48 謝罪
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俺は罪を犯した
守るべきものを守れなかった
悔やんでも悔やみきれない
一生背負うだろう罪
48 謝罪
空は快晴
成実と亘理様、政宗様と夕歌が出かけてから
俺は一人、茜の墓参りに行っていた
──今から四百年前
当時も、俺は政宗様にお仕えしていた
あの頃は政略的な婚姻が主流で……
俺もそうだった
顔も名前も知らぬ姫との、望まない婚姻を強いられた
茜に何といえばよいのか
それだけが頭を占めた
祝言ののち、城下にはほとんど降りることもなくなり
久々に降りてみれば、茜は病ですでにこの世を去っていた
儚いものだと思った
何度も転生を繰り返して、ようやくつかんだその手を
俺はまた、自分から離してしまう
──そっと手を合わせて、目を閉じる
さわさわと風が木々を揺らしていく
「次は……」
一緒に、歳を取ってから死のう
まだお前にしてやれることはたくさん残ってる
* * *
それから数日が過ぎた
卒業した俺は暇……
というわけでもなく
「……はぁ……」
自然とため息が漏れる
「どうしたのです?」
宗時が俺にそう尋ねて、俺の手の中にある手紙を見て苦笑いを浮かべた
「また、ご縁談の?」
「ああ……
全く……俺の親はせっかちなんだな」
「早く孫が見たいのでは?」
「よせ……
第一、俺は結婚する気などない」
「それは失礼」
笑顔を浮かべたまま、宗時の手が俺の前に紅茶を置く
「お断りのお返事を書いてはいかがです」
「そうするよ
まだ成人してもいないのに既婚者はな……」
「いいじゃありませんか
成人式に子供の写真を見せびらかすのも」
「やめてくれ」
手紙を折りたたんで、机に置く
「鬼庭家の男子は俺だけだ……
嫡男を急ぐ気持ちも分かる
だからと言って……」
「……まだ、気持ちの整理がつかないと?」
宗時を見上げる
「……ついてないわけじゃないさ
ただ、もう少し……
あともう少しだけ、待ってほしいだけだ」
「四百年前から学びませんね、鬼庭殿は」
「……うるさい」
「あの時も散々待ってくれと言った挙句、しびれを切らしたお父上に勝手に決められたんですよ」
「しかも、事後報告の書簡だった」
脇から聞こえてきたのは成実の声
「どこから聞いていた?」
「四百年前から学ばねぇなってあたり」
どこか懐かしそうに、けれど哀愁を漂わせた笑みを浮かべた成実が、宗時から紅茶を受け取った
「……ま、どうせお前のことだから、待ってくれって言うんだろ」
「当然だ」
「そろそろ身を固めたらどうだー?
承諾するまでうるせえぞ、あの人」
「俺が一番知ってる」
ため息をついたその時、玄関が開く音がした
「我らが若様のお帰りだな」
成実が指を鳴らす
原田も頬を緩め、俺を見下ろした
「行きましょうか、鬼庭殿」
「ああ」
「行ってらー」
「お前、いつか不敬罪に問われるぞ」
「まっさか」
ひらひらと手を振る成実を残して、俺と宗時は政宗様を出迎える
まぁ、成実は立場が立場だしな……
──政宗様の護衛役、仕える立場を取りながら、政宗様が家を継げなくなった場合の後釜
政宗様のために命を張りつつも、死ぬことは許されない
……難儀な立場だ、と思う
その立場に不平不満も愚痴も零さないのだから、成実は俺たちなどよりもずっと……大人だ
「お帰りなさいませ、政宗様」
「お荷物、お預かりいたします」
「出迎えてもらって悪いな」
鞄を受け取る
「小十郎様は?」
「小十郎なら畑に行ったぜ」
苦笑いを残して、政宗様がご自室に向かわれる
その後ろ姿を見送っていると、「ふぅん」と声がして、いつの間にか成実がリビングから出てきていた
「梵にも毎日ご縁談が来てるよなー
まあ全部蹴ってるけど」
「あの人は夕歌さんを迎える気でいらっしゃいますから」
宗時がにこりともせずにそう言う
そんな宗時に、俺と成実は目を合わせ
成実は軽く肩をすくめ、リビングへと戻っていった
