51 真相
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苦しんだのはあなただけじゃない
みんな同じ傷を背負って
それでも、前を向いて生きている
ひとりじゃ……ないんだ
51 真相
手術が終わって少し経った頃
ふいに小太郎先輩が戻ってきた
「小太郎先輩!」
小太郎先輩はかなり急いできたのか、僅かに呼吸が乱れていた
「どうした!?」
差し出された手帳には
「二人が襲われた……!?
右目の兄さんに政宗がか!?」
元親先輩の問いに小太郎先輩がコクコクと頷く
──政宗先輩が、襲われた?
心臓が嫌な音を立てた
「それで、二人は!?」
小太郎先輩が身振りで何かを話す
「春日山さん、通訳!」
「私がか!?」
親泰君に頼まれ、かすがは慌てて通訳をした
「二人は風魔が救出したそうだ
ただ、二人ともすでにぼろぼろだったらしい
もう少ししたらここに搬送されてくるだろう」
合っているかというかすがの問いに、小太郎先輩はひとつ頷いた
「原田さん……
原田さんは!?」
「うまく逃げたようだな」
そう言った、まさにその時
病室のドアが開いた
「……原田さん!」
「夕歌さん……
すみませんでした……
若様をお守りできず……っ」
そう悔しげにもらす原田さんも襲われたのだろうか
服はあちこち埃だらけだし、声音も憔悴しきっていた
「何があったんだい?」
息を整える原田さんに、慶次先輩がそう問う
「暗闇の中であったので、はっきりとは分かりませんが……
若様と片倉様が、襲撃してきた相手をご存じのようでした」
「そう、ですか……
二人は無事なんですよね」
「風魔殿が襲撃相手を追い払ってくださったので、なんとか……」
そうだったのか……
小太郎先輩に様子を見てきてもらって正解だった……
「襲ってきた相手はどんな感じの奴だった」
元親先輩の問いに、原田さんが顔色を暗くする
「只者ではないことだけは確かです
成実殿のような格闘派とは違い、忍びのような、そんな印象でしたね」
只者ではない、忍び……
「……信じたくはなかったけどな」
元親先輩がそう漏らす
「元親先輩……?」
「ああ、俺もだよ、元親」
慶次先輩までもがそう言う
多分みんな、犯人が誰かを決めかけている
あの人が、犯人だと
──佐助先輩の仕業だと
「そ、んな」
だって、だって
「佐助先輩は、そんなことするような人じゃ……」
「夕歌」
かすがが私を遮った
「私は家業柄上、人の心を多少なりとも読むことができる
しかし、猿飛佐助と風魔小太郎
この二人だけは、読むことができないんだ
だが、一度だけ心を読んだことがある
……あいつの心には、独眼竜に対しての復讐心があった」
政宗先輩に対しての、復讐心……
「猿飛佐助は、四百年前、自分が受けたことと同じことをしようとしている」
かすががそう呟いた
「大切なものが死に、自分だけが生き残るつらさ
それを独眼竜に味わわせようとしている……」
「そんな……」
そんな……
そんなの……
被害者が誰だかわからない
四百年前に佐助先輩が受けた所業は、耐えられないくらいつらくて
そんなんじゃ、復讐したいって気持ちはよく分かった
でも……
「仕掛けてくるなら、今夜だな」
かすががそう言う
そして、私を見下ろした
「どうする?」
「………」
私は……
先輩と、話さなきゃ
「少し、先輩と話がしたい
手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
小太郎先輩も頷いてくれた
佐助先輩
あなたは今、何を考えていますか……?
* * *
消灯された病室
あるのは、外の光だけ
元就先輩の策で、伊達家の四人を同じ病室に集めた
そうすることで、佐助先輩が来る部屋を限定できる
同時に、知らないうちに殺されていた、なんていうことも避けられる
病院側にも協力を取り付けた
佐助先輩が現れたら、私がナースコールを押すことになっている
病院のフロントには、かすが
私がいる病室内には小太郎先輩が気配を殺している
時計はもうすぐ日付が変わろうという時間
「……佐助先輩……」
手にある竹刀を握りしめる
本当は竹刀なんかない方がいいんだけど
万が一ってこともあるからと言って、小太郎先輩が取ってきてくれた
登勢は原田さんと帰った
長曾我部兄弟と元就先輩、慶次先輩も帰った
……病室は本当に静かで
四人の呼吸音さえ聞こえない
今日は来ないのかな……
そう思ったとき
何か影のようなものが一瞬見えた
「……!!」
影の正体は
佐助先輩だった
「……夕歌、ちゃん……?」
相手も相当驚いたようだ
「……こんばんは」
椅子から立ち上がってそう言う
そして、ナースコールを押した
急につく部屋の明かり
同時に、小太郎先輩が佐助先輩を取り押さえていた
「風魔……!」
私はただ、佐助先輩を見つめて
そして、顔を伏せた
みんな同じ傷を背負って
それでも、前を向いて生きている
ひとりじゃ……ないんだ
51 真相
手術が終わって少し経った頃
ふいに小太郎先輩が戻ってきた
「小太郎先輩!」
小太郎先輩はかなり急いできたのか、僅かに呼吸が乱れていた
「どうした!?」
差し出された手帳には
「二人が襲われた……!?
