愛シキ人
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「……ではな…新奈」
「伯符…」
「そんな顔をしないでくれ…離れられなくなるだろう…」
「…でも…」
「…蜀の兵がここに向かっている…戦場になるここにお前たちを置いておくわけにはいかねぇ…」
「ちちうえ…」
「翔…お前は男だ…母上を守れ…」
「はい…ははうえはぼくがまもります。」
「さすが俺の息子だ」
俺と新奈に息子が産まれて3年
幸せだった時間は終りを告げた
同盟を結んでいた蜀と再び敵になった
敵となった蜀に娘は置いておけないと蜀の皇帝劉備に嫁いでいた尚香を親父が
無理矢理帰らせたせいで…劉備は娘を返せと言ってきた…。
それを俺は勿論の事、権も親父もはね除けた…。
政略結婚ならそうしただろうが…俺は
新奈を心から愛している
今さら返せと言われても返せるワケがねぇ
「伯符…」
不安に揺れる妻の瞳…俺だって離れたくねぇ…だけどそこまで来ている兵を
指揮ているのはあの趙雲大将…
新奈の初恋の男であの男も新奈を愛している。
そんな男が何しに此処まで来たかなんて
おおよその見当はついている
「伯符…どうか無事で…」
「新奈…お前も気をつけろ」
「新奈様…孫策には私もついています…ご安心を」
「周瑜…伯符…孔明を甘く見てはだめよ…彼は人より1歩も2歩も先を考える男…決して油断はしないで」
蜀の皇帝劉備の娘だからこそ孔明を近くで見てきて肌で感じた凄さなのだろう。
「わかっている…新奈」
「……必ず迎えに…」
「あぁ…必ず迎えにいく」
彼女の唇に口づけを落とし馬車にのせ
発進させた。
「孫策…」
「あぁ…迎え撃つ」
だが新奈がいった諸葛孔明の2歩先行くと言うのをこの身で味わうことになる
そして…お前を離した事を死ぬほど後悔する事にもなるとは思いもしなかった。
新奈と息子を送り出して半時
何の動きもない蜀軍…偵察も何も音沙汰なし…
「…周瑜…どうして動かない…」
「………」
俺の問に少し考えて周瑜は
息を飲んだ
「どうした?」
「もしかして…」
周瑜が言ったと同時に一人の兵士がやって来た
「なんだ…」
「孫策様の奥方…新奈様が乗った馬車が蜀の趙雲引きいる軍に…」
「っ!!」
足元の地面が崩れ闇の底に落とされた…
そんな錯覚をみるほど俺に衝撃を
与えた
「…新奈っ……」
「孫策っ」
「新奈―――――!!」
―数時間前―
「ははうえ…元気出して…」
「大丈夫よ…」
小さな手で母の手を優しく握り父親そっくりな笑顔を向けた。
その時だった馬車が急に止まり少しのざわめきが終わると、馬車の扉が開かれた
「翔!!」
子供を隠すように抱きよせた
「新奈姫さま…」
「え?」
この声は…
「お迎えに…上がりました」
「子龍……」
何年振りに見るその勇姿…
「どうして…貴方が…」
「祖国に…帰りましょう…新奈様」
こうして私は…伯符と離されたのだった
「―――新奈様…」
「…孔明…私の息子は…何処なのですか!?」
「大切にお預かりしております」
蜀に戻された私は息子と離された
殺されはしてないだろうが…心細くて…泣いているだろうわが子。
「…どうして…私を…」
「貴女さまは…蜀の姫…敵国にいる理由はないかと…」
「そのような…勝手をっ」
「新奈様…」
「子龍!?…」
忘れた人…忘れたかった人…
もう…なんとも思わないと思っていたのに
夫と離された、息子は取り上げられた…
のに…
「子龍…」
この胸の熱さは何?
「ご安心ください。ご子息に危害は絶対に加えません…」
子龍は優しく抱き寄せ背中をさすってくれた
その手は…変わっていない…。
私がかつて欲しかったもの。
「…子龍…っ…」
「貴女を泣かすような事はこの国に住む者は致しません」
「では…私を…あの人の元へ還して」
「それは…出来ません…貴女は私と夫婦になるのですよ」
「なっ…?!」
私が子龍と夫婦?!…なぜそんな事に
「私を…どうしたいのですか!?…貴方と夫婦なんて…どうしてそんな事になるのですか?!」
「私は貴女が…呉に嫁がれてからもずっとお慕いしておりました…」
「……何を…今さら…」
「もし…新奈様が国に戻ることがあったら…私に頂けないかと…殿に申しておりました…そして再び呉と合間見える事になり最前線に赴き…貴女を取り返したのです」
「子龍…っ」
かつて…恋焦がれ…この人の元へと
願った…幾多の神に…なのに…なのにっ!!
「―――――孔明よ…我が娘は…新奈の様子はどうだ?」
「はい…お子と離された取り乱しておられましたが…今、趙雲どのがお側に」
「そうか…趙雲が」
「あのお二人は共に想い合っていた同士…糸が手繰り寄せるように寄り添うでしょう」
「…可愛そうな事をした。…」
「殿…」
「子も産まれ…幸せだったろうに…」
「新奈様は…趙雲殿が幸せに
してくださります」
「孔明……そうだな…あのようないい男は中々居らぬしな」
~ 一方 呉では ~
ガシャァァッン!!
