17 夏の鎮魂歌-1-
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合宿から帰ってきてしばらくして
世間はお盆休みに突入した
……そろそろお墓参りの季節かな
17 夏の鎮静歌-1-
8月14日
私は馴染みになっているお寺の霊園に来ていた
「こんにちは、住職さん」
「こんにちは
今年もお墓参りですか?」
「はい!」
柄杓と桶を持って、家族が眠る墓を探した
「あ、あったあった!」
半年ぶりに見る家族のお墓
きれいに掃除をしてから、しゃがんで手を合わせた
「久しぶりだね、元気にしてた?
そっちはどう?」
目を開けて、お墓に語りかける
「私は順調だよ
個性的な友達とか、先輩とかがいて
それからね、私……
好きな人ができたんだ
部活の先輩で、生徒会長やってるの
すごく頼りになる先輩なんだよ」
政宗先輩、元気にしてるかな?
お盆休みに入って全く会ってない
当然っちゃ当然だけど
部活あってないし
「もう……二年以上になるんだね……
皆が私を置いて逝っちゃってから──」
思い起こされる、二年前の二月の出来事
「私は……生きていていいのかな……?」
ずっと思ってきたこと
虐げられる度、自問してきた
私という存在は必要なのかって
「でもね、こんな私でも……
誰かに必要とされてるみたい」
少なくとも、そう願いたい
でもあの笑顔の裏で、邪魔だと思っているのかな?
「そんなことないよね、きっと……
皆、私のことが必要だから、竹中先輩も生徒会役員に選んでくれたんだよね」
こんな時、政宗先輩は何て言うかな
「何言ってんだよ」って、頭叩いてくるのかな
「きっと大丈夫
先輩たちなら、力になってくれると思う
信じても、いいよね」
人間不信だった私
かすがと呼び捨てにしながら、心のどこかでは信用しきれてなかった
「かすがも、成実も、幸村君も、親泰君も……政宗先輩も、綱元先輩も、佐助先輩も
小太郎先輩、元親先輩、元就先輩、慶次先輩、信幸先輩も……
片倉先生もみんな……」
私のことを、仲間みたいに思ってくれてる
「ねえ、お母さん、お父さん……
私って幸せ者だね……
奏人、そっちで友達は出来た?
あんたにはまだ未来があったのに……
まだあんた、小学校6年生だったのに……」
お墓の裏に回って、刻んである名前をそっと指でなぞった
新しい墓石と、刻まれた三人分の名前
「心配しないで、もう平気だから
何も怖くない
学院の皆がいてくれる
私は1人じゃないってわかるから」
蝉の声が、体の芯まで響く
夏真っ盛りだなあ、とあきれ半分で笑いをこぼした
「また来年の元旦に会いに来るね
……バイバイ」
もう一度水をかけて、立ち上がった
さて、桶と柄杓を返却して帰るかと、それらを持ち上げた時
「……夕歌?」
そんな聞きなれた声が聞こえてきた
「……え、政宗先輩?」
後ろを振り返ると、先輩どころか伊達家四人組が勢揃いしていた
「おおう、これはみなさんおそろいで」
「久しぶりだな、夕歌!」
「成実は相変わらず元気だね」
「当然!
つか、元気が俺の取り柄だしなー」
そう言って笑う成実に綱元先輩と片倉先生が頷いていた
綱元先輩に至っては、今にも「それくらいしか取り柄のない奴だからな」と笑顔で言いだしそうだ
「墓参りか?」
「はい
家族がここに眠ってるんです」
「そういや、お前は火事で……」
「うん
私以外、みんな亡くなっちゃって」
「………」
反応したのは、政宗先輩だった
「家族が……全員か?」
「はい
あ、私こう見えて一人暮らしですよ」
「いや……そういうことを聞きたいんじゃないんだが」
「だったら、今は誰がお前の保護者なんだ?」
「従姉夫婦です
高校に入学するタイミングで、二人の元から離れてしまったんですけど」
「ああ、家が遠かったとか?」
「それも理由の一つではあるかな」
成実が首を傾げる
……うーん、どこまで話そうかな
「まぁ、庶民の私だって色々あったというか……」
「それは……いつ……」
「季節的には冬でした
冬と言っても、晩冬というか、暦の上では春でしたけど」
「するってーと、二月くらいか?」
片倉先生の推測に頷く
「その通りです」
斎藤家之墓と掘られたお墓を見つめる
太陽を反射した水がキラキラと輝いていた
世間はお盆休みに突入した
……そろそろお墓参りの季節かな
17 夏の鎮静歌-1-
8月14日
私は馴染みになっているお寺の霊園に来ていた
「こんにちは、住職さん」
「こんにちは
今年もお墓参りですか?」
「はい!」
柄杓と桶を持って、家族が眠る墓を探した
「あ、あったあった!」
半年ぶりに見る家族のお墓
きれいに掃除をしてから、しゃがんで手を合わせた
「久しぶりだね、元気にしてた?
