36 脅迫
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二年前
俺の罪が生まれた
罪の連鎖は止まることを知らない
ならば、俺が止めてやる
たとえこの命が果てたとしても──
──悲劇は、二度もいらない
36 脅迫
──夕歌に連絡を入れてから一時間が経った
あれ以降、夕歌からの連絡が無い
まさか忘れているはずはないだろう、あれだけ嬉しそうに言っていたのに
「……梵、一応お前から掛けてみたらどうだ?」
「ああ……」
LEINであいつのチャットを開いて、通話を押す
耳元で呼び出し音が鳴り続けて……
そして、強制的に切れた
「……Shit……」
チャットに残った発信履歴
手が離せないだけか、それとも……?
嫌な予感が脳裏を過ぎって、思わずスマホを握る手に力を込めた
「……どうかなされましたか?」
綱元が俺の様子を見かねて、そう問うてくる
駄目だ、俺が動揺することだけは避けなければならない
俺は──俺だけは、狼狽えてはいけない
「夕歌のやつが電話に出やがらねえ」
「え……?」
「でもお前、ちょっと前に夕歌と話してたじゃねえか」
「もしや、誘拐されて……?」
「んなことして誰の得になるんだ?」
小十郎が曖昧に頷いて、俺の目の前にコーヒーを置く
それに口をつけようとして
……不意に、綱元のスマホが鳴った
「誰からだ?」
「……夕歌から、です」
「は?
なんで綱元に?」
「分からないが……
掛け間違えたのかもしれない」
綱元が動揺を隠しきれないまま電話に出る
まぁ、これで夕歌が無事だってことは分かったわけだ
どこかホッとして、今度こそコーヒーを飲んだ
「夕歌か?
政宗様の電話に出ないから心配して……」
綱元の言葉が、そこで切れる
次いで
「──誰だ」
冷徹な声が響いた
温和な綱元からは想像もつかない程の、冷たい響き
「綱元?
どうかしたのか?」
成実がそう訊いた
けれど、おそらく……これは最悪のシナリオだ
夕歌は──今回の事件に巻き込まれた
恐れていた事態だ
訝しげに会話をしていた綱元が息を呑む
「おい、綱元!?
何があったんだよ!」
「やめろ、そいつに手を出すな!!」
電話越しの相手に向かって、そう叫ぶ
「まさか、マジで夕歌が……!?」
「……夕歌」
落ち着け、冷静になれ
俺がしっかりしなくてどうする
けれど心臓は嫌な脈を打つ
小十郎が綱元に何かを呟いた
落ち着け、と言っていたように見えた
何を、と聞くまでもなかった
──綱元は、全身を震わせていた
ああクソ、一体何がどうなっている?
「梵!
何がどうなってんだ!?」
「知るか!
むしろ俺が聞きてえことだ!」
「小十郎!!
綱元、どうしちゃったんだよ!?」
「おそらく、フラッシュバックしたらしいな」
まさか……
二年前の、あれか……?
成実も思っていたことは同じらしく
俺たちは、頭を押さえてうずくまる綱元を見つめるしかできなかった
成実が綱元の手からスマホを取って耳に当てる
「……クソッ!」
「切れてたか」
「ああ……
こんなことなら、俺だけでも残れば……!」
「たらればを言ったところでどうしようもねぇ
まずは綱元が先だ」
「っ!?
お前、夕歌が心配じゃねぇのかよ!?」
「心配に決まってる!!」
そう怒鳴ると、成実が「……悪い」と小さく呟いた
思った以上に余裕が無い……
綱元は……落ち着いたが気を失った
「おそらく、相手は綱元が狙いだ」
「………」
「綱元が生きてる限り、夕歌は死なねぇ
今のうちにどうするかを考えねぇとな」
「俺が……行くのはまずいか
夕歌が殺されかねねぇな」
「ああ、だが綱元は──」
「戦えるっつっても、限界がある
荒事は俺の領分だしな……」
どうする?
どうしたらいい?
