59 卒業
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
春が来た
春という季節は、出会いがあれば別れもあり
寂しくもあり、少しの期待も……
ある、と思う
59 卒業
「よかった、晴れて」
受付の準備やらをしながら、私はそう呟いた
「うん、俺もそう思うよ」
隣で親泰君が頷く
「それにしても……」
私の視線の先にいるのは、徳川君
私の跡を継いで、副会長に就任している
去年の彼からは想像がつかないほど、たくましくなったというか……
「成長しすぎじゃね?」
「うん、俺もそう思うよ……」
男の子の成長期ってすごいねってことか
絶対違うけど
「夕歌殿!
こんな感じでいいのか?」
「うん、オッケー
じゃ、あとは本番ね!」
徳川君たちに指示を出して、私はというと、看板を抱えて体育館を出た
「あ、夕歌さん!
俺が持つよ」
「ありがとう
でもいいや
これだけは私がしたいから」
「じゃあ、二人で持っていこうか」
「あはは……じゃあお願いします」
親泰君と看板を持って、校門に行く
そして、持っていた看板を立てかけた
第83回 卒業証書授与式
「もう、先輩達とお別れか……」
「早いねー」
倒れないように支えに重石を載せながらつぶやく
ロープで固定して完了だ
「ん、よし!
終わったー!」
時計を見ると、八時前
いい感じの時間だな
「……色々あったよね、この一年」
まだつぼみが多い桜の木を見上げる
「そういえば、今年の文化祭は誰と踊ったの?」
「あ、私?
政宗先輩が踊れないから、今年は小太郎先輩と踊ったよ
小太郎先輩と踊るって言ったときに、政宗先輩の表情がすっごく険しくなっててね
見てて笑いが止まらなかったなー」
「ああ……
光景が目に浮かぶよ……」
「もうすっごい嫉妬の嵐でさー
受験勉強のストレスも相まって本当に面倒くさかった」
「そういう割にちょっと嬉しそうだけど?」
「そ、そりゃあ……
まぁ……求められるのは嬉しいというか……
そう言う親泰君は?」
「俺は、一年の時に一緒に踊った人と踊ったよ
同じクラスだったし」
「あー、あの子!
すっごい美人だよねぇ……
いいなー、美男美女」
「そんな……
俺は夕歌さんもきれいだと思うよ」
「え……
そ、そういうことは言っちゃダメだよ……
私つけあがるよ!?」
「つけあがるって……
そんなことないだろ?
って言うか、本当に夕歌さんは可愛いと思うよ?」
「ち、親泰君……」
この天然すけこまし……
「ほ、ほら!
先生に終わったって言いに行こう!」
「あ、わかった、わかったから背中押さないで……!」
照れ隠しですので、我慢していただきます!
* * *
九時になった
講堂には、卒業生二百人が入場していた
吹奏楽団(部ではなく)の演奏で、神格化された校歌と共に緞帳 が開く
毎度毎度思うんだけど、うちの吹奏楽部……吹奏楽団はどうなってるんだ
開式の辞が言われたあとは、卒業証書の授与
それが終わると、校長である豊臣先生の式辞
そして、在校生代表である私の送辞になった
「在校生送辞
在校生代表・斎藤夕歌
卒業生、起立」
教頭の言葉で、卒業生と私が立ち上がった
先生方に礼をして、来賓に礼をしてから、段を上がる
国旗に一礼してから、私は壇上に立った
「礼」
互いに礼をする
緊張感は、ほどよい程度
「着席」
卒業生が座ってから、私は送辞を書いた紙を取り出した
「校庭の桜も蕾が見え、春を感じる今日のよき日に、本校を巣立ってゆく先輩方
ご卒業、おめでとうございます──」
すべてを読み終え、紙を壇上に置く
号令にしたがって、私は席についた
お疲れ様、と親泰君が口パクで伝えてきて、私もありがと、と口パクで返した
答辞は、前生徒会長の政宗先輩
先輩の制服姿も今日で見納めだなぁ……
今日に限って、先輩はきっちり制服を着ている
普段が割とルーズな着こなしなだけに、違和感
卒業式だから当たり前なんだけど
あーあ、だめだだめだ、所作が綺麗だから何をしても様になるなぁ
「卒業生、在校生、起立」
号令に従って起立、そして礼、着席
「うららかな陽射しが降り注ぎ、春の訪れを感じる今日──」
……違和感がすごいな
今にも「Ha!こんな退屈なことやってられるか!」とか言い出しそうだな……
そんなことを考えていると、先輩と目があって、ふっと微笑まれた
カッと頬が熱くなるけど……同時に、今の微笑みに言い知れぬ不安を抱いてしまった
「私事ですが、この度、結婚することとなりました」
うおぉぉぉぉぉおおい!!!
しかもそっちの世界じゃ周知の事実なのか、軽い笑いが溢れた
やめて!!
公開処刑すぎる!!!
しかも本人は涼しい顔をしてるし……
後で殴る
絶対殴る
「えっと……
おめでとう……」
「はは……
どうも……」
やめてくれ、私のHPはもう0だ
この政宗大魔王め……
もう殴る
心に決めた
政宗先輩のバカ!
そっと教師陣を横目に見ると、片倉先生が額を押さえていた
え、今のってまさかのアドリブなの?
先輩め、卒業式でなんつーことをカミングアウトしたんだ
これってこの学院だから許されるのか、政宗先輩だから許されるのか、どっちだ?