部屋に散乱するのは机や椅子…
それをしたのは他ならぬ孫策
「落ち着け孫策…」
「落ち着いてられるかっ!!…新奈を拐われたんだぞ!!」
「…孫策…」
「クソっ!!…」
「新奈さまは…酷い事や殺されはしない…孫策…少し冷静になって対処すべきでは?」
「新奈っ…」
離すべきではなかった…
俺の側から…少しでもっ!!
新奈…俺はもう…お前に触れることは出来ないのか?
やっと…手に入れた恋しい女だった
欲しいと願い…想い続けた女
………諦めるものか…新奈
待っていろ…必ず取り戻す!!
*
伯符の元から離されて
3週間が過ぎた。
「新奈様…おはようございます」
「おはよう子龍。今日もいいお天気ね」
「はい…雲ひとつない晴天です」
私を監視役なのか夫としての準備なのか
あの日から子龍は私の側から離れない
でも…私に触れることはなく
側にいるだけ。
「子龍…」
「はい」
「…本当に私の夫になってくれるのですか?」
「っ!?…新奈様…」
「…私を…愛してくれるのですか?…
息子も居る…私などを」
趙雲は新奈を強く抱き締めて
「愛しています…変わらず貴女だけを…ご子息様も…私の長子として育てます…」
「…子…龍っ…」
「誰よりも…愛しています」
ずっと聞きたかった…その言葉
「ははうえっ!!」
「…翔…っ…」
子龍に連れてこられて以来
離されたわが子。
「ははうえ…っ…」
「良い子ね…今までよく頑張ったわね」
腕の中で泣く我が子の背中を擦り
その存在を確かめる。
あぁ…伯符…私たちを助けて
「ははうえ…ちちうえにあいたよ…」
「翔…ははうえも会いたい…父上に…」
そして時間だけが過ぎ
とうとう子龍との婚儀が明日にと迫った
「新奈様…」
「はい…なんですか?」
子龍は私の手を握り
「夢みたいです…」
「子…龍?…」
「貴女を妻に迎えられるなんて」
子龍…どんなに貴方を慕っていたか…
私の全てと言っても良いほど焦がれていた
そんな私に無惨にも貴方は…敵国に嫁ぐ私を止めてはくれず突き放した。
「新奈様?…」
「…いえ…何でもありません」
子龍…私の心は…
「――それでは姫様…わたくしたちは姫様が湯からお上がりしだい御用意致します」
そう言うと侍女たちは出ていった。
「お父様…お許しください」
私は婚儀でバタバタしてる城から
目を盗んで事前に用意していた馬に
乗りどのくらいかかるかわからないが
呉に…伯符の所に帰ると心に決めていた。
「翔…」
「ははうえ?」
「シッ…おいで…翔、父上の所に帰りましょう」
「えっ?…本当?!」
「ええ…本当よ…」
私は翔を抱き抱え
馬に乗り蜀の地を出た…
生まれた祖国。
育った大地。
愛情をくれたお父様。
愛した人。
たくさんの宝物がある…
だけど…それを上回る大切なモノが
私には出来た…
「ははうえ…だいじょうぶ?」
「大丈夫よ…」
どのくらい走ったか…。
既に辺りは暗くなり始めていた。
「ははうえっ!!」
「っ!!」
「へへ…こりゃぁ~上物だなぁ」
山賊?…
気付けば辺りを囲まれていた
「…退いてください…急いでいるのです…」
「ハッハッハッ…自分の立場がわかってねぇのかぁ?…」
「くっ…」
「ガキは要らねぇ…殺せ!!」
一人の男が言うと一斉に私たちに
めがけて飛びきってかた
私は翔を抱き締め目を閉じた…
これまで…
そう心で呟いた
「触るんじゃねぇよ…」
「えっ……」
開けた目に飛び込んできたのは
久しく見る逞しい背中…
「テメェ等みたいなクズが触れていい
女じゃねぇんだよ…」
「な、なんだと…」
「周瑜…権…新奈と翔を頼む…」
「伯符…っ」
「少し待ってな…片付けてやるから」
「さっ…姉上…」
孫権と周瑜に連れられ少し離れた
所へ…
伯符は暁灼紅旋棍を使いこなし
あっと言う間に山賊を倒した。
「……伯符…っ…」
「新奈っ…何やってんだ!!」
「兄上…っ?」
「孫策…」
「…伯…符…」
「俺がこの辺りまで…偵察に来たから
良かったものの…もし間に合わなかったら…もしっ…」
「ごめんなさい…っ…」
「…新奈っ…」
伯符にこんなに怒られたのは初めてだった
いつも私には優しくしてくれ声をあらげるなんて事は無かった
「…間に合って良かった…新奈…会いたかった…」
今までないくらい強く抱き締められた。
そしてその指は幽かに振るえていた
*
*