二十七章
夢小説設定
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ふと目を開けると、そこはまだ学校だった
「優佳!」
「優佳先輩!!」
真弘の声が聞こえる
珠紀ちゃんの声も
「大丈夫か、傷は……」
「……うん
もう平気……」
呟いて体を起こす
傷もある程度は塞がってくれている
最後に見た時、教室の中は酷い状態だったけど、どうやら真弘と珠紀ちゃんで片付けたらしい
「……帰るぞ」
「うん
珠紀ちゃん、家まで送るよ」
「馬鹿かお前は!
こいつは俺が送り届けるから、お前は家に帰れ」
珠紀ちゃんもそれに頷いたから、私は一人で家に帰ることになった
傷口が開かないようにゆっくりとした足取りで家を目指す
ツヴァイがどこに行ったのかは分からないけど、フィーアが無事に逃げ切れたことを願うしかない
……どうして、大切な人と一緒にいたいという、それだけの願いが叶わないのだろう
私はただ、真弘と幸せになりたいだけなのに
……罪人の私には、それを願うことも許されないみたいだった
贄の儀も、もうじき行われるだろう
(時間がない、急がなきゃ
とうにかして方法を……私と真弘が死ななくてもいい方法を、探さないと……)
そう思いながら、家にたどり着くと、そこには
「お帰りなさいませ、櫻葉様」
「……美鶴」
美鶴は頭を下げてそう言うと、顔を上げ、じっと私を見つけた
その目には、生気というものが感じられない
闇夜を瞳に宿らせるように、その目は夜の色をしている
……今夜もまた、誰かが『神隠し』に遭ったんだ
「鴉取様とも連絡が取れず、どこに行かれたのかと……
お二方は、その御身の魂を持って封印と為すお方
封印の儀まで、必ず生きていただかなくては困ります」
「……何を……」
「鴉取様も封印の贄となるお方
お気持ちはわかりますが、くれぐれも慎重になるようにと」
……何を、言っているの、美鶴は
真弘が封印の贄になる?
ありえない、どうして――私が覚醒しないから?
「櫻葉様、ご安心ください
封印のために命を捧げたお方は、必ず来世で、幸せになると――」
「待って……美鶴、待ってよ」
私の呆然とした声は、虫の音に飲まれて消えた
なんで、と震えた声が呟く
「なんで……だって、真弘は死ななくていいはずでしょう?
私だけ死ねばいいって、そういう話じゃない……!
私が覚醒すればいいんでしょう!?
そうするから!
私ひとりで、全部終わらせるから!」
私はそう叫んで、でも、そんなことを美鶴にぶつけたって何も変わらないことくらい、分かっていた
誰もが被害者だ
誰もが封印の犠牲者だ
私だけがそうなんじゃない、みんな色んなものを犠牲にしてきた
その中で、私と真弘が特別に重い犠牲を払う必要があって
でもそれだって、真弘は犠牲にならずに済む道だってあるのに――
「ババ様は、鴉取様と櫻葉様のお二方の魂を以て、封印を完全なものになさるお考えです」
美鶴はそう言って、宇賀谷家への道を帰っていく
「どうして……」
どうして真弘まで死ぬのかが分からない
どうして……真弘が犠牲にならなければいけないの?
「覚醒しなきゃ……早く、覚醒して、生贄になって
……真弘を、解放しなきゃ……」
どうしたって結論はそこに辿り着いてしまう
それはそうだ、だって「他に方法がある」なんて、とっくの昔に考えたことだもの
探して、探して、それでも見つからないから、諦めたんじゃないか
ふらふらとした足取りのまま、玄関の鍵を開ける
(ババ様……どうして……?)
