可愛い子には恋をさせよ
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オレは名前の言葉の意味について悩んでいた。あいつの好きなヤツは鈍感で野球バカでオレサマらしい。その特徴にピッタリあてはまる人をオレは知っている。てっきりそいつのことが好きなのかと思ったら、名前はまるでオレのことが好きみたいに言ってくるから混乱した。もしかしたらオレをからかっているだけなのかもしれない。
「クソ……」
何度考えてみても分からない。もしもあいつの好きなヤツがオレだとして、オレはあいつのことをどう思っているのか。あいつは幼馴染でずっと一緒に野球をしてきた仲間みたいな存在で……。ダメだ。ヒマさえあれば名前のことばかり考えてしまう。こうなったら頭を空っぽにするため、バッセンへ行こう。
「タカどこに行くの?」
荷物をまとめて玄関に向かったところで母さんに声をかけられた。エコバッグを肩に下げているのを見るに、これから買い物に行くところだろう。
「近所のバッセン行ってくる」
「晩御飯までには戻ってきなさいよ」
「分かったよ」
それだけ言って外に出ると、眩しいくらいの太陽が照り付けてきた。昨日の暑さといい、本当に春なのか疑いたくなる。そういえば昨日の名前はやけにオレの恋愛事情について聞いてきた。オレに恋を教えるといって胸の鼓動まで伝えてきたが、確かにドキドキしていたしオレまでドキドキした。あれはもしかしたら告白だったんだろうか。でもオレは断じてオレサマなんかじゃない。
「わけわかんねえ」
ああやって人を誑かしてはその気にさせて、結局はフラれていったヤツらを今までに見てきた。わざとやっているわけではないんだろうけど、かえってタチが悪い。そんなことばかり頭の中で考えていると、あっというまにバッティングセンターへたどり着いた。受付を済ませてからどのレーンに向かおうかと悩んでいると「あ!」という声が響き渡った。
「タカちゃん!」
「名前。なんだその恰好」
名前がニコニコと笑いながらオレのもとにやってきた。フリルの施されたワンピースにヒールを履いていて、バッティングをするのには相応しくない格好だ。それを指摘すると名前は頬をぷくっと膨らませた。
「新しく買った服なんだけどそんなに変だった?」
「いや、変じゃねえけど、TPOってもんがあるだろ」
「今日は見る専だからこの格好で良いの」
「見る専って他の誰かと来たのか?」
「うん。元希さんと来たんだよ」
名前は130kmのレーンを指さした。そこには確かにバッティングをする元希さんの姿がある。そして元希さんこそが名前が好きな人としてあげた特徴の、鈍感で野球バカでオレサマにピッタリあてはまる人物だった。
「……なんであの人と遊んでんの?」
「なんでってなんで?私が誰と遊んでもタカちゃんには関係ないでしょ?」
名前は不思議そうに首を傾げる。確かに名前が誰と遊ぼうがオレには関係ない。でもなんとなくアイツと遊ぶのは止めて欲しかった。
「おーい名前!何してんだよ……ってタカヤ?」
バッティングを終えた元希さんがやってきた。バッティンググローブを外した手を、名前の頭にポンと乗せたかと思えば、オレの顔を見てきょとんと目を丸くしている。
「ちわす。随分名前と仲が良いんですね」
「あ?ああ!そーだよ。オレらスゲー仲良いの。ンで今日も相談があるってゆうから話聞いてやってたんだよ」
わざとらしく名前の肩を抱くと、元希さんは歯を見せて笑った。それを見て不思議とイライラが募っていく。
「相談ってなに?わざわざ元希さん呼んで、家が近いオレには言えないようなことでもあんの?」
「は?なんでタカヤに言わないといけないワケ。幼馴染だからってなんでも話さないといけないわけじゃねえし、名前だって言いたくないことくらいあるだろ」
名前に詰め寄ると、元希さんが横から正論を放った。名前はオレと元希さんを交互に見ては、困ったように眉尻を下げている。
「ま、いーや。オレ、バッティングしてっから」
そう言って元希さんはオレたちを残して、またバッティングを始めてしまった。名前は室内のベンチに腰掛けてオレの方を心配そうに見上げる。
「なんか怒ってる?」
「別に。つーかお前、元希さんが卒業した後も会ってたの?」
「うん。試合観に行ったり、たまに遊んでもらったりしてる」
その言葉にオレは眉を顰める。こいつはシニア時代の誰も寄せ付けないような元希さんに対して臆せず話しかけていたし、元希さんの方もそんなこいつのことを後輩として気に入り可愛がっていた。名前はオレじゃなくて、元希さんのことが好きなんだろうか。そう思うと胸がざわついて落ち着かなかった。
「そんなにあの人のこと好きなわけ?」
「え?やっぱり投手として憧れるし、大切な先輩として好きだよ」
その言葉に胸を刺されるような痛みが走った。怒りや焦りが入り混じった感情を抑えきれない。
「あっそ」
「でもタカちゃんはもっと特別だよ?」
「は?」
「だって、私の一番大切な人だもん」
一番大切な人。今まで幼馴染としての絆しか感じていなかったのに、その言葉には違う意味を持っているように感じられる。まるでオレのことが恋愛対象として好きみたいな……。
「……ンなこと、急に言われても困るっての……」