そっちはどう?」
目を開けて、お墓に語りかける
「私は順調だよ
個性的な友達とか、先輩とかがいて
それからね、私……
好きな人ができたんだ
部活の先輩で、生徒会長やってるの
すごく頼りになる先輩なんだよ」
政宗先輩、元気にしてるかな?
お盆休みに入って全く会ってない
当然っちゃ当然だけど
部活あってないし
「もう……二年以上になるんだね……
皆が私を置いて逝っちゃってから──」
思い起こされる、二年前の二月の出来事
「私は……生きていていいのかな……?」
ずっと思ってきたこと
虐げられる度、自問してきた
私という存在は必要なのかって
「でもね、こんな私でも……
誰かに必要とされてるみたい」
少なくとも、そう願いたい
でもあの笑顔の裏で、邪魔だと思っているのかな?
「そんなことないよね、きっと……
皆、私のことが必要だから、竹中先輩も生徒会役員に選んでくれたんだよね」
こんな時、政宗先輩は何て言うかな
「何言ってんだよ」って、頭叩いてくるのかな
「きっと大丈夫
先輩たちなら、力になってくれると思う
信じても、いいよね」
人間不信だった私
かすがと呼び捨てにしながら、心のどこかでは信用しきれてなかった
「かすがも、成実も、幸村君も、親泰君も……政宗先輩も、綱元先輩も、佐助先輩も
小太郎先輩、元親先輩、元就先輩、慶次先輩、信幸先輩も……
片倉先生もみんな……」
私のことを、仲間みたいに思ってくれてる
「ねえ、お母さん、お父さん……
私って幸せ者だね……
奏人、そっちで友達は出来た?
あんたにはまだ未来があったのに……
まだあんた、小学校6年生だったのに……」
お墓の裏に回って、刻んである名前をそっと指でなぞった
新しい墓石と、刻まれた三人分の名前
「心配しないで、もう平気だから
何も怖くない
学院の皆がいてくれる
私は1人じゃないってわかるから」
蝉の声が、体の芯まで響く
夏真っ盛りだなあ、とあきれ半分で笑いをこぼした
「また来年の元旦に会いに来るね
……バイバイ」
もう一度水をかけて、立ち上がった
さて、桶と柄杓を返却して帰るかと、それらを持ち上げた時
「……夕歌?」
そんな聞きなれた声が聞こえてきた
「……え、政宗先輩?」
後ろを振り返ると、先輩どころか伊達家四人組が勢揃いしていた
「おおう、これはみなさんおそろいで」
「久しぶりだな、夕歌!」
「成実は相変わらず元気だね」
「当然!
つか、元気が俺の取り柄だしなー」
そう言って笑う成実に綱元先輩と片倉先生が頷いていた
綱元先輩に至っては、今にも「それくらいしか取り柄のない奴だからな」と笑顔で言いだしそうだ
「墓参りか?」
「はい
家族がここに眠ってるんです」
「そういや、お前は火事で……」
「うん
私以外、みんな亡くなっちゃって」
「………」
反応したのは、政宗先輩だった
「家族が……全員か?」
「はい
あ、私こう見えて一人暮らしですよ」
「いや……そういうことを聞きたいんじゃないんだが」
「だったら、今は誰がお前の保護者なんだ?」
「従姉夫婦です
高校に入学するタイミングで、二人の元から離れてしまったんですけど」
「ああ、家が遠かったとか?」
「それも理由の一つではあるかな」
成実が首を傾げる
……うーん、どこまで話そうかな
「まぁ、庶民の私だって色々あったというか……」
「それは……いつ……」
「季節的には冬でした
冬と言っても、晩冬というか、暦の上では春でしたけど」
「するってーと、二月くらいか?」
片倉先生の推測に頷く
「その通りです」
斎藤家之墓と掘られたお墓を見つめる
太陽を反射した水がキラキラと輝いていた
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