三十五章
夢小説設定
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目を閉じて感覚を広げ、ツヴァイの気配を探る
その間、真弘は、珠紀ちゃんを守るように立っていた
「守護者の力を、超えているわ」
ババ様がそう呟く
境内からはツヴァイの気配が感じられないことを確認して、私も真弘の横に並ぶ
ババ様の目には、涙があった
「……優佳、真弘
あなた達が、正しいのかもしれない
私は、間違っていたのかもしれない」
ババ様の言葉が、戦いの後の静寂に消える
私達はただ、それを黙って聞いていた
「鬼斬丸の復活を止めるには、真弘、優佳、あなた達が犠牲になるしかないと思っていた
けれどもし、あなた達がそれを止められるというのなら」
ババ様が、私と真弘、そして私達を通り越して、珠紀ちゃんを見る
妙な違和感があったのは、その直後だった
「あなた達に、すべてを――」
ババ様が何か囁きかけたとき
土煙の中で、何かが光ったように見えた
それはまっすぐにババ様に迫る
「死神の鎌!!」
珠紀ちゃんが叫ぶ
珠紀ちゃんが走り出すより早く、私がババ様とその鎌の間に結界を張り
「させるかぁぁああ!!!」
真弘の剣が、死神の鎌を弾いていた
鎌は回転して、地面に突き刺さる
一息つこうとしたとき
突如現れた気配に、後ろを振り返る
大きく口を開けた闇の中から、それは現れた
「ツヴァイ!!」
死神の手は珠紀ちゃんの体を羽交い締めにして、闇の中へ引きずり込もうとしている
状況が飲み込めずに顔を引きつらせる珠紀ちゃんが、「先輩」と、私を見て呟いた
咄嗟に珠紀ちゃんの手を掴む
ツヴァイの周囲が歪んで、ツヴァイの体は闇の中に消えていく
珠紀ちゃんをこちらへ引き寄せようと掴んだ手を、ツヴァイの腕が払い除けた
ついで身体を突き飛ばされ、境内の地面に尻もちをつく
「ツヴァイ!
こいつをどこへ!!」
「珠紀ちゃん!!」
珠紀ちゃんが手を伸ばし、私も手を伸ばす
その手が、触れるか触れないかの時……
珠紀ちゃんの身体は、暗闇に閉じ込められていった
「先輩!」
空間が、閉じる
「珠紀ちゃん――ッ!!!」
嘘だ、こんなこと、嘘だ
私の手が空を掴んで、身体が前のめりに倒れる
「待ってろ!!
必ず、助けに行く!!!」
真弘が叫ぶ声に、珠紀ちゃんが頷いたように見えた
そして――珠紀ちゃんの姿は消えた
頭が真っ白になって、言葉が出てこない
それでも、呆然としている暇はない
「珠紀ちゃんを助けに行かなきゃ……!!」
「わかってる!
クソッ!
あの死神、どこに行きやがった!」
真弘が羽を広げる
空から探すつもりなんだろう
「私も行く!」
飛び立とうとする真弘に、私はそう言った
まさかここまできて、お前は留守番だ、なんて言わないだろうけど
「言霊で軽くすれば、真弘だって抱えて飛べるはずだから!」
言外に「何が何でも連れて行け」と圧をかけて迫ると、真弘はふっと表情を和らげた
この状況に似合わないくらい、優しい表情で、焦りがちょっとだけ勢いを削がれる
「誰が置いて行くなんて言ったよ、バカ」
ポン、と私の肩を叩いて、真弘がそう言う
それから表情を険しいものに戻した
「いくぞ!」
頷く代わりに、私は言霊を自身にかけた
「軽くなれ!」
身体がぐんと軽くなるのを感じて、真弘にしがみつく
真弘が私を片腕で抱えた
「しっかり掴まれよ!」
「うん!」
真弘が地を蹴って羽ばたく
真弘の首に腕を回して抱きついて、あっという間に私達は村の上空まで飛んだ
真弘に抱えられたまま、私たちはひたすら珠紀ちゃんの姿を探す
「……全然、珠紀ちゃんの気配を感じない」
まさか殺された?
