57 本音
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「春過ぎて、夏きにけらし白妙の、衣ほすてふ天の香具山……」
ふと心に浮かぶ和歌
「持統天皇か?」
「あ、はい
好きなんです、この歌
景色が想像できて
季節は全然違いますけどね」
そう言って笑うと、先輩はふわりと笑みを見せた
57 本音
「……それ、完全に私のせいじゃん」
事情を聞いた私は、そう思うしかなかった
政宗先輩のお母さんが、政宗先輩のことを無視するようになった──
今までと違う
存在すら認めなくなったらしい
「……私があんなこと言ったから……
先輩に迷惑がかかってる……」
「夕歌のせいじゃねえよ!
むしろ俺たちはお前に感謝してんだ!」
肩を掴んでそう言う成実に苦笑いを返す
「やっぱり、第三者が口を出すのはまずかったよね……
ごめん……」
「何で謝んだよ!
お前は間違ったことは何も言ってねえんだぜ?」
「でも先輩に迷惑かかってる……」
「いや、迷惑っつうか……
ほんとにお前が義子様にああ言ってくれて嬉しかったんだって
俺たちは立場上、あの人に逆らえないからさ」
でも、私の余計な口出しで、政宗先輩が傷ついてることに変わりはない
「私……
先輩に謝らなきゃ」
「んなことすんなよ」
「でも」
「梵は頭下げられるの、あんま好きじゃないから
それにさ、あいつ、お前が帰った後……
ほっとしたような……そんな顔してた」
「何で……」
「あいつだって、義子様に口答えなんざできねえんだ
梵はもう、これ以上傷つきたくないから
これ以上あの人に嫌われるのを怖がって、自分から心を閉ざしてる」
「……その気持ち、分かる気がする」
だからこそ、謝らなきゃと思う
気持ちが分かるってことは、どうされたら嫌だったかっていうことが分かるってこと
「私、バカだな……
やっと手に入れた幸せな日々を、当たり前だと思うようになってる」
「てか、それが普通だろ?」
「普通じゃないよ
親がいて、友達がいて……
ありがたい事なの
後者は手に入っても、私はもう、前者は……家族は戻ってこないから……」
「夕歌──」
「だから、先輩にだけは失ってほしくないって、気持ちが先走っちゃった」
それきり、私も成実も何も言わなかった
「夕歌……
それがお前の本音か?」
「かすが……」
「本当にそう思っておられるのでござるか?」
「幸村君……?」
「お前が家族を失う本当の意味を知っているからこそ、伊達義子に強く当たれたんじゃないか」
「夕歌殿は何一つ間違ってなどおりませぬぞ」
「でも!
そのせいで先輩はもっと傷ついた!
私は先輩に傷ついてほしかったわけじゃなかったのに……」
自分でも何を言いたいのかが分からなくなってきたけど
「私は……
政宗先輩に諦めてほしくない……
生きていれば、きっと……
もう一度手に入れられるから……」
何が、なんて言わなくてもみんな分かっていた
生きていれば、きっと仲直りできる日が来る
もう一度……家族みんなで……
「膝を突き合わせて話せば、直るもんは直る!」
唐突に降ってわいたのは、毎度おなじみ遅刻常習犯・慶次先輩
「いやー、悩んでるねえ夕歌」
「茶化しに来たならどこかに行け、前田慶次」
「悪いけど、今重い話してっからさ」
「わかってるよ
独眼竜のおふくろさんだろ?
だから、面と向かって、言いたいこと言いあえば、そのうち仲直りするって」
「んな無茶苦茶な」
「無茶苦茶かどうかはやってみなきゃ分かんないだろ!」
真っ白な歯を見せて、慶次先輩が笑う
確かに、それは一理あるけど……
「まあ確かに、それをやるとなると、義子様と梵がまともに話すのは実に十数年ぶりということになるからなあ……」
成実が指を折って数えて、呆れたような視線を慶次先輩へ投げかけた
「けどよ、それで仲直りできるなら、もうやってるっつーの」
「やったことないんだろ?
まずやってみる!
話はそれからそれから!
