60 今日も明日も
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三年前
私は何もかもを失ったんだと思っていた
それから、人が信じられなくなったときもあった
そんな私に手を差し伸べてくれたのが、かすがで
支えてくれた人は数えられない程
人を愛することを教えてくれたのは、政宗先輩
ありがとう
みんな、ありがとう、ありがとう
ねえ
私、今
とても幸せです
みんなのおかげだね
伸ばしたこの手は
色んな人が掴んでくれた
落ちていく私を引っ張り上げてくれた人もたくさんいた
まっすぐ歩けない時は、皆が道を照らしてくれた、手を引いてくれた
みんなに感謝します
本当に、本当に、ありがとう――
20 今日も明日も
眩しいまでの純白
そっと閉じていた目を開けると
鏡には、ウェディングドレスに身を包んだ私がいた
スタイリングも全部終わって、本当にきれい
「私たちも、これほど綺麗な花嫁様は……」
スタイリストさんたちも感嘆の息を漏らす
私も漏らしたわ、ほんと誰これ
その時、ドアが開いて、和真さんが入ってきた
「和真さん」
「これは……
大変お綺麗ですよ、お嬢様」
「ありがとうございます」
和真さんに笑いかけると、和真さんが何かを差し出してきて
「あなたの為に、お作りいたしました
私特製の、ブーケットです」
「和真さん……」
「あなたは、幸せになるべきだ」
両手を握られ、和真さんを見上げる
「今までつらいことがたくさんあったのです
もう、十分でしょう
あなたには幸せしか待っていませんよ」
「ありがとう、ございます……」
思わず涙が浮んでしまうと、和真さんの指がそっと拭ってくれた
「お先に、教会の中でお待ちしております
どうか、今日があなたの人生で最高の日となりますよう……」
和真さんからブーケットを受け取って、部屋から出て行く彼を見送る
それと入れ違いで入ってきたのは、叔父さん
「そろそろ行こうか、夕歌」
そう声がかかる
「……はい、叔父さん」
叔父さんにはたくさんお世話になった
「きれいだよ、夕歌」
「ありがとうございます」
「可菜子にも、見せてあげたかった」
「……今度、写真を見せてあげてください
私も可菜子さんに早く会いたいです」
「……!
可菜子を許して……くれるのか?」
「はい
私ね、もう人を恨むことはやめたんです
そんなことしても誰も幸せになれないから」
「……ありがとう」
叔父さんと腕を組む
扉が開いて……
歩く道は、ヴァージンロード
祭壇の前には、真っ白なタキシードの、政宗さん
叔父さんと絨毯を歩く
純白のヴェールで視界がちょっと悪いけど
叔父さんの腕が離れて、私は政宗さんの隣に並んだ
互いに、誓いの言葉を述べ合う
左手が持ち上げられて
その薬指に、一緒に選んだ結婚指輪が通された
政宗さんの手が、ヴェールをめくる
目を閉じた、少しあと
唇が重なった
嬉しくて、胸が震える
涙がこぼれて、止まらなかった
* * *
式が終わって、参列者が教会の前に集まっている中で、記念撮影をして
「夕歌、あれをやればいいんじゃねえか?」
「あれ?」
「bouquet toss」
「あ!」
そうだった、結婚式と言えば、花嫁のブーケトスだよね
「女性陣ー!
いくよー!」
何か分かったのか、女性陣がわっと詰め寄る
かすがに濃姫先輩、まつ先輩に市先輩
いつきちゃんに登勢、愛
「せーのっ」
後ろを向いて、ブーケを空高く放り投げた
和真さん手作りブーケは、青空を舞う
みんなが必死に手を伸ばす
そして、取ったのは
「へっ!?」
「あ……」
「あら」
「まあ……」
「わっ」
「あ」
「きゃ!?」
あらぬ方向へ飛んでいき
「……コントロールよく投げろ、夕歌」
「Nice catch!
さすがだな」
「まあ、こんなのもいいんじゃねえの?」
「夕歌らしいな」
片倉先生が、取っていた
「おめでとうございまーす!
片倉先生!」
片倉先生はため息をついて、苦笑いしながらブーケを軽く掲げた
次の結婚式は、片倉先生の結婚式かもなぁ、なんて
「政宗ー!
いっちょここは男見せろー!」
「おっ、いいねー!」
風雲児連合の囃し立てに、嫌な予感しかしない
「言ったなお前ら……」
政宗さんが低く呟いた次の瞬間
「うわわわわ!!
政宗さ、ちょっ、いきなり!」
政宗さんにお姫様抱っこされた
いやこれ、落としはしないだろうなって分かってるけど!
慌てて先輩の首に手を回した
「絶対に夕歌は離さねえ
俺の一生をかけて幸せにする
ここにいる全員が証人だ!」
拍手の嵐の中、指笛の音までする
「何があっても!
夕歌は俺が守る!
