欲を食らわば墓まで
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鎌倉遠足を終えたオレ達は、いつも通りの学校生活を送っていた。いや、いつも通りではない。あれから席替えで名前とは離れた席になった。そのせいなのかは分からないが、前よりも会話することが減っている。というよりも、何というべきか。
「あれから苗字さんとは進展したの?」
部活終わりに部室で着替えていると、水谷が唐突に質問してきた。
「え?なに、何の話?」
オレの隣で着替えていた栄口が、興味津々に食いついてくる。ここでその話題を出すとこうなるのは目に見えてるだろ。そんな思いを込めて恨めしく睨むと、水谷は焦りながら苦笑いをした。
「ごめんってば」
「……まあ、隠すような事でも無いか」
「どうかしたの?」
「好きな奴の話」
「え!?」
栄口は目を丸くして、大きな声を出した。それにつられて、他の部員達も一斉にオレ達を向いてくる。これは確実に聞き耳を立てられるだろう。
「す、好きな奴って、阿部の?」
「ああ」
「ウソ……相手は?オレの知ってる子?」
栄口が信じられないものを見るような目を向けてきた。前に部員達と恋愛話をした時に、オレは初恋の経験もないと話したことがあるからこの反応も無理はない。
「苗字名前って分かるか?」
栄口とはクラスが違うが、あいつはちょっとした有名人なので知っているかもしれない。そう思っていると案の定、栄口は大きく頷いた。
「ちょっと前に作文コンクールで入賞して表彰されてた子だよね?クールな感じの」
「そう。あいつのことが好きなんだ」
「阿部ってああいう子が好きなのかぁ……」
栄口は顏を赤くしてしみじみと頷いた。
「お前、この手の話好きだよな」
「うん。まさか阿部から恋バナが聞けるとは思わなかったけどね」
「それで、その苗字さんとはどうなの?」
再び水谷が質問してきた。
「なんか、避けられてンだよな」
由比ヶ浜での一件で、オレと名前の距離は近づいたと思う。あの時あいつはオレを信頼して家庭事情を話してくれたんだから、まず間違いなく嫌われてはいないだろう。それなのに、あれからあまり話さないどころか、目が合うとすぐに逸らすようになった。話しかけても素っ気ない返事をされるし、オレが何かしたのかと悩んでみても心当たりはない。
「気のせいじゃなくて?」
「今日の昼もメシに誘ってみたんだけどさ、他の人と食べる約束してるからって断られた」
「それはフツーに友達と約束してたんでしょ」
「あいつの友達なんてオレくらいしか居ねえぞ」
「そうなの?」
「そう言われてみればクラスで苗字さんが特定の誰かと仲良くしてる所見ないな」
「ってワケ。スマホで連絡入れても適当にかわされるし、これって避けられてるだろ?」
水谷と栄口は顔を見合わせて曖昧に頷いた。
「オレが何かした訳でもないのにさ。今までの様子からして、嫌われてる訳じゃねえと思うけど……」
自信の無さから声が知りずぼみしていく。そんなオレを見た栄口は俯きがち考え込んだ後、何かを閃いたのか顔を上げた。
「気になるならさ、直接聞いてみても良いんじゃない?」
「それもそうだな。このままじゃ埒が明かないし」
栄口の提案に頷いて、着替えを済ませて鞄を肩にかけた。それからスマホを取り出して、メッセージアプリで名前とのトーク画面を開く。
〝最近オレの事避けてねえか?〟
そう入力して送信ボタンを押すと、その瞬間に既読が付いた。その速さに驚きつつも、着替え終わった部員達と部室を出る。駐輪場に向かって歩いているとスマホが振動した。名前からのメッセージだ。トークアプリを開いて内容を確認すると、オレの頭の中は真っ白になった。
〝ごめん もう友達辞めよう〟
