十一章
夢小説設定
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拓磨との合流場所に到着すると、そこにはすでに拓磨がいた
お待たせ、と言って傍に歩み寄る
「こっちは異常なしだよ
そっちは?」
「いや、こっちも異常はなかったす
真弘先輩は?」
「後から来てると思うけど」
「……何かあったんすか?」
「何も、なかったけど」
この十数年で、嘘はつき慣れてしまった
それでも、今のは変な間が出来てしまったと、自分でも分かる
拓磨は訝しげに眉をひそめたけど、追及はしてこなかった
しばらくして真弘も戻ってきて、ようやく三人が集合した
「早く戻ろう
おーちゃんと式神がいるとは言え、ちょっと心配だから」
「先輩、式神と繋がってないんすか?」
拓磨にそう言われて、私はそこでハッとなった
どうして今まで気付かなかったんだろう――いや、前回の宝具を巡る戦いの時もそうだった
式神が消されたことを、私は感覚で知ることが出来る
なのに前回も今回も、いつの間にか消えている
「……おかしい」
「「は?」」
「式神との意思疎通が図れなくなってる
――聞こえる?
返事して!」
式神からの返事がない
もしこれが敵の仕業なら、珠紀ちゃんが危険な状態にあると言っていい
「式神が消された……
珠紀ちゃんが危ないかもしれない!」
私はそう叫んで、森を抜ける方向に走り出した
言霊を乗せて、さらに追い風を起こして走る
社の前で珠紀ちゃんと向かい合っているのは――アリアだ
「あの子……!」
私が立ち止まるのと、拓磨が言葉を発するのは同時だった
「何をしてる!!」
珠紀ちゃんを庇うように、私たちが前に立つ
少女はやはり、私達をつまらなさそうに眺めていた
「……珠紀、怪我はないな」
「う、うん」
「お前、この間の奴か
どうした、ほかの奴らはいないのか?
特にあの鎌野郎とはいろいろと語り合いたいところなんだけどよ」
「私の式神を消したのは、あなた?」
「お前たちに用はない」
私と真弘の言葉を、アリアはその一言で一蹴した
真弘がピクリと反応して、眉根を寄せる
「なんだと?」
「シビル
私はお前に確認をしに来た」
シビル
それが珠紀ちゃんの呼び名だと気付くのに少しかかった
……巫女
それがシビルの意味だ
「封印の管理から手を引け
私は、無意味な殺戮を好まない
手を引きさえすれば、お前たちは死ななくて済む」
「子供が死ぬだの殺すだの、穏やかじゃないだろ」
拓磨が一歩前に出るのを、珠紀ちゃんが止めた
不服そうに拓磨が珠紀ちゃんを見下ろす
「なんだよ」
「……待って
話をさせて」
「……勝手にしろ」
拓磨はそう言って身を引いた
珠紀ちゃんの視線が今度は私達に向けられる
「ありがとう
真弘先輩と優佳先輩も、手を出さないで」
「分かった」
頷いて一歩下がる
真弘もその言葉に渋々従った
「賢明な判断だ
もう一度問う
封印から手を引くか、それとも、死か」
珠紀ちゃんと私たちの視線が絡み合った
そして
「……私は、戦うよ」
珠紀ちゃんは、そう言った
「仲間の命を、危険にさらしてまでか?」
「封印は守るよ
みんなのことも殺させない」
「ずいぶんと都合がいいな」
「……私はまだ、玉依姫がどんなものなのか、鬼斬丸がなんなのかも知らないけど……
でも、鬼斬丸が危ないものだということは、分かるの
私の血が、そう語ってる
それは決して表に出してはいけないものだと」
毅然とそう言う珠紀ちゃんの背は、しゃんと伸びていた
珠紀ちゃんの中に眠る玉依の血
不完全なものとはいえ、少しずつ、表面に現れようとしているのかもしれない
「鬼斬丸は、渡せない
それがどのようなものなのか、まだ分からないけれど
それが分かるまで、私は玉依姫であることをやめるつもりも、ないから
それが戦うということなら、戦うよ」
珠紀ちゃんの声は、静寂に消えた
誰も、何も言わない
呼吸すら聞こえそうなほどの静けさが、その場を支配したら
お待たせ、と言って傍に歩み寄る
「こっちは異常なしだよ
そっちは?」
「いや、こっちも異常はなかったす
真弘先輩は?」
「後から来てると思うけど」
「……何かあったんすか?」
「何も、なかったけど」
この十数年で、嘘はつき慣れてしまった
それでも、今のは変な間が出来てしまったと、自分でも分かる
拓磨は訝しげに眉をひそめたけど、追及はしてこなかった
しばらくして真弘も戻ってきて、ようやく三人が集合した
「早く戻ろう
おーちゃんと式神がいるとは言え、ちょっと心配だから」
「先輩、式神と繋がってないんすか?」
拓磨にそう言われて、私はそこでハッとなった
どうして今まで気付かなかったんだろう――いや、前回の宝具を巡る戦いの時もそうだった
式神が消されたことを、私は感覚で知ることが出来る
なのに前回も今回も、いつの間にか消えている
「……おかしい」
「「は?」」
「式神との意思疎通が図れなくなってる
――聞こえる?