ね、独眼竜!」
「は?」
慶次先輩が入口に声をかける
「お前ら……」
そこには政宗先輩がいて、頭を押さえながら入ってきた
ふと心に浮かぶ和歌
「持統天皇か?」
「あ、はい
好きなんです、この歌
景色が想像できて
季節は全然違いますけどね」
そう言って笑うと、先輩はふわりと笑みを見せた
57 本音
「……それ、完全に私のせいじゃん」
事情を聞いた私は、そう思うしかなかった
政宗先輩のお母さんが、政宗先輩のことを無視するようになった──
今までと違う
存在すら認めなくなったらしい
「……私があんなこと言ったから……
先輩に迷惑がかかってる……」
「夕歌のせいじゃねえよ!
むしろ俺たちはお前に感謝してんだ!」
肩を掴んでそう言う成実に苦笑いを返す
「やっぱり、第三者が口を出すのはまずかったよね……
ごめん……」
「何で謝んだよ!
お前は間違ったことは何も言ってねえんだぜ?」
「でも先輩に迷惑かかってる……」
「いや、迷惑っつうか……
ほんとにお前が義子様にああ言ってくれて嬉しかったんだって
俺たちは立場上、あの人に逆らえないからさ」
でも、私の余計な口出しで、政宗先輩が傷ついてることに変わりはない
「私……
先輩に謝らなきゃ」
「んなことすんなよ」
「でも」
「梵は頭下げられるの、あんま好きじゃないから
それにさ、あいつ、お前が帰った後……
ほっとしたような……そんな顔してた」
「何で……」
「あいつだって、義子様に口答えなんざできねえんだ
梵はもう、これ以上傷つきたくないから
これ以上あの人に嫌われるのを怖がって、自分から心を閉ざしてる」
「……その気持ち、分かる気がする」
だからこそ、謝らなきゃと思う
気持ちが分かるってことは、どうされたら嫌だったかっていうことが分かるってこと
「私、バカだな……
やっと手に入れた幸せな日々を、当たり前だと思うようになってる」
「てか、それが普通だろ?」
「普通じゃないよ
親がいて、友達がいて……
ありがたい事なの
後者は手に入っても、私はもう、前者は……家族は戻ってこないから……」
「夕歌──」
「だから、先輩にだけは失ってほしくないって、気持ちが先走っちゃった」
それきり、私も成実も何も言わなかった
「夕歌……
それがお前の本音か?」
「かすが……」
「本当にそう思っておられるのでござるか?」
「幸村君……?」
「お前が家族を失う本当の意味を知っているからこそ、伊達義子に強く当たれたんじゃないか」
「夕歌殿は何一つ間違ってなどおりませぬぞ」
「でも!
そのせいで先輩はもっと傷ついた!
私は先輩に傷ついてほしかったわけじゃなかったのに……」
自分でも何を言いたいのかが分からなくなってきたけど
「私は……
政宗先輩に諦めてほしくない……
生きていれば、きっと……
もう一度手に入れられるから……」
何が、なんて言わなくてもみんな分かっていた
生きていれば、きっと仲直りできる日が来る
もう一度……家族みんなで……
「膝を突き合わせて話せば、直るもんは直る!」
唐突に降ってわいたのは、毎度おなじみ遅刻常習犯・慶次先輩
「いやー、悩んでるねえ夕歌」
「茶化しに来たならどこかに行け、前田慶次」
「悪いけど、今重い話してっからさ」
「わかってるよ
独眼竜のおふくろさんだろ?
だから、面と向かって、言いたいこと言いあえば、そのうち仲直りするって」
「んな無茶苦茶な」
「無茶苦茶かどうかはやってみなきゃ分かんないだろ!」
真っ白な歯を見せて、慶次先輩が笑う
確かに、それは一理あるけど……
「まあ確かに、それをやるとなると、義子様と梵がまともに話すのは実に十数年ぶりということになるからなあ……」
成実が指を折って数えて、呆れたような視線を慶次先輩へ投げかけた
「けどよ、それで仲直りできるなら、もうやってるっつーの」
「やったことないんだろ?
まずやってみる!
話はそれからそれから!
ね、独眼竜!」
「は?」
慶次先輩が入口に声をかける
「お前ら……」
そこには政宗先輩がいて、頭を押さえながら入ってきた
1/5ページ