34 我が家
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日曜
朝の十時
家の電話が鳴った
「はい、斎藤ですけど……」
電話に出た相手の名前に驚いた
「……はい……はい
……そうですか
はい……分かりました
いえ、別に……
あの土地はもう誰も所有していないので……
はい、構いません
……分かりました
失礼します」
受話器を置く
「…………」
不意に寂寥感が押し寄せた
「……よしっ」
34 我が家
財布とスマホをバッグに詰め込んで、家を出る
「……やっぱり、一人は嫌だな……」
目が向かったのは、三軒向こうの大豪邸・伊達家
「政宗先輩いるかな?」
この間のアポなし突撃のお返しでこっちから突撃しちゃおう
伊達家のインターホンを押して、待つこと数秒
『どちら様でしょうか』
「斎藤です
政宗さんはいらっしゃいますか」
『坊ちゃんですね
少々お待ちください』
「あ、はい」
坊ちゃん……
政宗先輩が、坊ちゃん……
「ウケる……!!
似合わない!!」
笑い過ぎてお腹痛い!
「お前……
人呼び出しといて何爆笑してやがるコラ」
「うわわわっ、先輩!」
自分で呼びつけてビビった
そんなすぐに現れると思ってなかったんだ
「どうした、今日は」
「あ、あの!
今日半日でいいんです、付き合ってもらえませんか」
「Ahー……
今日は無理だな……
どうしても今日じゃないとダメなのか?」
「できれば……」
「何かあったのか」
私の様子から何かを感じ取ったらしい先輩が門から出てきた
「……前に住んでいたところに、新しく家が建つそうなんです
工事が始まっちゃう前に、もう一度見たいと思って」
「そうか……
……悪い、付き合えなくて」
「い、いえ!
無理矢理来た私が悪いんですし!
それじゃあ、あの、失礼します」
無理矢理な笑顔を貼り付けて頭を下げると、頭上からはため息が聞こえてきて
「はあ……
ちょっと家の中で待ってろ」
「へ?」
「いいから
You see?」
「あ、I see…….」
そのまま先輩は家の中へ
私は後を追いかけるように先輩の家の中に入った
それから十分くらい経って、先輩がやって来た
「待たせたな」
「え、政宗先輩!?」
「どうした?」
「だって、今日は無理って……」
「ああ、それか
まあ何とかなった」
「何とかって……
良かったんですか?」
「いいんじゃねえか?
どうせ縁談話だしな」
「え、縁談……ですか……」
今の平成の世で縁談なんて言葉めったに聞かないんですけど
やっぱり、先輩は大企業の御曹司……なんだな
「ま、何とかお袋説き伏せて、今その縁談も蹴ってきたところだ」
「この数分で蹴られるような縁談だったんですか?」
「うん?
ああいや、お前が来る一時間前くらいから討論してた」
「一時間……」
「気にすんな
それより、行くぞ
お前からのdateのお誘いだ
半日なんてつれねえこと言うなよ
今日は一日付き合ってやる」
「いいんですか!?
ありがとうございます!」
なんと、生家跡を見に行くつもりが、先輩とのデートに華麗なる転身
良かった!ちょっとオシャレしてきて良かった!!
「なーんーだーよー!
羨ましいなこの野郎!」
頭上から降ってきたのは、成実の声
階段の手すりからむすっとした顔がのぞいていた
「あ、成実おはよ!」
「おーっす
じゃなくてだな!
お前、あの縁談の事後処理が俺たちの仕事になっちゃったの分かってんのかよ!!」
「悪いな成実
あとは任せた」
「おう!!
