50 復讐
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聞き間違いなの?
だって、たった数時間前まで
一緒に練習してたんだよ……?
50 復讐
晩御飯の片づけをしていた時、スマホからLEINの呼び出し音が聞こえてきた
「政宗先輩?」
洗い物の手を止めて、電話に出る
「もしもし?
先輩?」
返事がない
「……先輩?」
もう一度問う
[……夕歌]
掠れた、覇気のない声が聞こえてきた
「……どうか、したんですか?」
言いようのない不安に駆られながら、そう聞く
「成実と、綱元が……
刺された」
「……え……?」
足に力が入らなくなった
「どういう、ことですか?」
[そのまんまの意味だ
下校中に誰かに襲われて、刺されて……
意識不明の重体だ]
「う、そ……」
信じられなかった
信じたくなかった
だって、だって
今日、学校で手合せしたんだよ?
また私に負けたって大声でぼやいて
政宗先輩にうるさいって怒鳴られて
そんな成実が、刺されて、意識不明で、重体……?
「先輩、今どこに……?」
[まだ家にいる……
今から病院に行こうとしてるところだ
……お前も来るか?]
「……お願いします」
[分かった]
通話が切れて、静寂が訪れる
「成実……
綱元先輩……」
誰が、そんなひどいことを……
スマホを両手で胸に抱えて、目を伏せる
ちょっとしてから、インターホンが鳴って
慌てて鍵を取って、玄関を開けた
「政宗先輩……」
先輩は私を見て、目を伏せた
「……行くぞ」
「はい……」
先輩と一緒に、成実と綱元先輩が搬送されたという病院へ向かう
そこに着くまで、私たちはお互いに何も話せなかった
怖くて……不安で
ただ、お互いに手を繋いでいて
先輩の手は、ずっと震えていた
──搬送された病院に行くと、原田さんと登勢がいた
「夕歌!」
「登勢……!」
飛びついてきた登勢を抱きとめる
「成実君が……成実君が……!」
「……うん」
震える肩をそっと包んだ
「大丈夫……
成実が登勢をおいて逝くなんてことはしないよ……」
登勢が何度も頷く
「片倉先生
犯人の目星は……?」
「何一つ分かっちゃいねえ
ただ、相当の手練れってことだけははっきりしている」
「そう……ですか……」
手術中の赤いランプだけが廊下を照らす
震える登勢の肩を抱きしめ、私たちは手術室の前にあるベンチに座った
「……Shit!」
舌打ちをして、先輩が私たちに背を向ける
「政宗先輩……?」
「政宗様
どこへ行かれるのですか」
「ちょいと猿飛に会ってくる」
「佐助先輩に……?」
確かに、佐助先輩なら何か知ってるかもしれないけど……
「……若様」
原田さんが政宗先輩を呼び止めた
「猿飛殿を、疑っておられるのですか?」
「……え?」
政宗先輩は何も答えない
まさか、この事件は、佐助先輩がやったとでも言いたいの?
「現時点で、犯人は特定できていません
そのような状況の中、猿飛殿といさかいを起こした場合……
のちに伊達が叩かれることはあなた様にも分かるでしょう」
「……原田」
先輩が、私たちを振り向いてそう呟く
「あの時、俺たちは武田を潰した」
誰もが何も答えない
「その報復だとしたら、どうする」
「それは……」
原田さんが言葉に詰まった
「潰した……?」
「夕歌、奥州とは何の関係もなく育ってたお前は知る由もないだろうが……
四百年前の武田と伊達の戦、俺たちは武田を倒し、真田幸村と武田信玄を討った」
「……!」
つまりこれは、四百年以上も前の出来事の続きだということ……?
「それを、佐助先輩は許せなくて……
復讐しようと……?」
「そうかもしれねえ
そうかもしれねえし、全く違うやつの仕業かもしれねえ
だが、成実や綱元なら、そこら辺の奴らにこんな痛手を負うはずがねえんだよ
お前も見ただろ
成実はアレを本業とする奴だ」
倉庫での一件が蘇る
自分は道具だと言った、あの成実
「……どうするんですか?」
「言ってるだろうが
猿飛の奴に会いに行くんだってよ」
「私も行きます」
原田さんが間髪入れずにそう言った
「若様をお一人にするわけにはいきません
成実殿と鬼庭殿が倒れた今、若様をお守りできるのは私と片倉様のみ」
「政宗様が行くと言うのであれば、この小十郎もお供いたします」
片倉先生までがそう言う
政宗先輩は、ふいと顔をそむけて
「……行くぞ」
「「はい」」
「あ……っ」
思わず、声が出てしまっていた
政宗先輩が私を振り向く
「………」
「……夕歌」
また失ったらどうしよう
大事な人が、また、私の知らないところで居なくなったら
「安心しろ」
「でも……」
「必ず帰ってくる
約束だ」
「………」
「俺は果たせねぇ約束はしねぇ
だからここで待っててくれ、you see?」
「……はい」
不安は拭えない
けど──信じるしかないんだ
「お二人共、ここから離れないでくださいね」
原田さんの言葉に頷く
そうして、三人は病院を出て行った
だって、たった数時間前まで
一緒に練習してたんだよ……?
