可愛い子には恋をさせよ
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名前は可愛い。性格や趣味、話し方から声、顔立ちや体つき。リトルからシニアまで野球をしていたとは思えない程、女子らしい。不思議なことに運動後でも甘い果実のような香りに包まれていて、男臭い汗の染み込んだプロテクターを付けたキャッチャーのオレとは真逆の存在だった。
「春なのに日差しが強いね」
「そうだな」
首にかけたタオルで額の汗を拭う名前を横目に、オレはぬるくなったペットボトルの水を喉に流し込む。今日は二人で西浦高校のグラウンドを整備しに来たのだが、まあ暑い。
「日焼け止め塗り直さなきゃ」
名前はジャージのポケットから日焼け止めを取り出して、塗りたくっていく。服で隠れている手足にまで塗り直す徹底ぶりだ。何度見てもこのクソ暑い中、長袖長ズボンで作業するのは馬鹿げていると思う。
「紫外線にどれだけ恨みがあるんだよ」
「将来シミになるのが怖いんだもん」
「じゃあどうして陽の下に出て野球してたんだ?」
「レオ様のことが好きだったから」
「は?レオ?誰?」
名前は頬を赤くして恥ずかしそう答えた。まるで恋する乙女のように。こいつが男子だらけの中で野球をしていたのに女子らしいのは、好きな男が居たからだとすると辻褄が合うが面白くない。名前のことを一番知っているのはオレだと思っていたのに、急に知らない誰かが出てきたからだろうか。
「タカちゃん、レオ様知らないの?」
「知らねえよ」
「埼玉西武ライオンズのマスコットだよ」
「はあ?」
思わず間抜けな声を出してしまった。まさか球団マスコットに恋して野球するヤツが居るなんて。いや、言われてみればこいつはレオのグッズを沢山持っていた。今首にかけているタオルにもレオがプリントされている。
「オレはてっきりライオンズの熱狂的なファンなんだと……つーか、あのマスコットって野球はしてねえだろ。それがなんで野球を始めるきっかけになるんだよ」
「プロ野球選手になればレオ様と話せるかもって思ったんだもん」
「不純な動機だな」
「だけど、野球を続けられたのはタカちゃんが居てくれたからだよ。男子との差に悩んでる時、いつも励ましてくれたもんね」
中学に上がってからの名前は、よく男子との性別の差に悩んでいたけど、投手としてマウンドに上がれば、花が咲いたように笑って落ち着いた投球をしていた。バックは安心できるし、サインに首振らないし、いい投手だったと思う。
「それなのに高校だとマネージャーするんだよな。もったいねえ」
シニアでは男子とのフィジカルの差で控えになっていたけど、同じ女子が集まるソフト部ならレギュラーは確実だろう。本当にもったいない。
「またその話。私が好きなのはあくまで野球だから、ソフト部に入る気はないの。それとも私がマネージャーになるのがそんなに嫌?」
「いや。嬉しいよ」
オレが素直に答えると、名前はにんまりと笑って頬を赤くした。オレに嬉しいと言われたことが、嬉しくて仕方ないといった様子だ。
「マネージャーになっても打撃投手として投げられるなら充分なの。それにタカちゃんのことが好きだから、一番近くで応援したくて」
「お前はそうやってすぐ好きってゆう。勘違いするヤツが出てくるからやめろよ」
「なんで?」
「そうやって思わせぶりなことを言って、真に受けたヤツがフラれていくところを今までに何回も見た」
「私、タカちゃん以外の男子に好きって言ったことないよ」
「そういうところだって」
思わせぶりな発言にオレでさえ勘違いしそうになるんだから、こいつのことが気になるヤツとしてはたまったもんじゃないだろう。こんなんだからシニアでもチームメイトから変に意識されていたし、卒業シーズンになると毎日のように告白されていた。だけど、いつも彼氏を作らなかった。野球が恋人だとはぐらかしていたけど、こいつのことだから好きな人が居るんだろう。
「タカちゃんは真に受けてくれないの?」
「いちいち真に受けてたら身が持たねえからな」
「私はタカちゃんのことが本当に好きなのに」
オレの言葉に名前は頬をぷくーっと膨らませて不満を訴えてくる。このあざとい言動を素でやっているんだから恐ろしい。オレは名前から視線を逸らしてしゃがみこむ。
「分かったから草むしりするぞ」
「はーい」
