可愛い子には恋をさせよ
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タカちゃんは鈍感だ。私が好きだと言っても真に受けてくれないし、行動で示してもスルーされてしまう。いつも私のことをただの幼馴染だと信じて疑わない。だからこんなにアピールしても、私の気持ちに気付かないんだろう。その割には私が他の男子と喋っていると嫉妬するんだから、タチが悪い。
「私はタカちゃんのことが本当に好きなのに」
「分かったから草むしりするぞ」
「はーい」
何も分かってない。私が西浦高校に入学するのはタカちゃんを追いかけたからだということも、ここまで日焼けしないように徹底しているのもタカちゃんが理由だということも、私の行動のひとつひとつがタカちゃんへの恋心から来ていることも。私のことを思わせぶりの人たらしだとよく言ってくるけど、それなら私のことを異性として好きになって欲しい。
「タカちゃんって恋したことなさそうだよね」
「野球で忙しいから恋なんてしてる暇ないんだよ」
「プロ野球選手でも恋愛と両立してる人はたくさんいるのに?」
適当に思いついたことを話しながら、伸びきった雑草の根元を掴んで思いきり引っ張る。すると雑草は根に土を付けたままごっそり抜けた。もしかしたら私には草むしりの才能があるのかもしれない。
「そういうお前はどうなんだよ。告白されても全部断ってるらしいけど彼氏でも居るのか?」
「彼氏が居たら今頃タカちゃんと一緒に草むしりなんてしてないよ」
「それもそうだな。それなら好きな人が居んの?」
その言葉に草取りする手を止めて、タカちゃんの方をじっと見る。雑草をゴミ袋に放り込んだところで、ようやく私の視線に気が付いたのか目が合った。
「片想いだけどね。鈍感で野球バカでオレサマなんだけど、そういう所が可愛くて好きなんだ」
「は?そんなのが好きって大丈夫か?名前の見る目が心配なんだけど、オレの知ってるヤツ?」
「うん。よく知ってる人」
私の答えにタカちゃんは頭を捻って考え込んでいる。きっと私の好きな人が誰なのか、一生懸命考えているんだろう。しばらくして合点がいったように大きく目を見開いて、それから苦虫を噛み潰したような顏をした。
「お前シュミ悪いな。あいつだけはやめといたほうがいい」
またいつもの嫉妬が始まったらしい。心の底から不機嫌になっていくタカちゃんを見て、一体誰と勘違いしているのかという疑問が湧いてくるが、今はそんなことどうでも良い。私に対してその気がないクセに、他の男が絡むと不機嫌になるその悪癖だけは許せなかった。
「私が好きな人のことを悪く言わないでよ」
「はあ?オレは名前のこと心配して言ってるのになんだよそれ」
「心配とか言って本当は幼馴染が他の人に取られるのがヤなだけじゃないの?」
「はああ!?ンな話してねえだろ!お前の為に言ってんのがわからねえのかよ」
タカちゃんは立ち上がって私を見下ろす。私がその目を真っ直ぐに見返して一歩も引かない姿勢を見せると、タカちゃんは舌打ちをして私から視線を逸らした。
「後で泣きついてきたって知らねェからな」
「タカちゃんに泣きつくことなんてないもん」
「ウソだな」
タカちゃんはそう吐き捨てて作業に戻った。タカちゃんを振り向かせないといけないのに、可愛げのない私のせいでよく喧嘩をしてしまう。どうしたらこの鈍感な男は、私のことを好きになってくれるんだろうか。
「タカちゃんも恋したら私の気持ちが分かるのに」
「恋とか分かんねえよ。オレは名前と違って暇じゃないんで」
「それなら私がタカちゃんに恋を教えてあげる」
「は?」
タカちゃんは手元の草から目を離して私を見た。動揺しているのだろう。動きが止まってしまっているし視線は私に釘付けだ。そんなタカちゃんの手を取って、自分の胸元へと持っていく。どうか私の気持ちが届きますように。そう願いを込めて手のひらを心臓の辺りに押し付ける。
「ドキドキしてるのわかる?」
「わ、わかる」
私の心臓の鼓動はタカちゃんにも伝わっているらしい。それが嬉しくて頬が緩んでいく。
「好きな人と一緒に居るとね、こんなふうに胸の鼓動が速くなるんだよ」
「それってどういう……」
タカちゃんは顔を赤くしながら瞳を泳がせて、空いた手で口元を隠すように抑えている。もしかして照れている?そう思うと私の鼓動が更に速くなっていく。
「この言葉の意味はタカちゃんが自分で考えてね」
「……分かった」
タカちゃんは素直に頷いて、私の胸元から手を離した。未だに顏を真っ赤にして動揺している姿を見て、私まで顔に熱が集まっていくのを感じる。
