沫系
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今日からまたいつも通り学校が始まる。私には数日前の修学旅行がもう夢だったかのように思えた。もっと修学旅行が続いたら良かったのに。重たい体を起こして制服に着替えて、私は立海までの道を一人で歩いていた。その時目に入ったのは、少し前を歩くブン太の赤い髪。そういえば私、ブン太にぬいぐるみのお礼まだ言えてない。帰りのバスの中では何となく気恥ずかしくてあまり話せなかったし、そのままタイミングを逃してしまった。今しかないと勇気を出すと、ブン太の隣に向かって歩き出した。
「ブン太、お、おはよう」
「お、はな。はよー」
「あの、こないだはぬいぐるみありがとうね」
「いいって。お前すげえ物欲しそうに見てたからなんか買ってやりたくなったんだよ」
笑ってそう言ったブン太に思わず頬が緩んだ。良かった。修学旅行の時と変わらないで普通に話せてる。心の底から嬉しくて、自分に拍手してあげたい気持ちだった。なんだか頑張れそうな気がしたから。
「はな、頑張ったね」
「え?」
「今朝一緒に登校してたじゃん。一歩前進だね!」
「う、あ、ありがとう」
お昼休みに教室でみんなでご飯を食べている時に、みんなが口を揃えて引き続き頑張りなよ、って言ってくれた。彼女たちの優しさにまた胸が温かくなる。こうして応援してくれることが何より嬉しかった。もっと頑張ろうって思えるから。そんな話をしていると、ジュースを買いに行っていたりなちゃんが慌ただしそうに教室に戻ってきた。
「どうしたの?そんなに慌てて…」
「はな、丸井と切原喧嘩してるっぽいよ。今試合してるんだけど…」
「え?け、喧嘩って何で…」
「切原、キレたら先輩でも容赦ないんだよ!説明してる暇ないからとにかく早く行こ!」
「う、うん!」
キレたら容赦ないって、どういうこと?そもそもどうして喧嘩してるの?ふと朝のブン太の笑顔が頭の片隅に浮かんだ。よく分からないままに、私はりなちゃんに手を引かれたままテニスコートへと向かうのだった。たどり着いたテニスコートにはブン太と赤也くんと審判をしている人しかいなくて、フェンス越しに女の子たちがたくさん集まっていた。だけど、きゃーきゃー騒いでる様子はなくて、少しざわざわと騒いでるように見える。私たちもフェンスに近づくと、目に入った光景に血の気が引いた。そこに居たのはいつもの笑顔の赤也くんじゃなくて、目が真っ赤に充血してその表情には殺気が湧いていた。赤也くんが打つボールはすべてブン太の膝に当たっていて、そのたびにブン太は低く辛そうな声を漏らしている。
「や、ど、どうしようりなちゃん」
「あれ完全にキレてるわ…このままじゃ丸井の足使い物にならなくなっちゃうよ」
「そんな…」
もうすぐ全国大会を控えてるっていうのに、もし大怪我なんかしたら話にならない。ずっと練習を頑張ってきたブン太の努力が水の泡になってしまう。どうすればいいのか分からなくて、思考回路はまったく働かなかった。真っ白に近い頭の中から見つけだした考えが、頭の良くない私にはとても単純なものだった。
「赤也くん、やめて!」
「あ?うるせーよ、試合中に口出しすんな!」
私の叫び声に対してちゃんと答えてくれているのに、赤也くんの心にはまるで届いていないみたいだった。ブン太はそんな私を驚いた様子で見遣った。こんなの、赤也くんじゃない。赤也くんはいつも私を笑わせてくれて、優しくて、きっとブン太のことだって大切な先輩だと思ってるに違いない。このまま二人の関係を壊して欲しくなんかないのに。
「お願い、赤也くん!ブン太が怪我しちゃうよ!」
試合中にも関わらず泣きながら無我夢中で声を荒げると、赤也くんの動きがぴたりと止まった。それと同時に雰囲気も一気に変わった気がした。いつもの赤也くんだ。
「はな、先輩…」
