52 日々
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「おはようございます、お嬢様」
「………」
「お嬢様?」
お嬢様って、私のことなんですよね
52 日々
色々あったあの日から数日後、私は新学期がスタートした
当然、電車通学から送迎での通学へ様変わりした私は、新倉さんに爽やかな笑顔で「行ってらっしゃいませ、お嬢様」とお見送りされ、何とかかんとか昇降口まで辿り着き
「お嬢様!?」「夕歌様にもとうとう執事が!?」「美男美女だわ……!」と、親衛隊と化したファンクラブの皆さんからの熱い視線に耐え
朝からヒットポイントを削られたまま、這う這うの体でようやく教室まで到着した
「朝から疲れているようだな」
「かすがー……」
かすがは理由が分かっているらしく、少しだけ笑みを見せた
そりゃ疲れるよね、昨日あんなことがあった上に、突然「お嬢様」とか言われてさ……
「何や悩みごとでもあるのでござるか?」
「うーん、ちょっと違うかな
急に私の生活環境が変わったから慣れなくて」
「まあ、いきなりお嬢様扱いされてもな」
幸村君が首をかしげる
「夕歌は藤野財閥の会長の孫だったんだ」
「なっ、なんと!」
「それで、私を跡継ぎにしたいらしくて
昨日から専属の執事さんがついたんだよね
かしずかれる生活っていうのが慣れなくて」
春休みも終わって、新学期
全く代わり映えしないクラスメンバーにほっとする
同時に、この場にいないあの人を思い出してしまった
「成実、さっそく皆勤終了だね」
私がそう呟くと、二人の表情が曇った
「あっ……
ごめん、変な空気にしちゃった」
「一番つらいのは夕歌だろう?」
「え……?」
「政宗殿のこと、心配でござろう」
幸村君の言葉に、私は俯いてしまう
「……成実よりは、マシだから」
事件から一週間と少し過ぎた、今日
……事件の翌日には、綱元先輩と片倉先生は意識を取り戻した
何が起きたのか知りたがる二人に、私は
『佐助先輩を責めないでください
先輩も被害者なんですから』
それだけを言うに留めた
二人はそれだけで何のことか分かってくれたようだったけど……
問題は、成実と政宗先輩のほうで……
成実は佐助先輩と交戦して、かすり傷から深い傷まで数え切れないくらい
政宗先輩は……急所を逸れてはいたものの、傷が深かった
そのせいで、2人とも血が足りなくて……
「早く目を覚ましてほしい……」
「夕歌殿……大丈夫でござる」
「二人とも殺しても死なないようなやつだからな」
「うん……そうだよね」
なんとか容態も回復したって原田さんは言ってたけど……
目を覚まさないと、安心できない……
* * *
部活も終わって、夕方
「ヤバい、電車間に合わないかも!」
腕時計は、電車があと五分で発車することを知らせていた
学校から駅まで走れば三分!
駆け込みにはなるけど、間に合うかもしれない
校門が見え、竹刀と鞄の紐をグッと握ったとき──
「お嬢様、そんなに急いで、どちらへ?」
そんな声と共に、視界が真っ黒になる
走っていて勢いがあったはずだけど、目の前の人はしっかりと受け止めてくれていた
「か、和真さん……」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
和真さんはにっこりと微笑んでから、体を離した
新倉さんと呼んでいたところ、その日のうちに「呼び捨て」をお願いされたので、妥協案として「和真さん」と呼ぶことにした
敬語もやめてほしそうだったけど、それに関しては諦めてもらった
「学院内の駐車場に配車をしております
本日も学業お疲れ様でした」
爽やかすぎる
美形なだけに、動作が何をやっても様になってる
「お嬢様?」
「あっ、今行きます」
竹刀と鞄を担ぎ直して、和真さんを追った
「お荷物をお持ちいたします」
「あ、でもこれくらい別に」
「お嬢様は、私の大切なお方ですから」
「それ答えになってない気が」
そう言っている間に、荷物が全て和真さんの手に
おまけに後部座席のドアまで開けていただいて、本当にお嬢様扱いだ
「さあ、帰りましょうか」
「あ、はい」
ひとつ首を振って、車に乗り込んだ
車は順調に進んで、交差点の赤信号で停車
「お嬢様、少し寄り道をしてもよろしいでしょうか?」
その停車中に、和真さんが聞いてきて、特に断る理由はなく……
「いいですけど……」
どこに行くんだろう
──夜の七時半
外はもう暗い
和真さんが運転する車は、ひとつの場所にたどり着いた
「ここは?」
「芳江様のご自宅です」
「おばあちゃんの……」
ドアが開けられた
中からは、キリリとした表情のスーツ姿の女の人が
「お待ち申し上げておりました、夕歌様
私、藤野芳江の秘書をしております、森口と申します」
「あ、はっ、初めまして
斎藤夕歌です」
折り目正しく礼をされ、慌てて私も礼を返す
「どうぞこちらへ」
そう言って、森口さんは歩き出した
慌てて私もそれに続き、その後ろから和真さんが玄関のドアを閉めて
「参りましょう」
