愛されたいのはアンタだけ
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鬱々とした気分で先輩の小説のことを考えているうちに、ナズナという少女の気持ちが分ってきた。最悪の家庭環境で育ったナズナは、ずっと神様を憎んでいたんだと思う。救済を求める一方でその救済が得られないことへ絶望し、最終的に神と見なした光に自分の不幸の全てを転嫁した。こう考えると筋が通る。
「はあ……」
自分のベッドに横たわって部屋の天井を眺める。先輩はどうしてこの小説をオレに見せたんだろう。自分のことを知ってもらうためだとして、先輩は一体どんな人生を歩んできたんだろう。ナズナや光のような家庭環境なんだろうか。だとしたら相当酷い環境だ。ナズナのように神を憎んで、愛に依存するだろう。
「あ」
告白されたら誰が相手でも付き合う。もしかすると先輩は、愛されたいがために、告白を受け入れているのでは?自分が愛されるならそれで良くて、相手そのものには興味が無い。だからそれが相手にも伝わって、すぐに別れる。そう考えると辻褄が合う。
「そうか」
ナズナと光は先輩が生んだキャラクターだ。自分の体験を膨らませて書きあげていても、何の不思議もない。むしろ、その方が書きやすいのかもしれない。オレは小説を書いたことがないから詳しく分からないけど、ゼロからイチを生み出すよりも楽だろう。だとしたら。
「光にも苗字さんの人生と被る部分がある」
机の引き出しから小説を取り出して、ページをめくる。全てが先輩の人生そのものではないと思うが、どこか被るところはあるはず。そういえば光の母親は占い師に金をつぎ込んでいた。先輩につぎ込まされて親の金にも手出して、終いには万引きで自主退学した人がいるという噂と、どこか似ている気がする。しかしその噂は事実なんだろうか。いや。
「ないだろ」
言い切れる。あの人はそんなことしない。だってそれが事実なら、今まで付き合ってきた男たちから、先輩に貢がされたという話が出るはず。なにより彼女は優しい。人に興味がないのかもしれないけど、話しかければ応えてくれる。
それに。
オレの好意に気づきながら、それを悪用するようなことはしない。むしろオレと一定の距離を保っている。それも告白されたら受けなければいけないからとか、付き合って結局振られるのが怖いからとか、そういう理由なんじゃないだろうか。
あと少し。
あと少しで全てが繋がる。光はどうして告白されたら冷たくなったのか。光の母親が占い師を信仰していた。全ての金を捧げて。あなたに私のすべてを捧げるという薺の花言葉を知っていたら。信仰されていると思った光が、信仰を嫌って冷たくなるのも分かる。
『ここまでくると、中毒ですね』
そう言って遠い目をした先輩。あの時に何を見て、何を思い出していたのか。
「分かんねえ」
分からない。分からないけど、確実に先輩のことが分かってきている。登場人物の気持ちになって小説を読むように、先輩の気持ちになって考えてれば、他にも分かることがあるかもしれない。今までの言動から何か読み取れること……。図書室、カフカの変身、中学レベルの数学。先輩との思い出が蘇る。
「ダメだ」
これ以上何も出てこない。こうなったら先輩から聞き出すしかない。明日の昼休憩になれば、図書室で会えるだろうか。図書委員の仕事があれば、真面目そうなあの人は来るだろう。でも今日の別れ際に告げられた先輩のさよならは、拒絶を含んでいた気がする。まるでオレのことを突き放して、遠ざけたいような。
「拒絶……」
光はナズナが自分のことを信仰していると思い、拒絶した。結果、ナズナに殺される。先輩の場合、どうだろう。誰かに信仰されて拒絶した結果、悲惨な目に合ったことでもあるのだろうか。だとしたらあんまりだ。しかし事実は小説よりも奇なり、なんて言葉がある。もしかしたら先輩の人生は、オレが考えるよりもずっと酷いものだったのかもしれない。
「苗字さん……」
