46 氷竜
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夢を見た
昔の夢
みんなの昔とは違う
何百年も昔
武の伊達成実として戦場に立っていた時の夢
46 氷竜
「目覚め悪い……」
窓から入ってくる光が恨めしい
まだ三月下旬のくせに寝汗かよ……
起きようとしたところで、顔のすぐ横のケータイに気付いた
「……寝落ちした?」
確か昨日の夜は……
登勢とLEINしてた、ような
そのあと梵がやっとこさで蹴った縁談話の事後処理で、俺たちは夜通し働いてたんだっけ?
んで、確か寝たのが三時半……とかそこら
……現在七時
仮眠じゃねーか
というか、むしろ起きてしまう自分の身体が憎い
「もっと寝たいけどなー……」
変な夢を見たせいか、妙に意識がはっきりしてる
もう一度スマホで時間を確認して
あくびをしながら部屋を出た
廊下を歩いていると
「にゃー」
「ん?
おー、シロ」
登勢の家で飼っている白猫が足に身体を摺り寄せてきた
ってことは亘理家の奴が来てんのか
「そういや今日は登勢が来るとか言ってたなー
けどまさかこんな朝早くから来るわけ……」
来るわけ……
ありますね……
俺の脳裏に、「会いたいから来ちゃった」と笑ってやってきた一月の登勢が浮んだ
* * *
「まだ起きてないっていうから、お邪魔してたの」
目の前でニコニコとそう話す登勢
ちなみに俺は──いや、正確に言うと俺と綱元は、遅い朝食を取っている
こじゅ兄は例によってちゃんと定時に起きた
何で起きられんだよ
「寝癖ついてるね」
「うるせー
大体、昨日は俺たち、夜通し本家で働いてたんだぜ?」
「ああ、また政宗さんの?」
「ご名答ー
……っつか綱元、その梵は?」
「まだ寝ていらっしゃるようだ」
「のんきなもんだよなぁ……
お前のお従弟様が睡眠時間削って事後処理してやったってのに」
ちくしょう、眠すぎる……
第一、何でよりにもよって今日あんな夢見るんだよ……
思い出しちまったじゃねえか
……伊達軍が
織田に完全に敗北を喫したあの日──
あの日のことだけは、忘れられそうもない
梵には言っていないが……あの戦で、梵は──伊達政宗は、討ち取られた
俺の……俺たちの目の前で、梵は、魔王の手によって殺された
いつもそこで目が覚める
銃声、魔王の笑い声、こじゅ兄や綱元、俺の──梵の名前を叫ぶ声
そして──がらくたのように投げ捨てられた、梵の身体
「……成実君?」
「っ!」
ぼーっとしてた
疲れがたまってるのかもしれない
「大丈夫?」
「……平気
心配すんなよ」
「どこが大丈夫だ、馬鹿野郎
目の下にクマ作りやがって」
「って!
いってえなこじゅ兄!
どつくな!」
「辛気くせえ顔するんじゃねぇ」
「はぁ?
辛気くせえ顔なんか……」
してない
いや
してるかもしれない
「梵はまだ寝てるんだって?」
「今起きられた
今日は夕歌と二人であの場所に行くらしい」
「……あの場所、ね」
現代じゃあ、ただの梵が知ってる秘密の場所
戦国乱世だったあの頃は
あの場所は──
ふと気になって、綱元の服をちょいちょいと引っ張った
「どうした?」
「あのさ……
夕歌って、覚えてると思うか?
昔のこととか……」
「さぁ……覚えていたとしても、俺たちのことは知らなかったと思うぞ
彼女と面識があったのは、政宗様だけだしな」
「そっか、そうだよな」
昔の俺も話に聞いてたくらいだ
梵が惚れた女──それも、それまでの惚れた腫れたなんてもんじゃない
本気で梵は、『夕歌』を愛していた
だけど、あの時代ってのは、今以上に身分や立場がものを言う時代だった
当然だが、奥州筆頭である梵と、ただの一介の村娘であった彼女とは、別れるしかなかったと認識している
認識、というのは、その当時の感情が俺には備わっていないから
梵が殺される瞬間の記憶は……さすがに、ぞっとするし、肝が冷えるけど
それ以外の記憶となると、ただ「事実」としての認識でしかなくて、その当時抱いたであろう「楽しい」やら何やらの感情はどこかに行ってしまっている
「……ごちそうさん」
まぁ、それでいいかなとは思ってるんだけど
別にそれで不自由したりとかもないし
……ああでも、亘理御前との記憶は、楽しそうだなって思うかな
昔の夢
みんなの昔とは違う
何百年も昔
武の伊達成実として戦場に立っていた時の夢
46 氷竜
「目覚め悪い……」
窓から入ってくる光が恨めしい
まだ三月下旬のくせに寝汗かよ……
起きようとしたところで、顔のすぐ横のケータイに気付いた
「……寝落ちした?」
確か昨日の夜は……
登勢とLEINしてた、ような
そのあと梵がやっとこさで蹴った縁談話の事後処理で、俺たちは夜通し働いてたんだっけ?
