二十一章
夢小説設定
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ずん、と重たい頭を押さえて起きる
なんだか悲しい夢を見たような気がしたけれど、分からない
部屋の時計を見ると、まだみんなは寝ている時間だった
制服に着替えて髪を梳き、ハーフアップにして結び目をくるりと内側に回す
台所を覗くと、美鶴がひとりで忙しそうに動き回っていた
コンコン、と入口を叩くと、美鶴が振り返ってにこりと微笑む
「おはようございます、櫻葉さん
お早いですね」
「美鶴こそ、朝早いのに食事の用意してるじゃない
何か手伝えることはある?」
「そ、そんな!
櫻葉さんの手を煩わせるなんて!」
「気にしないで
三人分もお弁当作るの、大変でしょ」
少し考え込んだ美鶴が、「では……」と頭を下げる
よしきた、と腕捲りをして、私もお弁当作りに加わった
ようやく三人分のお弁当が出来上がる頃には、美鶴も朝ご飯の仕上げに入っていたから、そっちは邪魔しないでおく
それでもまだ手持ち無沙汰だから、ふと思い至って神社の境内へ向かうことにした
おみくじの筒を持って振り、出てきたのは小吉
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」
凶じゃないだけマシということにして、宇賀屋家へと戻った
――居間へ向かうと、昨日に負けず劣らず、豪華な朝ご飯が並んでいた
「おはよう……」
「おっ、なんだ、もう起きてたのか
今から起こしに行こうと思ってたのによ」
真弘はどこか温かい眼差しで私を見つめてそう言った
小首を傾げて「ありがとう」とお礼を言う
夜の話を思い出して、だからそんな優しい目で私を見るのかな、なんて思ったりもしたけど、あまり気にするような事でもない気がした
「優佳先輩、おはようございます!」
「おはよう、珠紀ちゃん
拓磨もね」
「おはようございます
……これまたすごい朝ご飯だな」
「そうね……
たぶん、拓磨がここにいる間は、ずっとこうなんじゃない?
私も美鶴を手伝ってあげたいけど、なんとなく邪魔しちゃ悪いかなって思って……」
「……私なんて、結界を張られてまで拒否されました」
「お前、美鶴に何したんだ?」
拓磨の胡乱な目つきに珠紀ちゃんが首を振る
まさか邪魔をしようなどとは珠紀ちゃんも思っていなかったはずだ
「み、美鶴ちゃんの手伝いをしようと思ったの!
私だって料理はするんだよ」
「ふうん
ま、美鶴にゃ必要ない気遣いなんじゃねえの?
誰かと料理がしたいなら、優佳とやればいいだろ」
「……確かに」
珠紀ちゃんがキラキラした目で私を見つめる
苦笑いして、私は頷いた
「今度、一緒に何か作ろっか」
「はい!」
といっても、私は美鶴ほど芸術的な料理は作れないんだけど、大丈夫かな……
珠紀ちゃんの期待を裏切ることにならないか、それだけがちょっと心配になった
* * *
昼間はもちろん学校に行くわけで、午前中の授業も無事に終わり、今はお昼休み
いつものように、守護者と珠紀ちゃんは屋上に集まっていた
「わー、美鶴ちゃん、お弁当の中身、みんな少しずつ変えてるんだなー」
私と拓磨と真弘のお弁当を見比べながら、珠紀ちゃんがそう言う
「真弘先輩、そのエビフライ下さい!」
真弘に答える暇を与えず、珠紀ちゃんのお箸は、真弘のお弁当からエビフライを奪い取っていた
「あ!
お前な!
それは、俺が最後に食べようと思ってたんだぞ!
拓磨のやつにすればいいだろうがよ」
「だって、拓磨のお弁当にはエビフライ入ってないんですよ」
「……お前、そんな目で俺の弁当を見てやがったのか」
拓磨が珠紀ちゃんから少し距離を取った
そんな拓磨へ向ける珠紀ちゃんの瞳は、ちょっと軽蔑が混じっている
「あら、美鶴ちゃんお手製のお弁当は大事だもんね、拓磨の場合
取らないわよ、拓磨なんかから」
「まあ美味いからな、悔しかったらお前もこれぐらいになってみろ」
「あ!
人の料理食べたこともないくせに!」
「作らない奴ほどそういうことを言うもんだ」
実はそれ、私も一緒に作ってるんです、なんていう事実を今更言えない雰囲気だ
私は黙って自分で作っただし巻き玉子を食べた
今日は上手く巻けたから、自信作だ
「ん?
この卵焼き、お前が作っただろ」
真弘が食べたのは、私が作った卵焼き
実は真弘だけ、だし巻き玉子ではなくて、普通の卵焼きだ
「そうだけど……真弘、よく分かったね」
「えっ、優佳先輩も作ったんですか?」
「うん
でも作ったのはほとんど美鶴で、私が手伝った料理はあんまりなかったけど……」
「真弘先輩、どうして分かったんですか?」
「優佳の料理は格別で美味いからな!
