53 仲間
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
悲しい過去だった
苦しい今だった
もう、終わりにしよう
だって──私たちは、仲間だから
53 仲間
翌日
「夕歌!」
朝、和真さんに見送られて、ファンクラブの皆さんにも熱い視線を頂いて、教室に入ったとき
かすがと幸村君が駆け寄ってきた
「ど、どうしたの?」
「政宗殿と成実殿が意識を取り戻したのでござる!」
「──え?」
政宗先輩と、成実が……?
「本当?
本当に、二人が?」
幸村君が何度も首を縦に振る
「そっか……
良かった……
本当に、良かった……」
嬉しくて、安心して
自然と涙が頬を伝っていた
「良かったな、夕歌」
かすがの手が私の頭を撫でていく
「鬼庭殿と片倉殿も順調に回復しているようでござる!
兄上がそう申しておりましたぞ」
信幸先輩の名前で思い出す
「幸村君、佐助先輩は……?」
許してあげてくれって言ったけど 、簡単には許してもらえないよね……
「大学に通っておりまする!
鬼庭殿と顔を合わせるのも怖いのか、見舞いには……」
あの佐助先輩が怖いだなんて
いまいち想像できなくて少し笑ってしまった
「今日はお見舞いに行こうと思ってるの
私とだったら、先輩も行きやすいんじゃないかな?
まあ、新倉さん付きだけど」
「うむ!
そうでござるな!」
──そのあと、佐助先輩に連絡すると
「夕歌ちゃんが一緒なら……」
と言ってくれた
大丈夫
きっと分かってくれると思うから……
──そして、約束通り放課後
「いきなりすみません、佐助先輩」
「いや、俺様もさすがに見舞いに行かなきゃなって思ってたから
夕歌ちゃんが誘ってくれて助かったよ」
佐助先輩はそう言ってはにかんだ
「怖いんだろうね、多分
俺様がしたことは許されるべきことじゃないから
こうして捕まってないことがいまだに不思議で、不安だよ」
そう語る佐助先輩には、いつものおちゃらけた雰囲気はなかった
「大丈夫ですよ
政宗先輩たちは、きっと佐助先輩の気持ちを分かってるはずです」
確証はないけど、そう思えるから──
* * *
病院に着いて、4人が一緒にいる病室へ
「政宗先輩、斎藤です」
断りを入れて、病室のドアを開ける
中に入ると、伊達家四人の目が私に向けられた
「……今さら何しに来やがった」
「……え?」
私に向けられた言葉
……ではなかった
「猿飛佐助……」
片倉先生の声が低くその名を呼ぶ
「テメェ……
何したか分かってんのか」
「待ってください、片倉先生!
佐助先輩は……!!」
「いいよ、夕歌ちゃん」
「良くないですよ!」
良くない、そんなのは
佐助先輩だけが責められるのは──おかしい話だ
「そりゃ、確かに世間から見れば先輩はひどいことをしたんだと思います
けど、昔のことだって割りきれてしまうのもおかしいと思うし……
……その、何て言えばいいのか分からないんですけど
一概に佐助先輩だけが悪いって言えない気もして……」
うまく言えないけど……ただの村娘だった私には、分からないけど……
「多分、みんな被害者だと思うんです……
大切な人を殺されて許せないと思う気持ちは、いつの時代も変わらないと思うから」
病室がシンとなる
そのとき、今まで無表情だった成実が、政宗先輩を見た
「目には目を、歯には歯を……
そんなんじゃ恨みの連鎖は断ち切れない
今回のことは俺たちだって悪い
真田と武田のオッサンを手にかけた俺たちのせいでもあるんだよ」
静かな声だった
「一度死んだから、もう遥か昔のことだから
そんなことで解決する話じゃなかったんだ
俺だって、もし織田信長がかつてのまんまだったら、きっと佐助と同じことをしたと思う
……いや、殺してやろうかと思ったよ、魔王のこと
でも……出来なかった
そんなことしたって歴史は変わらない
あの日、俺の目の前で死んだお前は生き返らない──だろ?」
誰も反論しなかった
「許して、くれるわけ……?」
「許す許さないじゃねえよ
俺にも、もちろん梵にも
誰もお前を責める権利なんかねぇって言ってんだ」
成実はそう言って、少しだけ笑みを浮かべた
「……梵
大切なやつを失う気持ちは、お前が一番知ってるはずだろ」
再び沈黙があって
ふいに、政宗先輩がため息をついた
「泣いて謝るなり頭下げるなりしてくりゃあ、可愛げの一つでもあったんだがな
……まあ、テメェがそんなことなんざしようもんなら、世界の滅亡でも起きそうか」
そう言って、先輩が口角を僅かに上げた
それは──いつもの笑み
いつも佐助先輩に向けていた、ちょっと挑発的な笑みだった
苦しい今だった
もう、終わりにしよう
だって──私たちは、仲間だから
53 仲間
翌日
「夕歌!」
朝、和真さんに見送られて、ファンクラブの皆さんにも熱い視線を頂いて、教室に入ったとき
かすがと幸村君が駆け寄ってきた
「ど、どうしたの?」
「政宗殿と成実殿が意識を取り戻したのでござる!」
「──え?」
政宗先輩と、成実が……?
