二十五章
夢小説設定
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教室を出て、真弘を探すと、昇降口にいるのが見えた
「真弘!」
私の声に真弘が振り返る
そうしてまたふいと顔を背けたけど、歩幅が緩んだ
靴を履き替えて隣へと駆け寄る
真弘はそのまま、学校を出ていった
夕暮れの道を、私たちは並んで歩いていく
川の水音が届く中を、真弘は険しい顔のまま無言で
私はその後ろをずっと歩いている
……真弘の気持ちはよく分かる
正直に言えば、驚きを通り越した今、私の思考の一部は、言いようもない怒りに満たされていた
彼らと戦って、何度も何度も、私たちは傷ついて
何度も何度も……死を覚悟した
そのたびに、もう絶望だと
そのたびに、私たちはどうにかして気持ちを励まして、立ち向かってきた
そして、アリアたちが宝具の封印を解放してしまったせいで、私は……
そんな状況の中で、何も知らないような顔をして私たちを見ていた
そんなの、酷すぎる
(……それでも、これをきっかけにしなくちゃ)
私は首を振って前を見据えた
私のことはどうだっていいけど、真弘のことはどうにかしなきゃいけない
「……真弘
芦屋の言葉、覚えてる?」
真弘は答える気配がなくて、ただ歩き続ける
それでも話を聞いていないようではなかったから、私はさらに言葉を続けた
「内部分裂してるっていう話
あれが本当で、フィーアが私たちを頼ってくれているんだとしたら、フィーアとアリアは、鬼斬丸を諦めてくれるということにならない?」
真弘が足を止めた
本気で言ってるのか、そういう顔をしている
私も正直言って、半分くらいは疑っていた
「……優佳、お前、あいつらのこと信用するのか?
あいつは、俺たちをずっと騙してたんだぞ?」
「……アリアは、宝具の封印を破ることのできる人だった
きっとどこかで、珠紀ちゃんと似通った存在なんだと思う」
そして、それはたぶん、私も
玉依姫にしか解放できない宝具の封印を、アリアが解放できたことは、紛れもない事実だ
私の身体が、宝具の封印と結びついているらしいことも
私は本当に、贄となるべくして生まれてきたのだろうと、今ではそんなふうに思うことさえある
「アリアは鬼斬丸の封印について、何か知ってるかもしれない
私達すらも知らない、何かを
たしかに、アリアが味方してくれるとは思えない
でも、何もせずにただ死を待つなんて……そんなの、私は嫌だから」
真弘は難しい顔をしている
やっぱり心が追いつかないんだろう
……洋館へは、私だけで向かうしかない
「……決めた
私、一人でアリアに会いに行く」
真弘を頷かないなら、そうするしかないと、そう心を決めていた
否、そうする必要があった
教えられた洋館の方向へと足を向けようとした私へ、真弘の焦ったような声が飛んでくる
「……おい、待てよ!
行かせねえぞ!」
真弘は私の腕を掴み、真剣な目で私を見た
今度は私が無言になる番で、真弘はそんな私を無視して言葉を重ねてくる
「あいつらの罠だったらどうする!
フィーアは今までずっと俺たちを騙してきた
これもその続きかもしれない
命を、簡単に捨てるな
一人で突っ走るな」
……命を簡単に捨てるな、なんて
一人で突っ走るな、なんて
……そんなの
「それは、私のセリフだよ……真弘」
声が震えた
一瞬で頭がカッとなって、勝手に言葉が口を衝いて出る
「真弘だっていつも、一人で突っ走ってばっかり!
一人で全部抱え込んだような顔して、勝手に自分も一緒に死ぬなんて言って!
本当は分かってるんでしょ!?
私だけが死ぬんだよ!?
真弘を残して!
