徒然の書きかけ
「みなさん ご機嫌いかがかしら?オラクル社様に買収された罪深き超絶美人配信者こと甘木イッサよ♡ 本日は更なるLBXのオベンキョウの為に…コチラ!トキオシティにあるトキオシアデパートに来ているわ!!以前のPart1 Part2は録画した物のアーカイブだったけれど、今回はなんと!Part3にして記念すべき生配信!この動画もアーカイブに残すから見逃しも安心よ!そして引き続きユキちゃん師匠にもご同行頂いているからよろしくお願いするわネ!」
「どうも…」
>>ktkr
>>イッサだ〜!!!!
>>うぽつ
>>今日も顔面強いな
>>こんちゃっす
>>イッサの配信待ってました!
>>買収wwwスポンサー付いて良かったね!
>>ユキちゃん師匠かわいー
>>トキオシア近所じゃんヤバ…
動画開始直後からハイテンションかつ饒舌をふるう端正な顔立ちの青年。Y〇uTuber:甘木イッサ。若草を思わせるライムグリーンは短く切り揃えられ、側頭部に入れられた橙色が差し色となっており、洗練された中にチラと覗かせる遊び心が垣間見える。
カメラは彼の人好きする笑顔を引きで写しながら、その背景の大型ショッピングモールの全容を捉えた。トキオシアの紹介を終えたイッサに焦点を当てる様に移動したカメラの画角に彼の背後に隠れる様に立つ華奢な少女が入る。
緊張しているのか、肩に力の入っている少女は白地に桃色の文様の入った狐面でその素顔を隠しており、鼻先までしかない面の更に下の口元は黒い不織布マスクで覆われていた。通称:ユキちゃん師匠。イッサの紹介にペコリと謙虚すぎるほど深いお辞儀をし、狐面に付いたリボンと鈴が僅かに揺れる。
「待っっっっっっって。ユキちゃん、そのキツネさんのお面ハチャメチャに可愛くない!?ウッ…可愛すぎて平伏したくなって来た…今日のお洋服との相性ももぅ〜最ッ高に抜群!選んだアタシってば今世紀最大にグッジョブ…!」
「お、落ち着いて下さ…待ってくだ、イヤ…撮らないで…ダメですって…」
「やァ〜ン♡こぉ〜んな可愛いユキちゃんを写真に残さないワケがないでしょ〜が!良いから大人しく撮られてなさい!ついでにアタシがトキオシアでフルコーディネートしてあげるわ!新作のゴスロリとぉ〜今季のトレンドを取り入れた一式…いえ違うわフェミニン系とカジュアル系ときれいめパンツスタイルも欲しいから3セットくらい見繕いましょ!その後は話題のイタリアンでランチして雑貨屋さんを見て回って〜…あッ期間限定のパフェも食べましょ〜ネッ♡」
「〜〜〜ッ ストーップ!今日はLBXの勉強の為にトキオシアに来たんですからね!?良いですか!?仕事です!仕事!コラそこッ撮るな!!!!」
「あァん♡いけずゥ〜」
>>wwwww
>>情緒ジェットコースターか?????
>>一瞬ヤラシイ雰囲気になったと思った…焦った
>>スイッチ入っちゃった…
>>コレがヤベぇオネェの本領発揮ってワケ
>>wwwwwwwww
>>ユキちゃん師匠かわいそw
>>それ普通にデートなんじゃよなぁ〜(ほっこり)
>>怒られたwwwwザマァw
>>普通に羨ましい〜師匠そこ代わって〜
>>連写すなw
>>イッサ喘ぐなwww
▶カメラOFF…
オーバーリアクション極まるガタイの良いオネエ言葉の青年が、和風ゴスロリの狐面少女にドン引きされながら叱られているという、見る人によっては在らぬ誤解と性癖が生まれそうな絵面のまま、一行は第1の目的地であるトキオシア内の模型店に到着していた。
一見、その模型店は三角コーンとコーンバーにより出入口が封鎖されているが、自動ドアの内側からA4サイズのコピー用紙に『大変申し訳ございませんが 本日、撮影のため〇時~〇時までの間の営業を休止しております。お客様にはご不便をお掛け致します。お問い合わせの際はコチラへ→TEL:XXX-XXXX-XXXX』と記載されている。
模型店へ向かおうとする人々が手前の三角コーンや張り紙を視界に入れては時間を確認して散っていく中、ガラス製の自動ドアの向こうにて商品棚をチェックしているエプロン姿のスタッフと目が合う。
「甘木イッサさんですね!お待ちしておりました!お連れ様もコチラへどうぞ!」
「あらヤダ。はじめましてオラクル社 広報部 特別課の甘木イッサです~!こちらこそ営業時間中のところ撮影場所のご提供とお時間を頂きありがとうございます!本日はどうぞよろしくお願い致しますネ!」
「あ、…えと、アシスタントのユキ…です。コチラ良かったらスタッフの皆さんでお召し上がりください。」
「わァ~!ありがとうございます!あの有名なイッサさんがウチのお店にいらっしゃるなんて光栄です!メールでお言葉に甘えさせて頂いていたSNSの拡散もしているので、撮影が終わった頃にはたくさんの人が見に来てくれますよ!!」
接客業と人気配信者。対人に慣れている者同士、挨拶もそこそこに会話は円滑に進み荷物を下ろしたりLBXに使用する工具や部品等が揃っている作業台へと案内される。
社会人の大人を相手に外ヅラ営業モードのイサヤのテキパキとした対応に内心呆気に取られている幸亜は、今更になってこのイケオネェ系Y〇uTuber甘木イッサもとい某イサヤの影響力と知名度に驚きつつも、羨望とも畏怖とも何とも言えない感情を抱いていた。
そしてそれと同時に彼女の真面目さ故の責任感も殊更に増したのだった。
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