いや、それはないだろう
ツヴァイの言う行動規律が何かは分からないけど、珠紀ちゃんを殺すことが目的ではないような気がした
「もう少し西の方を――」
そう呟いた、まさにその時
鬼斬丸を封じている沼の方角から、とんでもないエネルギーを感じた
「決まりだ!」
真弘はそう言って、そこに向かって風のように飛んでいく
私はというと、悲鳴を噛み殺して、真弘にしがみつくことしか出来なかった
そしてその頭上へ着いたとき
ツヴァイが鎌を振り上げているのが見えた
私を抱えたままじゃ、真弘が間に合わない
けれど真弘は迷うことなく私に言った
「落とすぞ!」
「ちょ、ええ!?」
そう言われて、真弘の支えがなくなった瞬間
私は背中から急転直下して、真弘はそのままツヴァイに向かって突っ込んでいく
「遅くなれ!!」
悲鳴混じりに叫んで、落下速度を落とす
さすがにこんな高さで落ちたら普通に死ぬ、間違いなく死ぬ
「風よ!」
地上から風を巻き起こして、風の塊が体をクッションのように受け止めた
ひらりと体を回転させて、地面へと降りていく
無事に地面へと着地した瞬間、真弘が起こした風の塊はツヴァイに激突して
荒まじい衝撃と共に、ツヴァイを吹き飛ばした
「無茶苦茶やってくれたわね」
「お前なら平気だろ、あれくらい」
「勿論
私を誰だと思ってるの」
そう返して真弘の隣に立つ
真弘のおかげで珠紀ちゃんも無事だ、間に合って良かった
「よく吐いた、優佳
俺の女だけのことある」
「そりゃあ、真弘に合わせられないんじゃ、彼女失格でしょう?
真弘の頼みなら、どんな事でも応えるよ」
二、三度ほど肩を回して、真弘がニッと口角を上げる
その不敵な笑みは、時には自分の中にある恐怖心を隠すものだったかもしれない
でも、今の真弘は違う
私達は強くなった
もう何にも負けないし、何も怖くない
「……真弘先輩、優佳先輩」
珠紀ちゃんの呆然とした声に、私は笑みを返した
珠紀ちゃんの身体を、淡い光が包む
「よく頑張ったね、もう大丈夫
あとは真弘と私に任せて」
しゃがんで珠紀ちゃんの頭を撫でる
珠紀ちゃんの目に涙が浮かんで、珠紀ちゃんはそれを手の甲で拭うと、大きく頷いた
手足や顔にできた傷が治っていくのを見届けて立ち上がる
そうして珠紀ちゃんに背を向け――私はツヴァイを鋭く睨み付けた
その間、真弘は、珠紀ちゃんを守るように立っていた
「守護者の力を、超えているわ」
ババ様がそう呟く
境内からはツヴァイの気配が感じられないことを確認して、私も真弘の横に並ぶ
ババ様の目には、涙があった
「……優佳、真弘
あなた達が、正しいのかもしれない
私は、間違っていたのかもしれない」
ババ様の言葉が、戦いの後の静寂に消える
私達はただ、それを黙って聞いていた
「鬼斬丸の復活を止めるには、真弘、優佳、あなた達が犠牲になるしかないと思っていた
けれどもし、あなた達がそれを止められるというのなら」
ババ様が、私と真弘、そして私達を通り越して、珠紀ちゃんを見る
妙な違和感があったのは、その直後だった
「あなた達に、すべてを――」
ババ様が何か囁きかけたとき
土煙の中で、何かが光ったように見えた
それはまっすぐにババ様に迫る
「死神の鎌!!」
珠紀ちゃんが叫ぶ
珠紀ちゃんが走り出すより早く、私がババ様とその鎌の間に結界を張り
「させるかぁぁああ!!!」
真弘の剣が、死神の鎌を弾いていた
鎌は回転して、地面に突き刺さる
一息つこうとしたとき
突如現れた気配に、後ろを振り返る
大きく口を開けた闇の中から、それは現れた
「ツヴァイ!!」
死神の手は珠紀ちゃんの体を羽交い締めにして、闇の中へ引きずり込もうとしている
状況が飲み込めずに顔を引きつらせる珠紀ちゃんが、「先輩」と、私を見て呟いた
咄嗟に珠紀ちゃんの手を掴む
ツヴァイの周囲が歪んで、ツヴァイの体は闇の中に消えていく
珠紀ちゃんをこちらへ引き寄せようと掴んだ手を、ツヴァイの腕が払い除けた
ついで身体を突き飛ばされ、境内の地面に尻もちをつく
「ツヴァイ!