赤也くんは我に返ったのか、ラケットを持ったままその場を離れてしまった。追い掛けなきゃと思ったけど、ブン太の怪我の様子も気になる。私はフェンスの扉から中に入ると、肩で息をしながらコートの真ん中で立ち尽くす彼の元へと走っていった。痛々しく腫れ上がっているその膝を見て思わず出そうになった悲鳴を堪える。
「ブン太、だい…」
「触んな」
「え…?」
「部外者が試合の邪魔してんじゃねえよ」
私の手を振り払ってそう言ったブン太の表情はとても冷たかった。修学旅行の時とも、今朝話した時とも全く違う態度に思わずたじろいでしまう。
無意識に溢れてきそうな涙を飲み込んで押し込めた。そっか。やっぱり私はブン太にとって部外者でしかないんだ。きっぱりと線を引かれ、修学旅行で近づいた距離が嘘だったんじゃないかと思うほどに胸が痛んだ。
ごめんね、とブン太に声を掛けてからその場を離れた。一人になりたくて駆け込んだのは誰もいない屋上で、冷たい風が私の頬を掠めた。同時にさっきのブン太の表情が脳裏に浮かんで、ため息を漏らした。関係ないのに、何やってんだろ、私。嫌われたくないのに、どんどん離れていってしまう。マイナス思考を振り払おうと頭をぶんぶん振って、くるりと振り返ると、これから探しにいこうと考えていた男の子の姿が。
「はな先輩」
「あ、かやくん」
「さっきはすみませんでした」
「あ、謝るのは私の方だよ。ごめんね…赤也くん、何かあっ…」
なるべく笑顔を取り繕ってそう言うと、突然温かい大きなものに包まれる。それはもちろん赤也くんしか居なくて、抱きしめられていることに気付くと一気に顔に熱が集中した。赤也くんは私より大きいのに、今はすごく子供に見えた。初めは何が起こったのかわからなくて赤也くんの腕の中でじたばたしていたけど、次第に赤也くんの手が震えていることに気が付いて思わず動きを止めた。
「もうちょいこのままでいていいっすか?」
「…うん」
泣いているのかもしれないと思うと、頷くことしか出来なかった。赤也くんは震える手で私を抱きしめたまま黙り込んでしまった。そんな彼を何とかしてあげたくて、背中を摩ってあげた。こういうのって、母性本能っていうのかな。
「はな先輩」
「どうしたの?」
「好きっす」
まっしろな気持ち
何かが動きだした気がした
「ブン太、お、おはよう」
「お、はな。はよー」
「あの、こないだはぬいぐるみありがとうね」
「いいって。お前すげえ物欲しそうに見てたからなんか買ってやりたくなったんだよ」
笑ってそう言ったブン太に思わず頬が緩んだ。良かった。修学旅行の時と変わらないで普通に話せてる。心の底から嬉しくて、自分に拍手してあげたい気持ちだった。なんだか頑張れそうな気がしたから。
「はな、頑張ったね」
「え?」
「今朝一緒に登校してたじゃん。一歩前進だね!」
「う、あ、ありがとう」
お昼休みに教室でみんなでご飯を食べている時に、みんなが口を揃えて引き続き頑張りなよ、って言ってくれた。彼女たちの優しさにまた胸が温かくなる。こうして応援してくれることが何より嬉しかった。もっと頑張ろうって思えるから。そんな話をしていると、ジュースを買いに行っていたりなちゃんが慌ただしそうに教室に戻ってきた。
「どうしたの?そんなに慌てて…」
「はな、丸井と切原喧嘩してるっぽいよ。今試合してるんだけど…」
「え?け、喧嘩って何で…」
「切原、キレたら先輩でも容赦ないんだよ!説明してる暇ないからとにかく早く行こ!」
「う、うん!」
キレたら容赦ないって、どういうこと?そもそもどうして喧嘩してるの?ふと朝のブン太の笑顔が頭の片隅に浮かんだ。よく分からないままに、私はりなちゃんに手を引かれたままテニスコートへと向かうのだった。たどり着いたテニスコートにはブン太と赤也くんと審判をしている人しかいなくて、フェンス越しに女の子たちがたくさん集まっていた。だけど、きゃーきゃー騒いでる様子はなくて、少しざわざわと騒いでるように見える。私たちもフェンスに近づくと、目に入った光景に血の気が引いた。そこに居たのはいつもの笑顔の赤也くんじゃなくて、目が真っ赤に充血してその表情には殺気が湧いていた。赤也くんが打つボールはすべてブン太の膝に当たっていて、そのたびにブン太は低く辛そうな声を漏らしている。
