三十四章
夢小説設定
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夜が訪れた
私たち二人は連れ立って、境内へと向かっている
雲のない月夜、月明かりは境内を照らしている
その境内の中央には、五芒星が描かれていた
……境内には、みんなが揃っていた
珠紀ちゃん、拓磨、祐一、慎司、大蛇さん、美鶴と、それにババ様――
ババ様と珠紀ちゃん以外はただ、私たちをじっと見つめていた
それは、蔵で最初に真弘を見たときと同じ印象を与える
意識を、沈められていた
珠紀ちゃんも何かを感じているのか、私に不安そうな視線を向けている
「……よく来ました
優佳、あなたの部屋の結界が破られているのを見たとき、あなたは逃げてしまったのかと思っていたけれど、戻ってきてくれたのね」
「ババ様、聞いてください――」
言いかける私の前に、真弘が立つ
その背は、今までで一番、頼もしく見えた
「ババ様、悪いが、封印の儀には、俺達は参加しない」
真弘の声は静かで、けれど、意志に満ち溢れている
ババ様は不思議なものを見るように、少しだけ目を丸くした
「参加しない?
なぜ?
あなたは覚悟を決めたのではなかったの?」
真弘は首を横に振った
そうして、私の手を握った右手に、力を篭める
「覚悟はしてるさ
でもそれは命を捨てる覚悟じゃない
最後まで足掻く、覚悟だ」
ババ様が不思議そうに私を見る
私はただ静かにババ様を見つめ返した
「……優佳、あなたが真弘を?」
「はい
私たち二人で決めたことです」
私はきっぱりとそう言い、ババ様はわずかに、眉をひそめた
真弘はババ様に構わず、無言で周囲に立っている守護者のみんなを見渡した
「おい、守護者の連中、それから美鶴も
なんでこんなことになってる」
「あなたに施した処置と同じことを
彼らには、無事この儀式が進むよう、周囲を守ってもらおうと思っていました
正気で行うには、つらい儀式だもの
見納めるのは、私一人で十分」
ババ様はそう静かに呟く
それじゃあ、ただの人形と変わらない
意思の伴わない行動なんて、道具と同じだ
「……こんなやり方、間違ってる」
珠紀ちゃんがババ様へそう言う
ババ様はやはり穏やかな微笑みで、珠紀ちゃんを見た
「そう?
でもね、珠紀
誰かが悪役にならなければいけないということが、この世にはあるわ」
ババ様がそう言って、次の瞬間
珠紀ちゃんは、何かに取り囲まれていた
「珠紀ちゃん!?」
珠紀ちゃんの足元には光の円陣があって、その円に沿って、強力な不可視の壁がある
……結界、だった
「……おばあちゃん、これ」
珠紀ちゃんが呆然とした声で問う
いったい珠紀ちゃんに何をするつもりなのか分からなくて、信じられない思いでババ様を凝視した
「あなた達には予定通り、贄となってもらいます
言うことを、聞きなさい、真弘、優佳
さもなくばこの子の命は……」
「な……っ!?」
私と真弘、ババ様の視線が絡む
……そういうことだったのか、だからババ様は珠紀ちゃんまで連れ戻そうとしたのか
私と真弘が贄となるための、人質だったんだ……
「……ようやくわかったよ
あんたが、俺と優佳だけじゃなく、こいつも連れ帰ろうとしたわけが」
「これはいわば、ひとつの長い悲劇の終わりなの
真弘と優佳が犠牲になることで、それは完結し、封印は完全なものとして復活する」
ババ様はじっと私達を見つめる
真弘の手が、何かを堪えるようにぐっと私の手を強く握った
私たち二人は連れ立って、境内へと向かっている
雲のない月夜、月明かりは境内を照らしている
その境内の中央には、五芒星が描かれていた
……境内には、みんなが揃っていた
珠紀ちゃん、拓磨、祐一、慎司、大蛇さん、美鶴と、それにババ様――
ババ様と珠紀ちゃん以外はただ、私たちをじっと見つめていた
それは、蔵で最初に真弘を見たときと同じ印象を与える
意識を、沈められていた
珠紀ちゃんも何かを感じているのか、私に不安そうな視線を向けている
「……よく来ました
優佳、あなたの部屋の結界が破られているのを見たとき、あなたは逃げてしまったのかと思っていたけれど、戻ってきてくれたのね」
「ババ様、聞いてください――」
言いかける私の前に、真弘が立つ
その背は、今までで一番、頼もしく見えた
「ババ様、悪いが、封印の儀には、俺達は参加しない」
真弘の声は静かで、けれど、意志に満ち溢れている
ババ様は不思議なものを見るように、少しだけ目を丸くした
「参加しない?
なぜ?
あなたは覚悟を決めたのではなかったの?」
真弘は首を横に振った
そうして、私の手を握った右手に、力を篭める
「覚悟はしてるさ
でもそれは命を捨てる覚悟じゃない
最後まで足掻く、覚悟だ」
ババ様が不思議そうに私を見る
私はただ静かにババ様を見つめ返した
「……優佳、あなたが真弘を?」
「はい
私たち二人で決めたことです」
私はきっぱりとそう言い、ババ様はわずかに、眉をひそめた
真弘はババ様に構わず、無言で周囲に立っている守護者のみんなを見渡した
「おい、守護者の連中、それから美鶴も
なんでこんなことになってる」
「あなたに施した処置と同じことを
彼らには、無事この儀式が進むよう、周囲を守ってもらおうと思っていました
正気で行うには、つらい儀式だもの
見納めるのは、私一人で十分」
ババ様はそう静かに呟く
それじゃあ、ただの人形と変わらない
意思の伴わない行動なんて、道具と同じだ
「……こんなやり方、間違ってる」
珠紀ちゃんがババ様へそう言う
ババ様はやはり穏やかな微笑みで、珠紀ちゃんを見た
「そう?
でもね、珠紀
誰かが悪役にならなければいけないということが、この世にはあるわ」
ババ様がそう言って、次の瞬間
珠紀ちゃんは、何かに取り囲まれていた
「珠紀ちゃん!?」
珠紀ちゃんの足元には光の円陣があって、その円に沿って、強力な不可視の壁がある
……結界、だった
「……おばあちゃん、これ」
珠紀ちゃんが呆然とした声で問う
いったい珠紀ちゃんに何をするつもりなのか分からなくて、信じられない思いでババ様を凝視した
「あなた達には予定通り、贄となってもらいます
言うことを、聞きなさい、真弘、優佳
さもなくばこの子の命は……」
「な……っ!?」
私と真弘、ババ様の視線が絡む
……そういうことだったのか、だからババ様は珠紀ちゃんまで連れ戻そうとしたのか
私と真弘が贄となるための、人質だったんだ……
「……ようやくわかったよ
あんたが、俺と優佳だけじゃなく、こいつも連れ帰ろうとしたわけが」
「これはいわば、ひとつの長い悲劇の終わりなの
真弘と優佳が犠牲になることで、それは完結し、封印は完全なものとして復活する」
ババ様はじっと私達を見つめる
真弘の手が、何かを堪えるようにぐっと私の手を強く握った
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