……分かっている
私が単独覚醒できないから、私と真弘の命を使うことにしたんだろう
分かっているから、尚更に歯がゆい
私が死ぬことには納得していたはずなのに
今ではそれさえ受け入れたくない
「探さなきゃ……絶対に、探さないと
真弘を道連れにすることだけは、避けないと……」
探すんだ
単独覚醒の方法を
真弘が死なない方法を、必ず見つけるんだ――
「優佳!」
「優佳先輩!!」
真弘の声が聞こえる
珠紀ちゃんの声も
「大丈夫か、傷は……」
「……うん
もう平気……」
呟いて体を起こす
傷もある程度は塞がってくれている
最後に見た時、教室の中は酷い状態だったけど、どうやら真弘と珠紀ちゃんで片付けたらしい
「……帰るぞ」
「うん
珠紀ちゃん、家まで送るよ」
「馬鹿かお前は!
こいつは俺が送り届けるから、お前は家に帰れ」
珠紀ちゃんもそれに頷いたから、私は一人で家に帰ることになった
傷口が開かないようにゆっくりとした足取りで家を目指す
ツヴァイがどこに行ったのかは分からないけど、フィーアが無事に逃げ切れたことを願うしかない
……どうして、大切な人と一緒にいたいという、それだけの願いが叶わないのだろう
私はただ、真弘と幸せになりたいだけなのに
……罪人の私には、それを願うことも許されないみたいだった
贄の儀も、もうじき行われるだろう
(時間がない、急がなきゃ
とうにかして方法を……私と真弘が死ななくてもいい方法を、探さないと……)
そう思いながら、家にたどり着くと、そこには
「お帰りなさいませ、櫻葉様」
「……美鶴」
美鶴は頭を下げてそう言うと、顔を上げ、じっと私を見つけた
その目には、生気というものが感じられない
闇夜を瞳に宿らせるように、その目は夜の色をしている
……今夜もまた、誰かが『神隠し』に遭ったんだ
「鴉取様とも連絡が取れず、どこに行かれたのかと……
お二方は、その御身の魂を持って封印と為すお方
封印の儀まで、必ず生きていただかなくては困ります」
「……何を……」
「鴉取様も封印の贄となるお方
お気持ちはわかりますが、くれぐれも慎重になるようにと」
……何を、言っているの、美鶴は
真弘が封印の贄になる?
ありえない、どうして――私が覚醒しないから?
「櫻葉様、ご安心ください
封印のために命を捧げたお方は、必ず来世で、幸せになると――」
「待って……美鶴、待ってよ」
私の呆然とした声は、虫の音に飲まれて消えた
なんで、と震えた声が呟く
「なんで……だって、真弘は死ななくていいはずでしょう?
私だけ死ねばいいって、そういう話じゃない……!
私が覚醒すればいいんでしょう!?
そうするから!
私ひとりで、全部終わらせるから!」
私はそう叫んで、でも、そんなことを美鶴にぶつけたって何も変わらないことくらい、分かっていた
誰もが被害者だ
誰もが封印の犠牲者だ
私だけがそうなんじゃない、みんな色んなものを犠牲にしてきた
その中で、私と真弘が特別に重い犠牲を払う必要があって
でもそれだって、真弘は犠牲にならずに済む道だってあるのに――
「ババ様は、鴉取様と櫻葉様のお二方の魂を以て、封印を完全なものになさるお考えです」
美鶴はそう言って、宇賀谷家への道を帰っていく
「どうして……」
どうして真弘まで死ぬのかが分からない
どうして……真弘が犠牲にならなければいけないの?
「覚醒しなきゃ……早く、覚醒して、生贄になって
……真弘を、解放しなきゃ……」
どうしたって結論はそこに辿り着いてしまう
それはそうだ、だって「他に方法がある」なんて、とっくの昔に考えたことだもの
探して、探して、それでも見つからないから、諦めたんじゃないか
ふらふらとした足取りのまま、玄関の鍵を開ける
(ババ様……どうして……?)
……分かっている
私が単独覚醒できないから、私と真弘の命を使うことにしたんだろう
分かっているから、尚更に歯がゆい
私が死ぬことには納得していたはずなのに
今ではそれさえ受け入れたくない
「探さなきゃ……絶対に、探さないと
真弘を道連れにすることだけは、避けないと……」
探すんだ
単独覚醒の方法を
真弘が死なない方法を、必ず見つけるんだ――
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