49 疑惑
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逃げろったって……
血だらけで、虫の息で……
今にも死んじまいそうなお前を残して、逃げるわけねえだろ
49 疑惑
「……何、だよ……
これ……」
漂う血の匂いに、鼻を覆う
鉄の匂い……ああくそ、否が応でも反応してしまう
右手がびくりと撥ねる
身体の底から疼きが走る
ヤバい
今のままだと人を殺しちまう
すぐにここを離れねえと……
「あはは、あんたってそんなとこまで変わんないんだ?
前も修羅だとか言われてたもんね」
振り返らないまま、佐助がそう言う
修羅、と佐助は言った
それは……前世での『俺』の二つ名……
こいつ、記憶があるのか
「お前……
何したか分かってんのかよ……!」
暗器を手にとって、そう問う
応戦してる場合じゃない、逃げなければ
それは分かっていた
槍での戦闘ならいざ知らず、暗器での戦いは──圧倒的に佐助のほうが数段上だ
「分かってるけど?
あんたらのせいで武田も真田も滅びたんだ
今度はあんたら伊達に滅びてもらわなきゃ、不公平だろ」
「……公平だとか不公平だとか、訳わかんねえよ!
あの時のことは関係ねえだろ!
遅かれ早かれ、お前たちだって豊臣に恭順してたはずだ!」
「あんたさぁ、分かってる?
確かに俺様たちは豊臣に従ったかもしれないけど
潰されるよりはそっちがいいに決まってたじゃん」
暗器を握る手に力を込める
「だからって……
だからって、今の世で人を殺していい理由にはならねえだろうが!」
そう叫んで、苦無を投げる
「本業の忍びに勝てると思ってんの?」
簡単に弾かれた苦無
同時に佐助からも同じように苦無が投げられる
空中に飛んでそれら全てをかわし、そのまま隠し持っていた二節棍棒を繋げて振り下ろす
向こうは暗器が主要の武器だが、俺だって長物が主要の武器だった男だ
苦無やら何やらよりも、棍棒を振り回すほうが性に合う
「体術はそこそこいける感じだね」
「なんでだよ!
なんで綱元を刺した!
綱元はお前をダチだと思って一緒に行動してたんだろ!!
なんでそんな、裏切るようなことしたんだよ!」
自分で言いながら分かる
俺の声は、今の佐助には届かない
今のあいつにとって、俺も殺す対象だ
そして、原田も、こじゅ兄も
ひいては、梵も……
「くそっ!」
佐助からの苦無を全部弾き返して、深呼吸を一つ
理性は無くしてはいけない──だが、沈めなければならない
スイッチを切り替える
今の俺は、情なんてもんは感じない
目の前の敵を排除する道具だ
「殺る目だね」
佐助が呟く
俺は無言のまま棍棒を振り上げる
佐助はそれをかわして、綱元の血がついた脇差を振りかぶる
棍棒で弾いてから、再び距離を取った
「いいのか?
学院の生徒がここを通るかもしれねえぞ?」
「そしたらそいつも殺すだけだろ」
「はっ、んなことしてたら、それこそ武田は没落するだろうな
この学院にいるのは有名企業とか、財界や政界に大きな勢力を誇るような家の子息女しかいねえ
そんなとこの令嬢やら跡取りやらを殺したら、武田はまず信用を失うな」
「だからバレないように殺るんだよ」
一瞬で間合いを詰められて、脇差が危うく刺さりそうになる
「っぶねえなこの野郎!」
かわしざまに苦無を飛ばす
それも難なく弾かれるが、そんなものはお見通しだ
地面を転がり、起き上がってから棍棒を構える
「くそ……隙がねぇな」
何とかして隙を見つけて、撤退しなければ──そう考えた時
「成……実」
綱元の弱々しい声が聞こえた
思わずそれに気をそらしたとき
目の前に、そいつはいた
「……!!」
「死ね」
簡単にやられたくはなかったから
俺は、棍棒を棄てて
「なっ!?」
佐助に体当たりした
「ぐ──ッ!!」
佐助の脇差が、根元まで腹に突き刺さる
ああ……
これ……死んだ、かもな……
なんて、結構冷静に考えていたりする
血にぬれた手で、佐助が脇差を引き抜いた
「う……」
俺の右手にある暗器は
佐助の首を掻くことなく
首の皮を少し切っただけだった
手から暗器が滑り落ちて
軽い金属音が合図であるかのように
唐突に、俺の意識は途切れた
……梵……
梵が……危ない……
血だらけで、虫の息で……
今にも死んじまいそうなお前を残して、逃げるわけねえだろ
49 疑惑
「……何、だよ……
これ……」
漂う血の匂いに、鼻を覆う
鉄の匂い……ああくそ、否が応でも反応してしまう
右手がびくりと撥ねる
身体の底から疼きが走る
ヤバい
今のままだと人を殺しちまう
すぐにここを離れねえと……
「あはは、あんたってそんなとこまで変わんないんだ?
