三十七章
夢小説設定
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それは、鬼斬丸にまつわる一連の出来事が落ち着きを取り戻した頃
珠紀ちゃんは正式に宇賀屋家で暮らすことになって、今日も元気に拓磨と仲良くやっている
さて、そんな中で降って湧いたのが——
「忘れてた……秋祭り……」
「なんだってお前が忘れるんだよ」
教室の一角で、肘をついて組んだ手に額を載せる
なんで忘れていたかと言われれば、受験生のお仕事に打ち込んでいたせいだ
「うー、さすがに受験生だからって、私達だけ免除にはならないよね……」
「大蛇さんから連絡来てたろ?
俺達は祭りの見回りだ
お前は……まあ、神社の手伝いの方に駆り出されるんだろ?」
「あーあ……せっかく参加するなら、真弘とお祭りを回りたかったなぁ」
残念、と独り言ちてため息を吐く
せっかくなら、いつもは仕舞いっぱなしの着物を着て、真弘と夜のお祭りを見て回りたかった
……まあそういうのは、玉依に名を連ねる者である限り、無理な話なんだろうけど
「あー、その——」
「いじけてても仕方ないよね!
真弘は誰と見回りするの?
やっぱり拓磨と一緒?
喧嘩しないようにしてね
珠紀ちゃんも当日は忙しくて、二人の喧嘩の仲裁まで手が回らないだろうし、それは私もなんだから」
「なんで拓磨と俺が喧嘩する前提なんだよ!?」
「普段の行いだ」
「起きてやがったのか、祐一!
つーか普段の行いってどういうことだよ!
俺は普段から後輩共の良き手本としてだな!」
どの口が?
私と祐一はそんなふうな目で真弘を見つめた
今のセリフ、珠紀ちゃんと拓磨と慎司の後輩組に聞かせたら、どんな反応が返ってくるんだろうなー……
「真弘の話はともかく、多少なり自由時間はあるだろう
二人で出店を回るくらいなら、大丈夫だと思うが」
祐一の疑問は尤もだし、私もそうしようかなと一瞬思ったりもしたけど
……でもそうなると、神社に残るのが美鶴と珠紀ちゃんになってしまうわけで
「うーん、でも、珠紀ちゃんにはお祭りを楽しんでほしいから、珠紀ちゃんが自由時間を多めに取れるようにしたいなって思って
珠紀ちゃんにとっては初めての秋祭りじゃない?」
「はーあ、優しい守護者も大変だな」
「む、なによその言い方」
「別に深い意味はねぇよ
ま、珠紀のやつに祭りを楽しんでほしいって気持ちは俺も同じだ
仕方ねえ、今年は拓磨の分まで見回りやってやるか」
真弘が残念そうにそう言うけど、後輩思いな一面が隠せていない
私達にとっては毎年のことだけど、珠紀ちゃんにとっては初めてのことだ
小さなお祭りではあるけど、拓磨と一緒に楽しんでほしい
きっと珠紀ちゃんもそんなふうに考えてるだろうから
「お前と楽しむのは、また来年だな」
「……真弘、私とお祭り、見て回りたかったの?
毎年やってるお祭りだから、もう飽きてると思ったのに」
思わずそう言ってしまうと、真弘は困ったような顔をした
小首を傾げて、目線でどういうことか問うと、真弘は首の後ろを掻きながら、呟くように言った
「……何の気兼ねもなく回れるの、初めてだろ?
これまでは封印のことが頭にあって、なんとなく心から楽しめなかったしよ
今年はお前と思いっきり遊ぶのもいいかって、思ってただけだ」
「……真弘」
「まあでも、お前の言う通りだよ
ちょっと飽きてるところはあるし、何より珠紀は初めての祭りだしな
俺達が楽しむより、珠紀が楽しむ方がいいに決まってる
ま、後輩達の楽しみを守るのも、先輩の役目だ!
来年は一緒に回ろうぜ」
朗らかにそう言うけど、なんとなく寂しさが表れている
でも、今更やっぱりやめたとは言い出せなくて
「……うん、そうだね」
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、私も頷くしかなかった
なんだかなぁ、なんて思いが胸に広がる
早とちり、しちゃったかなあ……
「ところで、今日はどうするよ?
昨日は祐一の家だったろ、勉強会
今日は俺ん家でやるか?」
真弘がそう言って、祐一が頷く
そうして私に二人分の視線がやってきて
私は申し訳ない気持ちになりながら、首を振った
「……ごめんなさい、今日は行けないの
ババ様に呼ばれてて」
「ババ様に?」
「……お前だけか?」
祐一と真弘の声音が鋭くなる
きっと、櫻葉の宿命のことがあったから、また何か言われるんじゃないかと思っているんだろう
私の勘だけど、それはたぶん、関係ない
むしろ秋祭りのことを思い出したから、この呼び出しに納得したくらいだ
「秋祭りに関することだと思う
私は神社の手伝いに回るから、仕事の振り分けとか、そういう打ち合わせが必要なだけじゃないかな」
「……まあ、それなら、いいんだけどよ」
そう言いつつもどこか不安そうな顔をする真弘に微笑む
何も心配することはないのに
「大丈夫よ、真弘
だって、鬼斬丸は、私と真弘で完璧な封印を施したでしょう?」
「そりゃそうだけどよ……はぁ、まあいいか
無理はすんなよ」
気遣ってくれる優しい一言に嬉しくなりながら、うん、と頷く
そうして私達は揃って学校を出た
祐一や真弘と分かれて、私は一人、宇賀屋家へと歩く
……真弘、お祭りを楽しみにしてたんだ
ちょっと悪いことしちゃったな
でも、こればっかりは仕方ない話だし、先輩として格好をつけたいという、多少の見栄もある
また来年、真弘とお祭りを楽しもう
珠紀ちゃんは正式に宇賀屋家で暮らすことになって、今日も元気に拓磨と仲良くやっている
さて、そんな中で降って湧いたのが——
「忘れてた……秋祭り……」
「なんだってお前が忘れるんだよ」
教室の一角で、肘をついて組んだ手に額を載せる
なんで忘れていたかと言われれば、受験生のお仕事に打ち込んでいたせいだ
「うー、さすがに受験生だからって、私達だけ免除にはならないよね……」
「大蛇さんから連絡来てたろ?