この世で一番美味いぞ?」
「それは真弘先輩に限りっすけどね」
「んだとぉ!?」とかみつく真弘をスルーして、拓磨はお弁当を食べる
真弘の中では世界一なら、それは何よりも嬉しい褒め言葉だ
真弘の好みは知っているから、それに合わせて味付けをするのは当然のこと
それでもここまで褒めてもらえると、作り甲斐もあるってものだ
「まあ、なかなか、うまくいってるようだな」
「……ですね
僕はちょっと、心配してたんですけど」
そんな祐一と慎司の会話に、珠紀ちゃんが首を傾げた
「……ん?
何の話ですか?」
「んー、四人とも仲良くなってよかったな、と思って
祐一先輩の発案だったんですよ
僕は心配してたんですけど」
「……ちょっと待ってくれ
確かあれは、ババ様の命令って話じゃ」
「私もそう聞いてたけど……」
四人で頷いて、目の前の二人を見る
祐一は私達の視線を受け
「あれは嘘だ」
こともなげに言った
……アレハ嘘ダ……?
あれとは何か
もちろん、ババ様からの連絡だったという、それだ!!
「えー!!」
「……何というか、やっぱりすね
そんなことじゃないかと、思ってはいたんですよ、俺は」
「で、でもあれですよ
おかげで皆さん随分仲良くなったみたいじゃないですか」
「それはそうだけど……」
ふと視線を感じ、その先を見ると、真弘が私を見ていた
目が合うと慌てて逸らして……何なんだろうと首を捻る
「真弘、どうかしたの?」
気になって一歩近づくと、その分、真弘が一歩下がった
……ん?
なんだか変な気がして、さらに一歩近づくと、やはり真弘は一歩下がる
……あれ、何か……拒絶されてる?
昨日、拒絶するわけないとか何とか、言っておきながら?
「ちょっと、真弘!
何なのよ!」
「べ、べ、別になんでもねえよ
こっち来るな!」
「はあ!?」
真弘はなぜか顔を赤くして、そっぽを向いてしまう
あれ……私と真弘、まだ喧嘩してたっけ……?
ぐるんぐるんと回転した脳が、パチンと答えを弾き出した
「あ、もしかして昨日のキ……」
「あぁーッ!!
何でもねえって言ってんだろ!!」
大声で叫んで、真弘は更に顔を赤くした
どうやら図星だったようだ
なんだか悲しい夢を見たような気がしたけれど、分からない
部屋の時計を見ると、まだみんなは寝ている時間だった
制服に着替えて髪を梳き、ハーフアップにして結び目をくるりと内側に回す
台所を覗くと、美鶴がひとりで忙しそうに動き回っていた
コンコン、と入口を叩くと、美鶴が振り返ってにこりと微笑む
「おはようございます、櫻葉さん
お早いですね」
「美鶴こそ、朝早いのに食事の用意してるじゃない
何か手伝えることはある?」
「そ、そんな!
櫻葉さんの手を煩わせるなんて!」
「気にしないで
三人分もお弁当作るの、大変でしょ」
少し考え込んだ美鶴が、「では……」と頭を下げる
よしきた、と腕捲りをして、私もお弁当作りに加わった
ようやく三人分のお弁当が出来上がる頃には、美鶴も朝ご飯の仕上げに入っていたから、そっちは邪魔しないでおく
それでもまだ手持ち無沙汰だから、ふと思い至って神社の境内へ向かうことにした
おみくじの筒を持って振り、出てきたのは小吉
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」
凶じゃないだけマシということにして、宇賀屋家へと戻った
――居間へ向かうと、昨日に負けず劣らず、豪華な朝ご飯が並んでいた
「おはよう……」
「おっ、なんだ、もう起きてたのか
今から起こしに行こうと思ってたのによ」
真弘はどこか温かい眼差しで私を見つめてそう言った
小首を傾げて「ありがとう」とお礼を言う
夜の話を思い出して、だからそんな優しい目で私を見るのかな、なんて思ったりもしたけど、あまり気にするような事でもない気がした
「優佳先輩、おはようございます!」
「おはよう、珠紀ちゃん
拓磨もね」
「おはようございます
……これまたすごい朝ご飯だな」
「そうね……
たぶん、拓磨がここにいる間は、ずっとこうなんじゃない?
私も美鶴を手伝ってあげたいけど、なんとなく邪魔しちゃ悪いかなって思って……」
「……私なんて、結界を張られてまで拒否されました」
「お前、美鶴に何したんだ?」
拓磨の胡乱な目つきに珠紀ちゃんが首を振る
まさか邪魔をしようなどとは珠紀ちゃんも思っていなかったはずだ
「み、美鶴ちゃんの手伝いをしようと思ったの!