前も修羅だとか言われてたもんね」
振り返らないまま、佐助がそう言う
修羅、と佐助は言った
それは……前世での『俺』の二つ名……
こいつ、記憶があるのか
「お前……
何したか分かってんのかよ……!」
暗器を手にとって、そう問う
応戦してる場合じゃない、逃げなければ
それは分かっていた
槍での戦闘ならいざ知らず、暗器での戦いは──圧倒的に佐助のほうが数段上だ
「分かってるけど?
あんたらのせいで武田も真田も滅びたんだ
今度はあんたら伊達に滅びてもらわなきゃ、不公平だろ」
「……公平だとか不公平だとか、訳わかんねえよ!
あの時のことは関係ねえだろ!
遅かれ早かれ、お前たちだって豊臣に恭順してたはずだ!」
「あんたさぁ、分かってる?
確かに俺様たちは豊臣に従ったかもしれないけど
潰されるよりはそっちがいいに決まってたじゃん」
暗器を握る手に力を込める
「だからって……
だからって、今の世で人を殺していい理由にはならねえだろうが!」
そう叫んで、苦無を投げる
「本業の忍びに勝てると思ってんの?」
簡単に弾かれた苦無
同時に佐助からも同じように苦無が投げられる
空中に飛んでそれら全てをかわし、そのまま隠し持っていた二節棍棒を繋げて振り下ろす
向こうは暗器が主要の武器だが、俺だって長物が主要の武器だった男だ
苦無やら何やらよりも、棍棒を振り回すほうが性に合う
「体術はそこそこいける感じだね」
「なんでだよ!
なんで綱元を刺した!
綱元はお前をダチだと思って一緒に行動してたんだろ!!
なんでそんな、裏切るようなことしたんだよ!」
自分で言いながら分かる
俺の声は、今の佐助には届かない
今のあいつにとって、俺も殺す対象だ
そして、原田も、こじゅ兄も
ひいては、梵も……
「くそっ!」
佐助からの苦無を全部弾き返して、深呼吸を一つ
理性は無くしてはいけない──だが、沈めなければならない
スイッチを切り替える
今の俺は、情なんてもんは感じない
目の前の敵を排除する道具だ
「殺る目だね」
佐助が呟く
俺は無言のまま棍棒を振り上げる
佐助はそれをかわして、綱元の血がついた脇差を振りかぶる
棍棒で弾いてから、再び距離を取った
「いいのか?
学院の生徒がここを通るかもしれねえぞ?」
「そしたらそいつも殺すだけだろ」
「はっ、んなことしてたら、それこそ武田は没落するだろうな
この学院にいるのは有名企業とか、財界や政界に大きな勢力を誇るような家の子息女しかいねえ
そんなとこの令嬢やら跡取りやらを殺したら、武田はまず信用を失うな」
「だからバレないように殺るんだよ」
一瞬で間合いを詰められて、脇差が危うく刺さりそうになる
「っぶねえなこの野郎!」
かわしざまに苦無を飛ばす
それも難なく弾かれるが、そんなものはお見通しだ
地面を転がり、起き上がってから棍棒を構える
「くそ……隙がねぇな」
何とかして隙を見つけて、撤退しなければ──そう考えた時
「成……実」
綱元の弱々しい声が聞こえた
思わずそれに気をそらしたとき
目の前に、そいつはいた
「……!!」
「死ね」
簡単にやられたくはなかったから
俺は、棍棒を棄てて
「なっ!?」
佐助に体当たりした
「ぐ──ッ!!」
佐助の脇差が、根元まで腹に突き刺さる
ああ……
これ……死んだ、かもな……
なんて、結構冷静に考えていたりする
血にぬれた手で、佐助が脇差を引き抜いた
「う……」
俺の右手にある暗器は
佐助の首を掻くことなく
首の皮を少し切っただけだった
手から暗器が滑り落ちて
軽い金属音が合図であるかのように
唐突に、俺の意識は途切れた
……梵……
梵が……危ない……
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