございます」
「おめでとうございます、櫻葉さん」
三人からもお祝いされて、気恥ずかしくなりつつお礼を言う
その横で、なぜか珠紀ちゃんがショックを受けたような顔をしていた
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