返事して!」
式神からの返事がない
もしこれが敵の仕業なら、珠紀ちゃんが危険な状態にあると言っていい
「式神が消された……
珠紀ちゃんが危ないかもしれない!」
私はそう叫んで、森を抜ける方向に走り出した
言霊を乗せて、さらに追い風を起こして走る
社の前で珠紀ちゃんと向かい合っているのは――アリアだ
「あの子……!」
私が立ち止まるのと、拓磨が言葉を発するのは同時だった
「何をしてる!!」
珠紀ちゃんを庇うように、私たちが前に立つ
少女はやはり、私達をつまらなさそうに眺めていた
「……珠紀、怪我はないな」
「う、うん」
「お前、この間の奴か
どうした、ほかの奴らはいないのか?
特にあの鎌野郎とはいろいろと語り合いたいところなんだけどよ」
「私の式神を消したのは、あなた?」
「お前たちに用はない」
私と真弘の言葉を、アリアはその一言で一蹴した
真弘がピクリと反応して、眉根を寄せる
「なんだと?」
「シビル
私はお前に確認をしに来た」
シビル
それが珠紀ちゃんの呼び名だと気付くのに少しかかった
……巫女
それがシビルの意味だ
「封印の管理から手を引け
私は、無意味な殺戮を好まない
手を引きさえすれば、お前たちは死ななくて済む」
「子供が死ぬだの殺すだの、穏やかじゃないだろ」
拓磨が一歩前に出るのを、珠紀ちゃんが止めた
不服そうに拓磨が珠紀ちゃんを見下ろす
「なんだよ」
「……待って
話をさせて」
「……勝手にしろ」
拓磨はそう言って身を引いた
珠紀ちゃんの視線が今度は私達に向けられる
「ありがとう
真弘先輩と優佳先輩も、手を出さないで」
「分かった」
頷いて一歩下がる
真弘もその言葉に渋々従った
「賢明な判断だ
もう一度問う
封印から手を引くか、それとも、死か」
珠紀ちゃんと私たちの視線が絡み合った
そして
「……私は、戦うよ」
珠紀ちゃんは、そう言った
「仲間の命を、危険にさらしてまでか?」
「封印は守るよ
みんなのことも殺させない」
「ずいぶんと都合がいいな」
「……私はまだ、玉依姫がどんなものなのか、鬼斬丸がなんなのかも知らないけど……
でも、鬼斬丸が危ないものだということは、分かるの
私の血が、そう語ってる
それは決して表に出してはいけないものだと」
毅然とそう言う珠紀ちゃんの背は、しゃんと伸びていた
珠紀ちゃんの中に眠る玉依の血
不完全なものとはいえ、少しずつ、表面に現れようとしているのかもしれない
「鬼斬丸は、渡せない
それがどのようなものなのか、まだ分からないけれど
それが分かるまで、私は玉依姫であることをやめるつもりも、ないから
それが戦うということなら、戦うよ」
珠紀ちゃんの声は、静寂に消えた
誰も、何も言わない
呼吸すら聞こえそうなほどの静けさが、その場を支配したら
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