三十二話
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ツヴァイが、真弘の凄味に押されるように、す、と後ろに下がる
夕暮れはいつの間にか夜に変わり、広間には月明かりが差し込んでいた
ツヴァイにとっては、今が活動時間にあたる
ここから先のツヴァイは、恐らく一筋縄ではいかない――それが何だ
今までだって戦いは夜に行われてきた
ツヴァイの実力だって知っている、今更怖気付いたりなんてしない
青白い光がほのかに差し込む中で、私達三人は互いに、目の前の相手を睨み付けた
一人は、死そのもののように、冷たい視線をもち、月明かりを冷たく跳ね返す鎌を持つ死神
一人は、生命そのもののような強い光を瞳に宿し、風によって作られた剣を持つ風の騎士
そしてもう一人は、淑やかな目に確たる決意を乗せ、差し込む月光を受けて輝く刀を持つ、桜の姫
私達は、お互いが旧年の仇であるかのごとく対峙していた
「……待っていた、この時を
少々アインの力が定着していないが、お前達が相手なら、十分だろう
私はお前達に興味があった
死は生の延長にあり、誰にでも訪れる
それを延長させるために人は他の命を喰らい生き永らえる
生きるとは、闘争であり弱者を食い殺す行為だ
じつに醜い」
「実にお前らしい、くだらねえ理屈だ
丸めてクズ箱にでも捨てるんだな」
ツヴァイの腐った理論をそう吐き捨てて、真弘はツヴァイを鋭く睨みつける
その視線を、ツヴァイはニタリと歪んだ笑みでもって見つめていた
「では逆に問おう、カラス、サクラ
他のために一度は命を捨てようとしたお前たちが、なぜそこまで生に固執するのかと
俺は死ねない
なぜなら、俺の魂は、俺の能力によって食い尽くされているから
俺はとっくに死んでいる」
ツヴァイは饒舌に喋って、真弘は無言のまま
普段の立場が入れ替わったようだった
「だからこそ分かる
死は魂を解放する
死は永遠だ
俺は人々に永遠を教えているだけだ」
死による救済
それ自体を否定する気はない
……ただ、私に言わせてみれば、死は救済ではなく、終わりだ
ただの終わり、その先には何も無い
「……御託は終わったのか?
面倒事が嫌いでな
語りたいものは!
剣で語れ!
死神!!」
真弘が叫ぶ
その声は、死の運命さえも跳ね除けようとする騎士のように強く、広間に響く
真弘が羽を広げ、低空を飛ぶ
右手に剣を持ち、そこに己の魂を込めて
死神はそれに呼応するようにニタリと笑う
「来い、カラス、サクラ」
その言葉にはどこか、希望と愉悦に満ちた何かがあった
死神が鎌を構える
空気を切り裂き、風を切り迫る真弘と、全く微動だにしないツヴァイが激突する
空気が震え、真弘の纏う風が衝撃波のように辺りに散っていく
私は悲しむアリアを守りながら、真弘の援護に回った
霊力を言葉に乗せ、真弘は何段階も強くなっていく
息をつかせる暇を与えまいと、真弘が間合いを取った瞬間に私が遠距離から追撃を仕掛け、また真弘がツヴァイへ肉薄した
私達は生まれた時からずっと一緒に生きてきたんだ
互いの呼吸なんて、自分のことより分かっている
覚醒したおかげか、いつもより呪符の威力が違う
速射性を優先して、低威力の呪符を使っているけれど、感じる威力は倍以上だ
もちろん物理攻撃だって負けていない
真弘のほんの一瞬の隙を突いて、ツヴァイの鎌がこちらを捉える
それを受け止め、弾き返した刀は、ビクともしなかった
弾き返したことでできた少しの間合いに真弘が滑り込み、また一体一へともつれ込んでいく
熾烈な戦いを繰り広げる最中で、アリアはアインの屍に向かって、聖句を唱え続けていた
その死を心から哀しみ、その魂が安らげるようにと
そして、アリアの哀しみを背負い
一度は他のすべてのために命を捨てる覚悟を持った、真弘は
一撃を振るうごとに、風の剣の威力が増していく
ツヴァイにはもう笑みなどなく、真弘の猛攻を捌くことに手一杯なように見えた
ツヴァイが僅かにたじろぎ、軸足が床を削る
その瞬間、ツヴァイの足元が光り輝き、派手な爆発を起こす
「――三重円、現出」
ツヴァイの動きを阻むように床はあちらこちらで光り、衝撃が生まれる