柔らかい微笑みを向けてくる彼女を思い出す。あの笑顔の裏側には、一体どんな過去があるんだろう。それを知りたい。救いたいなんて高慢なことは言わないが、寄り添うことくらいは許して欲しい。そして先輩のこと愛して、先輩から愛されたい。これだけは何を言われても諦められなかった。
「はあ……」
自分のベッドに横たわって部屋の天井を眺める。先輩はどうしてこの小説をオレに見せたんだろう。自分のことを知ってもらうためだとして、先輩は一体どんな人生を歩んできたんだろう。ナズナや光のような家庭環境なんだろうか。だとしたら相当酷い環境だ。ナズナのように神を憎んで、愛に依存するだろう。
「あ」
告白されたら誰が相手でも付き合う。もしかすると先輩は、愛されたいがために、告白を受け入れているのでは?自分が愛されるならそれで良くて、相手そのものには興味が無い。だからそれが相手にも伝わって、すぐに別れる。そう考えると辻褄が合う。
「そうか」
ナズナと光は先輩が生んだキャラクターだ。自分の体験を膨らませて書きあげていても、何の不思議もない。むしろ、その方が書きやすいのかもしれない。オレは小説を書いたことがないから詳しく分からないけど、ゼロからイチを生み出すよりも楽だろう。だとしたら。
「光にも苗字さんの人生と被る部分がある」
机の引き出しから小説を取り出して、ページをめくる。全てが先輩の人生そのものではないと思うが、どこか被るところはあるはず。そういえば光の母親は占い師に金をつぎ込んでいた。先輩につぎ込まされて親の金にも手出して、終いには万引きで自主退学した人がいるという噂と、どこか似ている気がする。しかしその噂は事実なんだろうか。いや。
「ないだろ」
言い切れる。あの人はそんなことしない。だってそれが事実なら、今まで付き合ってきた男たちから、先輩に貢がされたという話が出るはず。なにより彼女は優しい。人に興味がないのかもしれないけど、話しかければ応えてくれる。
それに。
オレの好意に気づきながら、それを悪用するようなことはしない。むしろオレと一定の距離を保っている。それも告白されたら受けなければいけないからとか、付き合って結局振られるのが怖いからとか、そういう理由なんじゃないだろうか。
あと少し。
あと少しで全てが繋がる。光はどうして告白されたら冷たくなったのか。光の母親が占い師を信仰していた。全ての金を捧げて。あなたに私のすべてを捧げるという薺の花言葉を知っていたら。信仰されていると思った光が、信仰を嫌って冷たくなるのも分かる。
『ここまでくると、中毒ですね』
そう言って遠い目をした先輩。あの時に何を見て、何を思い出していたのか。
「分かんねえ」
分からない。分からないけど、確実に先輩のことが分かってきている。登場人物の気持ちになって小説を読むように、先輩の気持ちになって考えてれば、他にも分かることがあるかもしれない。今までの言動から何か読み取れること……。図書室、カフカの変身、中学レベルの数学。先輩との思い出が蘇る。
「ダメだ」
これ以上何も出てこない。こうなったら先輩から聞き出すしかない。明日の昼休憩になれば、図書室で会えるだろうか。図書委員の仕事があれば、真面目そうなあの人は来るだろう。でも今日の別れ際に告げられた先輩のさよならは、拒絶を含んでいた気がする。まるでオレのことを突き放して、遠ざけたいような。
「拒絶……」
光はナズナが自分のことを信仰していると思い、拒絶した。結果、ナズナに殺される。先輩の場合、どうだろう。誰かに信仰されて拒絶した結果、悲惨な目に合ったことでもあるのだろうか。だとしたらあんまりだ。しかし事実は小説よりも奇なり、なんて言葉がある。もしかしたら先輩の人生は、オレが考えるよりもずっと酷いものだったのかもしれない。
「苗字さん……」
柔らかい微笑みを向けてくる彼女を思い出す。あの笑顔の裏側には、一体どんな過去があるんだろう。それを知りたい。救いたいなんて高慢なことは言わないが、寄り添うことくらいは許して欲しい。そして先輩のこと愛して、先輩から愛されたい。これだけは何を言われても諦められなかった。