40 未来と明日と幸せと
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未来なんて無いと思った
明日なんて来ないと思った
幸せなんて訪れないと思った
けれど、それを俺が求めても良いのなら
今度はもう、迷わない
40 未来と明日と幸せと
部屋を出た勢いのままに夕歌を抱きしめて
「ありがとう」と、やっと伝えられた
……けれど、返ってきたのは、想像していたどの言葉でもなくて、夕歌の焦った声だった
「……いや、ちょっ、成実!?」
慌てて離れようとする夕歌の身体を離してやる
そりゃそうだ、付き合ってもいねぇ相手に抱きしめられちゃあな
「悪い、梵がいねえからいっか……って……
思って……」
「……誰が、いねぇって?」
横から、そんな静かな怒りの声が聞こえてきた
あ、俺……死んだ……
別の意味で死んだ
潤滑油の足りていないロボットのように、ガクガクと隣に顔を向けると
そこには、青筋を立てて笑顔でブチ切れる──梵がいるわけで
「ほーお……
人の女に手ぇ出すか……
しかもよりによって、俺の」
「ま、政宗様っ!
これはいささか致し方ないことかと!」
あーいや、これはだめだ
長年の付き合いがそう結論付ける
どう転んでも俺がぶん殴られて終わるやつだ
「俺が居なけりゃ勝手に夕歌をhugしていいとでも思ったか?」
「ま、政宗様……!
それはいくら何でも心が狭すぎまするぞ!」
「Shut up!
テメエ後で泣かす!」
「えぇぇぇ!?
お前今の流れ考えてそこは大目に見ろよ!!
今の状況分かってる!?
ねえ俺たちが仲直りしたの分かってくれねえの!?
夕歌っ、お前も何か言ってくれよ!」
そう、夕歌に救いを求めた視線を送ると
「ごめん、私でもちょっと無理」
「ですよね」
神よ、なぜあなたは俺を見放したのか
立ってしまった死亡フラグをどうすればいいのか分からない
というかどうにもできないですね
「梵、とりあえず一旦落ち着こう、な?
今のは仕方ねぇよ、つーかほら、俺にはちゃんと許嫁がいるしさ?」
「言いてぇことはそれだけか?」
「いや、いやぁ~……
あの……
……四の字固めは勘弁してください……」
「All right.
ジャーマンスープレックスで妥協してやる」
「死ぬ!!」
「政宗様!
ご自重なされよ!
廊下ではクッションとなるものがございませぬゆえ、成実が危険です!」
「その前にジャーマン自体をやめさせてくれこじゅ兄ー!!」
「Ha!
竜の女に手を出した罰は重いぜ!」
「ぎゃあ!
え、ちょっと待ってほんとに?
うわ馬鹿やめろっ、腰取られた!
うそ誰か助け、こじゅ兄!」
「大人しく食らいやがれ!!」
「あー!!」
まずーい!!
持ち上げられるわけにはいかないと、足に力を入れて踏ん張ったとき
「コラァァァ!!
廊下で格闘技をしなぁぁぁい!!」
「は、原田ぁぁぁ!!」
「若様!
手をお放しなさい!」
「……チッ」
舌打ちをした梵が俺を解放する
良かった、原田がいてくれて良かった
「原田ぁー!!」
「あ、すみません成実殿、抱き着くのはやめていただきたいです
男色家だと思われたら立ち直れませんので」
「上げて落とすなぁぁぁ!!!」
「原田の奴、綱元がいないってんでここぞとばかりに……」
「やれやれ……
ようやく、いつもの別邸らしくなってきましたな」
「ぐっ、そうだった……
俺ってそういうポジションだった……」
まあ、原田の仲裁で何とか梵の怒りは収まったけど……
あまりにもいつも通り過ぎて、心がつらすぎるというか
「成実ってどういうポジションなの……」
「hierarchyの底辺」
「うるせーな!
どうせ俺は間の悪い奴だよ!」
「間も悪ければ運も悪いというか……」
「原田頼む、お前だけは俺の味方でいてほしいんだ」
「心中お察しします」
「それほんとにお察しできてる?」
ああくそ、だから吹っ切れた原田は厄介なんだ
普段の温厚さからは想像もつかないくらい、綱元並みの毒を吐いてくるというか
……普段から綱元のストレス解消相手をさせられている分、原田のストレスをぶつける相手が俺になるというか……
いやなんだこれ、ようやく色々から立ち直ったらこの扱いってどういうこと?