その隙に息を整えた真弘が、またツヴァイへと突っ込んでいった
夕暮れはいつの間にか夜に変わり、広間には月明かりが差し込んでいた
ツヴァイにとっては、今が活動時間にあたる
ここから先のツヴァイは、恐らく一筋縄ではいかない――それが何だ
今までだって戦いは夜に行われてきた
ツヴァイの実力だって知っている、今更怖気付いたりなんてしない
青白い光がほのかに差し込む中で、私達三人は互いに、目の前の相手を睨み付けた
一人は、死そのもののように、冷たい視線をもち、月明かりを冷たく跳ね返す鎌を持つ死神
一人は、生命そのもののような強い光を瞳に宿し、風によって作られた剣を持つ風の騎士
そしてもう一人は、淑やかな目に確たる決意を乗せ、差し込む月光を受けて輝く刀を持つ、桜の姫
私達は、お互いが旧年の仇であるかのごとく対峙していた
「……待っていた、この時を
少々アインの力が定着していないが、お前達が相手なら、十分だろう
私はお前達に興味があった
死は生の延長にあり、誰にでも訪れる
それを延長させるために人は他の命を喰らい生き永らえる
生きるとは、闘争であり弱者を食い殺す行為だ
じつに醜い」
「実にお前らしい、くだらねえ理屈だ
丸めてクズ箱にでも捨てるんだな」
ツヴァイの腐った理論をそう吐き捨てて、真弘はツヴァイを鋭く睨みつける
その視線を、ツヴァイはニタリと歪んだ笑みでもって見つめていた
「では逆に問おう、カラス、サクラ
他のために一度は命を捨てようとしたお前たちが、なぜそこまで生に固執するのかと
俺は死ねない
なぜなら、俺の魂は、俺の能力によって食い尽くされているから
俺はとっくに死んでいる」
ツヴァイは饒舌に喋って、真弘は無言のまま
普段の立場が入れ替わったようだった
「だからこそ分かる
死は魂を解放する
死は永遠だ
俺は人々に永遠を教えているだけだ」
死による救済
それ自体を否定する気はない
……ただ、私に言わせてみれば、死は救済ではなく、終わりだ
ただの終わり、その先には何も無い
「……御託は終わったのか?
面倒事が嫌いでな
語りたいものは!
剣で語れ!
死神!!」
真弘が叫ぶ
その声は、死の運命さえも跳ね除けようとする騎士のように強く、広間に響く
真弘が羽を広げ、低空を飛ぶ
右手に剣を持ち、そこに己の魂を込めて
死神はそれに呼応するようにニタリと笑う
「来い、カラス、サクラ」
その言葉にはどこか、希望と愉悦に満ちた何かがあった
死神が鎌を構える
空気を切り裂き、風を切り迫る真弘と、全く微動だにしないツヴァイが激突する
空気が震え、真弘の纏う風が衝撃波のように辺りに散っていく
私は悲しむアリアを守りながら、真弘の援護に回った
霊力を言葉に乗せ、真弘は何段階も強くなっていく
息をつかせる暇を与えまいと、真弘が間合いを取った瞬間に私が遠距離から追撃を仕掛け、また真弘がツヴァイへ肉薄した
私達は生まれた時からずっと一緒に生きてきたんだ
互いの呼吸なんて、自分のことより分かっている
覚醒したおかげか、いつもより呪符の威力が違う
速射性を優先して、低威力の呪符を使っているけれど、感じる威力は倍以上だ
もちろん物理攻撃だって負けていない
真弘のほんの一瞬の隙を突いて、ツヴァイの鎌がこちらを捉える
それを受け止め、弾き返した刀は、ビクともしなかった
弾き返したことでできた少しの間合いに真弘が滑り込み、また一体一へともつれ込んでいく
熾烈な戦いを繰り広げる最中で、アリアはアインの屍に向かって、聖句を唱え続けていた
その死を心から哀しみ、その魂が安らげるようにと
そして、アリアの哀しみを背負い
一度は他のすべてのために命を捨てる覚悟を持った、真弘は
一撃を振るうごとに、風の剣の威力が増していく
ツヴァイにはもう笑みなどなく、真弘の猛攻を捌くことに手一杯なように見えた
ツヴァイが僅かにたじろぎ、軸足が床を削る
その瞬間、ツヴァイの足元が光り輝き、派手な爆発を起こす
「――三重円、現出」
ツヴァイの動きを阻むように床はあちらこちらで光り、衝撃が生まれる
その隙に息を整えた真弘が、またツヴァイへと突っ込んでいった
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