ていうかそうですよね、記者会見みたいなのしましたよね
そりゃみんな知ってるわ
むしろ知らないやつは驚きだわ
だからってわざわざ言います?この場で
……以上のシンキングタイム0.3秒
ああ、頭痛くなってきた……
春という季節は、出会いがあれば別れもあり
寂しくもあり、少しの期待も……
ある、と思う
59 卒業
「よかった、晴れて」
受付の準備やらをしながら、私はそう呟いた
「うん、俺もそう思うよ」
隣で親泰君が頷く
「それにしても……」
私の視線の先にいるのは、徳川君
私の跡を継いで、副会長に就任している
去年の彼からは想像がつかないほど、たくましくなったというか……
「成長しすぎじゃね?」
「うん、俺もそう思うよ……」
男の子の成長期ってすごいねってことか
絶対違うけど
「夕歌殿!
こんな感じでいいのか?」
「うん、オッケー
じゃ、あとは本番ね!」
徳川君たちに指示を出して、私はというと、看板を抱えて体育館を出た
「あ、夕歌さん!
俺が持つよ」
「ありがとう
でもいいや
これだけは私がしたいから」
「じゃあ、二人で持っていこうか」
「あはは……じゃあお願いします」
親泰君と看板を持って、校門に行く
そして、持っていた看板を立てかけた
第83回 卒業証書授与式
「もう、先輩達とお別れか……」
「早いねー」
倒れないように支えに重石を載せながらつぶやく
ロープで固定して完了だ
「ん、よし!
終わったー!」
時計を見ると、八時前
いい感じの時間だな
「……色々あったよね、この一年」
まだつぼみが多い桜の木を見上げる
「そういえば、今年の文化祭は誰と踊ったの?」
「あ、私?
政宗先輩が踊れないから、今年は小太郎先輩と踊ったよ
小太郎先輩と踊るって言ったときに、政宗先輩の表情がすっごく険しくなっててね
見てて笑いが止まらなかったなー」
「ああ……
光景が目に浮かぶよ……」
「もうすっごい嫉妬の嵐でさー
受験勉強のストレスも相まって本当に面倒くさかった」
「そういう割にちょっと嬉しそうだけど?」
「そ、そりゃあ……
まぁ……求められるのは嬉しいというか……
そう言う親泰君は?」
「俺は、一年の時に一緒に踊った人と踊ったよ
同じクラスだったし」
「あー、あの子!
すっごい美人だよねぇ……
いいなー、美男美女」
「そんな……
俺は夕歌さんもきれいだと思うよ」
「え……
そ、そういうことは言っちゃダメだよ……
私つけあがるよ!?」
「つけあがるって……
そんなことないだろ?
って言うか、本当に夕歌さんは可愛いと思うよ?」
「ち、親泰君……」
この天然すけこまし……
「ほ、ほら!
先生に終わったって言いに行こう!」
「あ、わかった、わかったから背中押さないで……!」
照れ隠しですので、我慢していただきます!
* * *
九時になった
講堂には、卒業生二百人が入場していた
吹奏楽団(部ではなく)の演奏で、神格化された校歌と共に
毎度毎度思うんだけど、うちの吹奏楽部……吹奏楽団はどうなってるんだ
開式の辞が言われたあとは、卒業証書の授与
それが終わると、校長である豊臣先生の式辞
そして、在校生代表である私の送辞になった
「在校生送辞
在校生代表・斎藤夕歌
卒業生、起立」
教頭の言葉で、卒業生と私が立ち上がった
先生方に礼をして、来賓に礼をしてから、段を上がる
国旗に一礼してから、私は壇上に立った
「礼」
互いに礼をする
緊張感は、ほどよい程度
「着席」
卒業生が座ってから、私は送辞を書いた紙を取り出した
「校庭の桜も蕾が見え、春を感じる今日のよき日に、本校を巣立ってゆく先輩方
ご卒業、おめでとうございます──」
すべてを読み終え、紙を壇上に置く
号令にしたがって、私は席についた
お疲れ様、と親泰君が口パクで伝えてきて、私もありがと、と口パクで返した
答辞は、前生徒会長の政宗先輩
先輩の制服姿も今日で見納めだなぁ……
今日に限って、先輩はきっちり制服を着ている
普段が割とルーズな着こなしなだけに、違和感
卒業式だから当たり前なんだけど
あーあ、だめだだめだ、所作が綺麗だから何をしても様になるなぁ
「卒業生、在校生、起立」
号令に従って起立、そして礼、着席
「うららかな陽射しが降り注ぎ、春の訪れを感じる今日──」
……違和感がすごいな
今にも「Ha!こんな退屈なことやってられるか!」とか言い出しそうだな……
そんなことを考えていると、先輩と目があって、ふっと微笑まれた
カッと頬が熱くなるけど……同時に、今の微笑みに言い知れぬ不安を抱いてしまった
「私事ですが、この度、結婚することとなりました」
うおぉぉぉぉぉおおい!!!
しかもそっちの世界じゃ周知の事実なのか、軽い笑いが溢れた
やめて!!
公開処刑すぎる!!!
しかも本人は涼しい顔をしてるし……
後で殴る
絶対殴る
「えっと……
おめでとう……」
「はは……
どうも……」
やめてくれ、私のHPはもう0だ
この政宗大魔王め……
もう殴る
心に決めた
政宗先輩のバカ!
そっと教師陣を横目に見ると、片倉先生が額を押さえていた
え、今のってまさかのアドリブなの?
先輩め、卒業式でなんつーことをカミングアウトしたんだ
これってこの学院だから許されるのか、政宗先輩だから許されるのか、どっちだ?
ていうかそうですよね、記者会見みたいなのしましたよね
そりゃみんな知ってるわ
むしろ知らないやつは驚きだわ
だからってわざわざ言います?この場で
……以上のシンキングタイム0.3秒
ああ、頭痛くなってきた……
1/4ページ