俺が何をしたというんだろう
全くもって解せない……
「ああ、そういえば成実殿」
「なんだ、まだなんかあんのか!?」
「あーこりゃ完全に疑心暗鬼だな」
「誰のせいだ、誰の!!」
「知らねぇな」
「腹立つー!!」
「まぁまぁ、悪い話ではありませんから
明日の午前中、亘理の御令嬢がお見えになるそうです」
「へっ?
明日ぁ!?」
「はい、何か問題がありましたか?」
「いや……俺、明日、学校……」
……そういや明日って学校だったな、土曜だけど
午前中で終わるっちゃ終わるけど、明日は授業だな?
自分で言っといてだけど、よく覚えてたな俺!
「……そうでしたか……
では、そのように折り返しご連絡を入れておきますね」
「悪いな、頼んだ」
「……そうだった、明日って学校だった……」
「その口ぶりだとお前も忘れてたやつか、夕歌……」
「すこーんと抜けてましたね」
「忘れるな」
「あでっ
殴ることないじゃないですか先生!!」
夕歌の頭をパコンと小突いたこじゅ兄が耳を塞ぐ
塞ぐくらいなら最初からやるなっつの
「そういや一年は明日は課外か
大変だな」
「あー、二年のお前は課外とかねぇもんな……」
「ないの!?」
「ねぇよ、課外なんてやるのは一年だけだ」
「えぇ!?
先輩ずるいです!!」
「いや、ずるいも何も去年の俺は課外受けてたんだが」
「むぅ……」
「可愛くむくれたって課外はなくならねぇよ、諦めろ夕歌」
「いや可愛くはなかったと思いますけど」
条件反射の夕歌の返しもいつも通りスルーして
俺たちは遅めの晩メシを食べることにした
……なんか、いいな、こういうの
こんな光景が明日も明後日も、ずーっと先も続くんだと思うと……
どうしようもなく──嬉しいんだ
明日なんて来ないと思った
幸せなんて訪れないと思った
けれど、それを俺が求めても良いのなら
今度はもう、迷わない
40 未来と明日と幸せと
部屋を出た勢いのままに夕歌を抱きしめて
「ありがとう」と、やっと伝えられた
……けれど、返ってきたのは、想像していたどの言葉でもなくて、夕歌の焦った声だった
「……いや、ちょっ、成実!?」
慌てて離れようとする夕歌の身体を離してやる
そりゃそうだ、付き合ってもいねぇ相手に抱きしめられちゃあな
「悪い、梵がいねえからいっか……って……
思って……」
「……誰が、いねぇって?」
横から、そんな静かな怒りの声が聞こえてきた
あ、俺……死んだ……
別の意味で死んだ
潤滑油の足りていないロボットのように、ガクガクと隣に顔を向けると
そこには、青筋を立てて笑顔でブチ切れる──梵がいるわけで
「ほーお……
人の女に手ぇ出すか……
しかもよりによって、俺の」
「ま、政宗様っ!
これはいささか致し方ないことかと!」
あーいや、これはだめだ
長年の付き合いがそう結論付ける
どう転んでも俺がぶん殴られて終わるやつだ
「俺が居なけりゃ勝手に夕歌をhugしていいとでも思ったか?」
「ま、政宗様……!
それはいくら何でも心が狭すぎまするぞ!」
「Shut up!
テメエ後で泣かす!」
「えぇぇぇ!?
お前今の流れ考えてそこは大目に見ろよ!!
今の状況分かってる!?
ねえ俺たちが仲直りしたの分かってくれねえの!?
夕歌っ、お前も何か言ってくれよ!」
そう、夕歌に救いを求めた視線を送ると
「ごめん、私でもちょっと無理」
「ですよね」
神よ、なぜあなたは俺を見放したのか
立ってしまった死亡フラグをどうすればいいのか分からない
というかどうにもできないですね
「梵、とりあえず一旦落ち着こう、な?