私が全部背負って死ぬの!!」
……私は独りで死んでいく
封印にまつわる何もかもを背負って、自分の犯した罪ごと、あの冷たくて暗い水底に沈んでいく
そこに真弘を巻き込みたくない、真弘まで死んでしまうようなことにはしたくない
そんな私の決意を知らないで、真弘は――
苦しかった、悲しかった、怒りだってある
私が死んだって、真弘は前を向いてくれないって分かっていたから
「真弘!」
私の声に真弘が振り返る
そうしてまたふいと顔を背けたけど、歩幅が緩んだ
靴を履き替えて隣へと駆け寄る
真弘はそのまま、学校を出ていった
夕暮れの道を、私たちは並んで歩いていく
川の水音が届く中を、真弘は険しい顔のまま無言で
私はその後ろをずっと歩いている
……真弘の気持ちはよく分かる
正直に言えば、驚きを通り越した今、私の思考の一部は、言いようもない怒りに満たされていた
彼らと戦って、何度も何度も、私たちは傷ついて
何度も何度も……死を覚悟した
そのたびに、もう絶望だと
そのたびに、私たちはどうにかして気持ちを励まして、立ち向かってきた
そして、アリアたちが宝具の封印を解放してしまったせいで、私は……
そんな状況の中で、何も知らないような顔をして私たちを見ていた
そんなの、酷すぎる
(……それでも、これをきっかけにしなくちゃ)
私は首を振って前を見据えた
私のことはどうだっていいけど、真弘のことはどうにかしなきゃいけない
「……真弘
芦屋の言葉、覚えてる?」
真弘は答える気配がなくて、ただ歩き続ける
それでも話を聞いていないようではなかったから、私はさらに言葉を続けた
「内部分裂してるっていう話
あれが本当で、フィーアが私たちを頼ってくれているんだとしたら、フィーアとアリアは、鬼斬丸を諦めてくれるということにならない?」
真弘が足を止めた
本気で言ってるのか、そういう顔をしている
私も正直言って、半分くらいは疑っていた
「……優佳、お前、あいつらのこと信用するのか?
あいつは、俺たちをずっと騙してたんだぞ?」
「……アリアは、宝具の封印を破ることのできる人だった
きっとどこかで、珠紀ちゃんと似通った存在なんだと思う」
そして、それはたぶん、私も
玉依姫にしか解放できない宝具の封印を、アリアが解放できたことは、紛れもない事実だ
私の身体が、宝具の封印と結びついているらしいことも
私は本当に、贄となるべくして生まれてきたのだろうと、今ではそんなふうに思うことさえある
「アリアは鬼斬丸の封印について、何か知ってるかもしれない
私達すらも知らない、何かを
たしかに、アリアが味方してくれるとは思えない
でも、何もせずにただ死を待つなんて……そんなの、私は嫌だから」
真弘は難しい顔をしている
やっぱり心が追いつかないんだろう
……洋館へは、私だけで向かうしかない
「……決めた
私、一人でアリアに会いに行く」
真弘を頷かないなら、そうするしかないと、そう心を決めていた
否、そうする必要があった
教えられた洋館の方向へと足を向けようとした私へ、真弘の焦ったような声が飛んでくる
「……おい、待てよ!
行かせねえぞ!」
真弘は私の腕を掴み、真剣な目で私を見た
今度は私が無言になる番で、真弘はそんな私を無視して言葉を重ねてくる
「あいつらの罠だったらどうする!
フィーアは今までずっと俺たちを騙してきた
これもその続きかもしれない
命を、簡単に捨てるな
一人で突っ走るな」
……命を簡単に捨てるな、なんて
一人で突っ走るな、なんて
……そんなの
「それは、私のセリフだよ……真弘」
声が震えた
一瞬で頭がカッとなって、勝手に言葉が口を衝いて出る
「真弘だっていつも、一人で突っ走ってばっかり!
一人で全部抱え込んだような顔して、勝手に自分も一緒に死ぬなんて言って!
本当は分かってるんでしょ!?
私だけが死ぬんだよ!?
真弘を残して!
私が全部背負って死ぬの!!」
……私は独りで死んでいく
封印にまつわる何もかもを背負って、自分の犯した罪ごと、あの冷たくて暗い水底に沈んでいく
そこに真弘を巻き込みたくない、真弘まで死んでしまうようなことにはしたくない
そんな私の決意を知らないで、真弘は――
苦しかった、悲しかった、怒りだってある
私が死んだって、真弘は前を向いてくれないって分かっていたから
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