俺達は祭りの見回りだ
お前は……まあ、神社の手伝いの方に駆り出されるんだろ?」
「あーあ……せっかく参加するなら、真弘とお祭りを回りたかったなぁ」
残念、と独り言ちてため息を吐く
せっかくなら、いつもは仕舞いっぱなしの着物を着て、真弘と夜のお祭りを見て回りたかった
……まあそういうのは、玉依に名を連ねる者である限り、無理な話なんだろうけど
「あー、その——」
「いじけてても仕方ないよね!
真弘は誰と見回りするの?
やっぱり拓磨と一緒?
喧嘩しないようにしてね
珠紀ちゃんも当日は忙しくて、二人の喧嘩の仲裁まで手が回らないだろうし、それは私もなんだから」
「なんで拓磨と俺が喧嘩する前提なんだよ!?」
「普段の行いだ」
「起きてやがったのか、祐一!
つーか普段の行いってどういうことだよ!
俺は普段から後輩共の良き手本としてだな!」
どの口が?
私と祐一はそんなふうな目で真弘を見つめた
今のセリフ、珠紀ちゃんと拓磨と慎司の後輩組に聞かせたら、どんな反応が返ってくるんだろうなー……
「真弘の話はともかく、多少なり自由時間はあるだろう
二人で出店を回るくらいなら、大丈夫だと思うが」
祐一の疑問は尤もだし、私もそうしようかなと一瞬思ったりもしたけど
……でもそうなると、神社に残るのが美鶴と珠紀ちゃんになってしまうわけで
「うーん、でも、珠紀ちゃんにはお祭りを楽しんでほしいから、珠紀ちゃんが自由時間を多めに取れるようにしたいなって思って
珠紀ちゃんにとっては初めての秋祭りじゃない?」
「はーあ、優しい守護者も大変だな」
「む、なによその言い方」
「別に深い意味はねぇよ
ま、珠紀のやつに祭りを楽しんでほしいって気持ちは俺も同じだ
仕方ねえ、今年は拓磨の分まで見回りやってやるか」
真弘が残念そうにそう言うけど、後輩思いな一面が隠せていない
私達にとっては毎年のことだけど、珠紀ちゃんにとっては初めてのことだ
小さなお祭りではあるけど、拓磨と一緒に楽しんでほしい
きっと珠紀ちゃんもそんなふうに考えてるだろうから
「お前と楽しむのは、また来年だな」
「……真弘、私とお祭り、見て回りたかったの?
毎年やってるお祭りだから、もう飽きてると思ったのに」
思わずそう言ってしまうと、真弘は困ったような顔をした
小首を傾げて、目線でどういうことか問うと、真弘は首の後ろを掻きながら、呟くように言った
「……何の気兼ねもなく回れるの、初めてだろ?
これまでは封印のことが頭にあって、なんとなく心から楽しめなかったしよ
今年はお前と思いっきり遊ぶのもいいかって、思ってただけだ」
「……真弘」
「まあでも、お前の言う通りだよ
ちょっと飽きてるところはあるし、何より珠紀は初めての祭りだしな
俺達が楽しむより、珠紀が楽しむ方がいいに決まってる
ま、後輩達の楽しみを守るのも、先輩の役目だ!
来年は一緒に回ろうぜ」
朗らかにそう言うけど、なんとなく寂しさが表れている
でも、今更やっぱりやめたとは言い出せなくて
「……うん、そうだね」
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、私も頷くしかなかった
なんだかなぁ、なんて思いが胸に広がる
早とちり、しちゃったかなあ……
「ところで、今日はどうするよ?
昨日は祐一の家だったろ、勉強会
今日は俺ん家でやるか?」
真弘がそう言って、祐一が頷く
そうして私に二人分の視線がやってきて
私は申し訳ない気持ちになりながら、首を振った
「……ごめんなさい、今日は行けないの
ババ様に呼ばれてて」
「ババ様に?」
「……お前だけか?」
祐一と真弘の声音が鋭くなる
きっと、櫻葉の宿命のことがあったから、また何か言われるんじゃないかと思っているんだろう
私の勘だけど、それはたぶん、関係ない
むしろ秋祭りのことを思い出したから、この呼び出しに納得したくらいだ
「秋祭りに関することだと思う
私は神社の手伝いに回るから、仕事の振り分けとか、そういう打ち合わせが必要なだけじゃないかな」
「……まあ、それなら、いいんだけどよ」
そう言いつつもどこか不安そうな顔をする真弘に微笑む
何も心配することはないのに
「大丈夫よ、真弘
だって、鬼斬丸は、私と真弘で完璧な封印を施したでしょう?」
「そりゃそうだけどよ……はぁ、まあいいか
無理はすんなよ」
気遣ってくれる優しい一言に嬉しくなりながら、うん、と頷く
そうして私達は揃って学校を出た
祐一や真弘と分かれて、私は一人、宇賀屋家へと歩く
……真弘、お祭りを楽しみにしてたんだ
ちょっと悪いことしちゃったな
でも、こればっかりは仕方ない話だし、先輩として格好をつけたいという、多少の見栄もある
また来年、真弘とお祭りを楽しもう
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