さよならバッテリー
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あれから私は打撃投手になり練習試合でも投手として登板するようになった。最初は女子が練習へ参加することに戸惑うチームメイトも居たけれど、今では皆が私のことを一人の選手として認めてくれるようになった。そんな私は今、練習試合で大事な場面に直面している。
「ふぅ……」
九回裏、ツーアウト。カウントはツーストライク。あと一球で勝利が決まる。私はマウンド上で深呼吸して、阿部君が示すサインを見つめた。彼の指示はインコースへのストレート。私がイップスになったあの日と同じ。だけどそれは過去の話だ。今の私はあの時とは違う。
「よし」
キャッチャーミットに集中する私は、しっかりと頷いてフォーシームで球を握り、足を一歩引いて腕を上げて振りかぶった。スナップを効かせて腕をムチのように振り、指先でしっかりとバックスピンをかけてリリースする。ボールはまっすぐインコースに向かって、キャッチャーミットへ吸い込まれるように収まり、パンッ!と大きな音が鳴り響いた。
「ストライク! バッターアウト!」
勝った。勝ったんだ。その瞬間にイップスとさよならしたことを実感した。駆け寄ってくるチームメイトとハイタッチをして喜びを分かち合う。その中で一際輝く笑顔の阿部君を見て、気持ちの昂った私は飛びついて熱い抱擁を交わした。それを見た仲間たちが茶化したり、照れた様子で視線を逸らしたりする。その誰もが私たちの仲を祝福してくれた大切な人たちだ。
「並ぶぞ!」
花井君の声掛けで慌てて整列し、相手チームと向き合い頭を下げる。興奮冷めやらぬままベンチに戻って自分のドリンクを飲んでいると、阿部君が隣に座り安心したような表情で私を見つめてきた。
「最後の球。スゲー良かった」
「阿部君が私のことを信じてくれたから、私も阿部君のことを信じて投げられたよ」
「これで完全にイップスとはおさらばだな」
今まで積み重ねてきた努力が報われて、私の心は憑き物が落ちたように軽い。
「阿部君がいなかったらきっと克服できなかったよ」
「名前が一生懸命頑張ってきたから克服できたんだよ」
阿部君は明るく笑って私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。その掌の温かさに思わず笑みがこぼれた。これまでの厳しい練習や心の葛藤が、一瞬で溶けてしまうような温かさだった。
「これからも名前のことを支えていく。バッテリーとしても恋人としても」
こちらを見る阿部君の瞳には自分の姿がはっきりと見える。そのことが嬉しくて、私は彼の胸に飛び込んだ。
「大好き」
その言葉を口にした瞬間、阿部君の表情が少し驚いたように変わった。それからすぐに優しい笑顔が広がり、優しく抱きしめ返してくれる。
「オレもだよ」
少し照れたように微笑む彼の表情が私の心を温かくした。私たちの周りでは他の選手たちが楽しそうに談笑し、勝利した余韻に浸り楽しんでいる。
「これからもずっと一緒にいようね」
「もちろん」
その返事に心から幸せを感じた。過去の苦しい思い出が今では全ての喜びに変わっている。私は阿部君と一緒に努力して支え合い喜びを分かち合うことを決意した。これからの時間がどれほど素晴らしいものになるのかを楽しみにしながら。
fin.
「ふぅ……」
九回裏、ツーアウト。カウントはツーストライク。あと一球で勝利が決まる。私はマウンド上で深呼吸して、阿部君が示すサインを見つめた。彼の指示はインコースへのストレート。私がイップスになったあの日と同じ。だけどそれは過去の話だ。今の私はあの時とは違う。
「よし」
キャッチャーミットに集中する私は、しっかりと頷いてフォーシームで球を握り、足を一歩引いて腕を上げて振りかぶった。スナップを効かせて腕をムチのように振り、指先でしっかりとバックスピンをかけてリリースする。ボールはまっすぐインコースに向かって、キャッチャーミットへ吸い込まれるように収まり、パンッ!と大きな音が鳴り響いた。
「ストライク! バッターアウト!」
勝った。勝ったんだ。その瞬間にイップスとさよならしたことを実感した。駆け寄ってくるチームメイトとハイタッチをして喜びを分かち合う。その中で一際輝く笑顔の阿部君を見て、気持ちの昂った私は飛びついて熱い抱擁を交わした。それを見た仲間たちが茶化したり、照れた様子で視線を逸らしたりする。その誰もが私たちの仲を祝福してくれた大切な人たちだ。
「並ぶぞ!」
花井君の声掛けで慌てて整列し、相手チームと向き合い頭を下げる。興奮冷めやらぬままベンチに戻って自分のドリンクを飲んでいると、阿部君が隣に座り安心したような表情で私を見つめてきた。
「最後の球。スゲー良かった」
「阿部君が私のことを信じてくれたから、私も阿部君のことを信じて投げられたよ」
「これで完全にイップスとはおさらばだな」
今まで積み重ねてきた努力が報われて、私の心は憑き物が落ちたように軽い。
「阿部君がいなかったらきっと克服できなかったよ」
「名前が一生懸命頑張ってきたから克服できたんだよ」
阿部君は明るく笑って私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。その掌の温かさに思わず笑みがこぼれた。これまでの厳しい練習や心の葛藤が、一瞬で溶けてしまうような温かさだった。
「これからも名前のことを支えていく。バッテリーとしても恋人としても」
こちらを見る阿部君の瞳には自分の姿がはっきりと見える。そのことが嬉しくて、私は彼の胸に飛び込んだ。
「大好き」
その言葉を口にした瞬間、阿部君の表情が少し驚いたように変わった。それからすぐに優しい笑顔が広がり、優しく抱きしめ返してくれる。
「オレもだよ」
少し照れたように微笑む彼の表情が私の心を温かくした。私たちの周りでは他の選手たちが楽しそうに談笑し、勝利した余韻に浸り楽しんでいる。
「これからもずっと一緒にいようね」
「もちろん」
その返事に心から幸せを感じた。過去の苦しい思い出が今では全ての喜びに変わっている。私は阿部君と一緒に努力して支え合い喜びを分かち合うことを決意した。これからの時間がどれほど素晴らしいものになるのかを楽しみにしながら。
fin.