50 復讐
晩御飯の片づけをしていた時、スマホからLEINの呼び出し音が聞こえてきた
「政宗先輩?」
洗い物の手を止めて、電話に出る
「もしもし?
先輩?」
返事がない
「……先輩?」
もう一度問う
[……夕歌]
掠れた、覇気のない声が聞こえてきた
「……どうか、したんですか?」
言いようのない不安に駆られながら、そう聞く
「成実と、綱元が……
刺された」
「……え……?」
足に力が入らなくなった
「どういう、ことですか?」
[そのまんまの意味だ
下校中に誰かに襲われて、刺されて……
意識不明の重体だ]
「う、そ……」
信じられなかった
信じたくなかった
だって、だって
今日、学校で手合せしたんだよ?
また私に負けたって大声でぼやいて
政宗先輩にうるさいって怒鳴られて
そんな成実が、刺されて、意識不明で、重体……?
「先輩、今どこに……?」
[まだ家にいる……
今から病院に行こうとしてるところだ
……お前も来るか?]
「……お願いします」
[分かった]
通話が切れて、静寂が訪れる
「成実……
綱元先輩……」
誰が、そんなひどいことを……
スマホを両手で胸に抱えて、目を伏せる
ちょっとしてから、インターホンが鳴って
慌てて鍵を取って、玄関を開けた
「政宗先輩……」
先輩は私を見て、目を伏せた
「……行くぞ」
「はい……」
先輩と一緒に、成実と綱元先輩が搬送されたという病院へ向かう
そこに着くまで、私たちはお互いに何も話せなかった
怖くて……不安で
ただ、お互いに手を繋いでいて
先輩の手は、ずっと震えていた
──搬送された病院に行くと、原田さんと登勢がいた
「夕歌!」
「登勢……!」
飛びついてきた登勢を抱きとめる
「成実君が……成実君が……!」
「……うん」
震える肩をそっと包んだ
「大丈夫……
成実が登勢をおいて逝くなんてことはしないよ……」
登勢が何度も頷く
「片倉先生
犯人の目星は……?」
「何一つ分かっちゃいねえ
ただ、相当の手練れってことだけははっきりしている」
「そう……ですか……」
手術中の赤いランプだけが廊下を照らす
震える登勢の肩を抱きしめ、私たちは手術室の前にあるベンチに座った
「……Shit!」
舌打ちをして、先輩が私たちに背を向ける
「政宗先輩……?」
「政宗様
どこへ行かれるのですか」
「ちょいと猿飛に会ってくる」
「佐助先輩に……?」
確かに、佐助先輩なら何か知ってるかもしれないけど……
「……若様」
原田さんが政宗先輩を呼び止めた
「猿飛殿を、疑っておられるのですか?」
「……え?」
政宗先輩は何も答えない
まさか、この事件は、佐助先輩がやったとでも言いたいの?
「現時点で、犯人は特定できていません
そのような状況の中、猿飛殿といさかいを起こした場合……
のちに伊達が叩かれることはあなた様にも分かるでしょう」
「……原田」
先輩が、私たちを振り向いてそう呟く
「あの時、俺たちは武田を潰した」
誰もが何も答えない
「その報復だとしたら、どうする」
「それは……」
原田さんが言葉に詰まった
「潰した……?」
「夕歌、奥州とは何の関係もなく育ってたお前は知る由もないだろうが……
四百年前の武田と伊達の戦、俺たちは武田を倒し、真田幸村と武田信玄を討った」
「……!」
つまりこれは、四百年以上も前の出来事の続きだということ……?
「それを、佐助先輩は許せなくて……
復讐しようと……?」
「そうかもしれねえ
そうかもしれねえし、全く違うやつの仕業かもしれねえ
だが、成実や綱元なら、そこら辺の奴らにこんな痛手を負うはずがねえんだよ
お前も見ただろ
成実はアレを本業とする奴だ」
倉庫での一件が蘇る
自分は道具だと言った、あの成実
「……どうするんですか?」
「言ってるだろうが
猿飛の奴に会いに行くんだってよ」
「私も行きます」
原田さんが間髪入れずにそう言った
「若様をお一人にするわけにはいきません
成実殿と鬼庭殿が倒れた今、若様をお守りできるのは私と片倉様のみ」
「政宗様が行くと言うのであれば、この小十郎もお供いたします」
片倉先生までがそう言う
政宗先輩は、ふいと顔をそむけて
「……行くぞ」
「「はい」」
「あ……っ」
思わず、声が出てしまっていた
政宗先輩が私を振り向く
「………」
「……夕歌」
また失ったらどうしよう
大事な人が、また、私の知らないところで居なくなったら
「安心しろ」
「でも……」
「必ず帰ってくる
約束だ」
「………」
「俺は果たせねぇ約束はしねぇ
だからここで待っててくれ、you see?」
「……はい」
不安は拭えない
けど──信じるしかないんだ
「お二人共、ここから離れないでくださいね」
原田さんの言葉に頷く
そうして、三人は病院を出て行った
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