56 不和
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……政宗先輩とお見合いしたのが三日前
婚約を正式に発表するのが……
今日ですか、そうですか!
56 不和
「なんで毎回毎回突然なんですか」
そうこぼすと、政宗先輩は苦笑いを浮かべた
「まあいいじゃねえか」
昼休み、クーラーが効いた室内
教室には人があまりいない
みんな学食に行ってるんだろうな
「えーっと、それで私はどうすれば……?」
「お前はそのまま俺の家に来ればいい」
「じゃあ、一回家に帰っても……」
「いや、別邸じゃない
伊達本邸だ」
本邸……
政宗先輩のお母さんがいる……
「まだ、その……
仲は悪いんですか?」
恐る恐る聞いてみると、先輩は瞳を僅かに見開き
それから、表情に陰りが落ちた
「……ああ、まあな……」
「そうですか……」
「気にすんなよ
……まあ、お前の性分じゃ無理かもしれねえが」
「……はい」
「はいって、そりゃどっちの意味だ?」
「気にしないのは無理って意味です」
「……だろうな」
先輩の腕が伸びてきて、私の頭を優しくなでる
「先輩って私の頭撫でるの好きですよね」
「何となくな」
「えー……
というか、かすがなんかもよく撫でてくれるし……」
「あいつの場合はお前が可愛いだけだろ」
「先輩は?」
「plus庇護欲」
「どういうことですか!?」
「危なっかしい、目を離すとすぐ厄介ごとに首突っ込む」
「首を突っ込んだ覚えがないです」
「Sorry,訂正する
厄介ごとに巻き込まれていく」
「大して意味が変わってない!」
むすっと唇を尖らせつつ、食べ終わったお弁当にふたをする
世間は夏、制服も合服期間から夏服へと移行した
「だって、気にするなって言うほうが無理ですよ
あんなにはっきり見ちゃったのに」
「Ah……まぁ、そうだな」
政宗先輩がため息をつく
「……まだ、嫌いなんだろうな」
目を伏せたまま、先輩がそう言う
「おれはな、おふくろの『悔い』なんだと思う
自分がいながら、子供の顔にひどい傷が残ったんだからな」
「悔い……」
当時五歳だった先輩は、お母さんからも愛されて育った
きっかけは天然痘
流行るはずのないその病気は、先輩の右目を失明させた
「ま、いつかはよくなるだろうさ」
先輩は軽い口調でそう言って、視線を窓の外に向ける
「よく晴れてるな……」
その声に誘われるように、私も窓の外に目を向ける
「鳥になれたら、自由に羽ばたけるんだろうな……」
開け放した窓から風が入る
目を細めたまま、先輩は淡く微笑んだ
「おっ、今日は夕歌もここで食べてたんだね!」
「慶次先輩」
「そうそう、さっき食堂でファンクラブの子たちから預かり物してきたんだよな!
はい、こっちが夕歌のファンクラブの子からで、こっちが政宗の方」
「なんというか……わざわざすみません……」
大方、可愛い女の子がいたから声を掛けたら、これ幸いと押し付けられたんだろうけど……
私に送られたのは、サムシングブルーのブリザードフラワー
それと、某有名ジュエリーブランドのペアマグカップ
「可愛いー!
ていうかすごいオシャレ……」
「Europeじゃあ、something-blueは純潔とか清らかさとかってな意味合いがあってな
それを身に付けた花嫁は幸せになれるんだと」
「先輩さすが、物知りですね」
「政宗は何もらったんだい?」
「こいつは……photo frameか」
「あ、これに結婚式の写真を飾るってことですかね」
「だろうね!
結婚祝いらしく、華やかなフレームじゃないか」
政宗先輩の手元を覗いて、フォトフレームの装飾の細かさに、瞬時に脳内が金額予測を始めてしまった
いい加減この庶民感溢れる思考回路も脱出しないとダメだよなぁ……
「二人はいつから一緒に住むんだい?」
「とりあえず、先輩が卒業してからですかね?」
「それがいいだろうな
そのときにゃ、もう俺も落ち着いてるだろ」
受験生で忙しい上に、私との結婚の準備まで……
大変だろうな、先輩
「無理は禁物ですよ?」
「分かってる
無理したところで良い結果にはならねぇからな」
「それ、あの時代の『独眼竜』が聞いたらなんて言うんだろうな……」
「Ah?」
政宗先輩の鋭い睨みに、慶次先輩が「あ、あははー」と取り繕う
……というか、このプレゼント、結構大きいから教室に置いておくのも邪魔になりそうだな
「新倉に持ってってもらえ」
「あ、そっか」
LEINで新倉さんを呼び出して、数分後
「お呼びでしょうか、お嬢様」
折り目正しく45度、今日も寸分の隙も何も無い、完璧執事の和真さんがにこやかに入ってきた
「すみません、これを預かっていただいてもいいですか?」
「かしこまりました
贈り物ですか?」
「あ、はい
結婚祝いにいただいて」
「左様でしたか
では、お車のほうに運ばせていただきます」
和真さんが退出して、先輩が呼び出したのであろう片倉先生が入れ違いで入ってきた
「壊すなよ」
「承知」
それだけの会話で片倉先生が退出していったので、長年一緒にいると、相手の言いたいことも分かるんだろうな、と思ったり
……そういう関係になれたらいいな、と思ってみたり
婚約を正式に発表するのが……
今日ですか、そうですか!