守るべきものを守れなかった
悔やんでも悔やみきれない
一生背負うだろう罪
48 謝罪
空は快晴
成実と亘理様、政宗様と夕歌が出かけてから
俺は一人、茜の墓参りに行っていた
──今から四百年前
当時も、俺は政宗様にお仕えしていた
あの頃は政略的な婚姻が主流で……
俺もそうだった
顔も名前も知らぬ姫との、望まない婚姻を強いられた
茜に何といえばよいのか
それだけが頭を占めた
祝言ののち、城下にはほとんど降りることもなくなり
久々に降りてみれば、茜は病ですでにこの世を去っていた
儚いものだと思った
何度も転生を繰り返して、ようやくつかんだその手を
俺はまた、自分から離してしまう
──そっと手を合わせて、目を閉じる
さわさわと風が木々を揺らしていく
「次は……」
一緒に、歳を取ってから死のう
まだお前にしてやれることはたくさん残ってる
* * *
それから数日が過ぎた
卒業した俺は暇……
というわけでもなく
「……はぁ……」
自然とため息が漏れる
「どうしたのです?」
宗時が俺にそう尋ねて、俺の手の中にある手紙を見て苦笑いを浮かべた
「また、ご縁談の?」
「ああ……
全く……俺の親はせっかちなんだな」
「早く孫が見たいのでは?」
「よせ……
第一、俺は結婚する気などない」
「それは失礼」
笑顔を浮かべたまま、宗時の手が俺の前に紅茶を置く
「お断りのお返事を書いてはいかがです」
「そうするよ
まだ成人してもいないのに既婚者はな……」
「いいじゃありませんか
成人式に子供の写真を見せびらかすのも」
「やめてくれ」
手紙を折りたたんで、机に置く
「鬼庭家の男子は俺だけだ……
嫡男を急ぐ気持ちも分かる
だからと言って……」
「……まだ、気持ちの整理がつかないと?」
宗時を見上げる
「……ついてないわけじゃないさ
ただ、もう少し……
あともう少しだけ、待ってほしいだけだ」
「四百年前から学びませんね、鬼庭殿は」
「……うるさい」
「あの時も散々待ってくれと言った挙句、しびれを切らしたお父上に勝手に決められたんですよ」
「しかも、事後報告の書簡だった」
脇から聞こえてきたのは成実の声
「どこから聞いていた?」
「四百年前から学ばねぇなってあたり」
どこか懐かしそうに、けれど哀愁を漂わせた笑みを浮かべた成実が、宗時から紅茶を受け取った
「……ま、どうせお前のことだから、待ってくれって言うんだろ」
「当然だ」
「そろそろ身を固めたらどうだー?
承諾するまでうるせえぞ、あの人」
「俺が一番知ってる」
ため息をついたその時、玄関が開く音がした
「我らが若様のお帰りだな」
成実が指を鳴らす
原田も頬を緩め、俺を見下ろした
「行きましょうか、鬼庭殿」
「ああ」
「行ってらー」
「お前、いつか不敬罪に問われるぞ」
「まっさか」
ひらひらと手を振る成実を残して、俺と宗時は政宗様を出迎える
まぁ、成実は立場が立場だしな……
──政宗様の護衛役、仕える立場を取りながら、政宗様が家を継げなくなった場合の後釜
政宗様のために命を張りつつも、死ぬことは許されない
……難儀な立場だ、と思う
その立場に不平不満も愚痴も零さないのだから、成実は俺たちなどよりもずっと……大人だ
「お帰りなさいませ、政宗様」
「お荷物、お預かりいたします」
「出迎えてもらって悪いな」
鞄を受け取る
「小十郎様は?」
「小十郎なら畑に行ったぜ」
苦笑いを残して、政宗様がご自室に向かわれる
その後ろ姿を見送っていると、「ふぅん」と声がして、いつの間にか成実がリビングから出てきていた
「梵にも毎日ご縁談が来てるよなー
まあ全部蹴ってるけど」
「あの人は夕歌さんを迎える気でいらっしゃいますから」
宗時がにこりともせずにそう言う
そんな宗時に、俺と成実は目を合わせ
成実は軽く肩をすくめ、リビングへと戻っていった
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