58 恋慕
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淡い、淡い初恋だった
初恋は実らない、とはよく言ったもので
自分も例外じゃなかったなぁ、などと独り言を洩らした
58 恋慕
放課後、いつも通り登勢と帰る下校の道
「あっ……」
反対車線を見れば、そこには猿飛佐助様と真田様がいらっしゃった
「あれって、真田の……」
登勢も気付いて足を止める
「行かないの?」
「えっ……」
「愛なら行くと思ったのに
好きなんでしょ?
佐助さんのこと」
「で、でも
今は真田様もいるし……」
「向こうは気付いてるみたいだけど?」
そう言われ、反対車線を見る
ぶんぶんと手を振る真田様をたしなめる佐助様
少しだけ手を振ると、佐助様も苦笑いで片手をあげてくださった
本当に優しい人……
「私はあまり好きじゃないかな
佐助さんのこと」
登勢がそう呟く
無理もないと思う
登勢の許婚の成実様は、佐助様によって殺されかけたと聞く
「夕歌はなんて言ってるの?」
「夕歌は、許すって言ってた
誰が悪いわけでもないって」
「夕歌らしいと言えば夕歌らしいのね
……まあ、二人の考えは分かるけど」
私自身、あの事件が佐助様によって起こされたものだと知ったとき
背筋が凍る思いがした
「成実様は?」
「なんだかんだ言って、みんな許してた
今では以前みたいに仲も良くなってる」
「そっか
複雑だね」
「……まあ、少しはね」
登勢はそう言って苦笑をこぼした
「愛はどう思う?」
「私は……
許す、かな
簡単に佐助様が悪いって決めちゃいけない気もする
それに多分、もう起こらないよ
あんなこと」
「そう……だね
ほら、行っておいでよ」
「えっ……でも」
「私はいいから」
登勢に背中を押されて、私は横断歩道から向こうに渡った
「田村殿!
お久しゅうござる!」
「お久しぶりです、真田様、佐助様も」
「あはは、久しぶりー
元気にしてた?」
「はい!
……佐助様も、お変わりないようで……」
「……うん、まあね」
複雑な笑顔が佐助様の顔に浮かんだ
「愛ちゃんは今帰り?」
「はいっ!
お二人はこれから……?」
「ああいや、俺様たちも帰り
途中まで一緒に行く?」
「本当ですか!?
嬉しいです!」
「田村殿は、佐助と仲がよいのでござるな!」
「夕歌ちゃんの中学時代の友達なんだって」
「そうでござったか!」
「ってか、旦那と愛ちゃんの接点が見当たらないんだけど」
「以前ゲームセンターで……」
「あぁー、あれ
よく旦那のこと覚えてたね」
「ええ、まあ……
それに私、政宗様の正室でしたから」
「……記憶あるんだ」
驚く佐助様に、私は遠慮がちに頷いた
「そういや、去年、竜の旦那との縁談蹴ったって聞いたけど
竜の旦那が嫌になったわけ?」
佐助様が問うてきた
「嫌いというか……
元から気があったことはないですが」
「え?
でも昔は仲良さそうだったけど……」
「あれは……
まあ、政宗様は普通にいい人だとは思いますし
嫌いではなかったです」
「あ、そう……」
「はい」
佐助様が苦笑いを浮かべていた
「どうかなさったのですか?」
「うん?
いや、別になんでもないんだけどね
あーもう旦那、前見て歩きなよ
転ぶでしょうが」
お母さんみたいだな、などと思ってしまった
「佐助様は、面倒見がいいですよね」
「まあそりゃあ、ちっちゃいころから旦那の世話してるしね
昔から危なかっしくてさ、旦那」
「危なっかしいとはどういう意味だ佐助!」
「そのまんまの意味
ほら、そこ水たまりあるよ」
「む、すまぬ佐助!」
さりげなく腕を引いて水たまりを回避させる佐助様
手馴れていらっしゃる……
「危ない愛ちゃん!」
「え?」
とっさに佐助様に腕を引っ張られた
その横には、段差があって
「あ、ありがとうございます……」
「ううん、転ばなかったなら大丈夫」
笑顔が降り注いで、私はつい見惚れてしまった
「なぜ顔が赤いのでござるか?」
「そ、それは!」
「あーそれ聞いちゃだめだよ旦那」
「そうなのでござるか!?
それは申し訳ないことを……!」
「あ、いえその!
そんなに全力で謝らなくても……」
真田様が私の両手を掴んで、謝りだす
そのとき
「旦那、困ってるでしょ、愛ちゃんが」
佐助様が、真田様の手を掴んでいた
「む?
………」
真田様が、捕まれている右手を見て、それから、私の手を掴んでいる左手を見て
「破廉恥でご」
「はいはいうるさい静かにしてね旦那」
「ム゛ーー!!!」
とっさに佐助様が真田様の口を手で塞いだ
「慣れていらっしゃるんですね」
「まあこういうことがしょっちゅうあったからね」
ポンポンと私の頭を叩いて、佐助様が歩きだす
「佐助様……」
「佐助のことが好きなのでござるか?」
「……はい……」
「……そうでござるか」
真田様は笑みを浮かべて、私の隣に並んだ
「佐助が起こした事件は、知っておりまするか?」
「はい」
「それでも、佐助のことを好いておられるのでござるか?」
「はい」
頷くと、真田様が満面の笑みを浮かべた
「佐助が気にしていたのでござる
愛殿に嫌われてしまったのではと」
「そうだったのですか……」
嫌うだなんて
そんなこと──あるはずがない
「二人ともー、置いてくよー」
少し先で私たちを振り返り、手を振っている佐助様
「行きましょう、真田様」
「うむ!」
佐助様に手を振り返し、二人で佐助様を追いかけた
初恋は実らない、とはよく言ったもので
自分も例外じゃなかったなぁ、などと独り言を洩らした
58 恋慕
放課後、いつも通り登勢と帰る下校の道
「あっ……」
反対車線を見れば、そこには猿飛佐助様と真田様がいらっしゃった
「あれって、真田の……」
登勢も気付いて足を止める
「行かないの?」
「えっ……」
「愛なら行くと思ったのに
好きなんでしょ?