浮かばない──なにも
夕歌を助けなければならないのに
不安だけが先行する……
俺の罪が生まれた
罪の連鎖は止まることを知らない
ならば、俺が止めてやる
たとえこの命が果てたとしても──
──悲劇は、二度もいらない
36 脅迫
──夕歌に連絡を入れてから一時間が経った
あれ以降、夕歌からの連絡が無い
まさか忘れているはずはないだろう、あれだけ嬉しそうに言っていたのに
「……梵、一応お前から掛けてみたらどうだ?」
「ああ……」
LEINであいつのチャットを開いて、通話を押す
耳元で呼び出し音が鳴り続けて……
そして、強制的に切れた
「……Shit……」
チャットに残った発信履歴
手が離せないだけか、それとも……?
嫌な予感が脳裏を過ぎって、思わずスマホを握る手に力を込めた
「……どうかなされましたか?」
綱元が俺の様子を見かねて、そう問うてくる
駄目だ、俺が動揺することだけは避けなければならない
俺は──俺だけは、狼狽えてはいけない
「夕歌のやつが電話に出やがらねえ」
「え……?」
「でもお前、ちょっと前に夕歌と話してたじゃねえか」
「もしや、誘拐されて……?」
「んなことして誰の得になるんだ?」
小十郎が曖昧に頷いて、俺の目の前にコーヒーを置く
それに口をつけようとして
……不意に、綱元のスマホが鳴った
「誰からだ?」
「……夕歌から、です」
「は?
なんで綱元に?」
「分からないが……
掛け間違えたのかもしれない」
綱元が動揺を隠しきれないまま電話に出る
まぁ、これで夕歌が無事だってことは分かったわけだ
どこかホッとして、今度こそコーヒーを飲んだ
「夕歌か?
政宗様の電話に出ないから心配して……」
綱元の言葉が、そこで切れる
次いで
「──誰だ」
冷徹な声が響いた
温和な綱元からは想像もつかない程の、冷たい響き
「綱元?
どうかしたのか?」
成実がそう訊いた
けれど、おそらく……これは最悪のシナリオだ
夕歌は──今回の事件に巻き込まれた
恐れていた事態だ
訝しげに会話をしていた綱元が息を呑む
「おい、綱元!?
何があったんだよ!」
「やめろ、そいつに手を出すな!!」
電話越しの相手に向かって、そう叫ぶ
「まさか、マジで夕歌が……!?」
「……夕歌」
落ち着け、冷静になれ
俺がしっかりしなくてどうする
けれど心臓は嫌な脈を打つ
小十郎が綱元に何かを呟いた
落ち着け、と言っていたように見えた
何を、と聞くまでもなかった
──綱元は、全身を震わせていた
ああクソ、一体何がどうなっている?
「梵!
何がどうなってんだ!?」
「知るか!
むしろ俺が聞きてえことだ!」
「小十郎!!
綱元、どうしちゃったんだよ!?」
「おそらく、フラッシュバックしたらしいな」
まさか……
二年前の、あれか……?
成実も思っていたことは同じらしく
俺たちは、頭を押さえてうずくまる綱元を見つめるしかできなかった
成実が綱元の手からスマホを取って耳に当てる
「……クソッ!」
「切れてたか」
「ああ……
こんなことなら、俺だけでも残れば……!」
「たらればを言ったところでどうしようもねぇ
まずは綱元が先だ」
「っ!?
お前、夕歌が心配じゃねぇのかよ!?」
「心配に決まってる!!」
そう怒鳴ると、成実が「……悪い」と小さく呟いた
思った以上に余裕が無い……
綱元は……落ち着いたが気を失った
「おそらく、相手は綱元が狙いだ」
「………」
「綱元が生きてる限り、夕歌は死なねぇ
今のうちにどうするかを考えねぇとな」
「俺が……行くのはまずいか
夕歌が殺されかねねぇな」
「ああ、だが綱元は──」
「戦えるっつっても、限界がある
荒事は俺の領分だしな……」
どうする?
どうしたらいい?
浮かばない──なにも
夕歌を助けなければならないのに
不安だけが先行する……
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