そう言って私の背中を押してくれた
「………」
「お嬢様?」
お嬢様って、私のことなんですよね
52 日々
色々あったあの日から数日後、私は新学期がスタートした
当然、電車通学から送迎での通学へ様変わりした私は、新倉さんに爽やかな笑顔で「行ってらっしゃいませ、お嬢様」とお見送りされ、何とかかんとか昇降口まで辿り着き
「お嬢様!?」「夕歌様にもとうとう執事が!?」「美男美女だわ……!」と、親衛隊と化したファンクラブの皆さんからの熱い視線に耐え
朝からヒットポイントを削られたまま、這う這うの体でようやく教室まで到着した
「朝から疲れているようだな」
「かすがー……」
かすがは理由が分かっているらしく、少しだけ笑みを見せた
そりゃ疲れるよね、昨日あんなことがあった上に、突然「お嬢様」とか言われてさ……
「何や悩みごとでもあるのでござるか?」
「うーん、ちょっと違うかな
急に私の生活環境が変わったから慣れなくて」
「まあ、いきなりお嬢様扱いされてもな」
幸村君が首をかしげる
「夕歌は藤野財閥の会長の孫だったんだ」
「なっ、なんと!」
「それで、私を跡継ぎにしたいらしくて
昨日から専属の執事さんがついたんだよね
かしずかれる生活っていうのが慣れなくて」
春休みも終わって、新学期
全く代わり映えしないクラスメンバーにほっとする
同時に、この場にいないあの人を思い出してしまった
「成実、さっそく皆勤終了だね」
私がそう呟くと、二人の表情が曇った
「あっ……
ごめん、変な空気にしちゃった」
「一番つらいのは夕歌だろう?」
「え……?」
「政宗殿のこと、心配でござろう」
幸村君の言葉に、私は俯いてしまう
「……成実よりは、マシだから」
事件から一週間と少し過ぎた、今日
……事件の翌日には、綱元先輩と片倉先生は意識を取り戻した
何が起きたのか知りたがる二人に、私は
『佐助先輩を責めないでください
先輩も被害者なんですから』
それだけを言うに留めた
二人はそれだけで何のことか分かってくれたようだったけど……
問題は、成実と政宗先輩のほうで……
成実は佐助先輩と交戦して、かすり傷から深い傷まで数え切れないくらい
政宗先輩は……急所を逸れてはいたものの、傷が深かった
そのせいで、2人とも血が足りなくて……
「早く目を覚ましてほしい……」
「夕歌殿……大丈夫でござる」
「二人とも殺しても死なないようなやつだからな」
「うん……そうだよね」
なんとか容態も回復したって原田さんは言ってたけど……
目を覚まさないと、安心できない……
* * *
部活も終わって、夕方
「ヤバい、電車間に合わないかも!」
腕時計は、電車があと五分で発車することを知らせていた
学校から駅まで走れば三分!
駆け込みにはなるけど、間に合うかもしれない
校門が見え、竹刀と鞄の紐をグッと握ったとき──
「お嬢様、そんなに急いで、どちらへ?」
そんな声と共に、視界が真っ黒になる
走っていて勢いがあったはずだけど、目の前の人はしっかりと受け止めてくれていた
「か、和真さん……」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
和真さんはにっこりと微笑んでから、体を離した
新倉さんと呼んでいたところ、その日のうちに「呼び捨て」をお願いされたので、妥協案として「和真さん」と呼ぶことにした
敬語もやめてほしそうだったけど、それに関しては諦めてもらった
「学院内の駐車場に配車をしております
本日も学業お疲れ様でした」
爽やかすぎる
美形なだけに、動作が何をやっても様になってる
「お嬢様?」
「あっ、今行きます」
竹刀と鞄を担ぎ直して、和真さんを追った
「お荷物をお持ちいたします」
「あ、でもこれくらい別に」
「お嬢様は、私の大切なお方ですから」
「それ答えになってない気が」
そう言っている間に、荷物が全て和真さんの手に
おまけに後部座席のドアまで開けていただいて、本当にお嬢様扱いだ
「さあ、帰りましょうか」
「あ、はい」
ひとつ首を振って、車に乗り込んだ
車は順調に進んで、交差点の赤信号で停車
「お嬢様、少し寄り道をしてもよろしいでしょうか?」
その停車中に、和真さんが聞いてきて、特に断る理由はなく……
「いいですけど……」
どこに行くんだろう
──夜の七時半
外はもう暗い
和真さんが運転する車は、ひとつの場所にたどり着いた
「ここは?」
「芳江様のご自宅です」
「おばあちゃんの……」
ドアが開けられた
中からは、キリリとした表情のスーツ姿の女の人が
「お待ち申し上げておりました、夕歌様
私、藤野芳江の秘書をしております、森口と申します」
「あ、はっ、初めまして
斎藤夕歌です」
折り目正しく礼をされ、慌てて私も礼を返す
「どうぞこちらへ」
そう言って、森口さんは歩き出した
慌てて私もそれに続き、その後ろから和真さんが玄関のドアを閉めて
「参りましょう」
そう言って私の背中を押してくれた
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