「困るって、どうして?」
こいつの気持ちに気づいて、オレの中で新たな感情が芽生える。ずっと幼馴染としてしか見ていなかったのに、急に恋愛対象として頭に浮かぶなんて。戸惑うオレはそれ以上何も言えなかった。
「クソ……」
何度考えてみても分からない。もしもあいつの好きなヤツがオレだとして、オレはあいつのことをどう思っているのか。あいつは幼馴染でずっと一緒に野球をしてきた仲間みたいな存在で……。ダメだ。ヒマさえあれば名前のことばかり考えてしまう。こうなったら頭を空っぽにするため、バッセンへ行こう。
「タカどこに行くの?」
荷物をまとめて玄関に向かったところで母さんに声をかけられた。エコバッグを肩に下げているのを見るに、これから買い物に行くところだろう。
「近所のバッセン行ってくる」
「晩御飯までには戻ってきなさいよ」
「分かったよ」
それだけ言って外に出ると、眩しいくらいの太陽が照り付けてきた。昨日の暑さといい、本当に春なのか疑いたくなる。そういえば昨日の名前はやけにオレの恋愛事情について聞いてきた。オレに恋を教えるといって胸の鼓動まで伝えてきたが、確かにドキドキしていたしオレまでドキドキした。あれはもしかしたら告白だったんだろうか。でもオレは断じてオレサマなんかじゃない。
「わけわかんねえ」
ああやって人を誑かしてはその気にさせて、結局はフラれていったヤツらを今までに見てきた。わざとやっているわけではないんだろうけど、かえってタチが悪い。そんなことばかり頭の中で考えていると、あっというまにバッティングセンターへたどり着いた。受付を済ませてからどのレーンに向かおうかと悩んでいると「あ!」という声が響き渡った。
「タカちゃん!」
「名前。なんだその恰好」
名前がニコニコと笑いながらオレのもとにやってきた。フリルの施されたワンピースにヒールを履いていて、バッティングをするのには相応しくない格好だ。それを指摘すると名前は頬をぷくっと膨らませた。
「新しく買った服なんだけどそんなに変だった?」
「いや、変じゃねえけど、TPOってもんがあるだろ」
「今日は見る専だからこの格好で良いの」
「見る専って他の誰かと来たのか?」
「うん。元希さんと来たんだよ」
名前は130kmのレーンを指さした。そこには確かにバッティングをする元希さんの姿がある。そして元希さんこそが名前が好きな人としてあげた特徴の、鈍感で野球バカでオレサマにピッタリあてはまる人物だった。
「……なんであの人と遊んでんの?」
「なんでってなんで?私が誰と遊んでもタカちゃんには関係ないでしょ?」
名前は不思議そうに首を傾げる。確かに名前が誰と遊ぼうがオレには関係ない。でもなんとなくアイツと遊ぶのは止めて欲しかった。
「おーい名前!何してんだよ……ってタカヤ?」
バッティングを終えた元希さんがやってきた。バッティンググローブを外した手を、名前の頭にポンと乗せたかと思えば、オレの顔を見てきょとんと目を丸くしている。
「ちわす。随分名前と仲が良いんですね」
「あ?ああ!そーだよ。オレらスゲー仲良いの。ンで今日も相談があるってゆうから話聞いてやってたんだよ」
わざとらしく名前の肩を抱くと、元希さんは歯を見せて笑った。それを見て不思議とイライラが募っていく。
「相談ってなに?わざわざ元希さん呼んで、家が近いオレには言えないようなことでもあんの?」
「は?なんでタカヤに言わないといけないワケ。幼馴染だからってなんでも話さないといけないわけじゃねえし、名前だって言いたくないことくらいあるだろ」
名前に詰め寄ると、元希さんが横から正論を放った。名前はオレと元希さんを交互に見ては、困ったように眉尻を下げている。
「ま、いーや。オレ、バッティングしてっから」
そう言って元希さんはオレたちを残して、またバッティングを始めてしまった。名前は室内のベンチに腰掛けてオレの方を心配そうに見上げる。
「なんか怒ってる?」
「別に。つーかお前、元希さんが卒業した後も会ってたの?」
「うん。試合観に行ったり、たまに遊んでもらったりしてる」
その言葉にオレは眉を顰める。こいつはシニア時代の誰も寄せ付けないような元希さんに対して臆せず話しかけていたし、元希さんの方もそんなこいつのことを後輩として気に入り可愛がっていた。名前はオレじゃなくて、元希さんのことが好きなんだろうか。そう思うと胸がざわついて落ち着かなかった。
「そんなにあの人のこと好きなわけ?」
「え?やっぱり投手として憧れるし、大切な先輩として好きだよ」
その言葉に胸を刺されるような痛みが走った。怒りや焦りが入り混じった感情を抑えきれない。
「あっそ」
「でもタカちゃんはもっと特別だよ?」
「は?」
「だって、私の一番大切な人だもん」
一番大切な人。今まで幼馴染としての絆しか感じていなかったのに、その言葉には違う意味を持っているように感じられる。まるでオレのことが恋愛対象として好きみたいな……。
「……ンなこと、急に言われても困るっての……」
「困るって、どうして?」
こいつの気持ちに気づいて、オレの中で新たな感情が芽生える。ずっと幼馴染としてしか見ていなかったのに、急に恋愛対象として頭に浮かぶなんて。戸惑うオレはそれ以上何も言えなかった。