54 親子
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その日
政宗先輩は、どことなく覇気が感じられなかった
心ここに在らず、という感じで
……どうしちゃったんだろう?
54 親子
「──政宗殿が、でござるか?」
気になった翌日、なんとなく幸村君にこのことを相談してみた
「某は政宗殿とはあまり関わりがありませぬゆえ、はっきりとしたことは分かりませぬが……
何か心を病むことがあったのやもしれませぬ」
「心を、病む……」
今までそんなそぶりは見せなかったのになぁ……
うまく隠していたのかもしれないけど
そうだったら、気付いてあげられなかった私を殴りたいくらいだ
「成実殿はなんと?」
「それが、いいようにはぐらかされちゃってさ
多分、片倉先生に聞いても同じだろうから、もう聞かないけど」
「そう、でござるか……
政宗殿と某は、一度は大切な御仁をかけて争った仲
結果、政宗殿に負けてはしまい申したが、あの時も今も、常に堂々としておられたように感じまする」
……いつのまに先輩と誰かで争ったんだ、君は
「体調が悪いわけではないのでござろう?」
「そうなんだけど……
なんか、元気がない感じがして……
昨日の練習の時も、ぼーっとしてることがあったし」
かといって、直接先輩に聞いちゃうのもなあ……
「成実は、毎晩毎晩寄せられる縁談話を蹴るのに疲れたんじゃねえのか、とか何とか言ってたけど」
「それが理由ではないと?」
「多分……」
誰かはっきりとした理由を知ってる人いないのかな
「その件については、私が知っているかもしれないな」
学食に行っていたかすがが、購買のパンを片手に帰ってきた
「本当?」
「独眼竜とその母親の不仲は有名だからな
落ち込みたくもなるだろう」
「……お母さん」
そう言えば、先輩とお母さんって仲が悪かったんだっけ
「それに関して言うと、決して独眼竜から突き放したわけではないらしい
独眼竜はむしろ、幼い時は母親から可愛がられていた
それが一変したのが……」
「右目の傷……?」
「ああ
天然痘にかかってしまったらしい」
「天然痘……!?」
天然痘と言えば、この世界からはほとんど消えかかってるような病気
日本じゃほとんど根絶状態
「天然痘は完治したものの、右目は飛び出てしまい、とてもじゃないが見るに堪えない顔になってしまったらしい
独眼竜自身もそのせいで部屋に引きこもりがちになったようだ」
「じゃあ、政宗先輩のお母さんが、先輩を遠ざけたのも……
その、ひどい後遺症のせい?」
「そういうことだ
まあ、あの女の気持ちも分からないではないが」
そんな重い過去を背負ってるなんて、私は知らなかった
そもそも、私は政宗先輩から、先輩の過去のことを何一つ聞いてない
何も……
本当に何も知らなかった……
「私、先輩のこと知らなかった」
知ってたつもりだった
でも、何をと聞かれると、答えられない
だって、本当は何も知らないんだから
「引きこもった独眼竜を案じ、その側を離れなかったのが片倉だった
伊達輝宗……独眼竜の父親は、片倉小十郎を独眼竜の新たな右目としたんだ
当時の独眼竜の遊び相手が成実
母親から疎まれ、人間不信だった独眼竜の世話を鬼庭と原田、片倉の三人で行ったらしい
その名残で、今もあの四人は伊達家の別邸で独眼竜と共に生活している」
「そう、だったんだ」
だから、あの四人は一緒に生活してたんだ
ついでに言うと、伊達家はあの大きさで別邸なんだ……
あの敷地って広い家が軽く二軒分が建つと思うんだ
「でも、じゃあ何で政宗先輩はあんなに元気がないんだろ」
「母親と面会せねばならなくなったと聞いている」
「お母さんと?」
「まあ、すでに会った後だが
おそらく、その席で母親から何か言われたのだろうな」
「そんな……
先輩、絶対苦しいはずなのに……
私に何の相談もなかった」
頼りないからかな
それとも、私に言ってもどうしようもないから……?
「まあ、独眼竜の気持ちは奴のみが知ることだ
知りたければ本人に聞くしかないだろう
あいにく、成実は早退したからな」
そう
成実は三限目が終わるのと同時に学校を後にした
「先輩たちも帰ってるってことはないよね?」
「独眼竜ならさっき購買で会ったぞ」
じゃあ、いるんだ
「今の独眼竜は脆い
壊れないようにお前が注意してやれ」
「うん」
多分、先輩は支えてくれる人を求めてるはずだから
私が……そうなれるかは、分からないけど
「かすが」
「何だ?」
「先輩のこと……
教えてくれてありがと」
「夕歌……」
「政宗先輩あたりから、口止めされてたんでしょ?」
「知っていたのか?」
「ううん、なんとなくそうじゃないかなって思ってた
言葉を選んで、慎重に話してた感じだったから」
「……お前には敵わないな」
私は少しだけ笑みを見せて、お弁当を持って三年校舎に向かった
三年校舎の屋上でお昼を食べるのが、私と政宗先輩の習慣になりつつあったから
話しこんじゃって遅くなったから、多分先に食べちゃってるかもしれないなぁ、なんて思ってみる
大概そこに慶次先輩やらが乗り込んで、雰囲気をぶっ壊してくれるんだけども
政宗先輩は、どことなく覇気が感じられなかった
心ここに在らず、という感じで
……どうしちゃったんだろう?
