ひまわりを照らす太陽へ
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私は隆也君に十年間、片想いをしている。きっかけは些細なことで、私が転んで怪我をした時に、彼は優しく心配してくれて、見事に初恋を奪われた。我ながら単純だと思う。その初恋の人を追いかけて、西浦高校に入学した私は今、隆也君の写真を撮っている。
「やっぱり格好良いな……」
放課後のグラウンドで、バッティングをする隆也君。ファインダー越しに眺める横顔は凛々しく、赤く燃える夕陽がその穂先を伸ばして、彼の輪郭をくっきりと浮かび上がらせている。夢中になってシャッターを押していると、バッティングを終えた彼がこちらを向いた。
「わっ」
咄嵯に目を離してしまったけれど、野球部には撮影許可を取っているので何の問題もない。それでも少し気恥ずかしくて、カメラを下ろそうとしたら、隆也君が笑って手を振ってくれた。
その表情があまりにもキラキラ輝いていて、下ろしかけたカメラを構え直してシャッターを切る。カシャッという音と共に、フラッシュが焚かれて眩しく光った。
***
部活を終えて駐輪所へ向かうと、野球部の集団と鉢合わせた。撮影させて貰ったのだから、お礼の言葉を伝えた方が良いかな。大人数が相手で少し緊張するけれども、勇気を振り絞って声をかけることにした。
「あ、あの、野球部の皆さん!今日は写真撮影を許可してくださって、ありがとうございました……!」
深々と頭を下げると、野球部の人達はきょとんと目を丸くした後、優しい笑顔を向けてくれる。
「良いっすよ!またいつでも来てくださいね」
爽やかな返事を聞いてホッとしていると、隆也君がこちらへ歩み寄ってきた。
「名前、今日撮った写真見せて」
「えと、ちょっと待ってね」
自転車を支えにしながら鞄を置き、その中からカメラを取り出していると、周囲がざわつき始める。
「え、なに、阿部の知り合い?」
「家が隣同士の幼馴染」
「へぇ、阿部と苗字さんって幼馴染だったんだ」
隆也君が短く答えると、栄口君が呟いた。彼とは中学で同じクラスになって、何度か話したことがある。優しくて感じの良い人だ。そんなことを考えながら、撮影した画像を背面モニターに表示して、隆也君にカメラを渡す。
「はい、どうぞ。ここの上下のボタンで、次の画像に切り替わるよ」
「ん、サンキュ」
隆也君が画像を確認し始めると、野球部員達が周りを囲むように集まってきた。沢山の人に見られるのは、慣れてないから恥ずかしいけど、変な写真は撮ってないはず。少し不安になりながらも、皆の反応を伺う。
「あ、オレだ!スゲーかっけー!」
クラスメイトの田島君が、写真を見て目を輝かせる。
「確かに格好良く映ってるね」
「三橋のピッチングもよく撮れてるな」
まさか褒めて貰えるなんて思ってもなかった。なんだか照れ臭くて、顏が熱くなっていく。火照る顔を冷ますために、手でパタパタと風を送っていると、一通り写真を見終えたのか、隆也君がカメラから顔を上げた。
「お前、オレのことばっかり撮ってるじゃん」
図星を指されてしまって、更に顏が熱くなっていく。
「あ、あの、知ってる人の方が撮りやすくて」
「そういうもんなのか」
「う、うん」
隆也君が好きだから沢山撮った、なんて言えるはずもなく、私は曖昧に頷いて笑った。
「それよりもさ、そろそろ帰らないと暗くなっちゃうよ」
「そうだな。はい、カメラ。暗くなってきたし、一緒に帰ろうぜ」
彼からカメラを受取り、丁寧に鞄へと仕舞う。自転車のカゴに鞄を入れて、スタンドを上げたところで、隆也君が「なあ、名前」と話しかけてきた。
「どうしたの?」
隆也君の方を向いて首を傾げていると、彼は少し照れ臭そうに頬を掻く。
「今度の日曜日、久しぶりにバッセン行かねえ?」
