short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
恋は落ちるもの。物理の授業中、黒板に書かれた自由落下運動の公式をノートに写しながら、泉の話を思い出す。なんでも恋とはいきなり穴にストンッと落ちて、自力では抜け出せないものらしい。まるで深い落とし穴のようだ。恐ろしいが、野球で忙しいオレには無縁なことだろう。
「あ」
隣の席の苗字が小さな声を上げた。どうやら消しゴムが転がり落ちたらしい。オレの足元に転がってきたそれを拾い上げて、彼女の方へ差し出す。
「はい」
「ありがとう」
苗字は心底嬉しそうな笑みを向けてきた。消しゴムを拾っただけなのに、大げさなヤツだと思う。それにしても。
「お前、よくモノ落とすよな」
一週間前に席替えで隣同士になって気付いたことだが、こいつは意外と抜けている。教科書を忘れたから見せて欲しいとか、数学が分からないから教えて欲しいとか。そうやって頼られるうちに仲も良くなっていた。だからこそ今みたいに、オレが物を拾うことになっても、嫌な気分にはならない。が、どうも回数が多い。
「毎回拾ってくれる阿部君って、優しいよね」
「別にフツーだろ」
「ねえ、どうしてこんなに落とし物するんだと思う?」
「お前の注意力が足りねえから。それ以外に理由あるか?」
呆れていると、苗字は目を細めて悪戯っぽく笑いながら、口を開いた。
「阿部君に拾って貰うために、わざと落としてるんだよ」
「……は?」
わざと物を落としてる?オレに拾って貰うために?それじゃあまるでオレのことが……。
「好きみたいじゃねえか」
思わず口に出してしまった。途端に苗字の顔が真っ赤に染まっていき、そのまま消え入りそうな声で呟く。
「わざと落とし物するくらいにはね」
――ストンッ。何かが落ちる音がした。
「あ」
隣の席の苗字が小さな声を上げた。どうやら消しゴムが転がり落ちたらしい。オレの足元に転がってきたそれを拾い上げて、彼女の方へ差し出す。
「はい」
「ありがとう」
苗字は心底嬉しそうな笑みを向けてきた。消しゴムを拾っただけなのに、大げさなヤツだと思う。それにしても。
「お前、よくモノ落とすよな」
一週間前に席替えで隣同士になって気付いたことだが、こいつは意外と抜けている。教科書を忘れたから見せて欲しいとか、数学が分からないから教えて欲しいとか。そうやって頼られるうちに仲も良くなっていた。だからこそ今みたいに、オレが物を拾うことになっても、嫌な気分にはならない。が、どうも回数が多い。
「毎回拾ってくれる阿部君って、優しいよね」
「別にフツーだろ」
「ねえ、どうしてこんなに落とし物するんだと思う?」
「お前の注意力が足りねえから。それ以外に理由あるか?」
呆れていると、苗字は目を細めて悪戯っぽく笑いながら、口を開いた。
「阿部君に拾って貰うために、わざと落としてるんだよ」
「……は?」
わざと物を落としてる?オレに拾って貰うために?それじゃあまるでオレのことが……。
「好きみたいじゃねえか」
思わず口に出してしまった。途端に苗字の顔が真っ赤に染まっていき、そのまま消え入りそうな声で呟く。
「わざと落とし物するくらいにはね」
――ストンッ。何かが落ちる音がした。
1/1ページ