54 親子
「──政宗殿が、でござるか?」
気になった翌日、なんとなく幸村君にこのことを相談してみた
「某は政宗殿とはあまり関わりがありませぬゆえ、はっきりとしたことは分かりませぬが……
何か心を病むことがあったのやもしれませぬ」
「心を、病む……」
今までそんなそぶりは見せなかったのになぁ……
うまく隠していたのかもしれないけど
そうだったら、気付いてあげられなかった私を殴りたいくらいだ
「成実殿はなんと?」
「それが、いいようにはぐらかされちゃってさ
多分、片倉先生に聞いても同じだろうから、もう聞かないけど」
「そう、でござるか……
政宗殿と某は、一度は大切な御仁をかけて争った仲
結果、政宗殿に負けてはしまい申したが、あの時も今も、常に堂々としておられたように感じまする」
……いつのまに先輩と誰かで争ったんだ、君は
「体調が悪いわけではないのでござろう?」
「そうなんだけど……
なんか、元気がない感じがして……
昨日の練習の時も、ぼーっとしてることがあったし」
かといって、直接先輩に聞いちゃうのもなあ……
「成実は、毎晩毎晩寄せられる縁談話を蹴るのに疲れたんじゃねえのか、とか何とか言ってたけど」
「それが理由ではないと?」
「多分……」
誰かはっきりとした理由を知ってる人いないのかな
「その件については、私が知っているかもしれないな」
学食に行っていたかすがが、購買のパンを片手に帰ってきた
「本当?」
「独眼竜とその母親の不仲は有名だからな
落ち込みたくもなるだろう」
「……お母さん」
そう言えば、先輩とお母さんって仲が悪かったんだっけ
「それに関して言うと、決して独眼竜から突き放したわけではないらしい
独眼竜はむしろ、幼い時は母親から可愛がられていた
それが一変したのが……」
「右目の傷……?」
「ああ
天然痘にかかってしまったらしい」
「天然痘……!?」
天然痘と言えば、この世界からはほとんど消えかかってるような病気
日本じゃほとんど根絶状態
「天然痘は完治したものの、右目は飛び出てしまい、とてもじゃないが見るに堪えない顔になってしまったらしい
独眼竜自身もそのせいで部屋に引きこもりがちになったようだ」
「じゃあ、政宗先輩のお母さんが、先輩を遠ざけたのも……
その、ひどい後遺症のせい?」
「そういうことだ
まあ、あの女の気持ちも分からないではないが」
そんな重い過去を背負ってるなんて、私は知らなかった
そもそも、私は政宗先輩から、先輩の過去のことを何一つ聞いてない
何も……
本当に何も知らなかった……
「私、先輩のこと知らなかった」
知ってたつもりだった
でも、何をと聞かれると、答えられない
だって、本当は何も知らないんだから
「引きこもった独眼竜を案じ、その側を離れなかったのが片倉だった
伊達輝宗……独眼竜の父親は、片倉小十郎を独眼竜の新たな右目としたんだ
当時の独眼竜の遊び相手が成実
母親から疎まれ、人間不信だった独眼竜の世話を鬼庭と原田、片倉の三人で行ったらしい
その名残で、今もあの四人は伊達家の別邸で独眼竜と共に生活している」
「そう、だったんだ」
だから、あの四人は一緒に生活してたんだ
ついでに言うと、伊達家はあの大きさで別邸なんだ……
あの敷地って広い家が軽く二軒分が建つと思うんだ
「でも、じゃあ何で政宗先輩はあんなに元気がないんだろ」
「母親と面会せねばならなくなったと聞いている」
「お母さんと?」
「まあ、すでに会った後だが
おそらく、その席で母親から何か言われたのだろうな」
「そんな……
先輩、絶対苦しいはずなのに……
私に何の相談もなかった」
頼りないからかな
それとも、私に言ってもどうしようもないから……?
「まあ、独眼竜の気持ちは奴のみが知ることだ
知りたければ本人に聞くしかないだろう
あいにく、成実は早退したからな」
そう
成実は三限目が終わるのと同時に学校を後にした
「先輩たちも帰ってるってことはないよね?」
「独眼竜ならさっき購買で会ったぞ」
じゃあ、いるんだ
「今の独眼竜は脆い
壊れないようにお前が注意してやれ」
「うん」
多分、先輩は支えてくれる人を求めてるはずだから
私が……そうなれるかは、分からないけど
「かすが」
「何だ?」
「先輩のこと……
教えてくれてありがと」
「夕歌……」
「政宗先輩あたりから、口止めされてたんでしょ?」
「知っていたのか?」
「ううん、なんとなくそうじゃないかなって思ってた
言葉を選んで、慎重に話してた感じだったから」
「……お前には敵わないな」
私は少しだけ笑みを見せて、お弁当を持って三年校舎に向かった
三年校舎の屋上でお昼を食べるのが、私と政宗先輩の習慣になりつつあったから
話しこんじゃって遅くなったから、多分先に食べちゃってるかもしれないなぁ、なんて思ってみる
大概そこに慶次先輩やらが乗り込んで、雰囲気をぶっ壊してくれるんだけども
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