今のは仕方ねぇよ、つーかほら、俺にはちゃんと許嫁がいるしさ?」
「言いてぇことはそれだけか?」
「いや、いやぁ~……
あの……
……四の字固めは勘弁してください……」
「All right.
ジャーマンスープレックスで妥協してやる」
「死ぬ!!」
「政宗様!
ご自重なされよ!
廊下ではクッションとなるものがございませぬゆえ、成実が危険です!」
「その前にジャーマン自体をやめさせてくれこじゅ兄ー!!」
「Ha!
竜の女に手を出した罰は重いぜ!」
「ぎゃあ!
え、ちょっと待ってほんとに?
うわ馬鹿やめろっ、腰取られた!
うそ誰か助け、こじゅ兄!」
「大人しく食らいやがれ!!」
「あー!!」
まずーい!!
持ち上げられるわけにはいかないと、足に力を入れて踏ん張ったとき
「コラァァァ!!
廊下で格闘技をしなぁぁぁい!!」
「は、原田ぁぁぁ!!」
「若様!
手をお放しなさい!」
「……チッ」
舌打ちをした梵が俺を解放する
良かった、原田がいてくれて良かった
「原田ぁー!!」
「あ、すみません成実殿、抱き着くのはやめていただきたいです
男色家だと思われたら立ち直れませんので」
「上げて落とすなぁぁぁ!!!」
「原田の奴、綱元がいないってんでここぞとばかりに……」
「やれやれ……
ようやく、いつもの別邸らしくなってきましたな」
「ぐっ、そうだった……
俺ってそういうポジションだった……」
まあ、原田の仲裁で何とか梵の怒りは収まったけど……
あまりにもいつも通り過ぎて、心がつらすぎるというか
「成実ってどういうポジションなの……」
「hierarchyの底辺」
「うるせーな!
どうせ俺は間の悪い奴だよ!」
「間も悪ければ運も悪いというか……」
「原田頼む、お前だけは俺の味方でいてほしいんだ」
「心中お察しします」
「それほんとにお察しできてる?」
ああくそ、だから吹っ切れた原田は厄介なんだ
普段の温厚さからは想像もつかないくらい、綱元並みの毒を吐いてくるというか
……普段から綱元のストレス解消相手をさせられている分、原田のストレスをぶつける相手が俺になるというか……
いやなんだこれ、ようやく色々から立ち直ったらこの扱いってどういうこと?
俺が何をしたというんだろう
全くもって解せない……
「ああ、そういえば成実殿」
「なんだ、まだなんかあんのか!?」
「あーこりゃ完全に疑心暗鬼だな」
「誰のせいだ、誰の!!」
「知らねぇな」
「腹立つー!!」
「まぁまぁ、悪い話ではありませんから
明日の午前中、亘理の御令嬢がお見えになるそうです」
「へっ?
明日ぁ!?」
「はい、何か問題がありましたか?」
「いや……俺、明日、学校……」
……そういや明日って学校だったな、土曜だけど
午前中で終わるっちゃ終わるけど、明日は授業だな?
自分で言っといてだけど、よく覚えてたな俺!
「……そうでしたか……
では、そのように折り返しご連絡を入れておきますね」
「悪いな、頼んだ」
「……そうだった、明日って学校だった……」
「その口ぶりだとお前も忘れてたやつか、夕歌……」
「すこーんと抜けてましたね」
「忘れるな」
「あでっ
殴ることないじゃないですか先生!!」
夕歌の頭をパコンと小突いたこじゅ兄が耳を塞ぐ
塞ぐくらいなら最初からやるなっつの
「そういや一年は明日は課外か
大変だな」
「あー、二年のお前は課外とかねぇもんな……」
「ないの!?」
「ねぇよ、課外なんてやるのは一年だけだ」
「えぇ!?
先輩ずるいです!!」
「いや、ずるいも何も去年の俺は課外受けてたんだが」
「むぅ……」
「可愛くむくれたって課外はなくならねぇよ、諦めろ夕歌」
「いや可愛くはなかったと思いますけど」
条件反射の夕歌の返しもいつも通りスルーして
俺たちは遅めの晩メシを食べることにした
……なんか、いいな、こういうの
こんな光景が明日も明後日も、ずーっと先も続くんだと思うと……
どうしようもなく──嬉しいんだ
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