二十六章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
月夜の教室に、私たちは戻ってきた
フィーアに、他に行く場所があるようには思えなかったから
フィーアに会いに行くことには、真弘も賛成してくれた
アリアの姿を見て気が変わったのか、真弘はフィーアとアリアを会わせるべきだと言っていた
教室には、フィーアではなくフィオナ先生がいて、私たちの姿を見て、一瞬希望の眼差しを見せ――
私たちがアリアを連れていないことに、微かな哀しみを滲ませた
そこには、驚きはなかった
半ば理解していたかのような、落ち着いた哀しみがあるだけ
「……会いに行きました
……でも、アリアは」
私の声は、沈黙に溶けていった
珠紀ちゃんが案じるような瞳でフィオナ先生を見つめて、けれどかける言葉が見つからなかったようで、開きかけた口を閉ざした
「……そうね
いえ、いいの
アリア様なら、そう答えると思っていたから」
分かっていて、それでも、もしかしたらと思っていたのだろう
ひょっとすると私達の言葉なら、アリアに届くかもしれない、と
「……お前、なんで逃げた」
静かに真弘が問うた
「アリアがそんなに大切なら、そばにいてやればよかっただろ
アリアは自分のそばの方が安全だと言ってたぞ
アリアを助けるのは俺たちじゃない、お前の役目じゃないのか」
真弘がそう呟く
そこには憎しみなんかなくて、ただ、理解できないという気持ちしかないように見えた
……真弘は、それでいいんだと思う
彼は守ると決めた相手のことは、自分の手で守ろうとする
その相手が珠紀ちゃんであり、私でもあるというのは、今更言われなくても理解している
真弘の問いに、先生は淡い微笑みを浮かべるだけだった
青い瞳が、どこか悲しそうに、窓の外の月を見つめて
「……私では、アインやツヴァイには敵わない
私がいては、かえってアリア様の邪魔になる
あのお方は私に心を砕きすぎて」
フィオナ先生は切ない声音でそう呟いた
その言葉からは、嘘は何一つ感じられない
「あのお方は、私を守ろうとして、きっと命を落とす
おかしな話ね
本来であれば、私があのお方を守らなければいけないのに
私では、アリア様を守りきれない
ただ、重荷になるだけ
おそらく、近い将来、ツヴァイかアインのどちらかが私を襲うわ
もちろん、堂々と戦うつもりよ?
命を賭せば道連れにぐらい……」
フィオナ先生は俯く
それは、大切な人のために命を捨てようとする人の姿だった
その姿に、ひどく既視感を覚えてしまった
ああ――この人は、私と同じだ
「でも、私は死んでしまうから、できればあなた達に、アリア様を頼めないかと思ったの
生憎と、私には敵しかいないから……
……アリア様はまだ幼い
生きてさえいれば、私のことはすぐに忘れてくれる」
フィオナ先生の、アリアを思う気持ちが痛いほど伝わってくる
そばにいたい、けれどいることは叶わない
まるで今の私のようだ
真弘のそばにいたい、この先もずっと一緒に生きていたい
けれどそれは、どんなに願っても、叶わない望みでしかなくて
……だけど、先生は違う
まだ希望がある
アリアと一緒にいられる日々を諦める必要なんてない
だから、私は――
フィーアに、他に行く場所があるようには思えなかったから
フィーアに会いに行くことには、真弘も賛成してくれた
アリアの姿を見て気が変わったのか、真弘はフィーアとアリアを会わせるべきだと言っていた
教室には、フィーアではなくフィオナ先生がいて、私たちの姿を見て、一瞬希望の眼差しを見せ――
私たちがアリアを連れていないことに、微かな哀しみを滲ませた
そこには、驚きはなかった
半ば理解していたかのような、落ち着いた哀しみがあるだけ
「……会いに行きました
……でも、アリアは」
私の声は、沈黙に溶けていった
珠紀ちゃんが案じるような瞳でフィオナ先生を見つめて、けれどかける言葉が見つからなかったようで、開きかけた口を閉ざした
「……そうね
いえ、いいの
アリア様なら、そう答えると思っていたから」
分かっていて、それでも、もしかしたらと思っていたのだろう
ひょっとすると私達の言葉なら、アリアに届くかもしれない、と
「……お前、なんで逃げた」
静かに真弘が問うた
「アリアがそんなに大切なら、そばにいてやればよかっただろ
アリアは自分のそばの方が安全だと言ってたぞ
アリアを助けるのは俺たちじゃない、お前の役目じゃないのか」
真弘がそう呟く
そこには憎しみなんかなくて、ただ、理解できないという気持ちしかないように見えた
……真弘は、それでいいんだと思う
彼は守ると決めた相手のことは、自分の手で守ろうとする
その相手が珠紀ちゃんであり、私でもあるというのは、今更言われなくても理解している
真弘の問いに、先生は淡い微笑みを浮かべるだけだった
青い瞳が、どこか悲しそうに、窓の外の月を見つめて
「……私では、アインやツヴァイには敵わない
私がいては、かえってアリア様の邪魔になる
あのお方は私に心を砕きすぎて」
フィオナ先生は切ない声音でそう呟いた
その言葉からは、嘘は何一つ感じられない
「あのお方は、私を守ろうとして、きっと命を落とす
おかしな話ね
本来であれば、私があのお方を守らなければいけないのに
私では、アリア様を守りきれない
ただ、重荷になるだけ
おそらく、近い将来、ツヴァイかアインのどちらかが私を襲うわ
もちろん、堂々と戦うつもりよ?
命を賭せば道連れにぐらい……」
フィオナ先生は俯く
それは、大切な人のために命を捨てようとする人の姿だった
その姿に、ひどく既視感を覚えてしまった
ああ――この人は、私と同じだ
「でも、私は死んでしまうから、できればあなた達に、アリア様を頼めないかと思ったの
生憎と、私には敵しかいないから……
……アリア様はまだ幼い
生きてさえいれば、私のことはすぐに忘れてくれる」
フィオナ先生の、アリアを思う気持ちが痛いほど伝わってくる
そばにいたい、けれどいることは叶わない
まるで今の私のようだ
真弘のそばにいたい、この先もずっと一緒に生きていたい
けれどそれは、どんなに願っても、叶わない望みでしかなくて
……だけど、先生は違う
まだ希望がある
アリアと一緒にいられる日々を諦める必要なんてない
だから、私は――
1/3ページ