刹那
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「――そこを…通して貰いましょうか?」
「通りたければ…私を殺しなさい…」
それが初めて交わした言葉。
貴女はそのキレイな整った顔に似合わず
私を見る瞳は熱く、真っ直ぐ射るような
強い瞳だったね…。
「……ニーナ?」
「ん…伯言…」
その熱く強い瞳は今…
私だけを映す…。
あの日から3年…魏の女剣士だった彼女は
私の婚約者
時間をかけてやっと私のモノにした
誰の手に触れる事なく
私だけのニーナ
「…伯言…どうしたの?」
「いや…君はいつみても美しい…」
「は、伯言…何言ってっ…///」
そうやって私の言葉に反応して
頬を染める…可愛くて愛しくて仕方ない…
「…もう一度…愛し合おうか…ニーナ」
「もう…だめです…明日は孫権様に呼ばれているのでしょ?」
「そうだけど…ニーナを朝まで抱いていても大丈夫さ…それくらいの体力はある」
「は、伯言は…そんな可愛い顔して性欲ありすぎ…///」
「そうかな?…君を見てると…自然とそうなっちゃうんだよ」
「も…バカ///」
こうやってすぐに触れられる距離に
君が居ることが幸せで幸せで
私には何事にも代えがたい
そんな幸せな私に…
「――――え…孫権様…今…なんと?」
「次の魏との戦いに…ニーナと伴って出陣を命ずる…」
「ど、どうして…ニーナが…」
「元々、ニーナは魏にいた女だ…何かと役立つやもしれん」
それは…そうかも知れない
だが…この言い知れぬ不安が…私を襲うのは
どうしてだ?
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「え…次の戦いに出陣命令?…」
「…はい…孫権様が…」
「…そう…」
その一言だけ彼女は言うと
何も発しなくなった。
その日を境にニーナの考え事を
する姿をよく目にするようになった
だが私はどうしてなのか聞くことが出来なかった…
私の前ではその態度は変わることなく
していたのがひかかったのかもしれない。
そうするうちに出陣の日は迫って
魏と対峙する事となった
戦いは混乱の極みになり
私は不覚にも彼女を見失った。
「ニーナ…何処に行った」
敵を薙ぎ倒しながら彼女を探した
「…ん…あれは…」
多くの兵士の間からチラリと一瞬見えたら
後ろ姿
見間違えるはずがない…あれはニーナ
急いで後を追った。
「っ…離して!!…」
「誰が離すか…」
「元譲…お願い…はな…して」
夏侯惇はニーナの腕を離すまいと
言うようにしっかり握っていた
「この3年…お前は呉で生き永らえていたのか…」
「…………」
「答えろ!!…」
「…そうよ…っん!!」
夏侯惇の手に力が入る
「…貴方と殿が逃げる時間を作る為…死を覚悟して…残った」
「そうだ……孟徳を安全に逃がした後
俺があの場所に戻ると死体もなく…俺がどれだけ…っ」
「元譲…」
私が魏にいた頃…恋人だった元譲…。
殿に使える私たちは…いずれ夫婦にと
許しを貰っていた。
呉との戦いで私は戦場に残り
死ぬつもりだった…
あの時はああする他道は無かった。
殿を逃がすため…私よりこれからも力に
ならなければ成らない元譲と二人逃がす道は…
だけど…私は殺されることなく
呉に囚われ…呉のために働くならと
許された命。
それだけじゃなく…あろうことか…
伯言に愛され…その愛にこたえた…。
「ニーナ…」
「その汚い手を離して頂きたいのですが」
「「っ?!」」
声のする方に振り向くと
怒りを露にした伯言の姿
「なんだ?…テメェ…」
「伯…言…」
「…私は陸伯言…ニーナの婚約者だ」
「婚約者…だとぉ?」
「そうだ…」
「ハッハッハッ!!うまいことやったのだなニーナよ…」
「やめて…夏侯惇…」
「何が可笑しい…」
「この女は…この俺様の女だ」
「なっ!!」
「いずれ…夫婦にと…約束までしたな」
「……っ…ごめんなさい…伯言…」
「……だからどうだと言うのですか?」
「はぁ?」
「心変わりをして…貴方を見限り…私と
愛を誓ったと言うだけの事…今さら…戦いの中…捨てた女を取り返しに来たなど…滑稽」
「貴様っ…言わせておけば」
「待っていてくださいニーナ」
「え…」
「すぐにそこから助けてあげますから」
「この俺がお前のような優男にやられる
わけがないだろう!!」
そして始まる死闘…全ては私が蒔いた種…
「…お願い…止めて…二人とも…」
伯言と元譲の力は歴然…伯言は
剣術や武芸より作戦や戦術が得意
元譲は荒々しい剣を振るうけれど
強さは三国でも随一。
ニーナの予想通り力の差が出始める
圧され始める陸遜。
そして…
カキンっ!!
飛燕が夏侯惇によって弾かれた
「くっ…」
「終りだ! !」
滅麒麟牙が振り下ろされ辺りに血が
飛び散る…。
「っ?!」
「ニーナっ?!」
夏侯惇の滅麒麟牙を血に染めたのは
陸遜のではなくニーナの血だった
「な…っ…」
動けない夏侯惇。
「ニーナっ…どうして!?」
「ごめん…なさい…っ…伯言…」
「何…を…」
「許…して……」
それだけを言うとニーナは
血に染まった手を陸遜の頬に伸ばすが
届く事なく息絶えた。
「あぁぁぁっ!!…ニーナ――っ!!」
戦場には…呆然と立ち尽くす男と
事切れた女。
その女を抱き締める男の悲痛な叫びだけが
残った。
―― ごめんなさい、伯言…貴方を
愛してしまって…こんな私を
許して下さい。――――
*
☆END☆
*2017.1.12 *