「今日は本当に暑いね」
「……だな」
二人して真っ赤な顔をしながら俯く。こんなに暑いのは恋のせいかもしれない。心の中でそんなことを考えながら、私たちは再び草むしりに励んだ。
「私はタカちゃんのことが本当に好きなのに」
「分かったから草むしりするぞ」
「はーい」
何も分かってない。私が西浦高校に入学するのはタカちゃんを追いかけたからだということも、ここまで日焼けしないように徹底しているのもタカちゃんが理由だということも、私の行動のひとつひとつがタカちゃんへの恋心から来ていることも。私のことを思わせぶりの人たらしだとよく言ってくるけど、それなら私のことを異性として好きになって欲しい。
「タカちゃんって恋したことなさそうだよね」
「野球で忙しいから恋なんてしてる暇ないんだよ」
「プロ野球選手でも恋愛と両立してる人はたくさんいるのに?」
適当に思いついたことを話しながら、伸びきった雑草の根元を掴んで思いきり引っ張る。すると雑草は根に土を付けたままごっそり抜けた。もしかしたら私には草むしりの才能があるのかもしれない。
「そういうお前はどうなんだよ。告白されても全部断ってるらしいけど彼氏でも居るのか?」
「彼氏が居たら今頃タカちゃんと一緒に草むしりなんてしてないよ」
「それもそうだな。それなら好きな人が居んの?」
その言葉に草取りする手を止めて、タカちゃんの方をじっと見る。雑草をゴミ袋に放り込んだところで、ようやく私の視線に気が付いたのか目が合った。
「片想いだけどね。鈍感で野球バカでオレサマなんだけど、そういう所が可愛くて好きなんだ」
「は?そんなのが好きって大丈夫か?名前の見る目が心配なんだけど、オレの知ってるヤツ?」
「うん。よく知ってる人」
私の答えにタカちゃんは頭を捻って考え込んでいる。きっと私の好きな人が誰なのか、一生懸命考えているんだろう。しばらくして合点がいったように大きく目を見開いて、それから苦虫を噛み潰したような顏をした。
「お前シュミ悪いな。あいつだけはやめといたほうがいい」
またいつもの嫉妬が始まったらしい。心の底から不機嫌になっていくタカちゃんを見て、一体誰と勘違いしているのかという疑問が湧いてくるが、今はそんなことどうでも良い。私に対してその気がないクセに、他の男が絡むと不機嫌になるその悪癖だけは許せなかった。
「私が好きな人のことを悪く言わないでよ」
「はあ?オレは名前のこと心配して言ってるのになんだよそれ」
「心配とか言って本当は幼馴染が他の人に取られるのがヤなだけじゃないの?」
「はああ!?ンな話してねえだろ!お前の為に言ってんのがわからねえのかよ」
タカちゃんは立ち上がって私を見下ろす。私がその目を真っ直ぐに見返して一歩も引かない姿勢を見せると、タカちゃんは舌打ちをして私から視線を逸らした。
「後で泣きついてきたって知らねェからな」
「タカちゃんに泣きつくことなんてないもん」
「ウソだな」
タカちゃんはそう吐き捨てて作業に戻った。タカちゃんを振り向かせないといけないのに、可愛げのない私のせいでよく喧嘩をしてしまう。どうしたらこの鈍感な男は、私のことを好きになってくれるんだろうか。
「タカちゃんも恋したら私の気持ちが分かるのに」
「恋とか分かんねえよ。オレは名前と違って暇じゃないんで」
「それなら私がタカちゃんに恋を教えてあげる」
「は?」
タカちゃんは手元の草から目を離して私を見た。動揺しているのだろう。動きが止まってしまっているし視線は私に釘付けだ。そんなタカちゃんの手を取って、自分の胸元へと持っていく。どうか私の気持ちが届きますように。そう願いを込めて手のひらを心臓の辺りに押し付ける。
「ドキドキしてるのわかる?」
「わ、わかる」
私の心臓の鼓動はタカちゃんにも伝わっているらしい。それが嬉しくて頬が緩んでいく。
「好きな人と一緒に居るとね、こんなふうに胸の鼓動が速くなるんだよ」
「それってどういう……」
タカちゃんは顔を赤くしながら瞳を泳がせて、空いた手で口元を隠すように抑えている。もしかして照れている?そう思うと私の鼓動が更に速くなっていく。
「この言葉の意味はタカちゃんが自分で考えてね」
「……分かった」
タカちゃんは素直に頷いて、私の胸元から手を離した。未だに顏を真っ赤にして動揺している姿を見て、私まで顔に熱が集まっていくのを感じる。
「今日は本当に暑いね」
「……だな」
二人して真っ赤な顔をしながら俯く。こんなに暑いのは恋のせいかもしれない。心の中でそんなことを考えながら、私たちは再び草むしりに励んだ。