右目の兄さんに政宗がか!?」
元親先輩の問いに小太郎先輩がコクコクと頷く
──政宗先輩が、襲われた?
心臓が嫌な音を立てた
「それで、二人は!?」
小太郎先輩が身振りで何かを話す
「春日山さん、通訳!」
「私がか!?」
親泰君に頼まれ、かすがは慌てて通訳をした
「二人は風魔が救出したそうだ
ただ、二人ともすでにぼろぼろだったらしい
もう少ししたらここに搬送されてくるだろう」
合っているかというかすがの問いに、小太郎先輩はひとつ頷いた
「原田さん……
原田さんは!?」
「うまく逃げたようだな」
そう言った、まさにその時
病室のドアが開いた
「……原田さん!」
「夕歌さん……
すみませんでした……
若様をお守りできず……っ」
そう悔しげにもらす原田さんも襲われたのだろうか
服はあちこち埃だらけだし、声音も憔悴しきっていた
「何があったんだい?」
息を整える原田さんに、慶次先輩がそう問う
「暗闇の中であったので、はっきりとは分かりませんが……
若様と片倉様が、襲撃してきた相手をご存じのようでした」
「そう、ですか……
二人は無事なんですよね」
「風魔殿が襲撃相手を追い払ってくださったので、なんとか……」
そうだったのか……
小太郎先輩に様子を見てきてもらって正解だった……
「襲ってきた相手はどんな感じの奴だった」
元親先輩の問いに、原田さんが顔色を暗くする
「只者ではないことだけは確かです
成実殿のような格闘派とは違い、忍びのような、そんな印象でしたね」
只者ではない、忍び……
「……信じたくはなかったけどな」
元親先輩がそう漏らす
「元親先輩……?」
「ああ、俺もだよ、元親」
慶次先輩までもがそう言う
多分みんな、犯人が誰かを決めかけている
あの人が、犯人だと
──佐助先輩の仕業だと
「そ、んな」
だって、だって
「佐助先輩は、そんなことするような人じゃ……」
「夕歌」
かすがが私を遮った
「私は家業柄上、人の心を多少なりとも読むことができる
しかし、猿飛佐助と風魔小太郎
この二人だけは、読むことができないんだ
だが、一度だけ心を読んだことがある
……あいつの心には、独眼竜に対しての復讐心があった」
政宗先輩に対しての、復讐心……
「猿飛佐助は、四百年前、自分が受けたことと同じことをしようとしている」
かすががそう呟いた
「大切なものが死に、自分だけが生き残るつらさ
それを独眼竜に味わわせようとしている……」
「そんな……」
そんな……
そんなの……
被害者が誰だかわからない
四百年前に佐助先輩が受けた所業は、耐えられないくらいつらくて
そんなんじゃ、復讐したいって気持ちはよく分かった
でも……
「仕掛けてくるなら、今夜だな」
かすががそう言う
そして、私を見下ろした
「どうする?」
「………」
私は……
先輩と、話さなきゃ
「少し、先輩と話がしたい
手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
小太郎先輩も頷いてくれた
佐助先輩
あなたは今、何を考えていますか……?
* * *
消灯された病室
あるのは、外の光だけ
元就先輩の策で、伊達家の四人を同じ病室に集めた
そうすることで、佐助先輩が来る部屋を限定できる
同時に、知らないうちに殺されていた、なんていうことも避けられる
病院側にも協力を取り付けた
佐助先輩が現れたら、私がナースコールを押すことになっている
病院のフロントには、かすが
私がいる病室内には小太郎先輩が気配を殺している
時計はもうすぐ日付が変わろうという時間
「……佐助先輩……」
手にある竹刀を握りしめる
本当は竹刀なんかない方がいいんだけど
万が一ってこともあるからと言って、小太郎先輩が取ってきてくれた
登勢は原田さんと帰った
長曾我部兄弟と元就先輩、慶次先輩も帰った
……病室は本当に静かで
四人の呼吸音さえ聞こえない
今日は来ないのかな……
そう思ったとき
何か影のようなものが一瞬見えた
「……!!」
影の正体は
佐助先輩だった
「……夕歌、ちゃん……?」
相手も相当驚いたようだ
「……こんばんは」
椅子から立ち上がってそう言う
そして、ナースコールを押した
急につく部屋の明かり
同時に、小太郎先輩が佐助先輩を取り押さえていた
「風魔……!」
私はただ、佐助先輩を見つめて
そして、顔を伏せた
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