それだけ。たったそれだけの文字が並んでいた。友達を辞めたいほどオレと居るのが嫌になったのか?ぐるぐると考えてみても、名前に嫌われるようなことをした記憶はない。それなのに、こんなこと。
「なんでだよ……」
呟いた言葉は周りの喧騒に掻き消された。
「あれから苗字さんとは進展したの?」
部活終わりに部室で着替えていると、水谷が唐突に質問してきた。
「え?なに、何の話?」
オレの隣で着替えていた栄口が、興味津々に食いついてくる。ここでその話題を出すとこうなるのは目に見えてるだろ。そんな思いを込めて恨めしく睨むと、水谷は焦りながら苦笑いをした。
「ごめんってば」
「……まあ、隠すような事でも無いか」
「どうかしたの?」
「好きな奴の話」
「え!?」
栄口は目を丸くして、大きな声を出した。それにつられて、他の部員達も一斉にオレ達を向いてくる。これは確実に聞き耳を立てられるだろう。
「す、好きな奴って、阿部の?」
「ああ」
「ウソ……相手は?オレの知ってる子?」
栄口が信じられないものを見るような目を向けてきた。前に部員達と恋愛話をした時に、オレは初恋の経験もないと話したことがあるからこの反応も無理はない。
「苗字名前って分かるか?」
栄口とはクラスが違うが、あいつはちょっとした有名人なので知っているかもしれない。そう思っていると案の定、栄口は大きく頷いた。
「ちょっと前に作文コンクールで入賞して表彰されてた子だよね?クールな感じの」
「そう。あいつのことが好きなんだ」
「阿部ってああいう子が好きなのかぁ……」
栄口は顏を赤くしてしみじみと頷いた。
「お前、この手の話好きだよな」
「うん。まさか阿部から恋バナが聞けるとは思わなかったけどね」
「それで、その苗字さんとはどうなの?」
再び水谷が質問してきた。
「なんか、避けられてンだよな」
由比ヶ浜での一件で、オレと名前の距離は近づいたと思う。あの時あいつはオレを信頼して家庭事情を話してくれたんだから、まず間違いなく嫌われてはいないだろう。それなのに、あれからあまり話さないどころか、目が合うとすぐに逸らすようになった。話しかけても素っ気ない返事をされるし、オレが何かしたのかと悩んでみても心当たりはない。
「気のせいじゃなくて?」
「今日の昼もメシに誘ってみたんだけどさ、他の人と食べる約束してるからって断られた」
「それはフツーに友達と約束してたんでしょ」
「あいつの友達なんてオレくらいしか居ねえぞ」
「そうなの?」
「そう言われてみればクラスで苗字さんが特定の誰かと仲良くしてる所見ないな」
「ってワケ。スマホで連絡入れても適当にかわされるし、これって避けられてるだろ?」
水谷と栄口は顔を見合わせて曖昧に頷いた。
「オレが何かした訳でもないのにさ。今までの様子からして、嫌われてる訳じゃねえと思うけど……」
自信の無さから声が知りずぼみしていく。そんなオレを見た栄口は俯きがち考え込んだ後、何かを閃いたのか顔を上げた。
「気になるならさ、直接聞いてみても良いんじゃない?」
「それもそうだな。このままじゃ埒が明かないし」
栄口の提案に頷いて、着替えを済ませて鞄を肩にかけた。それからスマホを取り出して、メッセージアプリで名前とのトーク画面を開く。
〝最近オレの事避けてねえか?〟
そう入力して送信ボタンを押すと、その瞬間に既読が付いた。その速さに驚きつつも、着替え終わった部員達と部室を出る。駐輪場に向かって歩いているとスマホが振動した。名前からのメッセージだ。トークアプリを開いて内容を確認すると、オレの頭の中は真っ白になった。
〝ごめん もう友達辞めよう〟
それだけ。たったそれだけの文字が並んでいた。友達を辞めたいほどオレと居るのが嫌になったのか?ぐるぐると考えてみても、名前に嫌われるようなことをした記憶はない。それなのに、こんなこと。
「なんでだよ……」
呟いた言葉は周りの喧騒に掻き消された。