「本当?
本当に、二人が?」
幸村君が何度も首を縦に振る
「そっか……
良かった……
本当に、良かった……」
嬉しくて、安心して
自然と涙が頬を伝っていた
「良かったな、夕歌」
かすがの手が私の頭を撫でていく
「鬼庭殿と片倉殿も順調に回復しているようでござる!
兄上がそう申しておりましたぞ」
信幸先輩の名前で思い出す
「幸村君、佐助先輩は……?」
許してあげてくれって言ったけど 、簡単には許してもらえないよね……
「大学に通っておりまする!
鬼庭殿と顔を合わせるのも怖いのか、見舞いには……」
あの佐助先輩が怖いだなんて
いまいち想像できなくて少し笑ってしまった
「今日はお見舞いに行こうと思ってるの
私とだったら、先輩も行きやすいんじゃないかな?
まあ、新倉さん付きだけど」
「うむ!
そうでござるな!」
──そのあと、佐助先輩に連絡すると
「夕歌ちゃんが一緒なら……」
と言ってくれた
大丈夫
きっと分かってくれると思うから……
──そして、約束通り放課後
「いきなりすみません、佐助先輩」
「いや、俺様もさすがに見舞いに行かなきゃなって思ってたから
夕歌ちゃんが誘ってくれて助かったよ」
佐助先輩はそう言ってはにかんだ
「怖いんだろうね、多分
俺様がしたことは許されるべきことじゃないから
こうして捕まってないことがいまだに不思議で、不安だよ」
そう語る佐助先輩には、いつものおちゃらけた雰囲気はなかった
「大丈夫ですよ
政宗先輩たちは、きっと佐助先輩の気持ちを分かってるはずです」
確証はないけど、そう思えるから──
* * *
病院に着いて、4人が一緒にいる病室へ
「政宗先輩、斎藤です」
断りを入れて、病室のドアを開ける
中に入ると、伊達家四人の目が私に向けられた
「……今さら何しに来やがった」
「……え?」
私に向けられた言葉
……ではなかった
「猿飛佐助……」
片倉先生の声が低くその名を呼ぶ
「テメェ……
何したか分かってんのか」
「待ってください、片倉先生!
佐助先輩は……!!」
「いいよ、夕歌ちゃん」
「良くないですよ!」
良くない、そんなのは
佐助先輩だけが責められるのは──おかしい話だ
「そりゃ、確かに世間から見れば先輩はひどいことをしたんだと思います
けど、昔のことだって割りきれてしまうのもおかしいと思うし……
……その、何て言えばいいのか分からないんですけど
一概に佐助先輩だけが悪いって言えない気もして……」
うまく言えないけど……ただの村娘だった私には、分からないけど……
「多分、みんな被害者だと思うんです……
大切な人を殺されて許せないと思う気持ちは、いつの時代も変わらないと思うから」
病室がシンとなる
そのとき、今まで無表情だった成実が、政宗先輩を見た
「目には目を、歯には歯を……
そんなんじゃ恨みの連鎖は断ち切れない
今回のことは俺たちだって悪い
真田と武田のオッサンを手にかけた俺たちのせいでもあるんだよ」
静かな声だった
「一度死んだから、もう遥か昔のことだから
そんなことで解決する話じゃなかったんだ
俺だって、もし織田信長がかつてのまんまだったら、きっと佐助と同じことをしたと思う
……いや、殺してやろうかと思ったよ、魔王のこと
でも……出来なかった
そんなことしたって歴史は変わらない
あの日、俺の目の前で死んだお前は生き返らない──だろ?」
誰も反論しなかった
「許して、くれるわけ……?」
「許す許さないじゃねえよ
俺にも、もちろん梵にも
誰もお前を責める権利なんかねぇって言ってんだ」
成実はそう言って、少しだけ笑みを浮かべた
「……梵
大切なやつを失う気持ちは、お前が一番知ってるはずだろ」
再び沈黙があって
ふいに、政宗先輩がため息をついた
「泣いて謝るなり頭下げるなりしてくりゃあ、可愛げの一つでもあったんだがな
……まあ、テメェがそんなことなんざしようもんなら、世界の滅亡でも起きそうか」
そう言って、先輩が口角を僅かに上げた
それは──いつもの笑み
いつも佐助先輩に向けていた、ちょっと挑発的な笑みだった
1/3ページ