オレでも分かるくらい名前は可愛いと思うし、幼馴染として好きだ。しかし恋愛的にどうかと聞かれたら分からない。もし名前が本当にオレのことを好きなんだとしたら……いや、ありえないことを考えても仕方ない。オレは草を手に掴みながら、妄想を追い払うようにむしり取った。
「春なのに日差しが強いね」
「そうだな」
首にかけたタオルで額の汗を拭う名前を横目に、オレはぬるくなったペットボトルの水を喉に流し込む。今日は二人で西浦高校のグラウンドを整備しに来たのだが、まあ暑い。
「日焼け止め塗り直さなきゃ」
名前はジャージのポケットから日焼け止めを取り出して、塗りたくっていく。服で隠れている手足にまで塗り直す徹底ぶりだ。何度見てもこのクソ暑い中、長袖長ズボンで作業するのは馬鹿げていると思う。
「紫外線にどれだけ恨みがあるんだよ」
「将来シミになるのが怖いんだもん」
「じゃあどうして陽の下に出て野球してたんだ?」
「レオ様のことが好きだったから」
「は?レオ?誰?」
名前は頬を赤くして恥ずかしそう答えた。まるで恋する乙女のように。こいつが男子だらけの中で野球をしていたのに女子らしいのは、好きな男が居たからだとすると辻褄が合うが面白くない。名前のことを一番知っているのはオレだと思っていたのに、急に知らない誰かが出てきたからだろうか。
「タカちゃん、レオ様知らないの?」
「知らねえよ」
「埼玉西武ライオンズのマスコットだよ」
「はあ?」
思わず間抜けな声を出してしまった。まさか球団マスコットに恋して野球するヤツが居るなんて。いや、言われてみればこいつはレオのグッズを沢山持っていた。今首にかけているタオルにもレオがプリントされている。
「オレはてっきりライオンズの熱狂的なファンなんだと……つーか、あのマスコットって野球はしてねえだろ。それがなんで野球を始めるきっかけになるんだよ」
「プロ野球選手になればレオ様と話せるかもって思ったんだもん」
「不純な動機だな」
「だけど、野球を続けられたのはタカちゃんが居てくれたからだよ。男子との差に悩んでる時、いつも励ましてくれたもんね」
中学に上がってからの名前は、よく男子との性別の差に悩んでいたけど、投手としてマウンドに上がれば、花が咲いたように笑って落ち着いた投球をしていた。バックは安心できるし、サインに首振らないし、いい投手だったと思う。
「それなのに高校だとマネージャーするんだよな。もったいねえ」
シニアでは男子とのフィジカルの差で控えになっていたけど、同じ女子が集まるソフト部ならレギュラーは確実だろう。本当にもったいない。
「またその話。私が好きなのはあくまで野球だから、ソフト部に入る気はないの。それとも私がマネージャーになるのがそんなに嫌?」
「いや。嬉しいよ」
オレが素直に答えると、名前はにんまりと笑って頬を赤くした。オレに嬉しいと言われたことが、嬉しくて仕方ないといった様子だ。
「マネージャーになっても打撃投手として投げられるなら充分なの。それにタカちゃんのことが好きだから、一番近くで応援したくて」
「お前はそうやってすぐ好きってゆう。勘違いするヤツが出てくるからやめろよ」
「なんで?」
「そうやって思わせぶりなことを言って、真に受けたヤツがフラれていくところを今までに何回も見た」
「私、タカちゃん以外の男子に好きって言ったことないよ」
「そういうところだって」
思わせぶりな発言にオレでさえ勘違いしそうになるんだから、こいつのことが気になるヤツとしてはたまったもんじゃないだろう。こんなんだからシニアでもチームメイトから変に意識されていたし、卒業シーズンになると毎日のように告白されていた。だけど、いつも彼氏を作らなかった。野球が恋人だとはぐらかしていたけど、こいつのことだから好きな人が居るんだろう。
「タカちゃんは真に受けてくれないの?」
「いちいち真に受けてたら身が持たねえからな」
「私はタカちゃんのことが本当に好きなのに」
オレの言葉に名前は頬をぷくーっと膨らませて不満を訴えてくる。このあざとい言動を素でやっているんだから恐ろしい。オレは名前から視線を逸らしてしゃがみこむ。
「分かったから草むしりするぞ」
「はーい」
オレでも分かるくらい名前は可愛いと思うし、幼馴染として好きだ。しかし恋愛的にどうかと聞かれたら分からない。もし名前が本当にオレのことを好きなんだとしたら……いや、ありえないことを考えても仕方ない。オレは草を手に掴みながら、妄想を追い払うようにむしり取った。
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