突然のお誘いに、心臓がドキリと跳ねる。まさかデートのお誘いだなんて、思ってもみなかった。嬉しくなった私は、ふわふわ浮く気持ちと緩む顏を抑えながら、コクコクと何度も頷いた。
「やっぱり格好良いな……」
放課後のグラウンドで、バッティングをする隆也君。ファインダー越しに眺める横顔は凛々しく、赤く燃える夕陽がその穂先を伸ばして、彼の輪郭をくっきりと浮かび上がらせている。夢中になってシャッターを押していると、バッティングを終えた彼がこちらを向いた。
「わっ」
咄嵯に目を離してしまったけれど、野球部には撮影許可を取っているので何の問題もない。それでも少し気恥ずかしくて、カメラを下ろそうとしたら、隆也君が笑って手を振ってくれた。
その表情があまりにもキラキラ輝いていて、下ろしかけたカメラを構え直してシャッターを切る。カシャッという音と共に、フラッシュが焚かれて眩しく光った。
***
部活を終えて駐輪所へ向かうと、野球部の集団と鉢合わせた。撮影させて貰ったのだから、お礼の言葉を伝えた方が良いかな。大人数が相手で少し緊張するけれども、勇気を振り絞って声をかけることにした。
「あ、あの、野球部の皆さん!今日は写真撮影を許可してくださって、ありがとうございました……!」
深々と頭を下げると、野球部の人達はきょとんと目を丸くした後、優しい笑顔を向けてくれる。
「良いっすよ!またいつでも来てくださいね」
爽やかな返事を聞いてホッとしていると、隆也君がこちらへ歩み寄ってきた。
「名前、今日撮った写真見せて」
「えと、ちょっと待ってね」
自転車を支えにしながら鞄を置き、その中からカメラを取り出していると、周囲がざわつき始める。
「え、なに、阿部の知り合い?」
「家が隣同士の幼馴染」
「へぇ、阿部と苗字さんって幼馴染だったんだ」
隆也君が短く答えると、栄口君が呟いた。彼とは中学で同じクラスになって、何度か話したことがある。優しくて感じの良い人だ。そんなことを考えながら、撮影した画像を背面モニターに表示して、隆也君にカメラを渡す。
「はい、どうぞ。ここの上下のボタンで、次の画像に切り替わるよ」
「ん、サンキュ」
隆也君が画像を確認し始めると、野球部員達が周りを囲むように集まってきた。沢山の人に見られるのは、慣れてないから恥ずかしいけど、変な写真は撮ってないはず。少し不安になりながらも、皆の反応を伺う。
「あ、オレだ!スゲーかっけー!」
クラスメイトの田島君が、写真を見て目を輝かせる。
「確かに格好良く映ってるね」
「三橋のピッチングもよく撮れてるな」
まさか褒めて貰えるなんて思ってもなかった。なんだか照れ臭くて、顏が熱くなっていく。火照る顔を冷ますために、手でパタパタと風を送っていると、一通り写真を見終えたのか、隆也君がカメラから顔を上げた。
「お前、オレのことばっかり撮ってるじゃん」
図星を指されてしまって、更に顏が熱くなっていく。
「あ、あの、知ってる人の方が撮りやすくて」
「そういうもんなのか」
「う、うん」
隆也君が好きだから沢山撮った、なんて言えるはずもなく、私は曖昧に頷いて笑った。
「それよりもさ、そろそろ帰らないと暗くなっちゃうよ」
「そうだな。はい、カメラ。暗くなってきたし、一緒に帰ろうぜ」
彼からカメラを受取り、丁寧に鞄へと仕舞う。自転車のカゴに鞄を入れて、スタンドを上げたところで、隆也君が「なあ、名前」と話しかけてきた。
「どうしたの?」
隆也君の方を向いて首を傾げていると、彼は少し照れ臭そうに頬を掻く。
「今度の日曜日、久しぶりにバッセン行かねえ?」
突然のお誘いに、心臓がドキリと跳ねる。まさかデートのお誘いだなんて、思ってもみなかった。嬉しくなった私は、ふわふわ浮く気持ちと緩む顏を抑えながら、コクコクと何度も頷いた。