こいつをどこへ!!」
「珠紀ちゃん!!」
珠紀ちゃんが手を伸ばし、私も手を伸ばす
その手が、触れるか触れないかの時……
珠紀ちゃんの身体は、暗闇に閉じ込められていった
「先輩!」
空間が、閉じる
「珠紀ちゃん――ッ!!!」
嘘だ、こんなこと、嘘だ
私の手が空を掴んで、身体が前のめりに倒れる
「待ってろ!!
必ず、助けに行く!!!」
真弘が叫ぶ声に、珠紀ちゃんが頷いたように見えた
そして――珠紀ちゃんの姿は消えた
頭が真っ白になって、言葉が出てこない
それでも、呆然としている暇はない
「珠紀ちゃんを助けに行かなきゃ……!!」
「わかってる!
クソッ!
あの死神、どこに行きやがった!」
真弘が羽を広げる
空から探すつもりなんだろう
「私も行く!」
飛び立とうとする真弘に、私はそう言った
まさかここまできて、お前は留守番だ、なんて言わないだろうけど
「言霊で軽くすれば、真弘だって抱えて飛べるはずだから!」
言外に「何が何でも連れて行け」と圧をかけて迫ると、真弘はふっと表情を和らげた
この状況に似合わないくらい、優しい表情で、焦りがちょっとだけ勢いを削がれる
「誰が置いて行くなんて言ったよ、バカ」
ポン、と私の肩を叩いて、真弘がそう言う
それから表情を険しいものに戻した
「いくぞ!」
頷く代わりに、私は言霊を自身にかけた
「軽くなれ!」
身体がぐんと軽くなるのを感じて、真弘にしがみつく
真弘が私を片腕で抱えた
「しっかり掴まれよ!」
「うん!」
真弘が地を蹴って羽ばたく
真弘の首に腕を回して抱きついて、あっという間に私達は村の上空まで飛んだ
真弘に抱えられたまま、私たちはひたすら珠紀ちゃんの姿を探す
「……全然、珠紀ちゃんの気配を感じない」
まさか殺された?
いや、それはないだろう
ツヴァイの言う行動規律が何かは分からないけど、珠紀ちゃんを殺すことが目的ではないような気がした
「もう少し西の方を――」
そう呟いた、まさにその時
鬼斬丸を封じている沼の方角から、とんでもないエネルギーを感じた
「決まりだ!」
真弘はそう言って、そこに向かって風のように飛んでいく
私はというと、悲鳴を噛み殺して、真弘にしがみつくことしか出来なかった
そしてその頭上へ着いたとき
ツヴァイが鎌を振り上げているのが見えた
私を抱えたままじゃ、真弘が間に合わない
けれど真弘は迷うことなく私に言った
「落とすぞ!」
「ちょ、ええ!?」
そう言われて、真弘の支えがなくなった瞬間
私は背中から急転直下して、真弘はそのままツヴァイに向かって突っ込んでいく
「遅くなれ!!」
悲鳴混じりに叫んで、落下速度を落とす
さすがにこんな高さで落ちたら普通に死ぬ、間違いなく死ぬ
「風よ!」
地上から風を巻き起こして、風の塊が体をクッションのように受け止めた
ひらりと体を回転させて、地面へと降りていく
無事に地面へと着地した瞬間、真弘が起こした風の塊はツヴァイに激突して
荒まじい衝撃と共に、ツヴァイを吹き飛ばした
「無茶苦茶やってくれたわね」
「お前なら平気だろ、あれくらい」
「勿論
私を誰だと思ってるの」
そう返して真弘の隣に立つ
真弘のおかげで珠紀ちゃんも無事だ、間に合って良かった
「よく吐いた、優佳
俺の女だけのことある」
「そりゃあ、真弘に合わせられないんじゃ、彼女失格でしょう?
真弘の頼みなら、どんな事でも応えるよ」
二、三度ほど肩を回して、真弘がニッと口角を上げる
その不敵な笑みは、時には自分の中にある恐怖心を隠すものだったかもしれない
でも、今の真弘は違う
私達は強くなった
もう何にも負けないし、何も怖くない
「……真弘先輩、優佳先輩」
珠紀ちゃんの呆然とした声に、私は笑みを返した
珠紀ちゃんの身体を、淡い光が包む
「よく頑張ったね、もう大丈夫
あとは真弘と私に任せて」
しゃがんで珠紀ちゃんの頭を撫でる
珠紀ちゃんの目に涙が浮かんで、珠紀ちゃんはそれを手の甲で拭うと、大きく頷いた
手足や顔にできた傷が治っていくのを見届けて立ち上がる
そうして珠紀ちゃんに背を向け――私はツヴァイを鋭く睨み付けた
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