「や、ど、どうしようりなちゃん」
「あれ完全にキレてるわ…このままじゃ丸井の足使い物にならなくなっちゃうよ」
「そんな…」
もうすぐ全国大会を控えてるっていうのに、もし大怪我なんかしたら話にならない。ずっと練習を頑張ってきたブン太の努力が水の泡になってしまう。どうすればいいのか分からなくて、思考回路はまったく働かなかった。真っ白に近い頭の中から見つけだした考えが、頭の良くない私にはとても単純なものだった。
「赤也くん、やめて!」
「あ?うるせーよ、試合中に口出しすんな!」
私の叫び声に対してちゃんと答えてくれているのに、赤也くんの心にはまるで届いていないみたいだった。ブン太はそんな私を驚いた様子で見遣った。こんなの、赤也くんじゃない。赤也くんはいつも私を笑わせてくれて、優しくて、きっとブン太のことだって大切な先輩だと思ってるに違いない。このまま二人の関係を壊して欲しくなんかないのに。
「お願い、赤也くん!ブン太が怪我しちゃうよ!」
試合中にも関わらず泣きながら無我夢中で声を荒げると、赤也くんの動きがぴたりと止まった。それと同時に雰囲気も一気に変わった気がした。いつもの赤也くんだ。
「はな、先輩…」
赤也くんは我に返ったのか、ラケットを持ったままその場を離れてしまった。追い掛けなきゃと思ったけど、ブン太の怪我の様子も気になる。私はフェンスの扉から中に入ると、肩で息をしながらコートの真ん中で立ち尽くす彼の元へと走っていった。痛々しく腫れ上がっているその膝を見て思わず出そうになった悲鳴を堪える。
「ブン太、だい…」
「触んな」
「え…?」
「部外者が試合の邪魔してんじゃねえよ」
私の手を振り払ってそう言ったブン太の表情はとても冷たかった。修学旅行の時とも、今朝話した時とも全く違う態度に思わずたじろいでしまう。
無意識に溢れてきそうな涙を飲み込んで押し込めた。そっか。やっぱり私はブン太にとって部外者でしかないんだ。きっぱりと線を引かれ、修学旅行で近づいた距離が嘘だったんじゃないかと思うほどに胸が痛んだ。
ごめんね、とブン太に声を掛けてからその場を離れた。一人になりたくて駆け込んだのは誰もいない屋上で、冷たい風が私の頬を掠めた。同時にさっきのブン太の表情が脳裏に浮かんで、ため息を漏らした。関係ないのに、何やってんだろ、私。嫌われたくないのに、どんどん離れていってしまう。マイナス思考を振り払おうと頭をぶんぶん振って、くるりと振り返ると、これから探しにいこうと考えていた男の子の姿が。
「はな先輩」
「あ、かやくん」
「さっきはすみませんでした」
「あ、謝るのは私の方だよ。ごめんね…赤也くん、何かあっ…」
なるべく笑顔を取り繕ってそう言うと、突然温かい大きなものに包まれる。それはもちろん赤也くんしか居なくて、抱きしめられていることに気付くと一気に顔に熱が集中した。赤也くんは私より大きいのに、今はすごく子供に見えた。初めは何が起こったのかわからなくて赤也くんの腕の中でじたばたしていたけど、次第に赤也くんの手が震えていることに気が付いて思わず動きを止めた。
「もうちょいこのままでいていいっすか?」
「…うん」
泣いているのかもしれないと思うと、頷くことしか出来なかった。赤也くんは震える手で私を抱きしめたまま黙り込んでしまった。そんな彼を何とかしてあげたくて、背中を摩ってあげた。こういうのって、母性本能っていうのかな。
「はな先輩」
「どうしたの?」
「好きっす」
まっしろな気持ち
何かが動きだした気がした