んで、確か寝たのが三時半……とかそこら
……現在七時
仮眠じゃねーか
というか、むしろ起きてしまう自分の身体が憎い
「もっと寝たいけどなー……」
変な夢を見たせいか、妙に意識がはっきりしてる
もう一度スマホで時間を確認して
あくびをしながら部屋を出た
廊下を歩いていると
「にゃー」
「ん?
おー、シロ」
登勢の家で飼っている白猫が足に身体を摺り寄せてきた
ってことは亘理家の奴が来てんのか
「そういや今日は登勢が来るとか言ってたなー
けどまさかこんな朝早くから来るわけ……」
来るわけ……
ありますね……
俺の脳裏に、「会いたいから来ちゃった」と笑ってやってきた一月の登勢が浮んだ
* * *
「まだ起きてないっていうから、お邪魔してたの」
目の前でニコニコとそう話す登勢
ちなみに俺は──いや、正確に言うと俺と綱元は、遅い朝食を取っている
こじゅ兄は例によってちゃんと定時に起きた
何で起きられんだよ
「寝癖ついてるね」
「うるせー
大体、昨日は俺たち、夜通し本家で働いてたんだぜ?」
「ああ、また政宗さんの?」
「ご名答ー
……っつか綱元、その梵は?」
「まだ寝ていらっしゃるようだ」
「のんきなもんだよなぁ……
お前のお従弟様が睡眠時間削って事後処理してやったってのに」
ちくしょう、眠すぎる……
第一、何でよりにもよって今日あんな夢見るんだよ……
思い出しちまったじゃねえか
……伊達軍が
織田に完全に敗北を喫したあの日──
あの日のことだけは、忘れられそうもない
梵には言っていないが……あの戦で、梵は──伊達政宗は、討ち取られた
俺の……俺たちの目の前で、梵は、魔王の手によって殺された
いつもそこで目が覚める
銃声、魔王の笑い声、こじゅ兄や綱元、俺の──梵の名前を叫ぶ声
そして──がらくたのように投げ捨てられた、梵の身体
「……成実君?」
「っ!」
ぼーっとしてた
疲れがたまってるのかもしれない
「大丈夫?」
「……平気
心配すんなよ」
「どこが大丈夫だ、馬鹿野郎
目の下にクマ作りやがって」
「って!
いってえなこじゅ兄!
どつくな!」
「辛気くせえ顔するんじゃねぇ」
「はぁ?
辛気くせえ顔なんか……」
してない
いや
してるかもしれない
「梵はまだ寝てるんだって?」
「今起きられた
今日は夕歌と二人であの場所に行くらしい」
「……あの場所、ね」
現代じゃあ、ただの梵が知ってる秘密の場所
戦国乱世だったあの頃は
あの場所は──
ふと気になって、綱元の服をちょいちょいと引っ張った
「どうした?」
「あのさ……
夕歌って、覚えてると思うか?
昔のこととか……」
「さぁ……覚えていたとしても、俺たちのことは知らなかったと思うぞ
彼女と面識があったのは、政宗様だけだしな」
「そっか、そうだよな」
昔の俺も話に聞いてたくらいだ
梵が惚れた女──それも、それまでの惚れた腫れたなんてもんじゃない
本気で梵は、『夕歌』を愛していた
だけど、あの時代ってのは、今以上に身分や立場がものを言う時代だった
当然だが、奥州筆頭である梵と、ただの一介の村娘であった彼女とは、別れるしかなかったと認識している
認識、というのは、その当時の感情が俺には備わっていないから
梵が殺される瞬間の記憶は……さすがに、ぞっとするし、肝が冷えるけど
それ以外の記憶となると、ただ「事実」としての認識でしかなくて、その当時抱いたであろう「楽しい」やら何やらの感情はどこかに行ってしまっている
「……ごちそうさん」
まぁ、それでいいかなとは思ってるんだけど
別にそれで不自由したりとかもないし
……ああでも、亘理御前との記憶は、楽しそうだなって思うかな
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