私だって料理はするんだよ」
「ふうん
ま、美鶴にゃ必要ない気遣いなんじゃねえの?
誰かと料理がしたいなら、優佳とやればいいだろ」
「……確かに」
珠紀ちゃんがキラキラした目で私を見つめる
苦笑いして、私は頷いた
「今度、一緒に何か作ろっか」
「はい!」
といっても、私は美鶴ほど芸術的な料理は作れないんだけど、大丈夫かな……
珠紀ちゃんの期待を裏切ることにならないか、それだけがちょっと心配になった
* * *
昼間はもちろん学校に行くわけで、午前中の授業も無事に終わり、今はお昼休み
いつものように、守護者と珠紀ちゃんは屋上に集まっていた
「わー、美鶴ちゃん、お弁当の中身、みんな少しずつ変えてるんだなー」
私と拓磨と真弘のお弁当を見比べながら、珠紀ちゃんがそう言う
「真弘先輩、そのエビフライ下さい!」
真弘に答える暇を与えず、珠紀ちゃんのお箸は、真弘のお弁当からエビフライを奪い取っていた
「あ!
お前な!
それは、俺が最後に食べようと思ってたんだぞ!
拓磨のやつにすればいいだろうがよ」
「だって、拓磨のお弁当にはエビフライ入ってないんですよ」
「……お前、そんな目で俺の弁当を見てやがったのか」
拓磨が珠紀ちゃんから少し距離を取った
そんな拓磨へ向ける珠紀ちゃんの瞳は、ちょっと軽蔑が混じっている
「あら、美鶴ちゃんお手製のお弁当は大事だもんね、拓磨の場合
取らないわよ、拓磨なんかから」
「まあ美味いからな、悔しかったらお前もこれぐらいになってみろ」
「あ!
人の料理食べたこともないくせに!」
「作らない奴ほどそういうことを言うもんだ」
実はそれ、私も一緒に作ってるんです、なんていう事実を今更言えない雰囲気だ
私は黙って自分で作っただし巻き玉子を食べた
今日は上手く巻けたから、自信作だ
「ん?
この卵焼き、お前が作っただろ」
真弘が食べたのは、私が作った卵焼き
実は真弘だけ、だし巻き玉子ではなくて、普通の卵焼きだ
「そうだけど……真弘、よく分かったね」
「えっ、優佳先輩も作ったんですか?」
「うん
でも作ったのはほとんど美鶴で、私が手伝った料理はあんまりなかったけど……」
「真弘先輩、どうして分かったんですか?」
「優佳の料理は格別で美味いからな!
この世で一番美味いぞ?」
「それは真弘先輩に限りっすけどね」
「んだとぉ!?」とかみつく真弘をスルーして、拓磨はお弁当を食べる
真弘の中では世界一なら、それは何よりも嬉しい褒め言葉だ
真弘の好みは知っているから、それに合わせて味付けをするのは当然のこと
それでもここまで褒めてもらえると、作り甲斐もあるってものだ
「まあ、なかなか、うまくいってるようだな」
「……ですね
僕はちょっと、心配してたんですけど」
そんな祐一と慎司の会話に、珠紀ちゃんが首を傾げた
「……ん?
何の話ですか?」
「んー、四人とも仲良くなってよかったな、と思って
祐一先輩の発案だったんですよ
僕は心配してたんですけど」
「……ちょっと待ってくれ
確かあれは、ババ様の命令って話じゃ」
「私もそう聞いてたけど……」
四人で頷いて、目の前の二人を見る
祐一は私達の視線を受け
「あれは嘘だ」
こともなげに言った
……アレハ嘘ダ……?
あれとは何か
もちろん、ババ様からの連絡だったという、それだ!!
「えー!!」
「……何というか、やっぱりすね
そんなことじゃないかと、思ってはいたんですよ、俺は」
「で、でもあれですよ
おかげで皆さん随分仲良くなったみたいじゃないですか」
「それはそうだけど……」
ふと視線を感じ、その先を見ると、真弘が私を見ていた
目が合うと慌てて逸らして……何なんだろうと首を捻る
「真弘、どうかしたの?」
気になって一歩近づくと、その分、真弘が一歩下がった
……ん?
なんだか変な気がして、さらに一歩近づくと、やはり真弘は一歩下がる
……あれ、何か……拒絶されてる?
昨日、拒絶するわけないとか何とか、言っておきながら?
「ちょっと、真弘!
何なのよ!」
「べ、べ、別になんでもねえよ
こっち来るな!」
「はあ!?」
真弘はなぜか顔を赤くして、そっぽを向いてしまう
あれ……私と真弘、まだ喧嘩してたっけ……?
ぐるんぐるんと回転した脳が、パチンと答えを弾き出した
「あ、もしかして昨日のキ……」
「あぁーッ!!
何でもねえって言ってんだろ!!」
大声で叫んで、真弘は更に顔を赤くした
どうやら図星だったようだ
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