いや、おうじゃねえだろ俺ぇぇぇ!!!」
成実、自爆
そしていつの間にか、私たちのところへはいつもの二人が
「行ってらっしゃいませ、政宗様」
「あとのことは我々にお任せを」
「ああ、任せたぜ」
片倉先生と綱元先輩の穏やかな声に見送られ、私たちは伊達家を出た
外は相変わらず寒いので、私が寒がりだということをよく知っている先輩が私の肩を抱き寄せてくれた
「で、ルートは?」
「えっと、とりあえず電車に」
ここから離れていると言っても、電車を使えば案外そうでもないことに気付く
いつものように駅に着いて、けれど乗り場はいつもとは逆
車内で先輩と色々なことを話すうちに、気付けば目的の駅についていた
「あ、ここです」
車掌さんの声が駅名を告げて、電車が減速していく
そして……ゆっくりと、見慣れたホームへと停車した
朝の十時
家の電話が鳴った
「はい、斎藤ですけど……」
電話に出た相手の名前に驚いた
「……はい……はい
……そうですか
はい……分かりました
いえ、別に……
あの土地はもう誰も所有していないので……
はい、構いません
……分かりました
失礼します」
受話器を置く
「…………」
不意に寂寥感が押し寄せた
「……よしっ」
34 我が家
財布とスマホをバッグに詰め込んで、家を出る
「……やっぱり、一人は嫌だな……」
目が向かったのは、三軒向こうの大豪邸・伊達家
「政宗先輩いるかな?」
この間のアポなし突撃のお返しでこっちから突撃しちゃおう
伊達家のインターホンを押して、待つこと数秒
『どちら様でしょうか』
「斎藤です
政宗さんはいらっしゃいますか」
『坊ちゃんですね
少々お待ちください』
「あ、はい」
坊ちゃん……
政宗先輩が、坊ちゃん……
「ウケる……!!
似合わない!!」
笑い過ぎてお腹痛い!
「お前……
人呼び出しといて何爆笑してやがるコラ」
「うわわわっ、先輩!」
自分で呼びつけてビビった
そんなすぐに現れると思ってなかったんだ
「どうした、今日は」
「あ、あの!
今日半日でいいんです、付き合ってもらえませんか」
「Ahー……
今日は無理だな……
どうしても今日じゃないとダメなのか?」
「できれば……」
「何かあったのか」
私の様子から何かを感じ取ったらしい先輩が門から出てきた
「……前に住んでいたところに、新しく家が建つそうなんです
工事が始まっちゃう前に、もう一度見たいと思って」
「そうか……
……悪い、付き合えなくて」
「い、いえ!
無理矢理来た私が悪いんですし!
それじゃあ、あの、失礼します」
無理矢理な笑顔を貼り付けて頭を下げると、頭上からはため息が聞こえてきて
「はあ……
ちょっと家の中で待ってろ」
「へ?」
「いいから
You see?」
「あ、I see…….」
そのまま先輩は家の中へ
私は後を追いかけるように先輩の家の中に入った
それから十分くらい経って、先輩がやって来た
「待たせたな」
「え、政宗先輩!?」
「どうした?」
「だって、今日は無理って……」
「ああ、それか
まあ何とかなった」
「何とかって……
良かったんですか?」
「いいんじゃねえか?
どうせ縁談話だしな」
「え、縁談……ですか……」
今の平成の世で縁談なんて言葉めったに聞かないんですけど
やっぱり、先輩は大企業の御曹司……なんだな
「ま、何とかお袋説き伏せて、今その縁談も蹴ってきたところだ」
「この数分で蹴られるような縁談だったんですか?」
「うん?
ああいや、お前が来る一時間前くらいから討論してた」
「一時間……」
「気にすんな
それより、行くぞ
お前からのdateのお誘いだ
半日なんてつれねえこと言うなよ
今日は一日付き合ってやる」
「いいんですか!?
ありがとうございます!」
なんと、生家跡を見に行くつもりが、先輩とのデートに華麗なる転身
良かった!ちょっとオシャレしてきて良かった!!
「なーんーだーよー!
羨ましいなこの野郎!」
頭上から降ってきたのは、成実の声
階段の手すりからむすっとした顔がのぞいていた
「あ、成実おはよ!」
「おーっす
じゃなくてだな!
お前、あの縁談の事後処理が俺たちの仕事になっちゃったの分かってんのかよ!!」
「悪いな成実
あとは任せた」
「おう!!
いや、おうじゃねえだろ俺ぇぇぇ!!!」
成実、自爆
そしていつの間にか、私たちのところへはいつもの二人が
「行ってらっしゃいませ、政宗様」
「あとのことは我々にお任せを」
「ああ、任せたぜ」
片倉先生と綱元先輩の穏やかな声に見送られ、私たちは伊達家を出た
外は相変わらず寒いので、私が寒がりだということをよく知っている先輩が私の肩を抱き寄せてくれた
「で、ルートは?」
「えっと、とりあえず電車に」
ここから離れていると言っても、電車を使えば案外そうでもないことに気付く
いつものように駅に着いて、けれど乗り場はいつもとは逆
車内で先輩と色々なことを話すうちに、気付けば目的の駅についていた
「あ、ここです」
車掌さんの声が駅名を告げて、電車が減速していく
そして……ゆっくりと、見慣れたホームへと停車した
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