……愛してる」
また泣けてきた
もうだめだ、今日の私の涙腺は仕事ができていない
「……はい……!」
口付けを交わす
歓声が沸き起こる
あなたと結婚できて、本当に良かった
天国のお母さん、お父さん、奏人
私、幸せだよ……
幸せで、幸せで、死んでしまいそう
「政宗さん……」
私が伝えたいのは、たった一言
今日も明日も
ずっとずっと、一緒にいよう──
<完>
私は何もかもを失ったんだと思っていた
それから、人が信じられなくなったときもあった
そんな私に手を差し伸べてくれたのが、かすがで
支えてくれた人は数えられない程
人を愛することを教えてくれたのは、政宗先輩
ありがとう
みんな、ありがとう、ありがとう
ねえ
私、今
とても幸せです
みんなのおかげだね
伸ばしたこの手は
色んな人が掴んでくれた
落ちていく私を引っ張り上げてくれた人もたくさんいた
まっすぐ歩けない時は、皆が道を照らしてくれた、手を引いてくれた
みんなに感謝します
本当に、本当に、ありがとう――
20 今日も明日も
眩しいまでの純白
そっと閉じていた目を開けると
鏡には、ウェディングドレスに身を包んだ私がいた
スタイリングも全部終わって、本当にきれい
「私たちも、これほど綺麗な花嫁様は……」
スタイリストさんたちも感嘆の息を漏らす
私も漏らしたわ、ほんと誰これ
その時、ドアが開いて、和真さんが入ってきた
「和真さん」
「これは……
大変お綺麗ですよ、お嬢様」
「ありがとうございます」
和真さんに笑いかけると、和真さんが何かを差し出してきて
「あなたの為に、お作りいたしました
私特製の、ブーケットです」
「和真さん……」
「あなたは、幸せになるべきだ」
両手を握られ、和真さんを見上げる
「今までつらいことがたくさんあったのです
もう、十分でしょう
あなたには幸せしか待っていませんよ」
「ありがとう、ございます……」
思わず涙が浮んでしまうと、和真さんの指がそっと拭ってくれた
「お先に、教会の中でお待ちしております
どうか、今日があなたの人生で最高の日となりますよう……」
和真さんからブーケットを受け取って、部屋から出て行く彼を見送る
それと入れ違いで入ってきたのは、叔父さん
「そろそろ行こうか、夕歌」
そう声がかかる
「……はい、叔父さん」
叔父さんにはたくさんお世話になった
「きれいだよ、夕歌」
「ありがとうございます」
「可菜子にも、見せてあげたかった」
「……今度、写真を見せてあげてください
私も可菜子さんに早く会いたいです」
「……!
可菜子を許して……くれるのか?」
「はい
私ね、もう人を恨むことはやめたんです
そんなことしても誰も幸せになれないから」
「……ありがとう」
叔父さんと腕を組む
扉が開いて……
歩く道は、ヴァージンロード
祭壇の前には、真っ白なタキシードの、政宗さん
叔父さんと絨毯を歩く
純白のヴェールで視界がちょっと悪いけど
叔父さんの腕が離れて、私は政宗さんの隣に並んだ
互いに、誓いの言葉を述べ合う
左手が持ち上げられて
その薬指に、一緒に選んだ結婚指輪が通された
政宗さんの手が、ヴェールをめくる
目を閉じた、少しあと
唇が重なった
嬉しくて、胸が震える
涙がこぼれて、止まらなかった
* * *
式が終わって、参列者が教会の前に集まっている中で、記念撮影をして
「夕歌、あれをやればいいんじゃねえか?」
「あれ?」
「bouquet toss」
「あ!」
そうだった、結婚式と言えば、花嫁のブーケトスだよね
「女性陣ー!
いくよー!」
何か分かったのか、女性陣がわっと詰め寄る
かすがに濃姫先輩、まつ先輩に市先輩
いつきちゃんに登勢、愛
「せーのっ」
後ろを向いて、ブーケを空高く放り投げた
和真さん手作りブーケは、青空を舞う
みんなが必死に手を伸ばす
そして、取ったのは
「へっ!?」
「あ……」
「あら」
「まあ……」
「わっ」
「あ」
「きゃ!?」
あらぬ方向へ飛んでいき
「……コントロールよく投げろ、夕歌」
「Nice catch!
さすがだな」
「まあ、こんなのもいいんじゃねえの?」
「夕歌らしいな」
片倉先生が、取っていた
「おめでとうございまーす!
片倉先生!」
片倉先生はため息をついて、苦笑いしながらブーケを軽く掲げた
次の結婚式は、片倉先生の結婚式かもなぁ、なんて
「政宗ー!
いっちょここは男見せろー!」
「おっ、いいねー!」
風雲児連合の囃し立てに、嫌な予感しかしない
「言ったなお前ら……」
政宗さんが低く呟いた次の瞬間
「うわわわわ!!
政宗さ、ちょっ、いきなり!」
政宗さんにお姫様抱っこされた
いやこれ、落としはしないだろうなって分かってるけど!
慌てて先輩の首に手を回した
「絶対に夕歌は離さねえ
俺の一生をかけて幸せにする
ここにいる全員が証人だ!」
拍手の嵐の中、指笛の音までする
「何があっても!
夕歌は俺が守る!
……愛してる」
また泣けてきた
もうだめだ、今日の私の涙腺は仕事ができていない
「……はい……!」
口付けを交わす
歓声が沸き起こる
あなたと結婚できて、本当に良かった
天国のお母さん、お父さん、奏人
私、幸せだよ……
幸せで、幸せで、死んでしまいそう
「政宗さん……」
私が伝えたいのは、たった一言
今日も明日も
ずっとずっと、一緒にいよう──
<完>
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