佐助さんのこと」
「で、でも
今は真田様もいるし……」
「向こうは気付いてるみたいだけど?」
そう言われ、反対車線を見る
ぶんぶんと手を振る真田様をたしなめる佐助様
少しだけ手を振ると、佐助様も苦笑いで片手をあげてくださった
本当に優しい人……
「私はあまり好きじゃないかな
佐助さんのこと」
登勢がそう呟く
無理もないと思う
登勢の許婚の成実様は、佐助様によって殺されかけたと聞く
「夕歌はなんて言ってるの?」
「夕歌は、許すって言ってた
誰が悪いわけでもないって」
「夕歌らしいと言えば夕歌らしいのね
……まあ、二人の考えは分かるけど」
私自身、あの事件が佐助様によって起こされたものだと知ったとき
背筋が凍る思いがした
「成実様は?」
「なんだかんだ言って、みんな許してた
今では以前みたいに仲も良くなってる」
「そっか
複雑だね」
「……まあ、少しはね」
登勢はそう言って苦笑をこぼした
「愛はどう思う?」
「私は……
許す、かな
簡単に佐助様が悪いって決めちゃいけない気もする
それに多分、もう起こらないよ
あんなこと」
「そう……だね
ほら、行っておいでよ」
「えっ……でも」
「私はいいから」
登勢に背中を押されて、私は横断歩道から向こうに渡った
「田村殿!
お久しゅうござる!」
「お久しぶりです、真田様、佐助様も」
「あはは、久しぶりー
元気にしてた?」
「はい!
……佐助様も、お変わりないようで……」
「……うん、まあね」
複雑な笑顔が佐助様の顔に浮かんだ
「愛ちゃんは今帰り?」
「はいっ!
お二人はこれから……?」
「ああいや、俺様たちも帰り
途中まで一緒に行く?」
「本当ですか!?
嬉しいです!」
「田村殿は、佐助と仲がよいのでござるな!」
「夕歌ちゃんの中学時代の友達なんだって」
「そうでござったか!」
「ってか、旦那と愛ちゃんの接点が見当たらないんだけど」
「以前ゲームセンターで……」
「あぁー、あれ
よく旦那のこと覚えてたね」
「ええ、まあ……
それに私、政宗様の正室でしたから」
「……記憶あるんだ」
驚く佐助様に、私は遠慮がちに頷いた
「そういや、去年、竜の旦那との縁談蹴ったって聞いたけど
竜の旦那が嫌になったわけ?」
佐助様が問うてきた
「嫌いというか……
元から気があったことはないですが」
「え?
でも昔は仲良さそうだったけど……」
「あれは……
まあ、政宗様は普通にいい人だとは思いますし
嫌いではなかったです」
「あ、そう……」
「はい」
佐助様が苦笑いを浮かべていた
「どうかなさったのですか?」
「うん?
いや、別になんでもないんだけどね
あーもう旦那、前見て歩きなよ
転ぶでしょうが」
お母さんみたいだな、などと思ってしまった
「佐助様は、面倒見がいいですよね」
「まあそりゃあ、ちっちゃいころから旦那の世話してるしね
昔から危なかっしくてさ、旦那」
「危なっかしいとはどういう意味だ佐助!」
「そのまんまの意味
ほら、そこ水たまりあるよ」
「む、すまぬ佐助!」
さりげなく腕を引いて水たまりを回避させる佐助様
手馴れていらっしゃる……
「危ない愛ちゃん!」
「え?」
とっさに佐助様に腕を引っ張られた
その横には、段差があって
「あ、ありがとうございます……」
「ううん、転ばなかったなら大丈夫」
笑顔が降り注いで、私はつい見惚れてしまった
「なぜ顔が赤いのでござるか?」
「そ、それは!」
「あーそれ聞いちゃだめだよ旦那」
「そうなのでござるか!?
それは申し訳ないことを……!」
「あ、いえその!
そんなに全力で謝らなくても……」
真田様が私の両手を掴んで、謝りだす
そのとき
「旦那、困ってるでしょ、愛ちゃんが」
佐助様が、真田様の手を掴んでいた
「む?
………」
真田様が、捕まれている右手を見て、それから、私の手を掴んでいる左手を見て
「破廉恥でご」
「はいはいうるさい静かにしてね旦那」
「ム゛ーー!!!」
とっさに佐助様が真田様の口を手で塞いだ
「慣れていらっしゃるんですね」
「まあこういうことがしょっちゅうあったからね」
ポンポンと私の頭を叩いて、佐助様が歩きだす
「佐助様……」
「佐助のことが好きなのでござるか?」
「……はい……」
「……そうでござるか」
真田様は笑みを浮かべて、私の隣に並んだ
「佐助が起こした事件は、知っておりまするか?」
「はい」
「それでも、佐助のことを好いておられるのでござるか?」
「はい」
頷くと、真田様が満面の笑みを浮かべた
「佐助が気にしていたのでござる
愛殿に嫌われてしまったのではと」
「そうだったのですか……」
嫌うだなんて
そんなこと──あるはずがない
「二人ともー、置いてくよー」
少し先で私たちを振り返り、手を振っている佐助様
「行きましょう、真田様」
「うむ!」
佐助様に手を振り返し、二人で佐助様を追いかけた
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