56 不和
「なんで毎回毎回突然なんですか」
そうこぼすと、政宗先輩は苦笑いを浮かべた
「まあいいじゃねえか」
昼休み、クーラーが効いた室内
教室には人があまりいない
みんな学食に行ってるんだろうな
「えーっと、それで私はどうすれば……?」
「お前はそのまま俺の家に来ればいい」
「じゃあ、一回家に帰っても……」
「いや、別邸じゃない
伊達本邸だ」
本邸……
政宗先輩のお母さんがいる……
「まだ、その……
仲は悪いんですか?」
恐る恐る聞いてみると、先輩は瞳を僅かに見開き
それから、表情に陰りが落ちた
「……ああ、まあな……」
「そうですか……」
「気にすんなよ
……まあ、お前の性分じゃ無理かもしれねえが」
「……はい」
「はいって、そりゃどっちの意味だ?」
「気にしないのは無理って意味です」
「……だろうな」
先輩の腕が伸びてきて、私の頭を優しくなでる
「先輩って私の頭撫でるの好きですよね」
「何となくな」
「えー……
というか、かすがなんかもよく撫でてくれるし……」
「あいつの場合はお前が可愛いだけだろ」
「先輩は?」
「plus庇護欲」
「どういうことですか!?」
「危なっかしい、目を離すとすぐ厄介ごとに首突っ込む」
「首を突っ込んだ覚えがないです」
「Sorry,訂正する
厄介ごとに巻き込まれていく」
「大して意味が変わってない!」
むすっと唇を尖らせつつ、食べ終わったお弁当にふたをする
世間は夏、制服も合服期間から夏服へと移行した
「だって、気にするなって言うほうが無理ですよ
あんなにはっきり見ちゃったのに」
「Ah……まぁ、そうだな」
政宗先輩がため息をつく
「……まだ、嫌いなんだろうな」
目を伏せたまま、先輩がそう言う
「おれはな、おふくろの『悔い』なんだと思う
自分がいながら、子供の顔にひどい傷が残ったんだからな」
「悔い……」
当時五歳だった先輩は、お母さんからも愛されて育った
きっかけは天然痘
流行るはずのないその病気は、先輩の右目を失明させた
「ま、いつかはよくなるだろうさ」
先輩は軽い口調でそう言って、視線を窓の外に向ける
「よく晴れてるな……」
その声に誘われるように、私も窓の外に目を向ける
「鳥になれたら、自由に羽ばたけるんだろうな……」
開け放した窓から風が入る
目を細めたまま、先輩は淡く微笑んだ
「おっ、今日は夕歌もここで食べてたんだね!」
「慶次先輩」
「そうそう、さっき食堂でファンクラブの子たちから預かり物してきたんだよな!
はい、こっちが夕歌のファンクラブの子からで、こっちが政宗の方」
「なんというか……わざわざすみません……」
大方、可愛い女の子がいたから声を掛けたら、これ幸いと押し付けられたんだろうけど……
私に送られたのは、サムシングブルーのブリザードフラワー
それと、某有名ジュエリーブランドのペアマグカップ
「可愛いー!
ていうかすごいオシャレ……」
「Europeじゃあ、something-blueは純潔とか清らかさとかってな意味合いがあってな
それを身に付けた花嫁は幸せになれるんだと」
「先輩さすが、物知りですね」
「政宗は何もらったんだい?」
「こいつは……photo frameか」
「あ、これに結婚式の写真を飾るってことですかね」
「だろうね!
結婚祝いらしく、華やかなフレームじゃないか」
政宗先輩の手元を覗いて、フォトフレームの装飾の細かさに、瞬時に脳内が金額予測を始めてしまった
いい加減この庶民感溢れる思考回路も脱出しないとダメだよなぁ……
「二人はいつから一緒に住むんだい?」
「とりあえず、先輩が卒業してからですかね?」
「それがいいだろうな
そのときにゃ、もう俺も落ち着いてるだろ」
受験生で忙しい上に、私との結婚の準備まで……
大変だろうな、先輩
「無理は禁物ですよ?」
「分かってる
無理したところで良い結果にはならねぇからな」
「それ、あの時代の『独眼竜』が聞いたらなんて言うんだろうな……」
「Ah?」
政宗先輩の鋭い睨みに、慶次先輩が「あ、あははー」と取り繕う
……というか、このプレゼント、結構大きいから教室に置いておくのも邪魔になりそうだな
「新倉に持ってってもらえ」
「あ、そっか」
LEINで新倉さんを呼び出して、数分後
「お呼びでしょうか、お嬢様」
折り目正しく45度、今日も寸分の隙も何も無い、完璧執事の和真さんがにこやかに入ってきた
「すみません、これを預かっていただいてもいいですか?」
「かしこまりました
贈り物ですか?」
「あ、はい
結婚祝いにいただいて」
「左様でしたか
では、お車のほうに運ばせていただきます」
和真さんが退出して、先輩が呼び出したのであろう片倉先生が入れ違いで入ってきた
「壊すなよ」
「承知」
それだけの会話で片倉先生が退出していったので、長年一緒にいると、相手の言いたいことも分かるんだろうな、と思ったり
……そういう関係になれたらいいな、と思ってみたり
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