――誰かの声がする


悲鳴とも叫び声ともつかない声だ


これは……何？


その声にかぶさるように、何か、呪詛のような言葉が聞こえる


呪詛の言葉が続くにつれ、その悲鳴のような声は一層甲高くなる


「まずは、鴉取家」


不思議な力を感じる


言霊のせいなのだろうか


鴉取家の人は、瞳に生気がなかった


手を前に押し出す


何をしようとしているのか、私にも分かった


ありったけの自分の能力を――何かに移そうとしている


（何に？）


その疑問はすぐに解消された


「いやぁぁああぁあああ！！！」


突如、目の前に五芒星の結界が現れた


その五芒星の光の中には、年端も行かない女の子が立っている


その子の顔を見た瞬間――頭を鈍器で殴られたような衝撃があった


これは……この光景は……


「次は、孤邑家」


孤邑家の人も、鴉取と同じように、能力を女の子につぎ込んでいく


「大蛇家」


声に従い、大蛇家の人も能力をつぎ込む


女の子の絶叫が響いた


「あ゛あああぁぁぁぁあああ！！！！」


目を背けたくなる


耳を塞ぎたくなる


けれどそれはできない


「最後に、私、言蔵」


三つの守護家と、言蔵の人間が、五芒星を目の前に、女の子に異能を注ぎ込む


当然、体内にある能力との拒絶反応もあるだろう


それになにより、一度にあれだけの異なる霊力を注ぎ込まれれば、霊力が生命力を凌駕してしまう危険すらある


「すべてを注ぎ終わりましたね」


静かな老婆の声がした


ババ様の声だ


「これより、櫻葉の儀式を行います」


今までのものとは異なる呪詛が呟かれる


瞬間、五芒星の中で、エネルギーの爆発が起こった


霊力が桁外れに増幅されていく


女の子にもはや意識は、自我はない


そして、限界まで力は増幅され、儀式の終わりを告げるように五芒星の光が消えた


後に残ったのは、倒れたまま動かない女の子と


数人の大人


静寂が支配する、その中で


「ふ、ふふ……」


女の子が狂ったように笑い出す


「あは、は、あはは」


私は、この先の惨状を知っている


なぜなら……


「あははははっ！！！
みぃーんな、みーんな……
優佳が殺してあげる」


これは私の記憶だから