「あれ？今日は警部殿だけ？」

お気に入りのパンダのマグカップを持ってコーヒーを飲みに特命へ来た角田課長。

「ええ、一人でお留守番です」




そんな特命係の一方で




「冠城さんっ」

「おはよう～」

「ごめんなさい、待ちましたか？」

「全然、俺がニーナを待たせたくなくて早くに来てただけだから」

「っ！？///」

あ、赤くなった…可愛いなぁ

今日は少々強引に貰った非番の日

同じ職場なのは毎日会えるからそれはそれで良いのだが、右京さんの手前彼女にベッタリと言うことも出来ず
恋人なのにそれを全面に中々出せなくてストレスも溜まる一方。

「今日は独り占めだ」

「え？何か言いましたか？」

「いや、何も」


ニーナとあの夜から付き合いだして３ヶ月が経っていてお昼のデートは
初めてだった。

夜は毎日のように食事をし帰っていたが部屋に入った事もなく…俺としたことが後一歩の勇気が出なくて清いお付き合い。


「ごめんね…」

「え？何がですか？」

「デート…ちゃんと出来なくて」

一瞬『？』マークを飛ばすもすぐ笑顔になって

「お互い仕事してますし仕方無いです」


「そう…だけど…」

俺としてはもう少し『会いたい』とか
言って欲しいなぁ…と思うのは欲張りなのかな？

心の中で呟いているも

袖をクイッと引っ張られた

「ニーナ？」

「職場だけど…毎日会えるのが
嬉しいから///」


「っ！?///」

「冠城さっ…！」


「可愛すぎるニーナが悪い」

「///」

可愛すぎの彼女に


不意討ちの軽い口付け。


赤くなる顔にハマる俺。


もう～本当ある意味、魔性の女





















「………映画面白かったですね」

「そうだねなかなか良かった…あ、ごめんちょっとトイレ」

「わかりました。少し向こうで待ってますね」

「わかった」


彼女にウィンクして俺はトイレに向かった。
そして少し混んでるものの
さほど時間がかかったワケでもなかった。

そんな僅かな時間だったのに


彼女は３人の男に囲まれていた



「お願いだからそこまで付いてきてよ」

「ここからすぐですから、わかりますよ」

「俺ら方向音痴でさぁ～すぐ迷っちゃうんだよね」

「そうなんですか？」


どうやら彼女に道案内をさせようとしてるのだった


「ニーナ…」

「あ、冠城さん」

俺を見つけると嬉しいそうな笑顔が
花開く…

可愛いなぁ…ってそうじゃなくて

「…彼女に何か用？」

刑事になって身に付けた
鋭い目付き

それを最大限に発揮する

「冠城さん？」




「あ、いやぁ…ちょっと道を…なぁ」

「あ、ああ…」

「俺が教えようか？」

「い、いえ…もう聞いたんで…大丈夫です」


３人の男たちはそう言うとそそくさと
去っていった


「…大丈夫でしょうか…」


全く…ナンパされたと認識していない

自分が可愛くて、何人のライバルが
俺に居たかなんて少しもわかっていない
別にわかって欲しいとは言わないが


危機感はもって欲しい。


「放って置けばいい…」

「そんな…困ってる市民を助けるのは私達の職務です」


うん、それはそうだけどアイツらは
違うでしょ？


「いいから…今度からはああいうのは無視…いいね」

「出来ません…無視なんて」




それは彼女が刑事だからの言葉で




ナンパを喜んで受けると言うのじゃい




解っているのにカチンと頭にきて













「そんなにナンパされて嬉しいのか」


つい出てしまった言葉


「…ナンパ？」

「そうだ！…どう見たってナンパでしょ？」

「そんな…あれは道を…」

「あれは１００％ナンパだ」

「…………」

「…………」


























そして数時間。


あれから俺たちは一言も言葉を交わすことなく車にいた。



少し…感情的になりすぎた


分かってはいてもどう謝るか

タイミングが掴めない。


折角のデートなのにケンカ別れなんてしたくない…。


バレないように息を吸い込んで
意を決して


「…あのさ」


「冠城さん」


「はいっ！」

「…その…ごめんなさい…」


「え…」

「冠城さんの言う事が正しいです
私が…バカでした」

「そんな…バカなんて」

「心配してくれたのに…私…」

「ニーナ…」

「ごめんなさい…」

「あぁっもう！どうしてニーナはそんな可愛いのかな？」

「へ？」


ニーナがナンパされて喜ぶような女じゃないのはわかってるはずなのに
悪態を付いたのは俺で…
だから悪いのはニーナじゃなく俺


なのに…


「…ごめん…俺が悪かった酷い事言って…」

「冠城さん…」

「だからニーナは謝らなくていい」

「そんな…」

ニーナを抱き締めて

「俺以外の男が君に近づくのが嫌だったんだ…」

「ヤキモチ…妬いて貰えるなんて
嬉しいです」



あぁ～もうお手上げ


「本当、もう大好きだ」

「私も…大好き」



「仲直りしたところで…やり直さない？」

「やり直す？」

「デート…やり直そう…俺のマンションで」


「冠城さんの？」


「そう…朝まで…一緒に居たい」


「っ！？///…は、はい…」






こうして俺たちは



恋人として初めて一緒に朝を迎えた。











*








☆END☆
＊2018.5.22＊